3. 65歳以上「無職の夫婦世帯」家計の支出はいくら?

前章では、老後の主な収入源となる「年金」の受給額について説明をしていきましたが、果たして年金受給だけで老後の生活はしていけるのでしょうか。

「家計調査報告 家計収支編 2021年(令和3年)平均結果の概要」の調査データによると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支は下記の結果になりました。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支をみると、実収入は23万6576円に対して、自由に使える可処分所得は20万5911円となりました。

一方で消費支出は22万4436円となっており、「1万8525円」赤字になっているのがわかります。

なお、上記の内訳の「住居費」は、持ち家世帯を前提としていることから費用が低く設定されているため、賃貸住宅に住む世帯の場合は、さらにプラスでお金がかかるでしょう。

また、持ち家世帯であっても、経年劣化による家の修繕費が突発的に必要になるケースもあるため、突然の大きな出費に備えておく必要があります。

4. 65歳以上「無職の夫婦世帯」が必要な老後資金はどのくらいか

前章では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支において、毎月「1万8525円」の赤字が発生することがわかりました。

では、65歳で現役を引退して老後生活を送る場合、上記の赤字分を補填するために、老後資金として必要な平均的な費用はいくらになるのでしょうか。

厚生労働省の公表した「簡易生命表」によると、男女の平均寿命は下記の結果となっています。

  • 男性:81.47年
  • 女性:87.57年

上記を参考に、仮に65歳から老後生活を始め寿命を全うした場合、約16年〜22年が老後期間となります。

その場合に不足する金額は、単純計算で「約355万〜489万円」となります。

また、仮に100歳まで生きることを想定した場合は、約778万円が不足金額となります。

明確な寿命は誰にも分からないため、老後資金を考えるうえでは余裕をもった資金準備が大切であり、上記の不足金額よりも少し多めに貯蓄しておけると良いでしょう。

なお、上記の不足金額はあくまでも平均的な支出の赤字分のみを補填するための費用であり、実際はここに「介護費用」や「ケガ・病気にかかる費用」なども必要になります。

介護保険や医療保険を利用する場合でも自己負担額はかかってくるため、「いざという時」を想定して、老後資金の貯蓄をしておくことをおすすめします。

5. 老後に必要な費用は早めに見直しておこう

本記事では、65歳以上「無職の夫婦世帯」における、平均貯蓄・年金受給額・平均支出について詳しく解説していました。

老後を見据えて貯蓄をしようと思っていても、家のローンや子どもの教育費などが現役時代は優先になってしまうため、実際に老後資金を準備し始めるのは50歳代以降という世帯も少なくありません。

年金だけでは生活支出をまかなえない可能性が高く、老後に必要な費用は意外とかかるため、早い段階から老後資金の準備をしておくことが大切となります。

まずは、自分が受け取れる年金額や老後の生活費用をシミュレーションし少額からでも、老後のための貯蓄・資産運用を始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

太田 彩子