「子どもが公園でボール遊びをすれば、クレームがくる。公園でゲーム機を触っていると“今の子は……”と言われる。結局、室内でゲーム。子どもをほったらかしにできた時代は、ほーんとによかったのかも。別にゲームが悪いって言ってるんじゃなくて、遊びの選択肢がないんだよね」

ボール遊びができる数少ない空き地にマンションが建つことが決まった4年前、野球が大好きな高学年の男子を育てている女性がため息交じりに語っていました。

よくも悪くも、アニメ『サザエさん』のカツオのように、放課後にランドセルを放り投げて空地に遊びに行く児童は、あまり見かけなくなりました。共働き家庭が増加するにつれて「かぎっ子」という言葉は社会に溶けこんで消滅し、多くの親は、学童や習い事を通じて「子どもの居場所確保」に奔走しています。

小学生の放課後に、どのような変化が生じているのでしょうか?

「公立の学童」は選ぶ余地がない…

共働き家庭にとって、子どもの大切な居場所となるのが「放課後児童クラブ」、いわゆる学童です。共働き家庭の増加に伴い、2017年の学童の利用者(登録児童数)は117万1,162人と、この20年で3倍近くになっています(厚生労働省「放課後児童クラブ関係資料」参照)。

施設の数は増加していますが、保護者からは、広さ(児童の密集度)や設けられたルールが施設によって異なるという声も聞かれます。

「『早帰りの日のお弁当にゼリーを入れられないし、先生が怖いし、同じクラスの子がいないから、(同じ学校の)もう1つの学童がいい!』と子どもが言い出した」と悩むのは、首都圏で働く女性。

同じ小学校に運営者が異なる複数の学童が設けられている場合は珍しくありません。たとえば、「学童1」が自治体運営、「学童2」は委託されたNPO法人が運営というケースです。

学童保育を利用できない待機児童が約1万7,000人と増加傾向にあり、競争率が高い地域では、どの学童保育が割り当てられるのか「運頼み」となる場合も。

昨年から、学童保育の職員数や職員資格の基準の緩和が検討されていますが、長期休暇には子どもにとって第2の生活の場ともなる学童の「保育の質格差」の拡大が懸念されています。

民間の学童は「高付加価値・高価格」

一方で、念入りなリサーチを重ねたうえで、放課後の質を「お金で買う」という家庭もあります。

公立の学童保育を利用できない児童や、「子どもを預けながら、習い事もさせたい」という親の意向をくんでいるのが、民間学童の存在です。

民間学童では、プログラミングや英会話、スポーツ教室、音楽教室など、様々な学びの機会が用意されている施設が多く見受けられます。とはいえ、学校から通える場所にあり、なおかつリーズナブルな料金でない限り、誰もが通えるわけではありません。

3年前の夏休み、筆者は当時小学校の低学年だった子どもが公立の学童に入れず、初めて最寄りの民間の学童を活用しました。子どもを飽きさせない知的なアクティビティが充実しているのは良い点でしたが、朝から夕方まで5回のスポット利用で4万円超、なおかつ猛暑の中で自転車で往復40分という送迎の労力は、かなりの負担でした。

ただ、「子どもに学びと暮らしと遊びの場を提供できる」という点は、「お金」「場所」「子どもの気持ち」の3条件がそろえば、魅力的なのかもしれません。

自宅に帰る場合も公園は禁止事項ばかり

ここまで、学童保育や学習塾を活用する家庭の悩みについてご紹介しましたが、学童を活用しない家庭においても、放課後の過ごし方は悩ましい問題です。