今年のマーケットを振り返ると・・・

今年の株式市場がどういう動きをしてきたか、皆さんは記憶していらっしゃいますか? 米国株式市場の代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均で見ていくと、今年の1月に史上最高値を付けた後、2月前半にかけて(終値ベースで)10%近く下落をし、そこからは回復傾向ではあるものの、8月28日時点でも今年の1月高値を抜けて上昇することはできていません。

しかし、米国株式市場の総合的な株価指数の一つであるS&P500指数を見ると、少し様子が異なります。同指数は、今年1月26日に終値ベースでの最高値を付けた後、2月前半にかけて10%超下落し、そこから徐々に回復傾向・・・と、ここまでは上述のダウ平均と同じなのですが、S&P500指数は先週8月24日に今年1月につけた高値を抜き、史上最高値を更新してきています。

さらに、もう一つの指数であるナスダック指数は、1月高値から下落した後、回復はより早く、3月、6月、7月とそれぞれの時点での史上最高値を更新している上、先週24日も新高値をつけて史上最高値を更新しているのです。

このまま上昇は続くのか?

今年の株式相場は、米国経済の拡大期が今年か来年前半には終了してしまう、いわゆる「ピークアウト」観測に加え、米FRBが断続的に政策金利を引き上げる中で景気の腰が折れてしまうという懸念が、株価の先行きを不透明にしてきました。

今年1月の株価の調整にしても、税制改革や規制緩和が大きく進展する一方で、先行きへの悲観的な見方のほうが強まったことが背景にありました。その上、米中貿易摩擦への懸念や米ドル金利の上昇による新興国市場の混乱、シリアでの地政学的なリスクの高まりやトルコリラ下落など、問題が山積していることは事実で、これらが相場の上昇を抑える要因であることは事実でしょう。

しかし、世界のGDPの4分の1を占める米国経済が引き続き堅調な成長を維持していることや、史上最高水準にある主要企業の業績好調には陰りが見えていないことは忘れてはならないでしょう。そして、トランプ政権の目玉政策である税制改革は実現しており、米国経済を後押しする要因であることと、規制緩和が中小型株を中心に恩恵をもたらすとの観測が強まっていることも見逃してはならないでしょう。

2月の株価調整から時間はかかりましたが、米国株式市場の上昇はまだ続いていると見ておくべき、というのが筆者の見方です。

さて、先週24日にはパウエルFRB議長の講演がありました。パウエル議長も、「経済は力強く、インフレはターゲットである2%水準にあり、大半の求職者は職を見つけることができる状況は続いている」として、米国経済の堅調ぶりをコメントしています。

そして、トランプ大統領によるFRBの利上げ継続姿勢への批判めいた発言に対しても、「所得や雇用の力強い伸びが継続すれば、インフレ圧力を抑制するために一段の着実な利上げは最善の方策」であるとして、利上げ継続を示唆し、独自の判断による金融政策の展開を宣言しています。

次回の9月27日と12月のFOMCで利上げが実施されることを市場は織り込んでいます。今週、来週と主要経済指標が市場予想に沿ったものであれば、株式市場は経済の堅調ぶりに再び注目して、じり高となるのではないかと予想しています。また、為替市場でも、米ドル金利の上昇をふまえて米ドルが買われやすい状況は継続すると予想しています。

ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク 長谷川 建一