皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

雨の日が多くなっていますね。ジョギングなど屋外の運動ができないうえに、健康診断前に駆け込みの体重減を果たした私は、反動を心配しています。

さて、今回の記事のポイントは以下の通りです。

  • 日本株は、過去のコラムでも言及した膠着状態を抜け出し、上放れしたという評価も可能であると思われる。一方で、何がこの上昇を生んだかについての説明は容易ではなく、チャート的な観点からの上昇と考えることもできる。
  • 上昇の理由となったと思われる要因の候補を複数列挙した。この中では、9月末という時期的なものに注目した要因もあり、この観点からは、10月に入っても、今の水準が維持できるか、否かがポイントになる可能性がある。
  • 私自身は、「わが国の景気・企業収益の好調さが年末にかけ、しだいに織り込まれる」ことで株価が上昇するという見方を引き続きとっており、2018年に入り、売り越している海外投資家が買い越し基調に転じることを期待している。


2018年8月14日公開の『日経平均株価の膠着状態は大きな変動の前触れか?(その1)』において、日本株は膠着状態に陥っているが、その後には株価の大きな変動が起こるという見方もあることをご紹介しました。その上で、悪材料を示して、「これだけの悪材料にも関わらず、日経平均株価に一定の底堅さがあることは、私には、悪材料が顕在化しない場合、上値余地があることの表れと感じられる」という見方も、ご紹介させていただきました。

そして、『日経平均株価の膠着状態は大きな変動の前触れか?(その2)』においては、上ぶれのきっかけを、安倍総裁の3選決定、景気、企業収益の好調さに対する認識が高まることなどとご説明しました。

今回コラムの執筆時点の日経平均株価は、24,000円に近付いてきており、8月中旬の膠着相場から、上放れしたという評価も可能であると思われます。

しかし、何がこの上昇を生んだかについてのご説明は容易ではないように思います。トランプ米政権は17日、中国に対する制裁関税の第3弾を24日に発動すると発表しました。この発表と日経平均株価の上昇が重なったことから、第3弾の制裁措置に適用される関税率が、25%でなく、とりあえず10%に留まったことが好材料になったという見方もあるのですが、状況によっては25%まで引き上げる可能性があることから、あまり説得力のある上昇の理由にはならないように私には思えます。

したがって、(1)安倍総裁3選決定が直前になり市場に織り込まれたことや、(2)わが国の景気・企業収益の好調さに対する認識が緩やかながらも高まってきていること、(3)(まだ、不自由な暮らしをされている方は大勢おられると思いますが)台風や震災に関するニュースが一時期と比較して減少していることや、関西国際空港の復旧に代表されるような災害からの回復力が評価されている可能性などがあると考えています。

これ以外には、9月末に向けた配当取りの動き、また、もう少し皮肉な解釈をすれば、9月26日に予定されている日米首脳会談(通商問題で米国からの要求はあるのでしょうか?)など、重要日程を前にしたポジション調整という見方もありそうです。この観点からは、10月に入っても、今の水準が維持できるか、否かがポイントになりそうですね。

私自身は、「わが国の景気・企業収益の好調さが年末にかけ、しだいに織り込まれる」ことで株価が上昇するという見方を引き続きとっています。

投資家別売買動向をみると、2018年に入り、海外投資家は日本株を大幅に売り越しています(東証1部ベース)。

売買動向は、全体としてみると売り方と買い方の金額は一致しているので、海外投資家が日本株を売却/購入したからといって、その行動通りに株価が下落/上昇するかは分かりませんが、過去10年の年別の海外投資家の買い越し、売り越し額と日経平均株価の騰落率を比較すると2013年の大幅買い越しと日経平均株価の5割超の上昇は、非常に印象的です(図表1ご参照)。

私は、前述の通り、日本株が年末に向けて上昇するという見方をとっていますが、これまで売り越しであった海外投資家が買いに転じることにも期待したいと考えています。

図表1:海外投資家の売買動向と日経平均株価

出所:日本取引所グループのデータを基にアセットマネジメントOneが作成
*2018年の売買動向は、9月第一週まで、日経平均株価の騰落率は、9/20まで。
 売買動向は、東証一部現物の金額で、先物は含まない。

(2018年9月21日 15:00頃執筆)

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柏原 延行