2023年5月29日に発表された、株式会社Kids Smile Holdings2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社Kids Smile Holdings 代表取締役 中西正文 氏
2023年3月期決算説明
中西正文氏:みなさま、こんにちは。あらためまして、中西です。2023年3月期の決算および今後の事業戦略に関してご説明させていただきます。
中期計画の最終決定版は、6月末に発表させていただく予定です。東証グロースという規則の中で、毎年、事業年度終了から3ヶ月以内に向こう3年間以上の中期計画をみなさまにお示しすることになっています。従前の方向性に変更はなく、新園の開設が中心ですので、不動産交渉の進捗状況などを踏まえて、最新の状況をお伝えできるようにということで、詳細を詰めているところです。本日はその方向性を、お話しできればと思っています。
会社概要
会社概要に関しては、ご存知の方も多いかと思います。従業員数は今年3月末で1,544人です。その他については、資料にてご確認ください。
監査等委員会設置会社への移行
2023年6月25日開催予定の第5回定時株主総会において、監査役会設置会社だったところから監査等委員会設置会社へ体制変更を図りたいと考えております。さらなるコーポレート・ガバナンスの充実ならびに会社としての意思決定をスピーディに進めることを目的としています。
あわせて、取締役ならびに監査等委員の候補者をすでに発表しています。全7名のうち、実際の執行に関わる取締役候補者は、社内取締役の3名に加えて社外取締役が1名です。また、監査等委員である取締役候補者を3名というかたちで構成しています。
役員の7人中、女性が3人と女性比率も比較的高いと思います。また、スライドに記載のとおり、新たな取締役候補として元フジテレビアナウンサーの内田恭子氏を選任予定であります。
事業別情報について
事業別情報についてです。後ほど数字を出しますが、補助金に頼らない民間のプレミアム教育サービス事業と、99.9パーセントが補助金である認可保育所事業の2つの事業に分かれています。この2つの事業の売上や利益構成について、十分にみなさまへお伝えするため、今回の決算発表会から事業区分別の情報でご説明します。
2023年3月期 決算ハイライト
2023年3月期の決算ハイライトです。すでに発表しているとおり、売上高は前期比11.3パーセント増で、特にプレミアム教育サービス事業が大きく進捗しています。
営業利益については、いよいよ黒字化が見えてきました。2023年3月期はマイナス3,000万円で、内訳はご覧のとおりです。プレミアム教育サービス事業は認可保育所事業よりも、売上に対する営業利益の増加率がまだ少ないのですが、これは新園の大型投資を含めているためです。
また、我々は施設整備型ですのでEBITDAを重要視しており、こちらも順調に進捗しています。加えて、運営施設数と在籍児童数も順調に増えています。
2023年3月期 通期業績
通期業績の内訳です。スライドの表では、プレミアム教育サービス事業について、すでに十分に充足率を満たしている既存施設と、現在投資中の施設の2つに分けてお示ししています。
数字からおわかりのように、認可保育所事業もプレミアム教育サービス事業も売上、利益ともに伸長しています。特にプレミアム教育サービス事業の既存施設は、認可保育事業の倍以上の利益率が出ています。
2023年3月期については、既存施設の売上および利益が少し下がっています。こちらの要因としては、新たに「キッズガーデン南青山」という非常に大型の施設が開業しました。近隣の園の約5倍から6倍の規模の施設で、順調に進捗しています。近隣の既存園からこちらに移る保護者の方もいた関係で、「キッズガーデン南青山」が大きく伸びている分、一時的に既存施設がややマイナスになりました。
しかし、「キッズガーデン南青山」も来年度には満席になる予定で進捗していますので、既存施設も利益率ならびに充足率が十分に上がっていくと見込んでいます。
2023年3月期 新規開設園
昨年度の新規開設園についてです。認可保育所としては東京都内に3施設を開設しました。プレミアム教育サービス事業としては、大型施設である「キッズガーデン南青山」、ならびに「キッズガーデン南青山」の施設内で学童としての小学部やスイミングスクールの運営を開始しました。
認可保育所事業
事業別のサマリーです。認可保育所事業においては、お子さまの数が減っているため、業界全体が厳しい状況です。特に私たちの園では、早い方では生後43日など、生後3ヶ月から6ヶ月で預けられる方が多いため、出生数がそのままお客さまの数になっており、充足率へダイレクトに影響します。
0歳児、1歳児、2歳児は、産休・育休を経て最初にお子さまを預ける年齢ですので、そこでしっかり通っていただけるかどうかが重要です。また、運営に際していただく補助金も、0歳児、1歳児、2歳児が非常に手厚くなっていますので、いかに充足率を満たせるかが重要になってきます。
スライド下部のグラフで示したように、4月時点では昨年に比べて昨年の充足率が少し悪かったのですが、その後どんどん増えて、少子化が進行しているにもかかわらず、最終的には一昨年よりも良い数字で終えたということがポイントです。
業界全体でお子さまの数が減っている中で、昨年よりも充足率が増加した理由としては、当社が教育プログラムを中心にコンテンツをしっかりと取り入れて「選びたくなる保育園」づくりに取り組んできたことが評価されたのだと認識しています。0歳児から2歳児のみならず、全体の充足率も昨年に比べて上昇しています。
プレミアム教育サービス事業
プレミアム教育サービス事業では、昨年の10月にスタートした大型施設「キッズガーデン南青山」の利用者が大変順調に増えています。こちらが全体の売上高・営業利益の大きな伸長に寄与していることが、1つ目のトピックスです。
2つ目は開設計画です。来月末に新しい中期計画を発表しますが、2024年3月期までは中期計画どおり、順調に開設が進んでいます。
3つ目に、私たちの今後の成長の柱として新サービスラインを開発しました。今年4月にその第1号を錦糸町に開設し、順調にスタートしています。
今後の主力にしていきたいと考えているグローバルスクールモデルの大きなポイントは、今はやはり英語教育に対するニーズが非常に高まっているため、英語がしっかり取り入れられているというところです。
もう1つは、今までの私たちの民間プレミアム教育サービスの園と比べて、かなりリーズナブルな料金設定にしています。具体的には半額以下で利用できる設定ですので、お越しいただけるお客さまの層が全体的に大きく広がります。一方で、利益率は今までと同様というモデルを開発しており、この4月から順調にスタートしています。こちらがプレミアム教育サービス事業においてみなさまに最もお伝えしたいところです。
運営施設数及び在籍児童数の推移
運営施設数および在籍児童数の推移です。グラフをご覧のとおり、運営施設数が増えるに伴って在籍児童数も順調に増えています。
今までは施設数が増えれば在籍児童数も増えていましたが、現在はやはり子どもの数が減っていますので、事業者によっては、施設が増えたからといって必ずしも児童数が増える時代ではなくなっています。私たちの教育プログラムをより一層充実させるよう、取り組んでいきたいと思っています。
2023年3月期 売上高・EBITDA推移
売上高ならびにEBITDAは、順調に増加しています。
2023年3月期 営業利益・経常利益推移
営業利益についてはマイナスが順調に減っています。すでに今期予想でお伝えしたとおり、今期は黒字化も図れる模様です。
経常利益については、当社の会計上、認可保育園の新規開設の補助金が営業外収益に大きく影響しており、経常利益に反映されます。そのため、認可保育園の新規開設数が減ったことで経常利益自体は減っているものの、当社本来の稼ぐ力である営業利益はどんどん進捗しています。
2023年3月期 PLサマリー
スライドにはPLサマリーを記載していますので、ご覧いただければと思います。
2023年3月期 BSサマリー
B/Sのサマリーです。今期の純資産も、昨年より増加しています。それに伴い、自己資本比率も昨年より高くなっています。
キッズガーデン グローバルスクール錦糸町
先ほど少しご説明した「キッズガーデン グローバルスクール錦糸町」は、今後の当社の民間教育サービスの主力ラインと考えているカテゴリです。英語と日本語のバイリンガル教育として、1日のうちで英語と日本語の教育を半分ずつ行います。
今までのプレミアム教育サービスの園でも、1日1時間の英語を学ぶようにしていました。認可を受けた保育園でも、園によっては週1回、1時間程度の英語を学ぶ場合もあるものの、こちらはグローバルスクールのバイリンガル教育です。子どもたちは大体1日8時間から9時間を園で過ごすことになるため、そのうちの半分は英語で、半分は日本語で構成しています。
ターゲットは、基本的には卒園時に日本の小学校に通うことを考えていらっしゃる方です。日本の小学校の学習指導要領の改定で、全国的に小学校3年生から英語に触れることになっているため、日本の小学校に通う方も、英語に対する関心が非常に高くなっており、そのような方々のニーズにしっかり応えられるテーマです。
加えて、先ほどご説明したようにリーズナブルな料金で通えるということで、今までのターゲット市場に比べると顧客層が約40倍以上に広がると考えています。
基本方針
今後の事業戦略の基本方針です。大きな方針は今までとまったく変わっていません。
認可保育所事業に関しては、基本的には今後の開設を予定していません、既存の園の充足率をしっかりと高め、安定的な収益によって会社に寄与できるような事業運営を行っていくことが認可保育所事業の方針です。
今後一番力を入れていくところはプレミアム教育サービス事業です。先ほどのグローバルスクールモデルを軸にしながら、新規の開設投資を加速していきたいと考えています。
また、グローバルスクールも含めて、それ以外のさまざまな民間教育サービスの新規需要を創出していくための企画開発や、そのための人員採用などの強化のために、投資を加速していくというのが基本方針です。
数値については、各年度で何園を開設し、それによって年度ごとの売上高、営業利益、経常利益はどうなっていくかを具体的に示す中期計画を、6月30日に発表する予定です。
当社グループが狙うターゲット市場の規模
先ほど、ターゲット市場が広くなるというお話しをしました。また、昨今の少子化の中で園を増やすことが果たして本当に可能なのか、子どもの数がどんどん減っているのではないかと思われるかもしれません。私どもも、その点をしっかり調査しました。
スライドの右側に記載のとおり、我々がターゲットとしている0歳から9歳の人口というのは、今後このまま少子化が進んでいくと今より大きく減少し、2030年には約785万人程度になることが予想されています。
その中で、我々がまず1つのターゲットとしているのは、年収1,000万円超のご家庭で、約194万人ほどです。加えて今回のモデルは、東京中心だけではなく全国の主力都市にも広げていきたいと考えています。その中で、年収800万円以上という方を目安にしていくと、今度は約321万人のターゲットがいます。
現在、我々の施設は認可保育所が70施設、民間のプレミアム教育サービスが10施設の計80施設ですが、仮に194万人をターゲットとして新たに100施設の新しい園を開設したとしても、100パーセント稼働に必要な児童数は9,000名から1万名であり、ターゲット市場全体の0.3パーセントから0.5パーセントのシェアに過ぎないということで、十分利用していただく余地はあるだろうと考えています。
世帯年収800万円以上というのをもう1つの区切りにしている理由は、私たちの園が、おおむね10万円を切るかたちでご利用いただけるためです。認可外保育施設を利用した場合の幼児教育無償化の補助金が全家庭に、今の段階でも3万7,000円支給されるとなると、おおむね5万円から6万円ぐらいで通えることになります。
年齢によるものの、認可保育園でも世帯年収が800万円を超えてくると、利用料が5万円から6万円程度になる地域もあります。そのような点から、800万円以上のご家庭でも、中身の良いものをしっかり作れば十分通っていただけると見込んでいます。
ターゲット市場及び展開エリアの拡大
現在の民間のプレミアム教育サービスについては先ほどお話ししたとおりです。都内の一部地域のみですが、新しい料金体系というかたちで広く展開していきたいと考えています。
グローバルスクールモデルの想定事業収支
今後グローバルスクールモデルを展開していく中で、我々が1つの目安となる想定事業収支として考えているのがご覧の表です。やはり不動産や場所との兼ね合いが出てくるため、施設の広さなどはまちまちになっています。
私たちの運営する一番小さな園の預かり人数は19名、今回の南青山にある一番大きな園は1日270名といったように、小さい園から大きな園まで運営をするノウハウを持っているため、その不動産の状況によって柔軟に対応していきたいと考えています。
状況によっては定員70名の園もあるかもしれませんし、その不動産の状況とニーズによっては定員200名の園になるかもしれないということで展開していくのですが、みなさまにわかりやすくということで、施設のお預かり人数が1日最大70名という園で考えた場合にご覧のような売上高、利益率になるというモデルです。
こちらのモデルは、実際にこの4月から開設した錦糸町の園のモデルとして、実際に実現可能な金額、収支のように見込んでいるところです。そのため、満席になれば利益率は28パーセントを達成できると思います。
ただし、スケール化をしていくということで、必ずしも全施設が満席になるわけではありません。満席な園もあれば、地域によってはそうではないところも出てくるということを考えた場合に、充足率が90パーセントを超えてくると、営業利益率は25パーセントを確保できるかと思います。
いずれにせよ、1つの認可保育事業を目安にして、倍以上の収益力のある園を展開していきたいと考えているところです。
2024年3月期 業績予想
今期の業績予想です。こちらの1つのトピックとして、ここ最近でようやく営業利益が黒字化できるということについて、みなさまにご説明します。
昨年発表した中期計画と来年度の数字を比較すると、利益のところが少し減っています。先ほども触れましたが、特に今年を含めた数年でしっかりと新規開設を行い、それを支える人材に積極的な投資を行い、その先に大きな利益が発生し、さらにその利益が毎年大きく増えていくようなモデルを作っていきたいということで、戦略的な投資をする期間にしていきたいと考えています。
そのため、次に発表する際に、今年も含めた手前の期間は当初発表している数字より利益が多少悪く出る可能性があるものの、それがどのような投資であり、その数年後に具体的にここまで数字がしっかり伸びるということをお示しして、「それであれば安心して投資ができる」という部分をお伝えしたいと考えています。
プレミアム教育サービス事業のラインナップ
こちらは以前もみなさまにご説明した当社の概況、プレミアム教育サービス事業のラインナップです。
プレミアム教育事業における事業領域
現在プレミアム教育事業において、どのような領域で展開をしているかという具体例をお示ししています。
キッズガーデン教育圏
私たちは、リソー教育グループと資本業務提携を締結しました。加えて、幼児教育を取り扱う100パーセント子会社の伸芽会と、取締役の相互派遣を行いながら連携を深め、教育サービスの向上を行います。さらに、お客さまの集客に努めるということで展開しています。
そのようなかたちで他社とアライアンスを組み、このようなキッズガーデン教育圏というものを、しっかり作っていきたいと考えているところです。
非認知能力育成への取り組み
先ほどから教育プログラムや教育コンテンツについてお話ししていますが、実際にどのような教育の考え方なのかというのを、少しこちらに記載しています。
一言で言うと非認知能力の育成ということで、決まった正解がないものに対して考える力や自分なりの答えを出せる力、また、他者と協同ができる、自分の気持ちを相手に伝え、相手の気持ちをしっかりくみ取って、チームで仕事ができるなどのスキルを身につける、そのような非認知能力の育成を一番大切なものと考え、全体のプログラムを作っているところです。
非認知能力育成を重視した教育プログラム
それを具体的にかたちにしたのが、このキッズプレッププログラムです。当社が伸芽会と一緒に共同開発したオリジナルのプログラムです。また、モンテッソーリ教育なども取り入れています。
また、現在は特に都内を中心として私立小学校の人気が非常に高まっています。いろいろな要素があるものの、非認知能力の育成やアクティブラーニングといったものに関しては、やはり現段階では公立小学校よりも私立小学校の教育内容のほうが一日の長があるということで、非常に人気が出ています。そのようなことも踏まえて、幼稚園受験や小学校受験のクラスなどもご提供しています。
私からの説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。