季節を味わうオープンカー

マイカーを複数台なんとか維持できるだけの余裕が持ててからの十数年、組み合わせは変われども、常にオープンになるクルマを手元に置くようにしている。

もともとS2000とコペンの2台のオープンを楽しんでいたが、S2000は息子の転勤と共に名古屋に連れていかれてしまったので、いよいよこのコペンが私とかみさんにとっての唯一のお出かけオープンカーとなってしまった。

このコペン、そもそも軽自動車規格なので、高速を使ってのロングドライブは五十路を超えたカラダにはかなりこたえる。また、5速のマニュアルミッション車なので、さすがに渋滞の中をトロトロ走るのはストレスが溜まってしまう。

しかしながら、自宅のある横浜大倉山から下道(したみち)を使って、鎌倉、葉山、逗子、三浦、三崎などへ美味しい地物のお刺身を食べに行くような時には、行き帰りの道すがらの景色や緑の匂い、風の音や空の色・・・季節を感じるには最高のクルマになってくれる。

新緑から初夏の季節にかけての季節は確かに屋根を開けてのドライブには気持ちいい。緑の匂いをいっぱいに吸い込んで、鮮やかな緑の葉の間からさんさんと降りそそぐお日様を浴びながら走っていると、なんだか元気が湧いてくるような感覚を覚える。

でも私は冬のオープンドライブが一番好きだ。

空の青さは1年でこの季節が一番青いと感じられる。朝から出かけるときはなおさらだ。放射冷却でグッと冷え込んだ朝なんか最高。顔に感じる風はキンキンに冷えていて、鼻から大きく吸い込めば一発でシャキッとなってしまう。

軽自動車のちっちゃいエンジンなのに、コペンの暖房機能はよくできている。シートヒーターのスイッチを入れ、ヒーターを足元から出せば、まずもって市街地走行程度のスピードでは寒さを感じることはない。晴れた日であれば足元のヒーターブロアはいらないくらいだ。

さすがにオープンのまま高速に乗ってしまうと、巻き込む風がキャビン内の暖かい空気を全部持って行ってしまうが・・・。

手を加えるのも楽しいコペン

そしてこのコペン、手を加えることがとても楽しいのである。中古車を見つけて買ってきた時には、さすがに純正のショックアブゾーバーはヘタっており、すぐに車高調を入れたが、元々のサスストロークを使うために純正の車高を保ち、ゴツゴツ感よりもしなやかな足回りの感触を楽しむためにタイヤは敢えてインチダウンした。

これによってロールは大きくなりコーナーの限界は下がったのであろうが、そもそも飛ばすためのクルマではないので街中でのゴツゴツぴょこぴょこした落ち着きのなさを抑えることを優先した。

また、エアコンの効きをよくするために考えられることをいろいろ施した。真夏に乗ることはあまりないクルマではあるが、通勤にもたまにはコペンを引っ張り出すこともあった。 ある日、昼間の幹線道路で渋滞にはまり、四方をトラックに囲まれる中、前方の景色が灼熱の路面から放たれる熱気でユラユラしている時には、さすがに軽自動車のエアコンの限界を感じた。

オープンにする際に大きく稼働する屋根部分はとても軽量に作られている反面、内装の天張りは薄っぺらい成型板であったため、夏の日差しの熱さがそのまま伝わり、天井の低いコペンのアタマ付近はかなりボーっとしてしまう。

そこで一度天張りの成型板を外し、ホームセンターで買ってきたアルミのレジャーシートを切り出してルーフと天張りの間に遮熱版として仕込んでみた。加えてエンジンルーム内にむき出しになっていたエアコンの配管に同じくレジャーシートを細く切って巻き付け、アルミテープでその上をぐるぐる巻いて熱伝導率を高めてみた。

ささやかな努力ではあったが、これがなんとかなりの効果を表し、吹き出し口から出てくる冷気で十分に冷えるようになった。

また旧型コペン乗りには共通の鬼門となっているのが、アクティブルーフのオープン/クローズの動作を司る電動ポンプの劣化。新車の時には20秒前後で動作を完了するのに、このポンプがくたびれてくると、ひどい場合は60秒近くかかったり、途中で人の手を借りないと動作を完了できなくなってくる。

資金に余裕のある方ならばディーラーでアッセンブリー交換となるのであろうが、ネットで調べてみると作動油を交換追加すれば改善するとのこと。これも大成功で数百円の作動油代でアクティブルーフはすっかり元気を取り戻し、それ以降何の問題もなく作動してくれている。

大きな故障もなく、いつも元気に走ってくれる我が家のコペン。もうあと少しで19万キロを超えるから、来年には20万キロの大台に到達することだろう。軽自動車のちっちゃなクルマなのであるが、コペンがもたらしてくれる楽しさはとっても大きいのである。

鈴木 琢也