さまざまなところで疎まれることも多い、小さい子どもを連れての外出や施設の利用。電車内や公共施設での子連れでの振る舞いなどは、SNSなどでもたびたび話題に上りますよね。

中でも、特に美術館のような「静かに過ごすのがマナー」というようなところでは、子連れ客に対して厳しい意見も多いようです。

子連れで美術館は迷惑?

美術館に子連れで来場することについて、

「子どもが大きな声で騒いでいるのは迷惑だし、それを叱らない親には腹が立つ」
「美術がわからない子どもを連れて行くのは親のエゴ」

といった意見が多いようです。

また、話題の展覧会などで、混んでいる会場内を、ベビーカーを押しながら鑑賞する人に対しても、「目を疑った」「常識はずれ」といった困惑と非難の声が上がっています。

作品を壊した子の親に請求1400万円!?

また、マナーの話にとどまらず、「作品保護」の点から子どもの来館に否定的な人もいます。

美術館で展示される作品の多くは劣化を防ぐため、触ることが禁止されていますが、小さな子どもだとそれが理解できず、つい触ってしまうこともあります。

「美術館で子どもが追いかけっこをしていてはらはらした」と作品や子どもを案ずる人もいます。実際、2018年6月には、コミュニティーセンターで展示されていた美術品を壊した子どもの親に約1400万円が請求される、という事件もありました。

アートを楽しむ権利は子どもにも

しかしながら、こういった批判に対して、

「子どもがぐずる声よりも、大人が作品の前で話す声のほうがうるさい」
「親がちゃんと見てさえいれば問題ない」

といった反論もあります。「子どもを芸術などの文化に触れさせてやりたい」と思う親も少なくないようです。また、

「たとえそのとき美術がわからなくても、小さいころにそういったものに触れられたことが大きな財産になることもある」
「わからないからといって、美術を楽しめないわけではない」
「逆に、大人はみんな美術作品のことを本当に理解しているって言えるの?」

など、子どもが文化に触れる機会を奪うべきではないと考える人もいるようです。

育児中でも文化に触れたい

そもそも、美術館や博物館では、基本的に子どもの入場を制限していません。お店や特定のイベントなどでは、年齢制限を設けている場合もあり、「本当に問題なのであれば、年齢制限を設ければいいだけ」という意見も聞かれます。

近年では、美術館で子ども向けのイベントが行われたり、「会話OKの日」が設けられたりと、子連れでも気兼ねなく展示を楽しめるような企画が出てきてもいます。ベビーカーツアーや臨時託児所を設ける美術館もあるようです。

こうした対応に対し、

「騒いだりしないか心配でなかなか美術館には行けなかったが、安心して鑑賞できた」
「子育て中でも文化活動できて嬉しい」

といった声が上がっています。美術館の子どもに寛容な対応に感謝する人も少なくありません。

まだまだ知恵はある

親がマナーを守り、子どもをしっかり見ておくことは、美術館に限らず当たり前のことですが、残念ながらそれが守られていない状況も見られます。そうした配慮に欠けた一部の人たちの行動によって、子どもを美術館に連れて行くことに負い目を感じる人も多いようです。

一方で、美術館と同様に「子どもを連れて行きづらい施設」の一つに映画館がありますが、TOHOシネマズやMOVIXでは、赤ちゃんや小さい子と一緒に映画を観られる日が月に数日設けられており、子育て中の人々に人気となっています。

こういった映画館での成功事例を見ると、たとえば美術館でも子連れ向け企画をより多く実施するなどの「住み分け」で、多くの人がそれぞれ心地よく作品鑑賞をできる知恵はまだまだありそうです。ほかにも、子連れでもそうでなくても一緒に楽しめる企画のさらなる開拓など、今後もいろいろな知恵を出し合っていけるといいですね。

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