5. 年金を一括で受け取る際のメリットとデメリット
年金を一括で受け取る際は、過去5年前の分までしか受け取ることができませんでした。これは、年金は請求しなければ、5年で時効になってしまうためです。
しかし、2023年4月以降は、過去に遡って繰り下げができるようになります。
例えば、72歳時点で一括受給する場合、67歳時点で繰り下げし16.8%増額された年金を、67歳からの5年間分一括で受け取ることができるようになります。
その上で、増額された年金を一生涯受け取ることができます。
一般に65歳以降も公的年金以外の収入や資金を持っている場合は、繰り下げを検討し、増額した年金を受け取ると良いでしょう。
手元に資金があれば、繰り下げをした上で年金を受け取れば、一括で受け取る必要はありません。
一括で受け取るということは、大きな金額が急に必要になるということでしょう。
一括で受け取る場合は、まとめて受け取った分の所得税や住民税の申告が必要になる場合もあります。
さらに、繰り下げて受け取るつもりだった方が、一括で過去の年金を受け取る場合、過去の分の年金(雑所得)に対しての所得税の確定申告または修正申告をし、所得税や住民税の納付が必要となる場合もあります。
場合によっては、過去の税の延滞税を支払わなければならないこともあります。
一括で受け取るメリットは、あまりないと思います。
繰り下げ期間中に資金が必要になった場合でも、過去の年金をまとめて受け取れるという選択肢があると考えれば良いでしょう。
どちらかというと、一括で受け取った場合に申告をしないといけない、延滞税を払うかもしれないというデメリットの方が大きいと考えられます。
6. 年金の受け取り方で考える老後
年を重ねることで、病気など予想できない事態があるかもしれません。急な出費に対しての資金も準備した上で、年金の繰下げを検討すると良いでしょう。
年金の繰り下げを検討する場合、夫は65歳から通常の年金を受給し、妻の年金を繰り下げ受給するという方が多いように感じます。
これは、一般的に女性は長生きすると言われているためでしょう。
長期の資金計画が難しい方も、老後の資産管理、生活についても5年後、10年後という中期の資金計画を立ててみると良いでしょう。
参考資料
香月 和政