2023年5月30日に発表された、東京産業株式会社2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:東京産業株式会社 代表取締役社長執行役員 蒲原稔 氏
目次
蒲原稔氏:東京産業の蒲原でございます。本日は、当社の決算説明会にお越しいただき、誠にありがとうございます。はじめに、2023年3月期決算の実績をご説明した後、先日発表した新中期経営計画の概要をご紹介します。
Ⅰ.2023年3月期 実績 損益および配当状況
2023年3月期の損益および配当状況です。前期は底堅い火力発電所のメンテナンス業務や大型太陽光発電所建設工事の受渡が牽引し、売上高は前期比50億円増加の638億円、営業利益は前期比6億円増加の31億円、経常利益は前期比7億円増加の33億円と、増収増益となりました。また、営業・経常利益ベースは、2020年3月期以来の過去最高益となりました。
一方で、再生可能エネルギー事業などに関連する特別損失の計上により、当期純利益は前期比7億円減益の4億円となりました。成約残高は、大型太陽光発電所の建設工事案件の受渡が進んだことを主因とし、前期比で92億円の減少となっています。
年間配当は、当期純利益が計画未達となったものの、中期経営計画の最終年度に営業・経常利益ベースで過去最高益となったことや、安定配当の基本方針に鑑み、期初予想どおり4円増配の30円を予定しています。
Ⅰ.2023年3月期 実績 セグメント別業績
セグメント別の業績です。今期はすべてのセグメントで増収増益となりました。電力事業は、国内発電所向け新設プラントの工事受渡や保守・メンテナンス対応、海外発電所向け機械設備の納入、バイオマス発電所向けの燃料調達などにより売上が堅調に推移し、売上高は93億円、営業利益は15億円となりました。
環境・化学・機械事業は、大型太陽光発電所の建設工事案件の進捗や、2021年10月に稼働した自社保有の太陽光発電所「阿賀野ソーラーパーク」の売電料が通期に寄与したことや、海外設備・養殖設備などの案件があったことから、売上高は497億円、営業利益は14億円となりました。
生活産業事業は、コロナ禍による行動制限の影響で落ち込んだレジ袋などが、制限の緩和により持ち直し、売上高は48億円、営業利益は1億円と増収・黒字転換となりました。
Ⅰ.2023年3月期 実績 財政状態
貸借対照表です。総資産は、大口の工事案件の進捗や受渡に伴う営業債権・債務の減少により、前期比73億円の減少となっています。
有利子負債が20億円増加していますが、こちらは大口太陽光建設工事の立替支払に伴う一時的な資金需要によるものです。総資産が減少した結果、自己資本比率は33パーセントとなりました。
Ⅰ.2023年3月期 実績 主なトピックス
前期に公表した主なトピックスです。当社が注力する環境・エネルギー分野では、「CO2削減」「脱炭素」をキーワードに新しい事業領域における体制整備を行い、事業拡大への布石を打っています。
Ⅱ.不正取引に係る再発防止策の実施状況
2022年10月に発表した、不正取引に対する再発防止策の対応状況についてご説明します。当社は不正事案を踏まえ、コンプライアンス意識の徹底と定着を経営における最重要課題の1つと捉え、私をトップとする不正取引再発防止チームを立ち上げ、社内体制の整備・強化に取り組んできました。掲げた具体策はすべて着手済みであり、スケジュールどおりに進捗しています。一部は対応中となっていますが、今期中には完了する予定です。
今後は形骸化することなく運用し、コンプライアンス意識を会社全体に定着させていくことが重要だと考えています。経営者として、定着状況をしっかりフォローしていくつもりです。
Ⅲ.中期経営計画紹介 前中期経営計画振り返り(業績)
5月12日に発表した新たな中期経営計画の概要についてご説明します。まずは前中期経営計画の振り返りです。
中期経営計画の3年間を通じて営業利益は増益基調を維持し、最終年度は過去最高益となりました。一方で、当期純利益は特別損失を3期連続で計上したことにより、減益基調となりました。
III.中期経営計画紹介 前中期経営計画振り返り(重点戦略)
重点戦略と位置付けた「コア5」の評価については、スライドに記載のとおりです。「地球環境とエネルギーミックスへの対応拡大」では、太陽光関連ビジネスが業績を牽引し、大きな成果をあげました。「モノづくり・デジタルイノベーションへの取組強化」および「新事業創出の継続」では、今後収益化が期待できる多様な事業の種まきをすることができました。
一方で、先ほどご説明したコンプライアンス強化に加え、事業投資に関する特別損失の計上などもあり、リスク管理強化が急務と認識しており、取り組みを開始しています。
III.中期経営計画紹介 中期経営計画の位置付け
新しい中期経営計画の位置付けについてご説明します。当社は2018年に10ヶ年計画を策定しており、今回はその最終ステージ、つまり集大成という位置付けになります。長期ビジョンである「環境・エネルギーに強い機械総合商社」としての地位確立に向け、前中期経営計画で取り込んだ新たなビジネスの種を確実に収益化し、機械総合商社としての新たなモデルを確立する重要な4年間となります。
新中期経営計画のタイトル「T-ScaleUp2027」には、業容のみならず、事業領域や規模を拡大させるというイメージを、サブタイトルの「グリーンな未来 新領域へ」には、CO2削減などグリーンな未来への貢献を通じて、事業領域の拡大および新たなビジネスモデルの確立に挑戦するという思いを込めています。
III.中期経営計画紹介 中期経営計画骨子
中期経営計画の骨子です。前中期経営計画の「コア5」の発展的なリニューアル、年平均成長率12パーセント成長の実現、さらに株主還元の強化を目指しています。
III.中期経営計画紹介 重点戦略(コア5)
重点戦略の「コア5」です。前中期経営計画の総括や当社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、「エネルギートランジションへの積極関与」「サステナブル社会構築に資する事業創出」「グループ総合力強化」「強靭な経営基盤の構築」「株主還元の拡充」の5点をテーマとして掲げています。
コア5 (1)エネルギートランジションへの積極関与
「コア5」の1つ目は、「エネルギートランジションへの積極関与」です。火力発電所はエネルギー基本計画において調整可能な電源として適切な電源構成を維持することとされており、引き続き当社のベース事業と位置付けています。
火力事業をベースとしつつ、エネルギートランジションにおけるエネルギーミックスの具体化、新技術実用化の進展を踏まえ、「原子力」「アンモニア・水素の混焼および専焼」「再生可能エネルギー」に注力していきます。
原子力については、4月より三菱重工業の販売代理店として業務を開始しているほか、既存の六ヶ所村での業務拡大や、原発プラントメーカー向け投資ニーズへの対応を行っていきます。
混焼・専焼については、エネルギー基本計画で、2030年までにガス火力発電への30パーセントの水素の混焼・専焼、石炭火力発電への20パーセントのアンモニア混焼の導入・普及がそれぞれ目標として掲げられています。すでに動き出してきているため、投資ニーズをしっかりと捕捉していきたいと考えています。
再生可能エネルギーについては、太陽光FIT案件に関連する建設工事がピークアウトすることを踏まえ、バイオマスや小水力、風力など、多様な電源を対象に、バリューチェーンに幅広く関与していきます。
コア5 (2)サステナブル社会構築に資する事業創出
2つ目は「サステナブル社会構築に資する事業創出」です。国内外における脱炭素対応の加速、食料安全保障への関心の高まりといった事業環境および社会の変化を踏まえ、「サステナビリティ」「社会問題解決」をキーワードに、「EV・水素等新エネルギー」「CO2削減新技術」「食糧自給関連」「生活産業」という4つの重点領域を中心に商機を創出していきます。
これらの領域では、すでに川上からの関与により新商材の開発・育成を行ってきています。本計画ではそれらを拡販し、しっかり収益化していくとともに、新たなビジネスの種を発掘・育成し、持続的な事業創出に取り組んでいきます。
コア5 (3)グループ総合力強化
3つ目は「グループ総合力強化」です。グループシナジーを追求していくために、本社サポート強化によるグループ一体化のさらなる推進、資産や人材を中心としたリソースの再配分に取り組んでいきます。
また、グループ内のみならず、パートナー企業との関係強化や、場合によってはM&Aも含め積極的に機能補完を行うことで、新技術・新サービスの創出、バリューチェーン全体でのビジネス捕捉を強化していきます。
コア5 (4)強靭な経営基盤の構築
これまでご説明した攻めの施策を進めていく上で、4つ目の「強靭な経営基盤の構築」も重要な戦略となります。前中期経営計画期間中に問題が顕在化したコンプライアンスやリスク管理の強化に向けた取り組みはもちろんのこと、人財投資、コーポレートガバナンス、システムの各領域でも高度化に向けて以前の枠組みの見直し、投資を行っていきます。
これら守りと攻めの環境整備への取り組みを通じ、トップラインの伸長を確実なものにしつつ、ボトムラインを含めた業績の安定化を図っていきます。
コア5 (5)株主還元の拡充① キャッシュアロケ―ション
5つ目は「株主還元の拡充」です。期間中に創出されるキャッシュフローは、資本効率を重視した成長投資および株主還元強化にバランスよく配分していきたいと考えています。前中期経営計画期間では、ROEが当社の認識する資本コスト水準を下回る推移となったことから、今計画では目標ROEの達成に向け、追加施策についても柔軟に検討していく予定です。
コア5 (5)株主還元の拡充② 配当政策変更
株主還元の拡充は、配当政策変更によって実施していきたいと考えています。従来「配当性向30パーセント超を継続して実施」を方針として掲げてきましたが、今回からは「早期にDOE4パーセントを達成」に変更します。初年度は3.5パーセント程度とする予定ですが、従来の安定配当の方針を維持しつつ、資本効率やROE向上にも目配りをし、早期にDOE4パーセントを達成していきます。
Ⅳ.2024年3月期計画
最後に、2024年3月期の計画についてご説明します。連結で、売上高700億円、営業利益33億円、当期純利益24億円と、増収増益を目指します。引き続き、底堅い火力関連や受注済みの太陽光発電所の建設工事がベースとなります。
初年度は、先行投資的に人件費の増加を見込むものの、PPAほか取引先のSDGsのニーズへの対応、海外自動車産業の投資需要の取り込み等、経費の増加分を打ち返していき、増益を確保する計画です。
以上で、私からのご説明は終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。