2023年5月31日に発表された、株式会社久世2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社久世 代表取締役社長 久世真也 氏
頼れる食のパートナー
久世真也氏:みなさま、こんにちは。株式会社久世代表取締役の久世でございます。平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。本日は、2023年3月期の決算についてご説明いたします。
まず、私たちの事業ミッションについてです。「頼れる食のパートナー」という事業ミッションを念頭に、外食産業、中食産業のお客さまを中心に豊かで多様な食の提供に貢献できるよう尽力しています。
このたびのコロナ禍で、リモートワークの普及やさまざまな生活様式の変化など、私たちは大きな変化に見舞われました。ただし、「楽しく食べたい」「食を通じて人とつながりを持ちたい」といった本質的なニーズは変わらないと感じています。
また、今後は身近なぜいたくの時代であるとも感じており、食はもっとも身近なエンターテインメントであると捉えて、豊かで多様な食を支えていきます。
久世のビジネス
久世のビジネスについてお話しします。私たちは1934年の創業以来、外食産業、中食産業のお客さまを中心に食品卸売業を展開してきました。
当社グループは、中間流通業として多くの生産者や食品メーカーなどの仕入先のみなさま、約1万店の飲食店やホテルなどの外食産業のお客さま、お総菜やお弁当などの中食産業のお客さまへ商品と情報を機能でつなぐ役割を担ってきました。
コロナ禍も終焉に向かい、市場も回復。施策と行動の結果、黒字化を達成。
先ほどお伝えしたとおり、私たちの事業は外食産業、中食産業のお客さまが中心です。2023年3月期を総括すると、コロナ禍も終焉に向かい、市場が回復し、私たちの施策と行動、そしてお客さまやお取引先の方々によるご協力の結果、おかげさまで黒字化を達成することができました。
外部環境としては、ウィズコロナの浸透やコロナ禍の終わりが見え、街に多くの人出が戻るなど、社会活動の再開とともに市場も大きく回復しました。一方、円安やエネルギー価格の高止まりなどによる物価の高騰や、社会全般では人手不足などの課題が顕著になってきています。
このような環境の中、私たちの業績のポイントとして、外食市場の回復に伴う売上の増加、市場環境の変化に合わせた業態改革による新規顧客の獲得や海外輸出の伸長が挙げられます。それに加え、コスト管理を進め、粗利率の改善や損益分岐点の低減を進めてきました。
連結決算概要
2023年3月期の連結決算の概要についてご説明します。売上高は564億6,000万円、売上総利益は125億5,300万円、販売費及び一般管理費は117億1,000万円、営業利益は8億4,200万円、経常利益は9億円、親会社株主に帰属する当期純利益は8億3,200万円となりました。
先ほどお伝えしたとおり、外食産業においてはあらゆる制限が緩和され、市場が回復したことにより売上が増加したことに加え、中食、総菜業態などへの積極的な営業活動により、売上の伸長を図ってきました。また、グループ会社における輸出事業の伸長も寄与しています。
さらに、コスト管理による粗利率の改善や、物流拠点の統廃合・配送コースの見直しなど、物流を中心とした損益分岐点の低減を進めました。
このような活動の結果、おかげさまで増収増益を達成することができました。
売上高の増減要因(前期比)
売上高の増減要因です。市場の回復や仕入原価の高騰など外部要因に起因するものが103億7,300万円、営業活動の強化としてグループ各社で進めた新規開拓や輸出の伸長、プラスオン戦略の推進などによって31億1,700万円伸長しました。
一方で、お客さまの閉店や売上の失注などもあり、8億8,100万円減少しました。この結果、前期と比較して126億900万円の増加と大幅に回復し、連結売上高は564億6,000万円となりました。
営業利益の増減要因(前期比)
営業利益は、前期と比較して17億5,000万円改善しました。主な増減要因として、売上高が126億900万円増加したことにより27億2,900万円改善し、売上総利益の改善により3億1,400万円の利益を創出しました。
また、売上増加に伴い、物流費、人件費、その他経費といった販売管理費が約13億円増加したものの、すべてのコストを吸収し、8億4,200万円の営業利益を確保することができました。引き続きさらなる成長を目指し、売上の確保と生産性の向上に取り組んでいきます。
四半期別 売上・営業利益の推移
四半期ごとの売上・営業利益の推移についてご説明します。売上高については、通期ではコロナ禍前の約70パーセントまで回復しました。第3四半期と第4四半期では、約90パーセントまで回復してきています。
営業利益については、売上高の伸長と売上総利益の改善、コストの抑制効果の結果、利益が確保できる体質に改善が進んでいます。今後はインバウンド需要や法人の接待需要などの本格的な回復に備え、引き続き収益基盤を強固なものにしていきます。
連結貸借対照表
貸借対照表についてです。当期純利益を増加させたことに加え、昨年4月に国分グループ本社による第三者割当増資を行った結果、自己資本比率が15.7パーセントから21.4パーセントと、5.7ポイント回復しました。
有利子負債については、約15億円圧縮しました。引き続き、財務基盤も強固なものにしていきます。
連結キャッシュフロー計算書
連結キャッシュフロー計算書についてです。営業活動により20億600万円の増加、投資活動により4億9,900万円の減少、財務活動により8億5,100万円の減少となりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は42億1,500万円となっています。
2024年3月期連結業績予想
2024年3月期の連結業績予想について、売上高は625億円、営業利益は6億500万円、経常利益は6億2,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は5億8,000万円を計画しています。
売上高は増収となる見込みですが、昨今の原材料の高騰や人件費等のコストの上昇も予想されます。これまで収益改善を最優先に取り組み、コロナ禍で見送ってきた設備投資やさまざまな環境改善の施策など、今後の再成長に必要なコストを投じるため、増収減益の見込みとなっています。
株主還元
配当についてです。株主のみなさまのご期待に応えられていませんでしたが、2023年3月期はコロナ禍前と同水準の12円に復配することとなりました。今後はさらなる収益確保に努め、株主還元にも尽力していきます。
久世の役割
100周年に向けた長期ビジョンとして、今後の方向性をご説明します。私たちは「頼れる食のパートナー」をグループの事業ミッションに掲げています。外食産業や中食産業のみなさまへ多様で豊かな食の提供ができるよう、引き続き尽力していきます。
私たちはコロナ禍で行動制限を強いられましたが、社会活動が再開すると、町には多くの人出が見られます。人には自らの意思で自由に行動し、「新しいものを見たい、触れたい」「楽しい食を通じて人と相互理解を深めたい」という潜在的・本質的な欲求があると考えています。
また、私たちは長年にわたり、食を通じて人と人との信頼関係を構築してきました。食を通じたコミュニケーションはデジタル社会だからこそ必要であり、社会の基礎であるとも感じています。
そのような中、私たちは食を最も身近なエンターテインメントと捉え、豊かで多様な食を楽しめる社会の実現に貢献するとともに、事業としても効率的にお客さまに提供する役割を担っていきたいと思います。
100周年に向けた長期ビジョン
当社は来期に90周年を迎えます。約10年後の100周年、さらにはその先の時代を見据えた長期経営テーマとして、「持続可能で質的な成長」を図ることを掲げています。強い意思を持って時代の変化に対応していきたいと考えています。
この先の社会的な変化としては、物流業界における2024年問題や、AIなどを代表とする昨今のテクノロジーの進化、国内の顕著な人口減少やサステイナブル社会の到来など、過去に経験したことのない急激な変化が予想されています。
このようなさまざまな変化に対応しながら、100周年に向けた長期ビジョンの第1フェーズとなる、今期からの3ヶ年の最終年度においては、売上高660億円、営業利益13億円を目標とし、営業利益2パーセント以上を確保すべく、あらゆる施策に取り組んでいきます。
100周年に向けた長期ビジョン
今期から始まる第1フェーズでは、「成長への再スタート」をテーマに事業基盤の再構築を図ります。アフターコロナを経て、「持続可能で質的な成長」を目指し、新たな取り組みを進めていきます。
コロナ禍の振り返り
過去3年のコロナ禍を振り返りたいと思います。コロナ禍では、雇用を維持し事業を存続させることに注力しながら、「足元を立て直す」と「未来を創造する」を基本方針として取り組んできました。
足元を立て直す施策としては、大きく2つあります。1つ目は、損益分岐点の低減です。物流センターの統廃合や内製化の推進、配送コース見直しなどの物流施策のほか、商品集約や条件などの見直し、一部社員の出向などさまざまな施策に取り組んできました。
2つ目は、財務施策・信用補完です。先ほど財務面でお話ししたとおり、国分グループ本社への第三者割当増資や、日本政策投資銀行からの劣後ローンによる資金調達などを行ったことで信用補完してきました。
未来を創造する施策としては、EC事業・DX化の推進・商品開発・海外事業・グループシナジーの発揮など、5つの取り組みを進めてきました。未来を創造する施策の詳細については、後ほどご説明します。このような行動を積み重ねた結果、おかげさまで通期黒字を達成することができました。
コロナ禍を経た世の中の変化
今後の外部環境としては、新型コロナウイルスも収束し経済がより活性化すると、インバウンド需要や法人需要などの増加、観光レジャー産業の活性化などで外食産業がさらに回復することが予想されます。
しかし、外食産業のお客さまの中では人手不足や収益の向上、価値の向上など多くの課題が依然として残っています。私たちは「頼れる食のパートナー」として、引き続き外食産業のお客さまと一緒に課題を解決していかなければなりません。
第1フェーズの取り組み
そのため、関東集中・機能強化・プラスオンの3つの戦略を推進し、フードサービス・観光レジャー・中食惣菜市場の営業強化を図っていきたいと考えています。
未来を見据えた成長に必要不可欠な人財・物流・情報システムへの投資もしつつ、先ほどお話しした未来を創るための5つの施策であるEC事業・DX化の推進・商品開発・海外事業・グループシナジーに取り組んでいきたいと考えています。
3つの基本戦略
3つの基本戦略についてご説明します。1つ目は関東集中です。顧客満足と収益の向上を目的として、創業の地であり、国内最大の経済圏である関東への地域密着化を進め、お客さまの利便性につながるサービスを提供していきたいと考えています。
同時に、関東圏外への店舗展開をお考えのお客さまに関しては、これまで構築してきた全国物流ネットワークによる支援を継続していきます。
2つ目は機能強化です。お客さまの利便性と生産性の向上を目的に、当社の物流、情報システム提案などの機能強化を図っていきます。物流においては、低温物流面における機能強化を図り、高品質化する冷凍食品の配送力を向上させる意向です。
情報システムにおいては、安定稼働を維持させるとともにDXに対応し、お客さまとの相互コミュニケーション型の受発注サービス「KUZEX」を進化させ、お客さまの利便性の向上と働きやすい環境整備の両立を図っていきたいと考えています。
このような機能強化により、物の流れと情報の流れをコントロールし、お客さまや働く方にとって便利になるように努めていきたいと考えています。
3つ目はプラスオン戦略です。お客さまの利便性向上のためのワンストップショッピングの実現に加え、昨今、お客さまが抱えている課題でもある、価値の向上・収益の確保・人手不足など、さまざまな課題解決につながる商品提案を推進していきます。
価値ある冷凍・生鮮素材や魅力的な酒類・飲料など、これまで当社が未着手であった分野を開拓しながら、お客さまの利便性と収益の向上に貢献するため尽力します。
強化する市場
今後強化する市場としては、外食・フードサービス産業、中食惣菜産業、観光レジャー産業です。これまでも強化してきた外食・フードサービス産業のお客さまの開拓を継続しつつ、時代ニーズが高く、便利な食の提供を実現している中食惣菜産業、そして、日本の経済の柱として期待されている観光レジャー産業への食の提供を強化していきます。
将来的にはこれらの3つの業態間がボーダーレス化し、お互いに協力しあう部分も出てくると考えています。このような市場変化にも対応できるよう、お客さまのニーズの追求を図っていきます。
投資戦略
未来の成長に欠かせないのが投資です。当社では物流、情報システム、人財への投資を図っていきます。人財においては、働きやすさと働きがいの向上につながる環境整備や、人財育成につながる教育などへの投資を行います。
物流面ではセンターのインフラ整備や機能強化を図る投資を行い、情報システムでは基幹システムやDX推進のための投資を実施していきます。
未来を創る5つの施策
これらの3つの基本戦略、市場戦略、投資戦略をしっかりと回しながら、未来を創る5つの施策を進めていきます。
まず、EC事業です。「ECで売る、ECに売る」をテーマに、2軸で取り組んでいきます。
1つ目は、EC販売を行うお客さまの物流受託事業です。具体的にはネット通販向けのギフト商品などをアソート・梱包・発送する業務で、長年の物流運営のノウハウが活用できる事業です。さらに当社が保有している低温物流の機能を強みに事業を成長させていきたい考えです。
2つ目は、楽天市場やアスクルといったEC事業者への商品提案や販売を行っています。楽天市場には自社店舗である「make!t STORE」を出店し、ネット通販の総合的なノウハウを吸収しています。
次に、DX化の推進です。お客さまの利便性向上を目的に、双方向型コミュニケーションサービス「KUZEX」を構築しました。「KUZEX」は、スマホで注文ができるだけではなく、コミュニケーション履歴やお客さまの情報を蓄積することが可能で、双方の利便性・生産性を向上することができます。
また、人の代わりに業務を自動化するRPAの活用も進めていきます。これらのシステム導入を行い、DXを推進していきます。
次に、商品開発・商品試作についてです。私たちの強みのひとつでもある商品開発については、コロナ禍で休止していましたが、変化するニーズを捉え、段階的に再開していきたいと考えています。また、共同購買組織であるJFSAの加盟企業との購買力も発揮しながら、商品試作につなげていきたいと考えています。
次に、海外事業の推進です。輸出事業として、海外の現地卸との連携を通じ、アジア各国に加え、北米などにも輸出を拡大しています。国内同様に、酒類・飲料やグループ会社である旭水産の鮮魚など、プラスオンで提案できるように推進していきます。
また、グループ会社の中国事業や、ニュージーランドにおける製造事業なども堅調に推移していますので、今後も海外事業に注力していきます。
最後に、グループシナジーの発揮です。久世グループには、食材卸事業、食品製造事業、生鮮卸売事業、海外事業を行うグループ会社があります。また、JFSAという共同購買組織にも加盟しています。久世単体では実現しにくいことはグループの力を活用し、シナジー効果を発揮して、当社グループの独自性を磨いていきます。
以上で、2023年3月期連結決算と中期経営計画のご説明を終わります。本日はご清聴ありがとうございました。