先日、セブンイレブンとJTBが共同で、民泊の鍵の受け渡しやチェックイン業務を代行する機器の整備を行うと発表しました。宿泊者はコンビニに設置された端末に自身のパスポート情報を登録することで、民泊の鍵を受け取ることができる、というサービスです。同様の機器はローソンやファミリーマートでも設置が始まっており、鍵の受け渡しなどにおける宿泊者と物件オーナー双方の負担を軽減する狙いです。

こうした動きの背景には、増加する外国人観光客や2020年に控えた東京オリンピックなどがありますが、今年6月から施行される「民泊新法」もその要因のひとつと言えるでしょう。より身近になってきた民泊は、われわれにどういった影響を及ぼすのでしょうか。

近隣とのトラブルの温床

これまで、民泊を営業するためには「旅館業法」の許可が必要でした。そして、この許可がないまま営業されている違法の民泊、通称「ヤミ民泊」は、近隣住民とのトラブルの温床として社会問題になっていました。しばしば挙げられるのが、騒音トラブル。防音設備が整っていない環境で、夜遅くまでベランダや路上で騒いだり音楽を流したりする外国人観光客に辟易する住民はかなり多いようです。

そうした事態を健全化しようと成立したのが「民泊新法」です。各自治体に届け出れば誰でも民泊を運営できる、というもので、そのハードルは旅館業法よりもかなり低く、空き家・空き部屋を持て余している人なども簡単に合法民泊を営業できます。「民泊運営者を行政が把握することで、ルールを守らない民泊を取り締まりやすくする」というのが狙いのようです。

2月には大阪で殺人事件も

この民泊新法の施行を前に、各自治体では2018年3月15日から届け出を受け付けています。しかし、大手民泊仲介サイト上で登録されている民泊の数は実に6万軒にも上りますが、一方で各自治体に届け出があった物件は約1カ月でわずか232軒でした。

また、そもそも明確な規則のないまま民泊を解禁することを疑問視する人も少なくありません。届け出開始前の2月には、大阪のヤミ民泊で殺人事件が起こったことなどを受け、「このままでは外国人観光客の無法地帯となってしまうのでは」と危惧する声もあります。その他にも、繁華街やホテル街ではなく住宅街で見知らぬ人が増えることへの不安感も拭いきれません。加えて、マンションなどの集合住宅では、「民泊の宿泊者は、住民が支払った共用部の維持管理費にただ乗りしていることになるのでは」といった不満もあるようです。

「健全な民泊」は定着するか

こういった不安を解消するには、民泊運営者が適切に民泊を管理することが重要です。たとえば民泊には、利用者が運営者を介さず他の利用者に物件を貸す「又貸し」の問題があります。民泊利用者が「又貸し」をビジネス化している問題は、民泊運営者にも大きな原因があると言えるでしょう。

また、冒頭のコンビニでのセルフチェックイン機や、テレビ電話などでの遠隔で行う宿泊者本人確認も、場合によっては法の抜け穴となる可能性もあります。

6月の民泊新法施行が目前に迫っている民泊。今後ひとつの健全なビジネススタイルとして確立するのかどうか、これからの動きに注目したいところです。

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