2023年5月19日に日本証券アナリスト協会主催で行われた、株式会社交換できるくん2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社交換できるくん 代表取締役社長 栗原将 氏
株式会社交換できるくん 取締役副社長 佐藤浩二 氏

2023年3月期4Q

栗原将氏(以下、栗原):交換できるくん社長の栗原です。本日はお忙しいところ説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。前期の業績等を含めてご説明させていただきます。よろしくお願いします。

普段は業績からご説明しているのですが、本日は事業内容のご紹介から始め、続いて前期の業績についてご説明し、今後の成長シナリオについてご説明します。

住宅設備機器の交換をネットで注文!

事業内容のご紹介です。当社は住宅設備機器の販売として、スライドの写真のような住宅設備機器の単品交換をメインに行っています。主にビルトイン食洗機やビルトインガスコンロ、ガス給湯器、蛇口、トイレなど、システムキッチンやユニットバスのように住宅設備機器の中でも大きなユニットではなく、そこに組み込まれる機器を中心に販売しています。

市場規模

リフォーム市場の規模は6.9兆円ですが、この中で住宅設備機器の市場規模は最大であり、2.8兆円の市場があります。その大半を占めるのが、当社が取り扱うトイレやガスコンロ、食洗機のような住宅設備機器です。

こちらは市場が大きい一方、普段みなさまが「どのような業者が販売しているのか?」「どのような業者に交換を頼もうか?」と迷われる部分の商材です。例えば、お風呂を丸ごとリフォームする場合は、リフォーム屋さんを探して見積りを取って探すようなイメージがあると思います。

しかし「トイレ単体だけを交換したい」、あるいは、より規模が小さく「蛇口の修理ではなく、レバー水栓1つだけを交換したい」という時は、「これはリフォーム屋さんに頼んでいいのか? それとも水道屋さんに頼めばいいのか?」と迷ってしまうと思います。また、どのような業者が存在するのかについてもあまり認識されていない分野です。

また、ガスコンロなどは、ご近所のガス業者さんを呼んでお話を聞く方が多い業界です。なかなか「簡単に」「手軽に」交換するというイメージがつかない分野だと思います。

さらに電気系の商品についてです。システムキッチンに組み込まれている食洗機は、よく家電屋さんで販売してあるようなキッチンの上に置いて使うものと違い、まず「どのようなものなら家のキッチンに取り付けできるのか」あるいは「交換できるのかどうかもわからない」という状況から始まります。どこに頼んだらいいのか、どうやって調べたらいいのか、そもそもイメージがつかないのです。

また、マンションでは管理会社さんなどに紹介を頼むこともあるかと思います。しかし、その場合も「見積りを取ってみたけど、価格が安いのかどうかわからない」ということで、多くの方は「高いよね」という認識があると思います。値段が張ってしまう商品にもかかわらず、どの業者さんに依頼すべきかという選択肢がない状況で交換するしかありません。このような中で、これらの商品が販売されているというのが実情です。

事業ドメイン

リフォーム市場にはいくつかの領域があります。スライド左の当社が「リフォーム領域」と名付けているところは、従来の「リフォーム」と言ってイメージされるリフォーム屋さんやリノベーション屋さんのような企業さんです。

一方で、一番右にあるリペア領域は、主に水道修理屋さんのような業者さんがメインです。今まではこの2つの領域しかなく、当社が「チェンジ領域」と名付けているものがない状態でした。「リフォーム屋さんに頼むほどでもないけど、水道屋さんに頼むのも少し違うかな」「別に緊急で直す必要はないよね」という時は、迷いながらどちらかに頼んでいたような状況だったのです。

そこで当社は、スライドの中央にある「チェンジ領域」を専業としています。当社は最初は水道修理業から始まり、その後にリフォーム事業と変化をした中で、「ビルトイン食洗機やビルトインガスコンロといった機器を専門で誠実に扱う会社が必要とされている」ということに気がつきまして、ここでマーケットを作り、そのリーダーになっていこうと考えています。

当社の平均単価は13万円から15万円となっていますが、この単価が今一番絶妙なところです。リフォーム屋さんに頼むと、まず営業担当が見積りに行き、カタログなどをお見せしながら商品説明を行います。また、お客さまのイメージとしては、いくつかの会社さんを呼んで依頼をかけ、決まったら注文書を書いて、工事日になると職人さんがやって来ます。

このようなことを行う場合、どうしても最低50万円くらいの単価がなければ人が動くコストを賄えません。つまり、リフォーム屋さんが15万円の工事で積極的に動くのは難しいのです。

チラシやホームページには、そのようなことも「やります」と書いてあることもありますが、実際にはそれでは採算が合いません。そこで、訪問した際に、例えば、修理するのがビルドインコンロであれば、「今キャンペーン中なので、システムキッチンを丸ごとリフォームしましょう」と提案されます。お客さまの自宅に訪問し、お客さまとの関係を作ることを目的に単品の交換が販売されているのです。

ただ、インターネットで住宅設備機器の情報が手に入るため、「単品をきちんと適正価格かつ十分な知識と品質をもって提供してほしい。それ以外のことは求めていない」というお客さまが当然増えてきている状況です。それにもかかわらず、そのようなお客さまのニーズに対応できる業者は今までありませんでした。

「水道修理屋さんに頼めばいいのではないか?」という方がいるかもしれませんが、水道修理屋さんの平均単価は3万円から4万円です。彼らは緊急で駆けつけ、その場で修理してくれます。その場で交換工事が可能なビジネスですので、何回も営業担当が行ったり来たりすることはありません。ただ、基本的なビジネスモデルが「行ってその場で修理・交換を行う」という最低限のもののため、低単価でも採算が合うのです。

また、リフォーム領域も含めた業界的慣習で、少し高い単価をお客さまに伝えることがあり、お客さまとトラブルになることが多々あります。その中で、お客さまの不信感・不満感が非常に溜まっている背景もあります。「単品の食洗機を交換したいけど、どこに頼んでいいかわからない」「きちんと工事してくれるところがどこだかわからない」「法外な金額を請求されたくない」というニーズがある中、このようなニーズに積極的に応えようとする業者がいない状態になっていました。

交換できるくんのサービス

そこで、当社は2001年からこのような社会課題の解決に取り組み始めました。ネット見積りを活用して、施工のみならずアフターサービスまで、ワンストップで一気通貫のビジネスを作っています。

Web完結型の見積りで交換工事のDX

業務の流れはスライドの表のとおりです。まず、お客さまに「交換できるくん」のWebサイトを見ていただきます。「交換できるくん」には、ECサイトとして情報をいろいろ載せています。お客さまが「買いたいな」「これに変えてみたいな」という機器を、まずインターネットのホームページで見つけたら、そこからボタン1つで見積りフォームへ飛べます。

見積りフォームでは、現在のお客さまの設置状況などを入力していただきます。写真を添付するなどのお手間はいただきますが、それさえ行っていただければ、そこから先に「営業担当が出張見積りのため何日に伺います」という段取りはなく、「お客さまのお宅のこの機器をこれに交換した場合は総額でいくらになります」と、最終価格までネット上で即座に提示できます。その後、365日24時間、お客さまの好きな時に発注をいただければ、あとは当社が工事にお伺いして管理するというモデルになっています。

13万円から15万円という単価でも収益を上げようとする場合、ネックになるのは、営業担当の人件費です。この業界では「出張見積りしないといけない」という商習慣がありますが、それをすると、業者としてはどうしても積極的に動けなくなってしまいます。そのため、当社はWeb見積りにしています。

お客さまの中には、「わざわざそれだけのために時間を作る、営業担当を家に上げて話を聞く」ということが煩わしく感じる方も多くいらっしゃいますし、コロナ禍で「なるべく人との接触機会を減らしたい」ということもあったと思います。

業者側としても、きちんと取り組むと採算が合わないことに対して、積極的に動くのは不可能です。ネットで見積りすることにより、営業担当の出張見積もりに要する時間を一気に短縮できるため、積極的にお見積りをいただくことが可能です。

商品の金額は1円単位までWeb上で計算しています。工事費にはいろいろな項目がありますが、ワンパッケージにして1つのシンプルな価格帯にしています。「商品代金はいくらで、工事にかかる金額はいくらですので、総額はいくらです」という見積り提示を行います。したがって、実際の工事の際にはそれ以上の追加金額はかかりません。非常にわかりやすいかたちでお客さまに見積りを提示しています。

住宅設備に特化したメガサイトを運営

当社の強みとして今のビジネスモデルを支えるのは「交換できるくん」のWebサイトです。こちらはオリジナルのコンテンツであり、現状のページ数は6万ページを超えています。また、ユーザーレビューは1.8万件、施工事例も2万5,000件となっています。多くの事例やいろいろなメーカーさんの比較、ユーザーが欲しいと思う有益な情報を日々アップし続け、このボリュームになっています。

みなさんは「交換」や「地名」のようなワードで検索されますので、これを「トイレ 交換」「蛇口 交換」「給湯器 交換」「食洗機 交換」など、当社が取り扱っている商材と掛け合わせ、ほぼすべてのワードで上位表示を獲得しています。

その結果、サイトの流入数は日々増加し続け、現状で年間1,500万超のPVをもつメガサイトに成長しています。これは今後も増え続けていく見込みです。

出張見積り無し!見積りはネット完結!

集客したお客さまのうち、ネット見積りをしていただいたお客さまには社内で営業担当がお見積りを返しますので、こちらも社内のノウハウとして蓄積し続けています。そのため、現地に訪問せずにネット見積りだけで正確な見積りのご提示が可能です。

この業界には、値引きや交渉などがあります。お客さまによっては、得する方もいれば、場合によっては損することもある商習慣です。

そこで当社は、基本的にはどなたにも同じ価格で提供したいと考えています。IKEAさんだったり無印良品さんのようなイメージで、高品質の商品・サービスをシンプルにワンプライスで提供していますので、お客さまによって価格を変えていないという安心感を訴求しています。

また、この業界に不信感をお持ちのお客さまがいらっしゃる要因として、「工事当日になっていろいろ追加が発生する」「後から追加請求をされる」ということが挙げられます。

現場で想定外の事態が起こることもありますが、当社では、ネットで購入してくださったお客さまをがっかりさせたくないという思いから、お見積りをお渡ししたお客さまの工事は追加請求代金をいただかずに、追加の費用負担は当社の中で吸収し、完結させています。

ネット見積り特有のノウハウや、現場も当社が担当することで蓄積してきたことを積み重ね、品質を担保してきました。

現状では、月間約8,000件の見積依頼をいただき、受注が4,000件くらいです。月間4,000件の工事を行って「取り付けられない」ということは、本当にほぼない状況です。

また、「取り付けられない」という現場も、ネット見積りであるということだけが要因ではありません。さまざまな要因がありますので、決して「ネット見積りだから品質が低い」ということではありません。当社は、この住宅設備機器の単品交換において圧倒的に高い品質を持っていると認識しています。

多能工化による生産性向上

さらに、当社はECやITでWeb見積りを出して終わりではなく、施工まで一気通貫で取り組んでいることも特徴です。さまざまな強みがあるのですが、そのうちの1つに「多能工化」があります。トイレの工事の場合、トイレの単品交換であればほぼ1人で行えます。しかし、「トイレの交換と同時にトイレの内装の張り替えを行いたい」「電気がなくてウォシュレットが付けられないため、電気工事をして最新の機能を持ったシステムトイレを取り付けたい」というご注文もあります。

従来は、最初に大工さんが下地を張り替え、次に内装屋さんが壁紙を張り、今度は設備屋さんが機器を取り付けて、最後に電気屋さんが電気に接続していました。

お家丸ごとのリフォームであればいいのですが、単品でリフォームパッケージを販売しようとすると、数時間で終わる工事のために、それだけのためにたくさんの職人さんが集まらなければなりません。

するとコストがかさみますし、いろいろな人が小さく狭いところに出入りするため、品質が下がります。また、工事までの時間がなくなるなど、いろいろなデメリットがあります。

そこで当社は、1人で設備工事・電気工事・大工工事・内装工事ができる職人を何十人と抱えています。彼らは朝1人で現場に行き、夕方までに何人分もの工事をその日に全ての工程を完成させることが可能です。これによって品質が上がり、工事の価格が抑えられます。工事に行く時間もすぐに調整して訪問することが可能です。

また、当社では、そういった工事を毎日専門に取り扱っています。そのため、品質がどんどん上がり、お客さまにも大変ご満足いただいています。

現場の施工パートナーさんにも単純にトイレを交換するよりいい金額を支払うことができます。お客さま、職人さん、当社と全員がハッピーになれるように作り上げてきました。

当社事業の強み

スライドには、当社の強みを記載しています。4つの強みをバラバラに持っているのではなく、それぞれの強みをぐるぐるとサイクルを回し連携させることで、成長サイクルを回転させ続けることで競争優位性を創出しています。

そのためには、まずWebサイトでの集客が必要です。Webサイトで有益な情報を提供し、お客さまに見ていただいた後、スピーディに見積りをご案内し、ご納得していただいた上で注文いただきます。ご注文の後も工事までは、まだお客さまには不安があるため、しっかりと施工まで責任をもってやり切り、何か起きた時のアフターサポートにも全力で取り組めるようにするために、専門部署を設け、すぐに自社で対応できる体制があります。

このようなことを続けることにより、施工事例が増え、お客さまの口コミやレビューも増えます。これらは結果的に媒体である「交換できるくん」のコンテンツとなり、Webサイトに反映します。そして、現場で起きるさまざまなことについても、社内でお客さま対応をしているインサイドセールス部門のノウハウとして蓄積して見積品質を向上し続けるという、成長のサイクルを持っています。

コスト優位性

我々のコスト優位性についてです。我々には、「一般的な工事屋さんやリフォーム屋さんが、我々の販売価格で工事すれば工事するほど赤字になる」というくらいのコスト競争力があります。

スライドのグラフの右側が、「交換できるくん」です。売上が伸びるにしたがってメーカーさんとの直取引も拡充し、また、ボリュームディスカウントをかけることで商品原価が下がっていきます。

施工の人件費については、多能工等で大幅な生産性の向上を図っています。

営業の人件費に関しては、営業担当に外に出張してもらうと、1日回っても数件が精一杯ですが、社内で営業するとその5倍、10倍の件数に対応できる方もいるため、コストが下がっています。

また、集客は自社サイトで行うため、効率よくSEOを効かせることが可能です。ネット広告もかけることにはなりますが、家電量販店のように大きなショールームを作って集客したり、折り込みチラシを配ったり、あるいは比較サイトに高いフィーを払い、お客さまの案件を買ったりといったことはしないため、広告費は競合他社に比べ大きく下がります。

この業界はどうしても利益率が低い業界です。しかし、我々には価格優位性があるため、ある程度の利益率を確保することが可能で、単なる安売りにはなりません。収益の構造を変え、住宅設備機器に特化することにより、競争力を新しく作り上げています。これが我々のコスト優位性です。

見積りの比較例

商材にもよりますが、イメージとしては他社の3分の2程度の価格です。「他で見積をとったらおたくのほうが半分くらい安かったよ」などといった声も毎日いただき、「安すぎるが大丈夫なの?」と言う方もたくさんいます。

さらに昨年10月からは、商品と工事について、無料で10年保証をつけています。安いだけではなく、商品の故障や工事の不具合による将来的な出費の心配もなくなり、よりお客さまに安心して買っていただきたいと考えています。

会社沿革

もともと当社は水道屋さんとして事業を始め、次にリフォーム事業を行いました。その中で、インターネットの普及があり、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などが始まったタイミングで自社サイトを作り、こつこつ取り組んできました。

当時はまだ、お客さまはインターネット通販で住宅設備機器を購入するのを不安に思われていましたし、最初はなかなか認知されませんでした。また、仕入れについても、メーカーさんがWeb上で販売することに抵抗感があり、商品を卸してくれないなど、課題が多々あった時代でした。いろいろなことを試行錯誤しながら、何とかこのビジネスを育ててきました。

2013年3月期くらいからは、他の業者さんがやりたがらないものの、非常にお客さまからのニーズがあり喜ばれる、この住宅設備機器の単品交換工事に特化しました。そこからは、直近の売上高60億円まで、堅調に事業を伸ばしてきました。

IT×住宅設備機器の単品交換市場の参入障壁

この事業への参入障壁についてです。我々は、約20年間、日々作り続けているWebサイトのノウハウや、お客さまからの大量のお見積り依頼に対し正確にご案内していくノウハウ、また、住宅設備機器の単品交換工事をしっかり施行して納めるノウハウの3つのノウハウを持っています。

Webだけに強かったり、工事だけに強かったりする事業者さんはいると思うのですが、それでは当社のサービスには勝てません。さらに、例えば本業が別にあり、住宅設備機器の単品交換工事事業も始めてみようと思っても、最初はクレームがたくさん発生してしまうと思います。そもそも集客も難しいため、やっぱりやめようとなります。当社のように事業を継続し続けることは難しいのです。

そのため、他の事業者から、提携したいという声も多くいただくフェーズになってきています。

連結業績の概要

2023年3月期通期業績についてご説明します。売上、利益ともに過去最高で着地しました。昨年は商品の供給の問題に加えて、メーカー各社が相次いで値上げをし、振り回されてしまいました。しかし、終わってみると、コロナ禍が始まって業績が横ばいになった一昨年に比べ、通常の成長に戻ってきたように思います。

後ほどご説明しますが、バックオーダーがかなり解消し、第3四半期、第4四半期に一気に商品が入ってきました。いかに早く工事を完了するかにフォーカスしたため、あえて新規受注を積極的には取りませんでした。第3四半期に続き、第4四半期も同じ状況となり、受注獲得のための広告費を抑制したままで終わっています。

売上高と売上総利益率の推移

第4四半期としての売上高は、過去最高となりました。売上総利益は、バックオーダーが多く残っていることを主原因とし、少し下がったままとなっていますが、バックオーダーは当期の第1四半期で解消する見通しなので、それとともに利益率も戻ってくると見込んでいます。

営業利益の推移

第4四半期の営業利益は5,500万円で着地しています。受注獲得のための広告費を抑制し、一過性の利益を出すことはもちろんできると思いますが、私どもに求められているのは一過性の利益を出すことではなく、その先の成長に向けての取り組みをしっかり行うことです。

通常はなかなか行えなかったテレビCMのテスト放映や、受注が急増した場合に備えての社内の体制作りを行いました。例えば、一部の業務をアウトソーシング(BPO)できれば、その部分のリソースを別のコア業務に回せるため、今後の成長を加速することができます。それに向けてBPOに取り組み、立ち上げています。

販管費の推移

BPOの立ち上げを第4四半期に急ピッチで行ったため、関連費用が一時的に発生していますが、今期以降生産性の向上に伴い費用が適正化していくことを見込んでいます。

受注の推移

受注の状況ですがこちらは工事完了を表す会計上の売上高とは異なり、お客さまから発注を受けた金額になります。昨年12月は広告をゼロにしたくらいの状況でしたので、受注は前年同期比73.4パーセントまで落ち込みました。これは、バックオーダーの解消を優先させるために新規受注獲得をあえて抑えたことによります。しかし、バックオーダーの解消が順調に進んだため、今後に向けてネット広告を少しずつ回復させていますので、3月の受注は前年同期比90パーセントまで上がってきています。

前年の3月はメーカーの値上げによる駆け込み需要が多くあり、3月の前年同期比での受注額は2月に比べ相対的に下がっているように見えますが、実質的な受注は、1月、2月、3月と、順調に回復してきております。

工事件数の推移

工事件数についても従前の傾向と変わりなく伸ばしています。

バックオーダーの状況

バックオーダーは直近では9,000万円となっており、残っているのは一部の特殊な給湯器のみとなっています。商品供給遅延が発生しているメーカーさんと協議する中で、6月くらいにはいったん納品される見通しが立ちましたので、バックオーダーに関する問題はここで終結させることができると考えています。

バランスシート

バランスシートについては大きな変動はありません。商品供給が不安定でメーカーさんの値上げもある中、在庫を一時的に厚くしているため、借り入れなどでバランスをとっている状況です。

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローに関しましても過年度と比較して特別な変化はありません。

ビジネスアップデート

直近のビジネスアップデートです。全社員の給料のベースアップを行い、昇給と合わせて、給与水準を平均7パーセント上げました。時代のニーズに合わせ、そのようなことに取り組んでいます。

また、いくつかBtoBのお話が進んでおり、その中で今回、「COSOJI」さんとアライアンスさせていただきました。さまざまな企業さんと新たな取り組みを始めようとしていましたが、ようやく商品が入ってくるようになったため、今期は積極的にそのような活動に取り組める状況になりました。

ビジネスアップデート(ESGへの取り組み)

機関投資家のみなさまと会話させていただく中で、「ESGへの取り組みの一環として、SDGsの部分をもうちょっとやっていくべきではないか」という声がありました。

それに対し、我々の企業規模やバランスを考え、このタイミングでしっかり取り組んでいこうと、Webサイトで宣言書を発表させていただきました。具体的なアクションプランは6月から検討を開始する予定です。

私どものビジネスは、もともとSDGsに関連する部分があります。例えば、省エネ機器を販売していることもそうです。また、営業担当が何回も出向いて工事を受注していたところがWebでできるようになりましたし、あるいは職人さんが車を何台も使い、大勢で現場に行っていた工事が1人でできるようにもなりました。

また、まだ使えるものを含めた大部分を壊して工事するのではなく、本当に交換が必要になった住宅設備機器だけを省エネの機器に取り替えること、さらに、取り外したものは金属が大半ですので、しっかりとリサイクルに回せることなども挙げられます。

私どもは機器単品を交換し、10年保証を付けるため、3年や5年で壊れ、すぐに交換することもありません。しっかりと長く使っていただけることを担保して販売しています。「時代のニーズとマッチしてるよね」という声もいただくため、訴求を含め、これからも積極的にESGやSDGsに対してに取り組んでいきたいと考えています。

通期業績予想

通期の業績計画は、売上高76億円に対し、営業利益3億1,000万円とさせていただきました。投資家の方々から「売上高及び利益の両方を着実に上げていってほしい」というお声はもちろん、「しばらく利益はいらないので、もっとアクセルを踏んでトップラインを上げてほしい」というお声など、さまざまなご期待があります。

そこで、我々として何が一番かを考えました。その結果、最低限、前年並みの利益は確保しながらもトップラインを上げていき、そこに向けてできるかぎりの投資も並行して事業活動を行っていくという方針を決定し、今回はこのような方針を踏まえた計画となっています。

よく「職人さんの数は大丈夫ですか?」とご質問いただきますが、先ほどお伝えしたように、コロナ禍もあり、体制の整備を着実に行いましたので、かなり整ってきています。直近の目線では、売上高で例えば100億円から150億円くらいの規模に対応するベースはあると考えています。

逆に、何が足りないのかいうと認知度です。今回の計画は、そもそも住宅設備機器がWebサイトで買えるということを知らない方に目を向け、積極的に認知度向上に向けた活動を行いたいという意思表示でもあります。

当期の見通し

今期は、新規商材として「個人向け壁掛けエアコン」の販売を開始しました。このために、まずは天井カセット型エアコンという、天井にビルトインする特殊なエアコンから始め、昨年は、壁掛けエアコンを賃貸向け、賃貸管理会社さん向けに限定して始めていました。

そして周到に準備し、ようやくtoC向けの販売を開始しました。始めたばかりですので、今期の売上への寄与は限定的にはなりますが、しっかりとノウハウを作り、来期以降は主力商材の1つになるように育てたいと考えています。

ブランド認知度向上による効果

新CMのテスト放送後にインターネットでブランド認知を調査した結果、「交換できるくん」の認知度は世間で5パーセントに満たない水準でした。いろいろな検証をし続けた結果、どれくらいのコストをかけてどれくらいのエリア戦略で取り組めば、認知度が向上していくのかが、ようやく見えてきました。

テレビCMは出した瞬間に反響が来る性質のものではありませんので、1年から2年くらいはどうしても忍耐の時期があると思っています。この時期を着実に乗り越えていくことでこの先の成長を支えていけると認識していますので、継続していきたいと考えています。

ブランド認知向上による効果としては、メーカーさんといろいろな取り組みも動き出しています。直接契約で商品を仕入れさせてもらうメーカーさんが増えています。また、メーカーさんは自前で施工することに関しては苦手ですので、施行パートナーや新しい販売方法を模索していますが、その業者さん探しに苦労しています。そのような状況の中で、我々の実績や品質はよい評価を受けています。

国内外問わず、さまざまなメーカーさんとの取り組みも始まっています。実際にはまだそれほど業績インパクトはありませんが、売上として着実に伸びてきているメーカーさんもありますので、今後も引き続きこのような活動に取り組んでいきます。

我々が行ったインターネット調査を見ると、メインターゲット層の40代後半から50代の方々では、住宅設備機器をインターネット完結で購入・取り付けできることを知っている人がそもそも少なく、ネットでポンと買おうと考える人は少ないようです。

さらに、「交換できるくん」を知っていると応えた人は4.8パーセントと、まだまだ本当に認知度は低い状況です。そのうち、名前は知っていてもサービス内容までは知らない方も多いため、「住宅設備機器の交換を検討する際に、一番最初にEC通販に相談する」と応えた人は、1.8パーセントとなっています。

この結果は、まだまだ当社の事業について成長の伸び代があることの証でもあります。例えば、知名度が50パーセントから60パーセントあれば、一般的に認知されている企業だと思います。当社の認知度がそのレベルになれば、今とはまたずいぶん違うスケール感で進めていけるだろうという手応えも感じています。このような認知度も指標にしながら、慎重かつ時には大胆に展開していきたいと思っています。

来期以降の成長シナリオ

意思表示のようなものですが、来期以降の成長シナリオです。売上高は今期の76億円から、なるべく早く売上高100億円に到達したいと考えています。そのために、この2年間で認知度の向上やシステム投資等にも積極的に取り組み、まずは売上成長重視で成長率31.6パーセントを目指します。この売上高を達成するための体制はすでに十分整っている状況です。

さらに、2026年3月期には成長率50.0パーセント超を目指します。これまで取り組んできた「交換できるくん」の事業が、このまま単純に50パーセント、60パーセント、100パーセントと成長すれば、それはそれでよいのですが、これからは周辺領域での新規事業や他の企業との業務シナジーの発見、M&Aなども視野に入れていきます。

コロナ禍で上場し、この2年間は商品供給の問題などに悩まされながら事業活動を行ってきましたが、これからはコロナ禍が終わって正常化していきますので、上場後に本来取り組みたかったことに取り組んでいきたいと考えています。

また、上場後のこの2年間で中核の人材を含めて今後の成長を担保するための経験豊かな方々が入ってきて、上場企業としての組織体制も整ってきましたので、成長スピードを加速させていきたいと思います。

成長に向けたシナリオ

スライドに記載のとおり、「ビジネスモデル確立」「次のステージを見据えた準備段階」は、着実に終えました。現在はいよいよ「成長を支える事業基盤構築」の段階に動き出しているところです。それを経て、「社会で存在感を示す企業体制」へと成長していきたいと考えています。

リフォーム市場の広大な市場機会

こちらはおなじみのスライドですが、リフォーム市場は緩やかに長期的な拡大が予測される市場です。

EC市場の規模拡大

また、我々は住宅設備機器市場の中で、EC専業企業としてずっと取り組んできています。EC化率は8パーセントまで上昇しており、今後も成長が見込まれます。リフォーム市場とEC市場の2つの後押しを受けながら、成長を加速させていきたいと思っています。

ご説明は以上となります。ありがとうございました。

質疑応答:成約率の推移について

質問者:御社のビジネスモデルを見ると、デジタルで見積りを取った後、お客さまが納得すれば注文に至るかたちだと思います。インフレが進んできている影響で、耐久消費財に対するスタンスがやや厳しくなり、財布の紐が固くなっている傾向もあるのではないかと思っていますが、成約率はどのように推移していますか?

栗原:成約率は、以前からお伝えしている水準とさほど変わっておらず、お見積もりいただいた方の約50パーセントの方に発注をいただいている状況です。消費動向を注視していますが、今のところ大きな変化はありません。

質疑応答:海外の住宅設備機器の取り扱いやターゲットについて

質問者:今期の見通しについて、国内外問わず複数のメーカーさんと協議されているとのお話でした。今後は海外のブランドやメーカーさんのものも取り扱っていく可能性がありますか? また、今期中に海外のブランドやメーカーの商品の取り扱いが開始される可能性はありますか?

栗原:海外の住宅設備機器については、新たに参入してくるというより、すでに日本である程度販売している海外の大手メーカーさんになりますので、今までも取り扱いはしていましたが、強化の一環として、海外の大手メーカーさんと新しい取り組みを増やしています。

実際、住宅設備機器では国産がシェアの大半を占めますので、海外は、一部のハイグレードの建物などに入っている商品のメーカーさんです。そのような領域には今まであまりリーチできていなかったため、今年以降に強化していきたいと考えています。

質問者:海外のブランドやメーカーの商品の取り扱いを開始する中でターゲットとする顧客層も少し変わってきますか?

栗原:海外の高級設備が入っているパターンは、持ち家と高級賃貸の2つがあるのですが、我々は現在、子会社を作ってtoBのビジネスを拡大しようとしています。高級賃貸に関しては、その取り組みの1つとしてさまざまなアプローチをかけている状況です。

また、最高級の国産品が売れるのが、もともとの我々の強みです。したがって、持ち家世帯に関しても顧客層が変わるというより、従来の顧客層を少し広げることによって、スムーズに取り込めると考えています。

質疑応答:法人向けの展開について

質問者:以前のご説明の中で、「これからは法人ビジネスの展開に力を入れる」というお話がありました。2023年3月期はどのように進捗しましたか? また、今期以降に中期的に業容を拡大させる中での法人ビジネスの位置づけを教えてください。

栗原:本件の管轄である、副社長の佐藤からご説明します。

佐藤浩二氏(以下、佐藤):佐藤です。法人ビジネスは順調に進んでおり、現在は、幅広く営業するというより、深く関係作りができそうな企業との取り組みに力を入れております。当社とビジネスへの考え方、相性の合う不動産管理会社さんを中心に、ある程度太く取引できるかたちを整えている段階です。

従来のサービスサイトにおいても法人向けをアピールしており、サイト経由で入ってくる法人のお客さまも増えてきています。また、法人向けのエアコンを開始し、サイト経由の法人の売上比重は前年度よりも伸びてきております。

下期に関しては、toCがややバックオーダーの解消優先になったため、法人向け営業もさほど積極的には展開できませんでした。今期に関しては、営業担当を採用して体制も強化しています。前半は仕込みが必要となりますが、今期の後半あたりから、しっかりと数字にも反映できてくるのではないかと思っています。

質疑応答:法人向けの売り上げ目標について

質問者:2025年3月期に売上高100億円を目指すというお話がありました。その時点で、法人ビジネスはどのくらいを目指していますか?

佐藤:法人ビジネスは、当社の売上の約10パーセントを占めることが1つ目のゴールです。将来的には、法人ビジネスが売上の約3割を確保できるようにしたいと考えています。

質疑応答:バックオーダーが消化できると利益率が戻る理由について

質問者:「バックオーダーが消化できたことで、今後は利益率が戻る」というお話がありましたが、その理由を教えてください。一般的には、受注残というかたちで残っており、施工が終れば売上になるため、通常の利益になるのではないかと思います。保証制度の開始に伴って販売価格も値上げ前の販売価格を保証するため、その間に上がってしまった原価分で利益率が下がるのでしょうか?

栗原:2022年10月1日から「全品無料10年保証」を開始しましたが、その前から商品供給不足は始まっていました。また、10月以降は資材高騰等があり、我々も工事費や商品など一部の価格をアジャストして利益をコントロールしてきました。しかしながら、保証開始前に販売した多数のお客さまに対して、10月をまたいでモノが入ってきた場合は、当時の価格のままで販売してきました。

さらに、当時は「延長保証サービス」を有料で販売していましたが、10月をまたいだお客さまに関してはキャンセルを受け付けました。そのようなお客さまのバックオーダーの工事分があり、利益率が低くなっていたことが主な要因です。

質問者:住宅設備の製品の値上げの影響も飲み込まれたのですか?

栗原:はい。そのとおりです。

質疑応答:施行のオペレーションについて

質問者:オペレーションについてですが、施工はどの程度自社で行っていますか? ほとんどアウトソーシングしている場合、認定制度やチェック制度などを社内で行っていますか?

栗原:説明が少し難しいのですが、社員は現状15名くらいしかおらず、残り100数十名は契約パートナーです。ただし、一般的にイメージする関係性の薄い事業パートナーではなく、我々の仕事を専任で行っている方がほとんどです。そのような方々としっかりコミュニケーションを取りながら、一緒に着実に品質を上げ続けています。

また、新しく入る方に関しては、さまざまなプログラムを用意して厳しくチェックしています。かなり狭い道をパスした方を一定期間研修し、それを通った方を採用するプロセスを踏んでいます。

したがって、関係性は社員ではありませんが、社員と同じようにこの会社を伸ばしていこうという意志を持って取り組んでいる方々が主なパートナーとなっています。

質問者:それは「給料および手当」に計上されていますか?

栗原:製造原価として計上されています。

質問者:何人くらいいますか?

栗原:現在該当する人数を正確に言いますと、124名です。

質問者:個人の大工さんと長年契約しているイメージですか? 

栗原:おっしゃるとおりです。10年や15年といったベテランの方もたくさんいます。

質疑応答:今後の成長率をけん引する主要因ついて

質問者:中長期の成長シナリオの中で、年率50パーセント以上の成長率を目指すということでした。テレビCMにかなり重点を置いているのではないかと感じましたが、何が成長ドライバーとして一番効いてきそうだと思っていますか? 

栗原:テレビCMは可能性としては大きいのですが、もちろん100パーセントではありません。0パーセントではないとは思いますが、どれくらいの影響があって実際にどうなるかは、今現在でははっきりとわかりません。

テレビCMによる影響を一定のところまで見込んだ上で、現状で我々が取り組もうとしているのは、周辺領域の新規事業やM&Aです。それらを実行すれば、年率50パーセント以上の成長率になると考えていますが、ひょっとしたらもっと上に行くかもしれません。

今までは「交換できるくん」というtoCのビジネスを大事に作ってきましたが、それをスケールする時期に来ています。成長に向けていろいろ動き、年率50パーセント以上の成長率を目指していきます。

質問者:つまり、オーガニックな成長に加えて、まだ内容を明かせない新規事業がかなり期待できそうですね。

栗原:はい。そう考えております。

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