富裕層の定義はさまざまですが、日本では保有する金融資産が1億円以上というのが基準とされるケースが一般的です。野村総合研究所(NRI)が2016年11月に発表した推計によると、世帯の純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」と5億円以上の「超富裕層」を合わせると、その割合は日本全体の約2.3%となっています。

なお、ここで言う金融資産とは預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などで、不動産は含まれていません。また、純金融資産とは保有する総金融資産から負債を差し引いたものです。

では、このようなお金に余裕がある富裕層は、お金に関してどのような運用やサービスを好むのでしょうか?

富裕層はインカムゲインを好む傾向にある

富裕層は大きな値上がり益(キャピタルゲイン)よりも、原資を減らさずにある程度規則性のある収入(インカムゲイン)を得るほうが良いという考え方をすることが多いようです。

もちろん株を購入する富裕層も少なくありませんが、デイトレーダーのように短期間での売買益を求めるわけではなく、値動きが安定して配当に期待できる大手企業の株を長期で保有するなど、毎日の値動きには動じません。

株式など元本割れのリスクがある資産は余裕資金で運用するというのが前提なので、目先のお金に困ることのない富裕層は、たとえ一時的に保有株の評価額がマイナスになってしまっても、相場や業績が回復するまで待つ余力があるからです。

一方、お金と違い、人生における時間は増やすことはできません。そのため、富裕層は時間も大切にします。その貴重な時間を、投資したものに一喜一憂して無駄にしたくはないと考えるので、良い投資対象がない時には無理やり投資するようなことはありません。

底値で買うことができるので富が集中する

富裕層はほとんどの財産を不動産や投資に回しているイメージがあるかもしれませんが、世界の富裕層はバランスの良いポートフォリオを形成しているのも特徴の一つです。

たとえば、仏コンサルティング会社キャップジェミニの「World Wealth Report 2018」調査によると、株式、不動産(住居を除く)、債権、オルタナティブ投資のほか、現金および現金同等物が資産の3割ほどを占めています。

現金の保有が多いのは保守的という一面もありますが、手元に自由に使える現金があることでリーマンショックのように大きく株価が下がったり、または円高が進んだりする局面で、割安に株や外貨を購入することができるという理由もあります。

一般の人は、値下がりが続いたら財産を失うことになるので、保有しているものは売りますし、新しく購入するのをためらってしまいますが、富裕層の場合はその逆で、優良な資産が格安で購入できると考えるのです。そのため、底値で購入した株や為替が値上がりすれば利益を得ることができ、結果的に富裕層に富が集中することになるのです。

富裕層が望むサービスとは?