日産自動車のカルロス・ゴーン会長逮捕の衝撃が世界中を駆け巡る中、米国ではGMが大規模なリストラ計画を発表してトランプ大統領がGM批判を展開するなど、自動車業界はこの2つの話題で持ちきりとなりました。

一方、ウォール街ではGMのナンバー2が自動運転部門へと転出したことが密かな注目を集めています。今回は、配車サービス開始を目前に控えた自動運転車を巡る最新動向をまとめてみました。

ゴーン会長逮捕とGMリストラが大きな話題に

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が11月19日、報酬約50億円を有価証券報告書に過少申告した疑いで逮捕され、世界中に衝撃が走りました。

また、米ゼネラル・モーターズ(GM)は26日、約10年前の破綻以降で最大規模となる北米事業の再編策を発表。米国の4工場とカナダの1工場で生産を停止し、1万4000人規模の人員を削減する見通しであることを明らかにしました。

これに対し、ドナルド・トランプ米大統領は工場の操業休止は好ましくないとし、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)に不満を伝えています。また、これとは別に、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、GMは中国で自動車の生産を止め、米国で生産すべきとの考えを示しました。

加えて、「電気自動車を含む全ての補助金カットを検討している」とツイッターに投稿。「米国は(経営不振の)GMを救済したが、我々の受け取った感謝がこれだ」と皮肉交じりに批判し、その後も対決姿勢をエスカレートさせています。

一方、バーラCEOは、削減は自動車産業を巡る変化に対応するものだとし、「市場の現実に合わせて生産能力を適正化しようとしている」と説明。発表を受けてGM株は上昇しましたが、人員削減に対する風当たりは強く、報道もトランプ氏のGM批判に集中しました。

GMナンバー2が傘下の自動運転会社「クルーズ」CEOに

このように、世間の注目を集めた自動車業界の話題は「日産ショック」と「GMの工場閉鎖」でしたが、ウォール街の関心は別のところにあったようです。

GMが29日、同社ナンバー2のダン・アマン社長が傘下で自動運転車を手掛ける「クルーズ」の最高経営責任者(CEO)に就任することを明らかにしたからです。GMは2016年3月に40人ほどの新興企業だったクルーズを5億8100万ドルで買収。ここ2年で1000人を採用し、現在の企業価値は146億ドルに膨れ上がっています。

クルーズに対しては今年、ソフトバンクのビジョン・ファンドによる22億5000万ドルの投資が発表されたほか、10月にはホンダが出資と投資で計27億5000万ドルを投じることで合意しています。

GMは現在の中核事業では工場閉鎖や人員削減を進める一方で、将来の利益を目指して自動運転車の開発や輸送サービスに経営資源を注ぎたい考えです。アマン氏の移動は同社で100年続いた自動車販売事業よりも、自動運転車を使った配車サービス事業により大きな可能性を見出していることを浮き彫りにしたと言えそうです。

ライバルはVW、「レベル3」の市販化で先行

従来型の自動車メーカーでは、フォルクスワーゲン(VW)がGMをこの分野で一歩リードしています。VWは既に、一定条件下で車に運転を任せることが可能な「レベル3」の技術を搭載した「Audi A8」を販売し、自動運転車の市販化で先行しているからです。

Audi A8は世界で初めて自動運転レベル3の技術を搭載したモデルで、中央分離帯のある高速道路や自動車専用道路において、時速60km以下の速度であればドライバーに代わって運転操作を行うことが可能とされています。ただ、各国の法整備が追い付かないため、現状は自動運転レベル2搭載車両として販売されているようです。

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