毎週さまざまな分野の社長をゲストに招き、パーソナリティである藤沢久美氏が起業・事業の原点・アイデア発想法や思考法・社長になるまでの歩み・挫折からの復活などを伺い、トップリーダーの経営哲学・人生哲学に迫る、全世代のビジネスパーソン必聴のインタビュー放送『藤沢久美の社長Talk Presented by М&Aクラウド』。その中から、株式会社ココペリ 代表取締役CEO 近藤繁氏が登場した第157〜159回の模様を書き起こし記事でお届けします。

スピーカー:起業家 藤沢 久美 氏
株式会社ココペリ 代表取締役CEO 近藤 繁 氏

今では過疎化が進む「オールドニュータウン」で育った、近藤氏

藤沢 久美氏(以下、藤沢):ではこのすばらしいサービスを作った近藤さんの「人となり」を聞きたいんですが「愛知県春日井市出身。大学は東京へ」って書いてあるんですけど(笑)。子ども時代って「将来は社長になろう」とか思っていたんですか?

近藤 繁氏(以下、近藤):いや、子ども時代……まずは愛知県春日井市(の話)でいくとですね「高蔵寺ニュータウン」というのがあって。あまり知られていないんですけど、実は高蔵寺って、日本三大ニュータウンの1つなんですよ。

藤沢:へぇー、知らない(笑)。

近藤:知らないですよね(笑)。今は「オールドニュータウン」って呼ばれているんです。もう過疎化がだんだん進んでいる町で、そこに高校までいたんですけど……。その時は、まだ別に「社長になりたい」もないですし、ただ……なんだろう……。なんだったかな?(笑)。

藤沢:普通の子どもだった?(笑)。

近藤:そうそう、普通に……。

藤沢:将来の夢とかそういうのも別に「警察官になりたい」とかそういうのもなく、「サラリーマンなんだろうなぁ」くらいの感じですか?

近藤:そうですね。親は公務員だったりしたので……。「起業して」というよりも、どちらかというと、そういう思考のほうが強かったことはあるんですけど。

ただ本当にプライベートな感じですけど、僕は3兄弟の末っ子なので、けっこう自由に育ってきているという意味では「大学では東京に行きたいな」というのがあったんですよね。いろんな情報誌とか見ても、例えば高校生とかだと服の雑誌とか読むじゃないですか。するとだいたいショップって、東京にある。

藤沢:はい(笑)。

近藤:(笑)。雑誌を読んで、(服をショップに)買いたくても行けないみたいな。それで「青春18切符」を買って、夜な夜な行くみたいな。そういうこともしていたので「東京には、いろんな情報とかいろんな人も集まっているな」というのは感じていたので、大学では「東京に行きたいな」というのは、やっぱりありましたね。

藤沢:親御さんに「東京に行きたい!」と言った時は?

近藤:そこは、ぜんぜん問題なく。

藤沢:じゃあ、東京に行って何か花開いたんですか?

近藤:いえ(笑)。

藤沢:(笑)。

「どこで働いている」ではなく「何がしたいか」が重視されるアメリカ文化

近藤:大学でこっち(東京)に来て、僕は理系だったので、学校はまあまあ忙しかったんですけど。それよりもその途中、大学3年生と4年生の間にアメリカに留学をしているんですね。

藤沢:1年とか?

近藤:1年。

藤沢:けっこう長い留学ですね。

近藤:はい。そういった意味では……それまで飛行機に乗ったことがなかったんですよ。もちろん飛行機に乗ったことがないので、海外にも行ったことがないんですけど(笑)。

藤沢:(笑)。

近藤:大学3年生くらいになってくると、みんな就職活動とか始めるじゃないですか。僕は理系だったので、だいたいみんな大学院に行って。大学院に行ってから、それこそメーカーに就職するという感じで、だいたいのルートは決まっていて。研究室に行くルートって、だいたいあったりするので。

藤沢:理系のどういった分野だったんですか?

近藤:僕は情報工学科で、さらにいうとデータベースの研究とかをしていたんですね。

藤沢:時代を先取りした。

近藤:そうですね(笑)。それを研究室でやっていて。そういうふうになって、だいたい先輩とかを見ても(将来のルートが)わかるじゃないですか。でもその時に「待てよ」と。「東京に来ていろんな情報に触れたけど、海外にまだ触れていないな」と思って。

その時は、やっぱりアメリカに行きたいと思って。アメリカって、いろんな人が集まってきているので。それで1年休学させてもらって、アメリカに留学したんですね。

藤沢:大学の頃に。

近藤:最初は本当に英語も話せないので、語学学校から始まって、最終的には大学に入ったんですけど。

ただ交換留学ではないので、特にそこで単位を取って……というよりも、いろんな自分の「好奇心」とか、そういうのに赴くままに行って、過ごして、みたいなところで(笑)。そこが実は、今になって思えば、人生のターニングポイントかなと思っていて。

これまで日本で生きてきた中で「大学に入って、大きな企業に入って生きていく」みたいなのが一般的かなと思っていたんですけど、アメリカに行ったら……。

僕は最終的にはサンディエゴというカリフォルニアの下のほうに留学したんですけど、そこはメキシコの国境に近いので。本当に移民の国というか、それをすごく肌で感じて。けっこうみんな、良い意味で......何かしたいことがあって集まっている。

藤沢:アグレッシブだ。

近藤:アグレッシブなんですよね。(アグレッシブな)人たちがすごくたくさんいて、そこでは「何をやりたい」とかがすごく重視されていて。

例えば「どこで働いている」とか、そういうのって、あまりみなさん興味がないというか。「何がしたいんだ、お前は?」みたいな、そういう国じゃないですか? そういう文化を初めて肌で感じて「これはすごいな」と思って、けっこうカルチャーショックだったんですよ(笑)。

藤沢:(笑)。「俺のやりたいことは何だ?」みたいな。そういう感じ?

近藤:はい。

理系・院卒なのに、研究室では異例の「銀行へ就職」したワケ

近藤:そういったいろんな刺激を1年間、たんまりと受けて。帰ってきた時に……その時に日本にはもう「IT業界」とかができていて。サイバーエージェントとか楽天とか、ソフトバンクとかもグイグイいっていて。僕は理系だったので「いつかそういうテクノロジーを使った会社をやりたいな」というのが、まず朧気ながらにあったんです。

ただ、何をしていいかもわからないし、できる自信もないので「どうしよう?」ってなった時に、研究室では異例の、最初に僕はみずほ銀行に入社するんですけど(笑)。

藤沢:「なんで(理系・院卒なのに)銀行なんだ?」って(笑)。

近藤:そうなんですよ(笑)。教授も「ハテナ?」って顔をしていたんですけど。みずほ銀行に入った理由としては、いろんな経営者に会いたかったんですよね。

「一番いろんな経営者に会える業種ってなんだ?」ってなった時に「銀行だ!」と思って銀行に入らせてもらったところが、今の動きにつながってくるかなという感じですね。

藤沢:好奇心がすごいんでしょうね。

近藤:好奇心はあるかもしれないですね。

藤沢:だって春日井から東京へ行って「もっといろんなものを知りたい」って言って、東京からアメリカへ行って。今度は銀行でもっといろんなものを(知りたいと)……。

だから「これしかやらない」じゃなくて、あらゆるものに触れていきたい。

近藤:そうですね。20代の頃、僕にはテーマがあって。「経験していないことを否定しない」というのがテーマだったんですよ。

藤沢:なんで、そんなカッコイイことを思いついたんですか?(笑)。

近藤:(笑)。それをなぜか思っていて。自分がやってみないとわからないじゃないですか。ですけど、みんないろんな本……本は良いかもしれないですけど、いろいろなところで経験もしていないのに「それはダメだよ」とか「違うよ」っていうところに、けっこう違和感があって。

「自分が感じないとダメだな」というのは、ずっと思っていたので。そういった意味もあって好奇心もあって、やれることは20代だし……。

藤沢:「増やしていこう!」みたいな。

近藤:そうそう。それはありましたね。

いまだ日本では根強い「中小企業=大企業の下請け」的なイメージ

藤沢:金融機関に入って「いつか起業しよう」って、その時は思っていたってことですね。

近藤:そうですね。ちょっとずつそうやって思い始めて。融資とかを中小企業の経営者向け……経営者というか中小企業にやっていると、すごく魅力的な人が多いんですよね。

藤沢:社長ってステキなんですよね(笑)。

近藤:そうなんですよね(笑)。良い意味で「ギラギラしている」じゃないですけど「キラキラしている」というか……。

藤沢:元気をもらえる(笑)。

近藤:そうなんですよね(笑)。経済的にすごく恵まれているというよりも、「生きている感」がすごくあるというか。「こんなサービス作った!」「こんなもの作ったぜ!」みたいな。時々「これ売れないんじゃないか?」と思いながらも、キラキラの目で言うじゃないですか(笑)。

藤沢:(笑)。

近藤:そういう人たちと触れていたら、やっぱりすごく楽しくて。でも一方で、まだまだ日本って……別に二分するわけではないんですけど、中小企業って、大企業の下請け的なイメージがすごく強いなと思っていて。

でも、実際にいろいろな経営者と話をしたり、融資をする上でいろんな企業の価値を見る時に、やっていることとか……売上ももちろんそうなんですけど、例えば「地域にすごく貢献している」とか「モノ(製品)が日本でのシェアはないけど、世界ですごく使われている」とか。そういう企業って、たくさんあるんですよね。

「そういう価値が、ぜんぜん世の中に伝わっていないな」というところが課題だなと思っていて。そういった意味では、自分が何か事業をやる時には、そういう魅力的な人たちがもっともっと活躍できるような環境になると(いいなと)。

日本はほとんどが中小企業なわけじゃないですか。「日本って、すごく幸せなハッピーな国になれるんじゃないか?」みたいな思いがあって。それで会社を作って、中小企業向けの支援から始めて、今につながっているみたいな感じですね。

藤沢:へぇー。私も中小企業回りをしていたから「この人たちのために何かしたい」と思ったけど、なかなかそれを事業にして立ち上げるのは難しいというか、簡単ではないというか(笑)。

近藤:難しいですね。

起業から「SHARES」⇒「Big Advance」に至るまで

藤沢:すごくそう思ったんですけど。その時(起業した当初)は、この「Big Advance」の構想を持って立ち上げたんですか?

近藤:いや、その時はぜんぜん持っていなくて。まず会社を立ち上げた時には、中小企業のバックオフィスですね。例えば経理の代行とか、給与計算の代行をする事業から始めたんですよ。「アウトソースしますよ」と言って。

やっぱり経営者も、別に経理がやりたくて経営しているわけではないじゃないですか(笑)。やらないといけないからやっているだけで。「そういうところをアウトソースしたほうが、少ない人数でみなさんやっているので事業に集中できますよね?」ということで、「アウトソースできますよ」という事業から開始したんですね。

そこからどんどん見えてくる課題として、さっきの「士業」のところの課題が見えてきたんですよ。なので「Web上で相談できたら便利だよね」となって、「じゃあ、それを作ろう」と言って(「SHARES」)を作って。

そうしたら今度、次の課題として感じていたのは、「SHARES」ってWeb上で士業に相談できるのはものすごく便利なんですけど、例えば日本の町工場とかで見た時に、やっぱりインターネットのマーケティングには限界があるなと思って。

テレビCMとかをガンガン打てば違うかもしれないですけど、そんな資金もないですし。でも「本当に届けたいところに、なかなか届いていないな」という課題はずっと感じていて。1回使ってもらうと便利(と気づいてもらえる)なんですけど、使ってもらうまでのハードルがすごく高くて。

「そういう企業の方々に、Webサービスを届けるにはどうしたらいいんだろう?」と思った時に、自分も(過去に)みずほ銀行にいて、金融機関として中小企業の経営者といろいろ会話をしていたので「ここの関係性にテクノロジーをプラスすることによって、Webサービスが届くし、本当に活用されるんじゃないか?」という仮説があって、この「Big Advance」につながっていくみたいな流れですね。

藤沢:もともと理系だし、そのへんのネット上でのサービスを作るのには、なんとなく知見もあるし。

近藤:でも学生レベルなので、「知見がある」とは言えないくらいのレベルですけどね。

当初は“1人役員”の会社だったココペリは、いかに変化していったか

藤沢:でもアイデアができたら、今度はエンジニアを雇わないと全部できないじゃないですか。そこはどうしたんですか?

近藤:「SHARES」というサービスは、最初は外注で作っていたんです。でもプラットフォームだと、もちろん収益化とか「UI/UXの改善」という意味でも、ものすごく(いろいろなことを)やっていかなきゃいけないので「自社で作っていく必要があるよね」というところで。

それまでは、どちらかというと“1人役員”の会社だったんですけど、「エンジニアを雇うために」ということで、VCからも投資を受けて資金調達もして。そこから自社で開発できる体制を作っていってみたいな。そういうところから作り始めた感じなんですね。

藤沢:銀行との提携は、最初からもうやったんですか? そうじゃなくて、最初はさっきおっしゃったように、企業に自分で行って「アウトソースしませんか?」から始めているから……。

近藤:そうですね。

藤沢:本当、コツコツからということですよね。

近藤:そうですね。金融機関との連携は「SHARES」を始めている時に、「Big Advance」は横浜信用金庫さんがファーストユーザーなんですけど。「SHARES」をきっかけに知り合うきっかけができて、そこから一緒に構想を作っていって、でき上がったのが「Big Advance」ですね。

藤沢:そっか。でも、最初は本当に20人以下とか小っちゃい会社で(月額)3,300円だと、売上が積み上がるのにすごく時間がかかりそうな気がするんですけど、最初は時間がかかったんですか?

近藤:そうですね。投資期間としては、数年はかかっていますね。

藤沢:でも、VCから早めに(資金を)もらっていたから食べていけたって感じですね。

近藤:そうですね。なかなか赤字とかだと借入とかも難しかったりするので。そこは本当にVCさんからのお金で、投資をしながら築き上げていった感じですね。

VCから出資してもらうためのコツはある?

藤沢:起業したい人の参考になるかもしれないから、聞いてみたいんですけど。どういうVCさんに言うと、こういうビジネスモデルでも出資してもらえるんですか? そう簡単ではないじゃないですか。待ってもらわなきゃいけない案件ですし。

近藤:今の流れでいくと、我々はいわゆるSaaSモデルになるので、今はSaaSモデルに詳しいVCさんとかいらっしゃるので……。

藤沢:そっか。SaaSだと言ったら、けっこうお金が出るもんね(笑)。

近藤:そうですね(笑)。知見も、KPIとかも、何を見れば良いか? がアメリカとかではもともとすごく発展していて。それが、徐々に日本に根づいてきているので。そういった意味では、今だとこういうSaaSモデルは、環境という意味では前よりはぜんぜん良くなっているかなと思いますね。

藤沢:なるほど。それで何年かで黒字になって、今に至る。

近藤:そうですね。

藤沢:だから本当に「こういうサービスなかったんだ!」って思うくらい良いサービスですよね。

近藤:ありがとうございます。

藤沢:自分で小っちゃい会社を経営している人は、今の話を聞いたら、めちゃ使いたくなると思うので(笑)。

近藤:ぜひ。

藤沢:あとは本当に「知ってもらうだけ」な気がしてきた。

近藤:そうですね。

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