本記事の3つのポイント

  • 韓国経済が低迷している。世界的な保護貿易主義の拡散の動きや中国経済の成長鈍化といった懸念材料が膨らむことで、大手企業を中心に投資意欲が減退している
  • 韓国経済を牽引してきた半導体と自動車が低迷、SKハイニックスもメモリー市況の悪化に伴い、設備投資を抑制
  • 一方で、メモリー需要を左右するデータセンター投資が近いうちに再開されるとの見通しも。韓国経済における半導体産業は年々重要度が増しており、投資回復に対する期待は高まるばかり

 2019年の韓国経済の見通しは、決して明るくない。むしろ「視界ゼロ」という経済専門家らの厳しい指摘も出ている。韓国経済は低成長が続いているうえ、最低賃金の引き上げと労働時間の短縮(週52時間)が重なり、国内的には不確実要因が増えた。対外的には米中貿易戦争の長期化が韓国の視界を暗くしている。

「経済復活」を強調する文大統領だが

 韓国政府は、19年の経済成長率を年間2.6~2.7%と予想している。だが、住宅価格の上昇率が鈍くなるなか、個人負債は依然として高く、これに加えて物価の上昇が消費を抑制する要因として作用する見通しだ。直近では、年間成長率を下方修正する民間経済研究所も立て続けに出てきている。

 特に、19年の設備投資は年間1%程度の増加にとどまるとみられる。米国の金利引き上げをはじめ、世界的な保護貿易主義の拡散の動きや中国経済の成長鈍化といった懸念材料が膨らむことで、大手企業を中心に投資心理が萎縮するのは必至だ。米国より金利が低くなると、韓国から外貨が海外に流出しかねない。対中貿易が全体の3割強を占めるなど、中国への経済依存度が高すぎるのも問題だ。

 就任3年目を迎える文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、このような経済状況について、好ましい流れとは思っていないようだ。1月10日に行われた新年内外記者会見の冒頭で、「経済」という単語を数十回繰り返し強調しながら、経済活性化に向けて複数の打開策を打ち出した。しかし、韓国経済の現状を「危機的水準」とは認識しておらず、これからも経済政策で空振りを繰り返す可能性が高そうだ。

SKハイニックスは装置投資額を40%縮小

 韓国経済を牽引してきた半導体と自動車が低迷している。2年間継続した半導体の「超好況」が陰りを見せ、サムスン電子に続いてSKハイニックスも18年10~12月期の業績を大きく低迷させた。

 水素燃料電気自動車へのシフトを目指す現代自動車は、同期の営業利益(5011億ウォン)が前年同期比で35.4%もの急減となった。

 SKハイニックスは同期に売上高9兆9381億ウォン(約9743億円)、営業利益4兆4301億ウォン(約4343億円)を記録した。営業利益は前四半期の6兆4724億ウォンから31.6%減少した。同社は「アマゾンやグーグルなどグローバルIT企業のデータセンター効率化によって、サーバー向けのDRAM需要が急減したためだ」と説明。需要減少の余波で10~12月期におけるSKハイニックスのDRAMとNANDフラッシュの平均販売価格は前四半期比でそれぞれ11%、21%下落した。韓国証券街では半導体価格の下落を反映し、同社の19年上期営業利益は2兆ウォン台に急降下すると予測している。

 SKハイニックスは、メモリー半導体の需要減少と価格下落に対応するために、投資を抑えることにした。半導体装置投資を前年比で40%減らすと説明しており、全体投資規模を前年の17兆ウォンから大幅に縮小する可能性が高くなった。18年下期から稼働を開始したM15(韓国清州)NANDフラッシュ工場と中国無錫DRAM工場に必要な装置の搬入時期を先送りする計画だ。

データセンターの増設で半導体は復活へ?

 だが、このような厳しい現状とは裏腹に、19年下期からは韓国半導体メーカーが回復するとの分析も出始めている。

 「アマゾンやグーグルなどグローバルIT企業によるデータセンターへの投資抑制は、1年以上続かない。情報量が急増する現状において、データセンターの増設は不可欠で、メモリー需要は再び増加する」と、先週ソウルで開かれた「セミコンコリア2019」の会場で、韓国半導体に詳しいアナリストはこう言い切った。

 つまりこれは、韓国経済の危機的状況はそう長引かないということを意味する。サーバー向けDRAMの大口取引先であるMAGA(マイクロソフト、アマゾン、グーグル、アップル)のデータセンター増設競争が19年下期から再開されれば、メモリー半導体市場は完全に復活すると期待されている。

 世界のメモリー半導体を掌握しているサムスン電子とSKハイニックスは、サーバー向けDRAM需要の拡大とともに、インテルの新CPU供給の本格化、スマートフォンの高性能化に伴う半導体搭載量の増加、第5世代(5G)移動通信・人工知能(AI)・車載など新産業向けの需要増加に支えられて、19年下期から半導体市況が回復すると予想している。

 半導体は韓国の全体輸出規模の3割程度を占めており、国家の大黒柱であることに異論はない。文大統領も新年早々から半導体関連産業の現場へ頻繁に足を運んでおり、半導体の復活に大きな期待を賭けている。

電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

まとめにかえて

 19年後半から下降局面に入ったメモリー市況は年明け以降も価格下落が続いており、とりわけNANDフラッシュは各社の収益性が急速に悪化しています。一部ではデータセンター投資の再開に楽観的な見方もありますが、ハードウエアやOSの最適化による投資効率の見直しも水面下で行われているもようで、市況回復後に前回同様の規模で需要が回復するかどうかは未知数なところもあります。

電子デバイス産業新聞