2018年11月16日に行われた、朝日放送グループホールディングス株式会社2019年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料

スピーカー:朝日放送グループホールディングス株式会社 代表取締役社長 沖中進 氏
朝日放送グループホールディングス株式会社 代表取締役副社長/朝日放送テレビ株式会社 代表取締役社長 山本晋也 氏

連結業績・費用(上期)

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沖中進氏(以下、沖中):本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。朝日放送グループホールディングスの沖中でございます。それでは、スライドににまいります。

まず、連結の概要についてご説明いたします。当上期は増収増益でございましたが、テレビ放送事業収入が不調でした。しかし、ハウジング事業の売上増で増収、そしてコンテンツビジネスを展開するABCフロンティアHDや、CS放送のスカイAなどの利益が増えたことで、トータルとしまして増収増益となりました。

なお、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅プラスとなっております。これは、HD(ホールディングス)化に伴う税会計上によるものでございます。

過去10年の売上高と営業利益(連結:上期)

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過去10年の上期、第2四半期の連結売上高と営業利益の推移でございます。当上期は営業利益、利益率とも前期を上回ることができました。

セグメント別業績

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セグメントごとの売上高の推移で、傾向と全体とをご説明いたします。まず右下のグラフをご覧ください。ここ数年、放送事業は減収傾向で、ハウジング事業がやや増収、そしてゴルフ事業が横ばいとなっております。

当上期の放送事業も減収ではありますが、利益は前年を上回ることができました。これは、当上期、残念ながら低調だったテレビスポットの広告収入を、好調だったアニメ事業などのコンテンツビジネスや、CS放送スカイAがカバーしたことにより、減収幅を圧縮でき、利益確保につながりました。ハウジング事業も増収に貢献しております。

朝日放送テレビ 業績と費用(上期)

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まず、放送事業のメイン、テレビ社の事業につきまして朝日放送テレビ社長の山本から説明いたします。

山本晋也氏:朝日放送テレビ社長の山本でございます。それでは、当上期の業績と費用についてご説明をいたします。HD化後初めての中間決算は、残念ながら営業利益、経常利益はマイナスという大変厳しいスタートとなりました。

当期純利益が黒字になっているのは、HD化に伴う税会計上の処理によるものでございます。なお、前年は分割準備会社だったため、前年比較はしておりません。

朝日放送テレビ 主な収入(上期)

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次のスライドで、当社の主な収入についてご説明いたします。当社の主な収入は、テレビ放送事業収入、イベントなどの催し物収入、そしてバーチャル高校野球などのコンテンツ関連収入の3つになります。

ご覧のとおり、当上期の業績が厳しい原因は、当社のメインであるテレビ放送事業収入の不振によるものでございます。イベントなどの催し物はクラシックコンサートが堅調だったほか、グルメサイト連動イベント「フードソニック」の全国展開で増収となりました。コンテンツ関連収入は、7月からアーカイブ配信をグループのABCフロンティアHDに移管しましたが、バーチャル高校野球の収入が前年比でプラスとなり、前年同期比でほぼ横ばいとなりました。

関西地区のテレビ視聴率(注:2018年は上期のみ)

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ここから、メインのテレビ放送事業の詳細についてご説明をいたします。まずは視聴率についてです。赤色の折れ線グラフが当社でございます。全日帯、ゴールデン帯は4位です。全日帯4位は、1996年上半期以来の低さでございます。

プライム帯は2位を維持したものの、プライム2はトップの座を奪われてしまいました。プライム2のトップ陥落は2016年度上半期以来で、全時間帯を通じて厳しい結果となっております。

2018年4~9月 テレビ視聴率(関西地区)

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各時間帯別の視聴率の数字はご覧のとおりでございます。今年はだいぶ、災害やスポーツのハラスメント問題などで、ニュース、情報番組のニーズが高まり、数字を伸ばす局が多い中、当社と視聴者層が近いNHKがとくに数字を伸ばしたこともあり、当社は逆に数字を下げております。

中でも各局がニュースを放送している夕方台と、裏局がニュース番組を放送し、当社がバラエティー番組を放送しているプライム2への大きな影響が出ました。後ほどご説明しますが、このニュース、情報番組への視聴者のニーズを取り込めていないことは、当社にとって、非常に重要な課題だと考えております。

テレビ放送事業:収入(地上波:上期)

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次に、テレビ放送事業収入の内訳はご覧のとおりです。ローカル番組のタイム収入以外がマイナスです。まず、スポット収入についてですが、当上期の地区投下は2011年度に次ぐ低さでございました。

当社の売上としては、それより前のリーマン・ショック後の2009年度に次ぐ低さとなりました。地区投下の低下に、当社の視聴率低下もあり業績悪化の原因となりました。

全国ネット番組のタイム収入は、前年同期比で日曜夜8時のレギュラー枠が減った影響などで、減収となりました。録画番組のタイム収入は、レギュラー番組で「おはよう朝日です」が好調だったほか、ゴールデンウィークに開催したイベント連動特別番組など、単発番組が好調で増収となりました。

テレビスポット収入(地上波)

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四半期ごとの業績はご覧の通りです。

テレビスポット収入(地上波:業種別20位まで)

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在阪4局での当社のスポットシェアは、前年同期比で第1四半期が0.3ポイントのマイナス。第2四半期が0.2ポイントのプラスで、トータルでは0.1ポイントマイナスの24.8パーセントとなりました。

しかし金額としては、地区投下が減った影響が大きく、大幅な減収となりました。業種別に見ると、飲料や保険などの金融系からの出稿は増えましたが、自動車・通信・家電などのスポット市場の基幹業種からの出稿が減っております。スポンサー企業のデジタル広告シフトが強まっていることが、大きく影響しております。

番組連動や動画配信に取り組んでおりますが、ニーズの変化にまだ対応し切れていないことが、営業的な課題だと考えております。

テレビ放送事業:費用(地上波:上期)

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当上期の番組費は、前期比で0.8パーセントマイナスとなりました。日曜深夜にローカルでバラエティ枠とドラマ枠を新設したほか、全国ネット放送向けの新番組の開発に取り組んだことなどは増加要因となったものの、前年同期比で日曜8時の全国ネットレギュラー枠がなかった影響もあり、横ばいとなっております。

また業績の悪化を受けて、期中から番組費を含めたコストコントロールに取り組んだことも、全体として利益のマイナス幅圧縮につながりました。

テレビ放送事業 課題への対策と取り組み

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では、ここからそれぞれの課題に対する取り組みについて、ご説明をいたします。お伝えしたとおり、スポット広告が厳しい状況ではありますが、グループの業績向上・成長のためには、テレビ放送事業の強化が不可欠と考えております。

まず視聴率の低迷についてです。本来は、当社の強みといえる分野のニュース、情報番組が苦戦しております。とくに夕方帯が苦戦しております。さらに、プライム2のバラエティ枠でトップを奪われたことも、23時台の番組が強いという当社イメージに大きなダメージとなり、チャンネル訴求力の再構築が必要だと考えております。

対策としましては、前日の視聴率対策として夕方のローカルニュース番組のテコ入れです。1月に新設した日曜深夜のバラエティ枠での新番組の開発を進め、深夜バラエティの番組の刷新を考えております。

ニュースに強いABC、深夜バラエテイといえばABCのイメージの再構築を目指してまいります。一方で、営業戦略として広告市場の変化への対応が急務だと考えております。地上波プラスアルファの企画力を向上させ、スポンサーニーズを取り込み、スポット収入の底上げを目指してまいります。

また、中長期的には放送外収益の増加を目指したいと考えております。具体的には、今年度はネット動画配信のニーズの高いドラマ枠を増設したほか、地上波番組連動イベントなどを実施しております。

さらに先日の11月1日付けで「IP事業プロジェクト室」を設置し、マルチデバイスで展開できるコンテンツ制作を加速してまいります。

テレビ放送事業:下期の取組みについて

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下期の取組みとしましては、まず日曜日の夜のABC全国ネット枠を復活いたしました。昨年10月以降、特番として放送し、好評を得てきた「ポツンと一軒家」を、レギュラー番組として編成しています。

前番組の、テレビ朝日制作「ナニコレ珍百景」からの、あらゆる世代のみなさんに楽しんでいただける流れを作り、10月の平均視聴率は関東で13パーセント、関西で11.8パーセントでした。11月に入ってからは、さらに視聴率を伸ばし、先日の2.5時間スペシャルでは、関東で15.4パーセント、関西で16.8パーセントと、番組最高視聴率を記録いたしました。

10月月間では、プライムで今年度初のトップを獲得し、10月4週はゴールデン、プライム、プライム2の3冠となり、上昇機運になりました。

夕方のニュースは、10月にスタジオをリニューアルし、視聴者のニーズの調査・分析を行い、今後さらなるテコ入れを図りたいと考えています。

また、地上波プラスアルファの取り組みとして、今年度に増設したドラマで、若い女性に人気のコミックを実写ドラマ化して放送している他、動画サービスや広告代理店と共同で、ドラマを制作・放送しています。若年層にとって身近な動画視聴をきっかけに、テレビ視聴への回帰も期待しています。

朝日放送テレビ:業績と費用見通し(通期)

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次に、当社の通期の見通しは、ご覧のとおりでございます。当社の利益は、下期に増える傾向があるため、営業・経常利益とも、上期のマイナスをカバーし、黒字を達成できる見通しでございます。

朝日放送テレビ 業績と費用見通し(通期)

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主な収入の見通しは、ご覧のとおりです。下期もスポット収入の低迷が続くと想定しています。お伝えをした対策の効果が出るまでには、今しばらく時間がかかると考えているため、放送事業収入は24億円の減収を見込んでいます。

催物収入は、下期に前年あった大型イベントが今年はないため、上期のプラスと相殺され、通期で前年並みとなる見込みでございます。コンテンツ関連収入についても、ほぼ前年並みを見込んでいます。

朝日放送テレビ 主な収入見通し(通期)

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スポット収入は、足元の10月・11月も前年比100%を下回る状況で推移しているため、厳しく見積もり、通期でも前年比の94パーセント、328億円と見込んでいます。全国ネット番組のタイム収入は、下期から日曜20時枠が増えているものの、アザー帯の単価が下がっている影響などもあり、減収の見込みでございます。ローカル収入については、ほぼ前年並みと予想をしています。

テレビ放送事業:収入見通し(通期)

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番組費の見通しでございます。番組費が大きく増えて見えるのは、グループ経営強化の一環として、グループ会社への番組制作業務の一部移管をしたことに伴い、業務委託費が増えているためでございます。その費用を除けば、ほぼ横ばいというレベルで推移する見込みでございます。

前年に比べて、深夜バラエティを増設するなど、番組コンテンツを増やす一方で、復活した日曜夜8時の全国ネットの制作ということで、単価の低減をはじめ、ローカル番組についてもコストの見直しを進めるなど、コストコントロールに努めています。

私からは以上でございます。

テレビ以外の放送事業収入(上期・個別)

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沖中:あらためまして、沖中でございます。まず、テレビ以外の放送事業の収入についてご説明いたします。緑のラインは、ラジオ放送収入でございます。こちらは前年を下回っていますが、ラジオ社単体では黒字を確保しています。ラジオ社は現在、若年層リスナーと新規スポンサーの獲得に向け、デジタル領域との連動を積極的に進めています。

(紫のラインは)CS放送のスカイAでございますが、ゴルフ企画で新規スポンサーを獲得し、増収となりました。並行して、新しいコンテンツ開発のために、さまざまな模索を現在続けています。

オレンジのラインです。こちらはAMCが展開する通販会社ですが、テレビ通販事業でございます。通販特番の効果に加え、定番商品が堅調で、売上を伸ばしています。現路線を継続しながら、新商品開発に向け、さらなる業績向上を目指していきます。

大きく伸びていますこの黒い線でございますが、これはコンテンツビジネスを展開しているABCフロンティアHDでございます。こちらにつきまして、次のスライドでご説明いたします。

上期:前期に続き、アニメ事業が牽引し好調

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フロンティアグループは前期に続き、当上期も好調でございます。業績を牽引していますのは、アニメ社でございます。まず「HUGっと!プリキュア」の二次利用収入が非常に好調。それから、関西ローカルで放送しています、深夜アニメにつきましても、7月クールの「Free!」シリーズの中国への販売や、1月クールに放送した作品の海外販売も、引き続き好調でございます。

海外ビジネスを展開する、株式会社ABCインターナショナルも売上を増やしています。株式会社ABCライツビジネスは、今年7月から本格的に動画配信事業に取り組み、さまざまな配信プラットフォームへのセールスを積極的に行っています。両社とも販路を広げる一方で、商品不足が課題となっています。フロンティアグループの今後の課題は、ABCテレビの二次利用のみに頼らない、オリジナルコンテンツの開発です。

そしてアニメ事業以外で、収益をもっと拡大していきたいと考えています。海外ビジネスでは、中国市場への取り組みがこれからキーとなってまいります。

ハウジング事業収入(上期)

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当社グループの放送事業セグメントに次ぐ、大きな柱となっていますハウジング事業でございます。こちらは増収増益でございます。まずメインの住宅展示場事業は、一部で出店企業の撤退があるものの、新会場のオープン効果などで増収増益となりました。不動産販売は2棟の販売が成立し、業績に貢献しています。ハウジング事業全体としましては、今後も引き続き住宅展示場の新規開拓、HDC事業のテコ入れに加え、新規事業開発などの検討も進めてまいりたいと思っています。

グループ成長ビジョン 「連結売上1000億円、経常利益率8%」①

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では、ここからは今後の話になります。当社グループは今、長期のビジョンとしまして、「連結売上高1,000億円、経常利益率8パーセント」という成長ビジョンに向け、「IP(知的財産)起点(放送も含む)のマネタイズ展開」に軸足を移そうと考えています。こちらは我々が目指すビジネスの構造をイメージしたものでございます。この転換を確実なものとするために、200億円の投資枠を使い、積極的に投資してまいりたいと考えています。

グループ成長ビジョン 「連結売上1000億円、経常利益率8%」②

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その200億円の投資枠のアロケーションとして、イメージでございますが、大きくはM&A、国内外コンテンツへの投融資、ベンチャー投資。この3つの分野と考えています。M&Aでは、グループ会社各社の事業の補強、あるいは新事業領域が対象となっています。国内外のコンテンツへの投融資では、例えば製作委員会、あるいは共同制作などの出資・投資などを考えています。

そしてベンチャー投資でございますが、ABCドリームベンチャーズが行ってきた1号ファンドを、間もなく終えようとしていまして。バジェットをさらに増やして、2号ファンドを間もなく立ち上げたいと考えております。こちらは当社グループとシナジーのあるベンチャー投資を重点にやってまいりたいと思っております。

この資金となる200億円につきましては、当社の資本コストを意識しながら資金調達なども考えてまいりたいと思っております。

今後の取り組み:コンテンツ・メディア出資、配信事業強化

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次ですが、グループ各社の今後の取り組みでございます。グループ各社でIP事業をリードしているのが、先ほども申しましたABCフロンティアグループでございます。

好調なABCアニメーションは、深夜アニメの海外販売により力を入れると同時に、次年度以降も国内外に向けた新規コンテンツの開発、出資への取り組みを続けていっております。

ABCフロンティアホールディングスは、新規事業開発として、動画メディア「LYKKE」を立ち上げました。7月からの4ヶ月で、登録者数がすでに17万人を超えております。

また、今後の成長が期待されるeスポーツ関連事業につきましても、現在選手のマネジメント、企画、映像制作、ライブ配信などにすでに着手しております。

ABCライツビジネスは、テレビ社から移管された過去に放送した番組のアーカイブ配信事業に力を入れております。

下期は、現在放送中のローカル深夜ドラマを「TSUTAYA TV」への独占配信という大きなビジネスを成立させることに成功いたしました。

今後のグループ各社の取り組み

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その他、グループ各社も新規コンテンツの開発に取り組んでまいります。スカイ・エーは、この9月からバブリーダンスで話題になりました高校ダンス部選手権の中継を開始いたします。それから、11月からはeスポーツの中継を開始いたします。また、世界のトップ選手が集う卓球のTリーグも放送してまいります。

朝日放送ラジオ社でございますが、若い層を取り込むために動画配信のニコ生やLIVE LINEや、SNSと連動した番組を制作するなど、リーチメディアとしての価値向上に取り組んでまいります。

その他、コンテンツメーカーとしての機能を強化するべく、グループ会社の制作力、技術力を高め、グループ外からの受注体制も強化してまいりたいと思っております。

連結業績見通し(通期)

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それでは当期の連結業績の通期の見通しでございます。売上高810億円、営業利益27億円、経常利益30億円、親会社株主に帰属する当期純利益27億円ということで、予想は変更しておりません。本当はもう少し強い数字が出せればと思ったのですが、スポット収益がまだ不透明でございますので、このように据え置きとなりました。

セグメント別業績見通し(通期)

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セグメント別の見通しはご覧のとおりでございます。こちらも利益は前年度からは減っております。

テレビ以外の放送事業収入見通し(通期)

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その次ですが、テレビ以外の放送事業収入の見通しでございます。上期の業績を加味して、一部修正しております。これで見ますと、黒い折れ線のABCフロンティアホールディングスは下期も大きく伸びる見込みで、年間で20億円を目標に、現在増収を目指しております。

オレンジ(のライン)は通販事業でございますが、こちらもストレッチを効かせ、前年比でトータルしますと5億円近い増収を目指しております。

配当について

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最後に、配当について申し上げます。5月に発表した数字からは変更はございません。安定的な配当を目指すという基本方針に基づきまして、当期の配当予想は年間20円としております。

以上、当期の業績および配当についてご説明いたしました。

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