国際分散投資で3%運用

これまでのコラムでたびたび「使いながら運用する」時期の資産管理は“4%引き出しと3%運用”と紹介してきた。そのたびに「4%の引き出し率は自分で決められるが、運用収益率3%は実際に可能か」という質問をよく受ける。

記事末のグラフは、過去20年間の4資産分散投資の実績。国内株式、海外株式、国内債券、海外債券の指数に4分の1ずつ投資をして、これを毎月リバランスした結果を見ると、2017年12月末までの20年間では、1万円で投資した金額が22,779.07円になり、年率で換算すると4.1%を達成していたことがわかる。

長期で分散することで3%運用はそれほど難しいものではないことがわかるだろう。もちろん、現役時代の積立投資であればさらに収益率を高くすることも可能になる。

2つの罠―手数料と税金

ただ、この指数ベースの議論には手数料と税金が考慮されていない。個人投資にとっては、この2つのコストを考慮したうえで3%運用ができるかどうかを考える必要があろう。

運用コストや販売コストが安い投資信託への人気が高まっていることは、こうした流れを反映している。ただ、最終的には投資はネットベースで運用収益が上がっているかどうかが大切なので、手数料が安くても運用収益が上がらなければ意味がない。投資信託の基準価額は信託報酬を控除した後の価格で表示されるので、これをベースに考えることが大切になる。

ところで、モーニングスター社の投資検索サイトを使って、10年以上の運用実績のある1,227ファンドの過去10年の基準価額ベースの運用収益率を分析すると、94.5%のファンドが年率換算でプラスの収益をもたらし、67.4%のファンドが年率3%以上の収益率をもたらしていたことがわかる(2018年4月7日現在)。意外に年率3%の収益率は難しいことではないことがわかるだろう。

一方、税金は売却益や配当益に20.315%の税率で課税される。そのため3%の収益率を達成しても課税分を差し引けば、手取りは2.39%となる。

この課税分を免除できるのが、このところ進んできた非課税投資制度だ。2014年から始まった一般NISA(少額投資非課税制度)、2016年から始まったジュニアNISA、2017年から加入者の範囲が広がったiDeCo((個人型確定拠出年金)、2018年からスタートしたつみたてNISAなど非課税投資を可能にする制度が広がっている。

日本に居住するすべての人が何らかの非課税制度を選択して使えるようになったことは重要な点だ。こうした制度は使うに越したことはないが、iDeCoが60歳までしか加入できない点や、一般NISA の非課税期間が5年間で年間投資上限額が120万円であること、つみたてNISAは非課税期間が20年間で年額上限40万円と設定されていること等、それぞれに特徴があり、使い方を十分に検討する必要がある。

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史