2022年5月13日に行われた、株式会社ファブリカコミュニケーションズ2022年3月期通期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社ファブリカコミュニケーションズ 代表取締役社長 谷口政人 氏

当社の企業概要

谷口政人氏:株式会社ファブリカコミュニケーションズ代表取締役社長の谷口でございます。本日はお忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただきまして誠にありがとうございます。さっそくですが、2022年3月期通期決算についてご説明させていただきます。

まず、会社概要を簡単に説明します。当社ファブリカコミュニケーションズは、「テクノロジーで社会の課題を解決する」というミッションのもと、さまざまなインターネットサービスを提供しています。

当社グループは、親会社である株式会社ファブリカコミュニケーションズと、100パーセント子会社である株式会社メディア4uの2社で構成されています。当社グループの従業員数は2022年3月31日現在、連結で163名です。

アジェンダ

本日のアジェンダです。はじめに2022年3月期の連結実績、続いてセグメント別の実績、インベストメント・ハイライト、最後に2023年3月期の業績予想についてご説明します。

【連結】FY2022.3 業績サマリー

2022年3月期連結の通期業績についてご説明します。売上高については58億5,800万円となり、創業以来過去最高の売上となりました。昨年実績は48億2,600万円でしたので、前期に比べ10億3,100万円増加し、前年比21.4パーセント増となっています。

営業利益は2021年3月期より2億6,400万円増加して9億2,300万円で着地、前年比40.1パーセント増となりました。経常利益に関しては9億3,900万円で前年比42.8パーセントの成長、当期純利益は5億7,400万円で前年比26.1パーセント増となりました。こちらも同様に創業以来過去最高となっています。

【連結】FY2022.3 業績ガイダンス

業績ガイダンスに対する進捗結果です。主力事業の1つであるSMSソリューショングループの業績が好調に推移した結果、予想を上回っての着地となりました。売上高は56億7,000万円の業績予想に対して達成率103.3パーセント、営業利益および経常利益はそれぞれ達成率108.5パーセント、108.7パーセントとなっています。

また今期は、当社インターネットサービスグループ関連のソフトウェア資産および連結子会社が保有する有価証券など、約6,000万円程度の減損処理を実施しましたが、当期純利益でも計画値を上回り達成率100.2パーセントで着地することができました。

【連結】業績推移(四半期別)

過去3年の四半期別の連結業績推移グラフです。前年比で第4四半期の売上高は20.7パーセント増、営業利益は37.2パーセント増と好調に推移しています。

【連結】業績推移(通期)

年間の推移で見ると、営業利益および経常利益はともに前年比40パーセント超の成長率を実現しています。

【連結】貸借対照表

貸借対照表です。第4四半期と比較すると純資産が1億9,700万円増加し、自己資本比率が63.7パーセントに上がっています。

【連結】FY2022.3 業績サマリー(セグメント別)

セグメント別の実績およびKPI推移についてご説明します。スライドはセグメント別の業績サマリーです。主力事業の1つであるSMSソリューショングループの売上は、前年比31.6パーセント増の32億8,600万円となりました。

U-CARソリューショングループにおいても順調に業績を伸ばし、売上は前年比15パーセント増の11億3,500万円となりました。インターネットサービスグループの不調をその他のセグメントでカバーすることができました。後ほどセグメントごとに詳細を説明します。

【連結】売上高業績推移(四半期別)

四半期別の売上高の推移です。第4四半期は前年比20.7パーセント増、第3四半期から比較して9.7パーセント増の16億1,400万円で、四半期売上高として過去最高となりました。SMSソリューショングループが想定以上の成長率で推移したことに加え、第4四半期は季節性もあり、前年同期比で大きく増加しています。

売上高推移・営業利益推移(四半期別)

それでは個別に見ていきます。SMSソリューショングループの第4四半期売上高は前年比33パーセント増で9億4,800万円、営業利益は前年比25.6パーセント増で2億6,200万円となりました。

季節性による既存顧客のSMS配信数増加により、四半期で過去最高売上、セグメント利益を更新しています。

主なKPIの推移

当社のSMS配信サービス「メディアSMS」の導入社数については、2022年3月末時点で3,521社で、前年同期に比べ745社、第3四半期からは175社増加しています。

右側のグラフでは広告宣伝費の売上高に占める割合、つまり売上高広告宣伝費比率の推移を示しています。第4四半期は積極的に広告展開を実施しましたが、今後も売上高に対する広告宣伝費比率をコントロールしながら効率的に新規顧客の獲得を行っていきます。

トピック

2022年3月期の当セグメントのトピックスとして、地方自治体への取り組みを挙げています。8月に当社子会社の株式会社メディア4uと株式会社ホープ(現・株式会社ジチタイワークス)と資本業務提携を結び、さらに10月にはCENTRIC株式会社と協業し、新型コロナウイルス感染症への対応業務ソリューションの提供を開始しました。

また1月には、総合行政ネットワークのLGWANに対応した「メディアSMS for LGWAN」というサービスをリリースして、大阪府豊中市、千葉県などに採用されました。また自社の動きとしては、大阪、名古屋、福岡と首都圏以外にも拠点を構え、SMSサービスの地方展開に力を入れています。

トピック

地方自治体におけるSMS活用事例としては、新型コロナウイルス感染者への連絡手段の用途が最も注目されています。例えば千葉県では、独自に業務支援システムを開発していますが、そのシステムと当社のシステムを連携させることで、人の手を介することなく新型コロナウイルス感染症患者への連絡を可能としました。

内容としては、症状悪化時の対応、自宅療養やホテル療養の対応、電話がつながらない場合の注意喚起など、さまざまな場面で利用されています。

自治体では他にも大阪府豊中市、東京都杉並区、調布市、神奈川県、沖縄県、北海道では札幌市、兵庫県西宮市、鹿児島県鹿児島市にも採用され、地方自治体の開拓は順調に進んでいると認識しています。

また、SMSの用途も新型コロナウイルス感染症対策だけではなく、徴税や検診勧奨などへの活用が見込まれることから、今後さらに地方自治体のSMS利用が活発化するようソリューション提供を行っていきます。

売上高推移・営業利益推移(四半期別)

U-CARソリューショングループについてです。こちらのセグメントも第4四半期は、売上高および営業利益はともに過去最高値を更新しました。またセグメント営業利益率も30.9パーセントとなっています。

主なKPIの推移

当セグメントのKPIとして置いている「symphony」の導入社数について、第3四半期から102社増加し、3月末時点で3,325社となりました。

順調に導入社数が伸びていますが、その要因として静岡支店および広島支店の開設により営業エリアが拡大したことが挙げられます。右の図にあるチャーンレートの主な増加要因は、一部加盟店の広告出稿の見直しによる解約が増加したものと分析しています。

トピックス

トピックスとしては、今年3月に、現在ブラウザ版で提供している「symphony」のiOSアプリ版をリリースしました。第1弾としては車両情報登録のサポート機能、第2弾としては問合せ管理機能を提供しています。これにより、オークション会場や出先からすぐ車両登録ができるようになりました。

また営業時間外での顧客対応などもスマートフォンから可能となり、顧客体験の向上に役立つサービスとなっています。今後も来店時のアンケート機能や広告出稿管理機能など、さまざまな機能を実装していく予定です。

トピックス

4月より当社が運営している中古車検索サイト「車選びドットコム」のオフィシャルアンバサダーとして、土屋圭市氏に就任いただきました。土屋氏の発信力を活かして、「YouTube」や「Twitter」などソーシャルメディアを通じて「車選びドットコム」の利用ユーザー数を増加させていきたいと考えています。

売上高推移・営業利益推移(四半期別)

次にインターネットサービスグループです。第4四半期においては第3四半期から続けている原価低減施策が進み、黒字化することができました。「Google」のアルゴリズム変更に対応する施策も継続的に行ったことで、徐々に検索順位も改善されてきており、売上高も微増しています。一方で黒字化は達成したものの、継続的な成長性に課題があるということは認識しています。

トピック

トピックスとしては、丸紅プラックス株式会社、株式会社東芝と当社の3社で連携し、EV電池の状態を診断する技術の実証実験を行うことで合意しました。中古車EVの安全性向上や、中古車流通市場の活性化を目的とした新しいサービスの検討を行い、次世代に向けたEV普及に寄与するソリューション開発やサービスの創出を進めていきます。

売上高推移・営業利益推移(四半期別)

オートサービスグループについてです。新型コロナウイルス感染症とガソリン高の影響を受けましたが、通期売上高は前年比7.9パーセント増の着地となりました。通期での営業利益は9,100万円で前年比29.4パーセント増となっています。

トピック

今期の5月に新たに浜松営業所をオープンさせ、静岡エリアへのサービス提供を行っていきます。

インベストメント・ハイライト

すでに当社をご存じの投資家さまも多いと思いますが、インベストメント・ハイライトとしてあらためて、当社主力事業についてご説明します。要点としては3点です。

1つ目は市場について、高い成長ポテンシャルを有する市場機会を持っています。2つ目は成長性について、顧客数と顧客単価を最大化することで高成長を持続していきます。3つ目は投資について、規律ある成長投資を行っていきます。次のスライドでこの3点についてご説明します。

高い成長ポテンシャルを有する市場機会

当社は「テクノロジーで社会の課題を解決する」というミッションのもと、主にSMS配信サービスと中古車販売事業者向けの業務支援サービスを主力事業として、顧客の業務効率化向上に資するサービスの提供に取り組んでいます。

特に成長を牽引する主力事業となっているSMSソリューショングループは、法人向けにSMS送信サービス「メディアSMS」や関連サービスの提供を行っています。

もう1つの主力事業であるU-CARソリューショングループは、中古車販売事業者向けの業務支援クラウドサービス「symphony」などの提供を行っています。

デジタル化の進展が追い風となり需要増加が見込まれる市場

国内SMS送信サービス市場では、今後デジタル化が進展し、法人のニーズが大幅に拡大することが予想されています。SMS配信業界を調査しているデロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社が昨年9月に発表したレポートによると、2020年度から2025年度までのCAGR(年平均成長率)は41.5パーセントと予測されており、今後も高い成長が期待される、有望な市場と考えています。

北米では企業のSMS活用が活況、日本と比べ80倍以上の市場規模

海外では、日本以上に企業と顧客のコミュニケーション手段としてSMSが活用されています。調査会社のQYResearchによると、世界のA2P-SMSの市場規模は2020年で推定199億7,000万米ドル、日本円で約2兆6,000億円と推測されています。

同資料によると、北米で27パーセントのシェアを占めており、日本と比較すると2020年では84倍の市場規模があるとされています。もちろんマーケットの規模は違いますが、日本におけるSMSサービス市場が、潜在的に高いポテンシャルを有していることがわかると思います。

他業種の車両販売事業への進出により、事業所数は増加傾向にある市場

U-CARソリューショングループの市場について説明します。矢野経済研究所が発表している自動車アフターマーケット総覧によると、中古車販売事業者は国内で約3万店あると推測されています。ガソリンスタンドや整備事業に特化していた他業種の事業者が、新規に中古車販売に進出し顧客獲得を進める動きを活発化しているため、近年増加傾向にあると考えられています。

当社はその中で、2030年に「symphony」導入社数1万社という中期的な目標を立てています。2022年3月期は、新たに静岡と広島の2拠点を開設しましたが、今後も全国に拠点を増やし、提供可能エリアを拡大していくことで、目標達成できる可能性が高いと考えています。

顧客数と顧客単価の最大化による高成長の継続

当社は主力2事業の高い成長の継続に向けて、それぞれの市場における顧客数の最大化と顧客あたりの売上高の拡大を図っていきます。SMSソリューショングループは高付加価値化を目指した差別化を基本戦略とし、U-CARソリューショングループはコスト・リーダーシップ戦略の継続により、中長期の成長戦略の基盤を作っていきます。

導入支援・コンサルを含めたサービス体制による「差別化戦略」で市場を牽引

SMSソリューショングループは、導入支援・コンサルを含めたサービス体制による「差別化戦略」で、市場を牽引していきます。SMSの法人普及率はまだ5パーセント以下と低く、今度の開拓余地が大きい市場です。

当社は顧客数の最大化のため、自治体に向けたソリューション営業、toB向けサービスを展開するプラットフォーマーや大手DXコンサル事業者をパートナーとすることで、新規顧客を開拓していきます。また全国に営業拠点を置き、首都圏以外の企業の導入も促進していきます。

顧客あたりの売上高の拡大については、既存顧客に別事業部やグループ企業の営業を行うことで、1社あたり、またはグループあたりのSMS配信数を増やせると考えています。

また、顧客企業および自治体の多様化するニーズや課題解決に向けたソフトウェアソリューションを提供し、SMSの高付加価値化を実現し競合と差別化を図っていきたいと考えています。

「コスト・リーダーシップ戦略」による顧客基盤の構築

U-CARソリューショングループは、先ほどお伝えしたとおり、営業拠点数の増加による営業可能エリアの拡大を進めるとともに、社内用の営業管理システムの開発による営業効率の改善で、社員一人あたりの担当顧客数の増加を図っていきます。

当セグメントでは、コスト・リーダーシップ戦略による顧客基盤の構築を進めていきます。コスト・リーダーシップ戦略とは、競合他社より低い価格で積極的に顧客数を増やしつつ、より低い運営コストで収益も確保していく考え方です。

「sympohny」は、中小規模の中古車販売店が導入および活用しやすい機能と利用料を設定しています。低いコストを実現し競争優位を保ちながら、中長期的には付帯サービスの強化を図り、クロスセルで顧客単価の向上を目指していこうと考えています。

規律ある成長投資

持続的な企業価値向上に向けた投資について、説明します。基本方針は、成長投資を実行しながら安定的な財務基盤を確保し、継続的な株主還元を行おうと考えています。

具体的な資金使途は、グループとしての利益を確保する範囲内で中長期的な業績に貢献する開発や顧客獲得に事業投資を継続し、主力のBtoB領域でシナジーが見込める企業やサービスに対するM&Aを活用した投資も検討していきます。

株主還元および資本効率の改善を目的とした自己株式の取得も、今後機動的に検討していきたいと考えています。

資金調達は、継続した事業拡大や収益力の向上および適正なコストコントロールにより、営業キャッシュ・フローを継続して拡大させるほか、デットやエクイティも必要に応じて活用していく考えです。

【連結】2023年3月期 業績予想

2023年3月期の業績予想を説明します。2023年3月期連結売上高は、前年比18.2パーセント増の69億2,200万円と計画しています。営業利益は前年比18.6パーセント増の10億9,400万円、経常利益は16.9パーセント増の10億9,800万円です。純利益は22.3パーセント増の7億200万円で、過去最高の売上および利益を計画しています。

各セグメントでは、SMSソリューショングループの売上高は24.5パーセント増の40億9,100万円、U-CARソリューショングループは12パーセント増の12億7,100万円、インターネットサービスグループは1.6パーセント減の2億5,300万円、オートサービスグループは10.8パーセント増の13億400万円と計画しています。

【連結】業績推移

営業利益率および親会社に帰属する当期純利益率も、順調に伸ばす計画です。

株主還元 - 創業30周年記念配当を実施予定

当社は、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元の実施という基本方針のもと、2023年3月期末の1株あたりの年間配当金を34円と予定しています。内訳は、普通配当29円に加えて、創業30周年の節目を迎えた記念として5円の上乗せを予定しています。

こちらにより、配当性向は計画値換算で24.1パーセントとなります。「2023年3月期配当予想に関するお知らせ」というプレスリリースを発表しています。併せてご確認ください。

以上で、決算説明を終了とさせていただきます。最後までお聞きくださりありがとうございました。

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