2017年11月6日に行われた、ソフトバンクグループ株式会社2018年3月期第2四半期決算説明会・質疑応答の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役会長 兼 社長 孫正義 氏

米スプリントとTモバイルの合併交渉停止について

質問者1:日経コンピュータのオオワダと申します。(プレゼンテーション)最初のご説明にあった、(Tモバイルと)Sprintの合併交渉(停止)について聞きます。

経営権を持たなくても、一定の株を保有することで影響力をある程度確保したり、IoTの時代のインフラとして活用するということも可能だったのではないかと思います。そのあたりについて、もう少しお話をお聞かせいただけますでしょうか。

孫正義氏(以下、孫):やはりほぼ同格ぐらいの経営権ということであれば、それも1つの選択肢としてあったと思います。しかし、やはりやる以上は自らが意思決定に非常に大きな影響力を与えられるかたちでいくほうが、戦略的には良いのではないかと。

話し合いながらやることはできます。でも革命とか改革ということでいくと、非常に大きな腹をくくった経営の決定をしないといけない局面が、非常にたくさん出てくるわけです。

ソフトバンクの歴史を見ていただけば、話し合いで、多数決で決めるというよりも、やや強引に私が決めたという案件がたくさんあるわけです。

ですから、やや強引に物事を決めようと思ったら、それは将来のビジョンに対する強い思い込みとか、思い入れとか、決断とか、正しい・間違っているは置いておいて、決断をしなければいけないということになると、やはり経営権をしっかりと持っていたほうがいいだろうというのが、今回の判断だったということです。

質問者1:もう1つ。合併交渉が終わって「晴れやか」というポイントもありましたけれども、お話をうかがっていると、「交渉は今後もない」という感じにも聞こえました。携帯キャリア以外の、ケーブルテレビ会社ですとか、別の会社と経営権を握る前提で交渉していくということは、これからも探っていくことになるのでしょうか。

孫:まあ、なんでもありです。それはもう、時と場合と条件と相手と、いろんなことがありますから。ただ少なくとも、先ほども言ったように、Sprintは単独でも半期で2,000億円の営業利益を出せるところまできています。

6ヵ月で2,000億円です。悪くないですよね。単独でもそうやっていけるんだから、あせって物事を判断する必要はないだろうと。悪い条件まで食いつく必要もないだろうということで、少しゆったり構えようかなということです。

質問者1:ありがとうございます。

来日中のトランプ大統領との対話

質問者2:日本テレビのヒロシバと申します。今日はご説明ありがとうございました。

本筋から少し離れた質問で恐縮なんですけど、現在来日中のトランプ大統領についてです。

今日、日米の企業経営者らとの会合に、孫社長も同席されたということで、孫社長はこれまで何度かトランプ大統領とお会いしたことがあるということなのですが、今日の表情、様子、やりとりなどはいかがでしたでしょうか。

また今日の会合の中で、日本経済界に対する要望や意見など、何か孫社長から見て印象に残ったトランプ大統領の発言はありましたでしょうか。

孫:今日の朝、自らアメリカに工場の建設だとかを表明した会社の社長と、名前を呼んで握手して「よろしく頼む。非常にうれしいよ」ということを、それぞれトップ営業として名前を呼んで、自ら握手してやっていました。

大変なトップ営業と言いますか、さすがビジネスマン出身の初の大統領ということで、その意気込みを感じました。

その結果だろうと思いますけれども、GDPも最初予想したよりもはるかに大きく伸びていると。雇用も伸びていると。そして株価も史上最高になっているということで、大変上機嫌であったと思いました。

また、北朝鮮問題については、大変懸念しているということで、我が国の安倍首相と、非常にうまく連携をして、密接に情報のやりとりをしながら、意思の疎通をしっかりと図りながら行なっていると感じました。

ですから私は、日米関係が非常にうまくいってると感じました。その全体会合みたいなものが2時間ぐらいあって、そのあとで個別に話をさせていただきました。

その個別の話の中で、私が大統領に正式に就任する直前に、トランプタワーに行って一対一でお会いしましたけれども、そのときに50ビリオンドル、5兆円。そして5万人の雇用ということを、大統領就任祝いとして、私はコミットしますよと。

アメリカもがんばってくださいと言いに行きましたが、すでにこの1年間で半分近く我々は進展しましたということを報告しました。4年間で5兆円。5万人というコミットをしましたが、それを1年間ですでに半分まできましたと。

場合によっては、それを増額しようかと思っているということを申し上げましたら、これまた大変上機嫌で、「マサ、お前は素晴らしい!」と喜んでいただきました。そういう意味では、非常に良い関係にあるなと思いました。

質問者2:日本の経済界に対する要望とか意見とか、そういうものは、何か印象に残ったものはありますでしょうか。

孫:ぜひ、もっともっとアメリカに積極的に雇用や工場。そのような投資をやってほしいという印象でした。

質問者2:ありがとうございます。

質問者3:日経コンピュータのタナカと申します。

1点目は、IoTの時代に携帯電話が必要とのお話がSprintのお話であったと思います。世界のソフトバンクさんといたしましては、アジアや欧州などでも携帯電話会社を買収するご予定はございますでしょうか。

孫:なんでもありです。だけど順番とか重要性とか、あるいはその投資の機会だとか、そのようなことがありますので、今すぐ何か具体的な案件があるとかではありません。

情報革命における電力事業の位置づけ

質問者4:テレビ朝日のマツバラと申します。よろしくお願いいたします。

先ほどソフトバンクさんは情報革命企業であるというお話だったのですけれども、サウジで世界一の太陽光をやられて、2018年であるというところをうかがいまして、情報革命の中で電力の位置づけというのは、どのような位置づけなのでしょうか。

先ほどIoT、AIを使ってということだったのですけれども、もっとできることがあるということなのか、そのあたりをうかがいたいです。よろしくお願いいたします。

孫:もともときっかけは、3.11で大きな停電をしたと。電気が足りないということで、日本中で電力危機がありました。そのときに、実は我々の携帯事業者も全部電話がつながらなくなったわけです。

電気がないと電話はつながらないということを、あらためてそこで認識し、また原子力発電がどれほど危険なことなのかと、いろんな問題についても勉強し、危機感を持ちました。

そこで私は一時、ソフトバンクの社長をやめてでも、福島の問題を解決にいきたいと。電力についていきたいということで、役員会でも喧々諤々、大げんかになるようなことで。

「社長をやめたい」「やめちゃいけない」「いや、やめるんだ。俺は行くぞ、止めないでくれ」「いや、だめだ」と。ここにいる宮内(謙)も含め、大変な勢いで止められました。

そのときに、「じゃあ本業はあくまでも情報革命だけど、一部電力について、自然エネルギーについてやっていいか?」ということで、許可をもらって始めたと。

やってみると、やったなりにノウハウができてきて、これはちゃんと事業としても成り立つということがわかってきて、これは地球に生きている人間の1人として、また事業を行っている者の1人として、我々がノウハウを得た以上は、地球規模の問題解決に貢献したいということであります。

メインの事業ではありません。メインの事業ではないけれども、それでもやる以上は世界一をやりたいということです。

どうせやるのであればAIを使って、IoTを使って、従来の単なる電力会社とは違う、もっと最先端の、人に優しい、知恵を使った、自然に優しいものを、もっと今までよりも一番安い価格でできるようにということで、今、解決策が見えたと思っています。それをサウジから積極的に広げていきたいと思っているわけです。

質問者4:今おっしゃられたように、サウジアラビアから積極的に広げていくということは、他の地域でもここで培ったノウハウをまた広げていく、あるいは日本で、日本は電力会社が独占していますけれども、どこかに出資することもあるのでしょうか。

孫::日本は一番規制ががんじがらめで、難しい国ですね。いいとわかっていても、いろんな規制とか、書きものに書かれていない規制までいっぱいあって、なかなか難しい国ですね。

難しいからといって、愚痴を言っているだけでは進まないので、やれるところからやっていくということで、いずれは日本にも門戸が開かれれば、もっと積極的に関わっていくことになる可能性はあります。

今はやりたくても、電力会社がつないでくれないという意地悪をしていますから、これはもう単なる意地悪だと私は思いますけれどもね。

電力会社が今回経営に参画することによって、改めていかに日本の電力会社が言い訳で意地悪をしているかということは経営の中身からわかりますけどね。

どうして海外でできることが日本でできないんだと。それは日本の電力会社が村の意識で、村の理屈で閉め出しているからだと私は思いますが、どちらにしろ地球に貢献するのにやりやすいところから、たくさんやれるところからやっていくと。地球に貢献するのにはどこでやっても同じだと。

むしろ適材適所でたくさん太陽のあるところから、たくさんやれるところからやっていくということで、サウジアラビアやインドから言い訳を言わずに、地球に貢献するということでいきたいと思います。

iPhone Xが販売開始

質問者5:フリーランスのイシノと申します。

国内通信事業で2点うかがいたいと思います。先週11月3日にiPhone Xが発売されました。この反響や、今までにない3モデル構成で、(売上)比率がどうなっているか。前年と比べてどうか。iPhone Xに関する受け止め全般をうかがえればと思います。

2点目、主要回線の純増のところで、伸びていることはわかったのですけれども、これは比率としてはやはりY!モバイルが高いのでしょうか。

以上2点、お願いします。

孫:宮内が国内の通信を中心にやっておりますので、私は非常に伸びていると、一瞬で売り切れたと、Appleにもっとたくさん供給してほしいという状況ですが、詳細については宮内から。

宮内謙氏(以下、宮内):iPhone Xについては、非常に順調な滑り出しです。iPhone8の倍くらいの勢いです。

ただ、供給がそこまで追いついていない状況ですから、今iPhone7、iPhone8、iPhone Xと、この3つのブランドが足してあげると去年に比べて相当大幅な前年増になっていると思います。

あと主要回線は、実はもうスマホです。スマホが伸びております。Y!モバイルは、みなさん当然ご存知のように伸びています。

一方、ソフトバンクのブランドも、去年からいろんな、ギガモンスターとか、大容量の料金プランが非常にじわじわとヒットしてきまして、ソフトバンクブランドも非常に伸びている状況です。そのような状況だということでよろしいでしょうか。

ソフトバンクが有する周波数の強み

質問者6:野村証券のマスノです。

おおむねいろいろな事業の方向性が見えてきていると思うのですけれども、そこでSprintについておうかがいしたいと思います。

今、Sprintの状況はたぶんバランスシートにある周波数の価値と、損益計算書などのキャッシュ・フローの水準がまだ低水準で、バランスがとれていない、ミスマッチが起こっているということだと思います。

そうすると、いつバランスシートの(周波数の)価値がフローで具現化するかということなのですが、転換点が5Gだとすると、例えば2020年とか、2021年くらいのスパンの事業の捉え方なのかどうか。そのあたりをおうかがいしたいと思います。

孫:とにかく着実に毎年よくなっていくと。ある日突然なにかがよくなるのではなくて、1歩1歩着実によくなっていくということだと思います。

逆に言いますと、5Gになると、我々は最も有利な周波数である2.5GHz帯を一番たくさん持っていると。圧倒的に持っていると。世界のキャリアの中でもです。

それが大きく活かされるのが5Gだろうと。そういう意味では、先行きが楽しみであると思っています。これから数年でそれがやってくると思います。

米スプリントとTモバイルの合併交渉について

質問者7:日経新聞のスギモトです。1つ質問があります。やや変な質問なのですけれども、Sprintの再編についてです。

1つずっと疑問に思っていたことがありまして、あれは2月の決算会見だったと思います。孫社長自らアメリカのSprintの再編に乗り出していきたいということをおっしゃって「具体的に再編相手を」と問われるかたちではありますが、Tモバイルの名前を挙げられたかと思います。

これまでのソフトバンクの大きなM&Aを研究していくと、孫さんが最初に相手の名前を出したり、これからこういう再編を仕掛けるよと言ったことはなかったと思います。

いわゆる「孫の二乗の法則」の中でも、戦術のところで水面下でやるぞということを常々おっしゃっていたかと思うのですけれども、今回はなぜオープンなかたちで再編に乗り出していかれたのか。

うがった目で見ると、Tモバイルの名前を挙げることによって、他の会社からよりよい条件を引き出す、それによってTモバイルとの交渉を優位に進めると。そういう意図があったのかなとも思ったのですが、そのあたりの戦術、意図を教えていただけるとありがたいです。

孫:Tモバイルだけに限定したわけではなかったのですけれども、当然一番の本命としてTモバイルがあったということは事実です。

また、相手も我々と交渉をすると、開始したということを明確に言っておりましたので、相手も明確にしているという状況の中で、我々もそれをまったくノーコメントという状況よりは、お互いに、すでに3年前もやっていますし、そういう意味では関係者も多いし、隠していてもしょうがないだろうということもあったということです。

ですから、交渉相手としては真剣に、真正面からお互いに誠意をもって取り組んだということです。

ただし、最後まで譲れない線があったということで、今回そのような結論になったということです。

質問者7:ありがとうございます。

Uberへの出資計画

質問者8:ウォール・ストリート・ジャーナルのネギシと申します。

先ほど、買えない、独占的なものを持っているものをグループで持っていきたいとおっしゃいましたが、Uber(ウーバー)が持っている技術をどのように評価されているのでしょうか。

Uberとの交渉が一筋縄ではいかないようなところがありますが、やはりこれはアメリカのライドシェアリング市場ではなくてはならないものとお考えなのでしょうか。

孫:Uberは大変いいスタートを切った会社だと思います。

もちろん今、経営のゴタゴタで一時的に苦しんでいる部分はありますが、そうはいっても大変すばらしい会社だと思っています。

ただ一方、これも価格の問題だとか、条件の問題だとか、いろいろありますから、実際最終的に我々が投資するに至るかどうかは最後までわからないということです。今、前向きに検討はしていると。

でも、本当に投資をするのかについては、また「やるやる詐欺」とか言われても困りますので、はっきりと申し上げておきますけれども、最後までわからないと、あくまでも条件次第だと。

既存の株主から買う部分が大半になりますから、既存の株主がその価格では売りたくないといった時に、それ以上の価格では買いたくないという判断は十分ありえるということです。

もちろん、投資に入る前に取締役の数だとか、議決権についてだとか、あるいは買うプロセスだとか、そういうものについての条件も今、最終の詰めを行っていると。

その価格や条件次第においては、もう一方の事業者であるLyft(リフト)に我々の投資先を変更するということも十分ありえるということですね。最後まで、ギリギリまでわからないということです。

時間になりました。またさらに質問・ご意見のある方は我々の担当にもぜひ聞いていただきたいと思います。

ありがとうございました。

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