インカムとキャピタルのトータルで考える

不動産投資はやり方さえ間違えなければ実は手堅いビジネスです。

賃貸物件を保有している間は毎月家賃収入が入ります。また、管理運営業務のほとんどは不動産業者に委託できますから、一人でも複数の物件を運営することができます。将来の引退後のビジネスとして考えられている方も多いのではないでしょうか。

実際に不動産投資に取り組む上で気を付けていただきたいのは、インカム(運営)とキャピタル(売却)のトータルで考えること。なかでも、とりわけ大事なのは出口戦略です。

前回までの記事では、手残りキャッシュフローはどのように計算するのかをお伝えしていました。インカムについては税引き後のキャッシュフローで考えましょう、というお話でした。

今回お話しするのはキャピタル、つまり売却手残りです。最終的に売却して税金も払った後いくら残るのかがトータルの収支を大きく左右します。

保有期間中のキャッシュフローが多くても、売却時に値下がりしていたり納める税金が多額だったりすると、これまでのキャッシュフローを吐き出すことになります。最悪の場合は借入残高よりも大幅に値段が下がり、売るに売れないということもあり得ます。

都市部の利回り7-8%よりも地方の利回り9%がいい?

現在の不動産投資ブームで、多くの方がより高い利回りを求めて地方の収益不動産を購入している結果、地方の収益不動産の価格は数年前に比べて大幅に上がっています。

ある地方都市では5年前には15%程度だった利回りの相場が、今では9%位にまで下落しています。不動産の値段が上がると、収益性は変わらないので利回りは下がります。

それでも都市部の物件の利回り7-8%よりも、地方の利回り9%のほうがいい!と思っている方は「経費率の違い」や「売却しやすさの違い」を見落としていないでしょうか?

地方では家賃が安いにも関わらず、都市部とほぼ同じ額の修繕費がかかります。さらに一度空室となると都市部より次の入居者が決まりづらく、新規入居者の広告費も多くなる傾向にあります。

たとえば家賃3万円の物件と、都市部の家賃8万円の地方物件(部屋の広さは同じ)で比べます。

【地方】原状回復工事費10万円+広告費3カ月分9万円=19万円÷家賃3万円=約6.3カ月分

【都市部】原状回復工事費10万円+広告費2カ月分16万円=26万円÷家賃8万円=約3.3カ月分

これだけでも家賃に対する経費率は2倍近い差となります。

また、売却する際に買い手が多いのも都市部の物件です。地方の物件ですと購入を検討できるのが地元の資産家など数が限られることが多いのに対して、都市部の物件では海外の投資家までもが購入を検討します。

つまり、都市部の物件の方が圧倒的に売却しやすいのです。

これらを考えると、一概に利回りが高い地方物件の方が良いということではないとお分かりいただけるかと思います。

売ろうとしても売れない地方物件の罠

収益不動産は購入時にある程度の自己資金を入れないと、いずれキャッシュフローより納める税金が増えてしまうデットクロスが必ず起こります。

これは、地方の物件であっても、都市部の物件であっても同じです。

そのため、デットクロスが来る前に売却をしたいのですが、地方の物件では売りたいのに売れないという状況がしばしば起こり得ます。

1つ目の理由としては、先ほど説明した「売却のしにくさ」です。そもそも地方の物件は都市部の物件に比べて購入を検討する人が少なく、また物件の価格が高ければ高いほどその傾向は顕著です。