2022年8月19日に行われた、株式会社スペース2022年12月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社スペース 代表取締役社⻑ 佐々⽊靖浩 氏
株式会社スペース 社外取締役 監査等委員 和⽥良⼦ 氏
株式会社スペース 執⾏役員経営管理本部⻑ 松尾信幸 氏

2022年12月期第2四半期決算説明

佐々木靖浩氏(以下、佐々木):みなさま、こんにちは。2022年12月期第2四半期決算説明会の動画配信をご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。

新型コロナウイルス感染症が収束しておらず、現在も第7波が急拡大している状況でございます。さらには、全国で発生しております豪雨災害においては、大変ご心配申し上げるところでございます。

今回の決算説明会は録画による動画配信とさせていただきました。どうぞよろしくお願いします。それでは、決算の概要および事業の概況について、松尾よりご説明いたします。

「収益認識に関する会計基準」等の適用

松尾信幸氏:松尾でございます。はじめに私より、2022年度第2四半期決算の概要についてご説明します。

収益認識に関する会計基準等の適用についてご説明します。「収益認識に関する会計基準」等を、第1四半期連結会計期間の期首から適用しています。

2021年度までの旧基準では工事や案件が完成した時点で収益を認識していましたが、2022年度からは、原価が発生した進捗度合いに応じて売上を計上する、進行基準を適用しています。なお、過年度の遡及修正は行っていないため、本説明資料の前年同期比は参考値として掲載しています。

業績ハイライト

業績ハイライトです。顧客の投資抑制が続き、厳しい状況ではありましたが、売上高は前年同期比12.0パーセント増加の218億円を確保することができました。

しかし、営業利益は前年同期比5.4パーセント減少の9億4,300万円、経常利益は前年同期比5.2パーセント減少の9億5,900万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比6.0パーセント減少の6億1,000万円となりました。利益面では、前年同期比を僅かに下回る結果となりました。

売上高・営業利益率推移

売上高・営業利益率推移です。依然として、ディスプレイ業界の本格的な回復には至っていないものの、停滞状況からは徐々に持ち直しの兆しを見せています。前年同四半期を上回る売上高となっています。

一方で、利益面においてはコスト削減に努めたものの、価格競争の激化により、回復ペースに鈍化が見られます。

営業利益増減分析

営業利益増減分析です。売上高の増加により、売上総利益が2億6,700万円増加しましたが、売上総利益率の低下により、売上総利益が2億5,300万円減少しました。また、受注が増加したことにより、労務費が4,100万円、経費が2,700万円増加しました。結果、営業利益は前年同期比で5,400万円減少し、9億4,300万円となりました。

外注費推移

外注費の推移です。2017年からの原点回帰期3年間で、外注費率の抑制に努めてきました。今年は厳しい入札案件や新規顧客への取り組み、同業他社との価格競争が厳しく、外注費率が増加しています。今後も、付加価値提案や原価計画を徹底し、外注費削減に努めます。

販売費及び一般管理費推移

販売費及び一般管理費の推移です。販管費はやや増加しているものの、売上高も増加しているため、販管費率は0.4ポイント減少しました。新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめた2020年以降、全面的なコスト削減に努めてきました。

売上高増加に伴い、旅費・交通費などの活動費が増加し、また、採用活動の積極的な投資により雇用費が増加しています。今後もITツール等を活用した業務効率化について、引き続き取り組んでいきます。

小売業界の動向

続いて、2022年度第2四半期事業の概況についてご説明します。小売業界の動向についてです。当社を取り巻く事業環境と密接に関係するのが小売業界の動向になります。

新型コロナウイルス感染症拡大により、小売業界を取り巻く環境は一変しました。小売業界全体としてはやや拡大しており、消費者のライフスタイルの変化により、業種別で明暗が分かれる状況となっています。

ショッピングセンター関連の売上高に関しては、コロナ禍で一時減少し、2021年も本格的な回復には至っていない状況です。スーパーマーケット業界の売上高は、コロナ特需の動きもあり、2021年まで堅調に推移しています。コンビニエンスストア業界では、売上高推移は横ばいですが、非接触型店舗も増え、設備投資は継続的に行われています。

今後も、テレワーク等の生活様式の変化に伴う消費動向に関しても引き続き注視していきたいと思います。

ディスプレイ業界の動向

ディスプレイ業界の動向です。こちらは、同業他社の売上高の推移です。新型コロナウイルス感染症の拡大により、業界的には2020年度は売上が落ち込みましたが、2021年度についても各社本格的な回復には至っていない状況です。2022年度についても、各社横ばいか微増と予測しており、厳しい状況が続いています。

SC出店状況

SC(ショッピングセンター)出店状況です。こちらのグラフは、一般社団法人日本ショッピングセンター協会のオープンSC情報です。ショッピングセンターの新規出店数は、2019年度以降減少傾向です。2022年度は31件と、昨年と比較すると増加予定です。

また、2022年度は大型ショッピングセンターのオープンが複数見込まれています。近年は、地域密着をテーマとしたショッピングセンターや、SDGsをテーマとした施設、イベントを行うショッピングセンターが増加傾向となっています。

売上高推移(SC関連・その他)

売上高の推移です。当社の売上高のうち、ショッピングセンター関連が5割以上を占めています。近年は、「その他」に含まれるオフィス・サービス空間の受注強化により、ショッピングセンター関連以外の割合が増加しています。

売上高推移(新築SC・既設SC )

新築ショッピングセンターと既存ショッピングセンターの売上高推移です。ショッピングセンターの新規出店数は減少傾向にあるものの、大型案件の受注もあり、新築ショッピングセンターの売上高の割合が増加しています。

新築ショッピングセンターに取り組みつつ、地域活性化による既存のショッピングセンターのリニューアルにも注力し、売上高の確保に努めました。

市場分野別売上高推移

市場分野別売上高推移です。

複合商業施設・総合スーパー分野では、生活必需品を取り扱う総合スーパーで大型リニューアルがあったことから、売上高が増加しています。

食品スーパー・コンビニエンスストア分野では、前年より取り組みを強化したコンビニエンスストアの改装案件の受注が堅調に推移しています。

各種専門店分野においては、主力であるアパレルや服飾雑貨、インテリア・家具専門店等をはじめ、大型案件の受注が伸び悩んでいます。新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年度以降、各種専門店分野の売上は減少傾向にあり、厳しい状況が続いています。

飲食店分野では、来店客数の緩やかな回復が見受けられるとともに、業態転換等による改装案件が増加しています。

サービス等分野では、中期経営目標の1つであるオフィス・サービス空間の売上比率の拡大に向けた積極的な取り組みにより、全体の売上高が増加しています。エンターテインメント施設では、大型案件を受注したほか、行政機関等の新たな分野への取り組みも強化しています。

受注高・受注残高推移

受注高・受注残高の推移です。収益認識会計基準等の適用により、進行基準等の金額が増加したことから、受注残高は前年同期比で減少しています。しかし、収益認識会計基準等の適用による影響を除くと受注高、受注残高ともに増加しています。コロナ禍からの緩やかな回復が期待されています。

市場分野別受注残高

市場分野別の受注残高です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きかった専門店や飲食店の受注残高が増加しています。また、収益認識会計基準等の影響を除くと商業施設やコンビニエンスストア、サービス関連の中でもオフィス関連の受注残高が堅調に推移しています。

2022年度 上期実績

佐々木:ここからは私、佐々木よりご説明します。2022年度上期の実績です。上期予想に対して売上高の達成率は102.2パーセントと、おおむね計画通りの進捗です。しかし、利益面では価格競争の激化による厳しい状況が続き、上期予想を下回る結果となりました。

2022年度 通期見通し

2022年度通期見通しです。通期予想は売上高450億円、営業利益25億円、経常利益25億円、親会社株主に帰属する当期純利益は17億円と予想しています。新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状況が続いています。本格的な回復には至らないものの、2021年度と比較すると増収増益となる見込みです。

新型コロナウイルス感染症だけではなく、猛暑や豪雨の天候不順、ロシア・ウクライナ情勢の長期化による原材料価格の高騰など、外部環境リスクにも注視し、コスト意識を持って利益確保に努めていきます。

株主還元方針

株主還元方針についてです。当社の株主還元方針は、配当性向50パーセント以上を目指しています。上期配当は予定通り18円としました。期末も18円を予定しており、通期で36円の配当となる予定です。株主還元は、今まで通り安定配当を継続します。さらに、プラスアルファで自己株式の取得を行いました。

自己株式の取得

自己株式の取得についてご説明します。2022年の株式市場は、厳しい状況が続いています。中期経営計画の機能別戦略である財務戦略に基づき、今回は2回に分けて自己株式の取得を実施しました。

自己株式の取得は、状況に応じて柔軟な対応ができることがメリットだと考えています。今後も株主に利益還元を図るとともに、経営環境に応じた資本政策を行い、中期経営計画の定量目標であるROE向上に向けた施策を検討していきます。

中期経営目標

中期経営目標についてご説明します。基盤構築期の最終年度の本年、2022年度までに達成すべき4つの目標を掲げています。1つ目は営業利益率7パーセント、2つ目はROE10パーセント以上、3つ目は社員全員が働きがいのある会社、4つ目は顧客提供価値の向上です。以上の4つの目標を掲げて、継続して取り組んできました。目標の4つ目の顧客提供価値の向上は、オフィス・サービス空間、地域活性、サステナブルの3つの取り組みがあり、次ページ以降で説明します。

オフィス・サービス空間への取り組み事例

スライドはオフィス・サービス空間への取り組み事例です。

地域活性への取り組み事例

地域活性への取り組み事例です。

サステナブルな取り組み事例

サステナブルについての取り組み事例です。

自己紹介

和田良子氏:それではここからは私より、「社外取締役から見た株式会社スペース」についてお話しします。2012年より社外取締役を務める和田良子と申します。監査等委員会の業務に加えて、指名・報酬委員会の委員を担当しています。

常勤の業務としては、敬愛大学経済学部で、経済理論、ミクロ経済学、行動経済学、環境経済学を教えています。慶応義塾大学の商学研究科において現代ファイナンスを学び、今はみずほ総研となっていますが、株式会社富士総合研究所の第1期生としてシンクタンクに勤め、資本市場を担当していました。

そこではマクロ予測、いわゆる景気見通しの一部なども行っていました。その後短期間ですが第一生命で主任研究員をしていました。さらにその後、慶応義塾大学大学院経済学研究科に戻って学術的な研究を進め、今は実験経済学、特に実験ファイナンス、詳細では、確率が与えられないような不確実性下で、どのように人々が予測を形成していくのかについて研究しています。

社外取締役として求められている立場

社外取締役として求められている立場についてお話しします。当然ながら、独立した立場として監督機能を果たすことが求められています。スペースと業界の、当たり前やスペース内の暗黙知について明らかにしていき、そして客観的に内部の方に認識していただくことも仕事の1つになっています。

また監査等委員として、監査法人トーマツとの話し合いでは、スペース独自の業務スタイルが持っているリスクを共有し、監査しています。近年の特徴としては、内部監査室とより強い連携を行うことで、コンプライアンスの強化に努めています。

私は社外役員3人の分担のうち、経済および経済学という観点から経営を監査しています。具体的には、資本コストの観点から、必要な利益率のベンチマークについて述べたり、お金の使い方が将来のキャッシュフローにつながるかどうかについて、質問して明らかにするように心がけています。

また、株価を上昇させるためにはどうしたらよいかということについて、提言するようにしています。最近は持ち合いの解消が求められているため、個人投資家の方を増やして厚みを持たせるための提案をしています。環境投資については、社会とスペースの交差点を考えるようにしています。

社外取締役として心がけているスタンス

社外取締役として心がけているスタンスをお話しします。私は経済学者ですので、経済学の考え方、つまり社会の構造やマクロ経済の状況を所与として、制約下で最善の解を探すという考え方をしています。例えばESG投資もやみくもに進めるのではなく、費用対効果で評価するという立場を取っています。

また専門に近い制度設計については、指名・報酬委員会で関わっています。ルールが変更されることによる人々の行動をシミュレーションして、提案された制度設計がよいかどうか評価することを心がけています。

次に、2番目にあるステークホルダー間のエージェンシーコストを最小限にするというスタンスですが、私独自のスタンスであるため、少しご説明します。

株主は経営者に経営を委託し、そして経営者は社員に業務を委託しています。その間に情報の開きがあるとステークホルダー間の摩擦が起きてしまいます。社外取締役は社員から理解しにくい存在であり、社員も株主であるということからその意義を知っていただくように努めています。

例えば社内のポータルサイト、掲示板で、自分の考えを経営者メッセージとして述べています。また、環境サステナビリティとスペースの事業についての投稿なども行っています。

さらに、社内で持っている知識を共有し合い、技能を高め合う社内ナレッジとして、講義を6回行いました。直接社員の方から質問を受けることで私も業務を知ることができ、そして社員の方にも異なる見方を知っていただくことができました。

そして株主・社会・社員に求められる企業であり続けるためにスペースに必要なことは何か、そしてそこに向けて自分ができることは何かについて、アンテナを常に張っています。

やはり社内の取締役、執行役員との対話を欠かさないことを大切にしています。社内取締役の方のポータルサイトへの発信によって、社員への向き合い方、そして社員の感じていることや働き方など、スペースの現状を可能な限り知るようにしています。

また自分の研鑽としてはWomen Corporate Directorsという上場企業の女性取締役の団体に所属して学び続けています。

スペースのサステナブル経営:人材への取り組み①

スペースのサステナブル経営として、人材への取り組みについてお話しします。スペースが目指しているのは、「女性も男性も生き生きと面白く働ける会社へ」という進化です。それは、スペースで働くことが社外での幸せと両立するようにというWELL BEING(ウェルビーイング)経営を目指そうとするものです。

この考え方は、東証一部上場前から会議室に貼り出してあった社訓を、進化させたものです。スペースは、効率的な働き方を探求し、ダイバーシティを目指すといった進化の真っ最中ではありますが、根幹はぶれていないということを示しています。

そして、例えば長時間労働などの女性が感じる問題について、男性も抱えている問題でもあるという認識に立ち、また公平さの観点から、今まで個別対応していたものを制度設計の確立へと動いています。ジェンダーに関わらず、ライフワークバランスを保ちながら管理職を目指せるような制度設計がなされました。

例えば複線型人事は選択肢を増やす考え方です。また評価がジョブ型、つまり努力の評価から結果の評価になったことについては、世の中のトレンドでもありますが、「貢献度に基づいて成果を分配していこう」というノーベル経済学者のシャープレーの考え方にも沿うもので、効率性をもたらすものになっています。

さらに1歩進んでわかりやすさをもたらすために、2021年3月に産休・育休ハンドブックが刊行されました。女性の育休取得100パーセントはもちろん達成されているのですが、男性の育休取得比率も30パーセント近くまで増えています。

また社員相談室による社員相談窓口が2022年度に設置されました。これは決して小さなことではなく、問題を見つけることを恐れないで正しいあり方にしていくための、つまり社員のWELL BEINGのための、大きな1歩だと考えています。

スペースのサステナブル経営:人材への取り組み②

お伝えしてきた、人材の取り組みによる成果と展望をお話しします。期間としては、世界のニューノーマル移行によって様々な制度改革が加速されたことから、2020年度以降についてお話します.

まず、左のグラフについてです。青が男性、赤が女性の役職に就いている割合です。女性が役職に就く比率は2022年には7.4パーセントであり、日本全体の平均11パーセントと比較すると不十分ですが、スペース内において男性が役職に就く比率とのギャップは減少しています。

右側のグラフは、赤いバーが女性の就業年数を表しています。この平均年数は、2020年の7.1年から2022年には8.3年と1.2年伸びています。これに対しピンク色のバーで示されているのは管理職に就いた時の平均就業年数です。2020年には14.5年でしたが、2021年には10.6年、2022年には11.1年と短期化しています。

つまり若年層が課長になる機会を提供できていることがわかります。女性の就業年数は伸び、そして若年層に対して課長になる機会を提供できるようになりました。

加えて、昨年6回社内ナレッジを行った際、延べ120人の方が参加しましたが、そのうち40パーセントが女性でした。これは社員の女性比率よりも高く、こうした意欲的な女性が働きやすい環境に向けてこれからも役目を果たしていきたいと思っています。

女性が活躍していくことは、スペースの社員育成や人材への投資としてとらえると、経済効率性の観点から望ましい成果です。今後、社会やお客さまの間で、女性の活躍が増えてくれば、スペースがジェンダーレスとなることによる新しい視点が、スペースの価値創造によりよい影響をもたらし、ひいては将来のキャッシュフローにとってプラスになると認識しています。

スペースのスピリット「スペースイズム」は変わっていませんが、その内容は進化し続けています。その進化に必要な1つのエレメントが、女性の活躍と考え、その一端を担えるように心がけています。

私からみなさまへのメッセージは以上です。ありがとうございました。

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