「資産形成」という言葉を出すと、「何か難しそうな感じがする」、「何をどうすればいいのかわからない」という声が数多く挙がりそうです。

しかしながら、「資産形成」とは文字どおり「資産を形成(つく)る」という、至って当たり前のことにほかなりません。ただ、実践となると、その方法は様々で何をどのようにすれば良いかわからないという方がいらっしゃるのもたしかでしょう。

そこでここでは、根本に立ち返って、四則演算、つまり「足し算」、「引き算」、「掛け算」、「割り算」を軸にした、資産形成のシンプルな実践方法についてお伝えしていきます。

資産形成=貯蓄+投資

「貯蓄から投資へ」、「貯蓄から資産形成へ」という言葉を耳にされたことのある方も少なくないかと思います。

これは、日本国内の個人金融資産が欧米など他の先進国に比べ、相対的に預貯金の割合が非常に多い一方、株式や投資信託等のリスク資産の割合が非常に少ない現状を踏まえ、バランス調整を促す意味では有意義な掛け声といえるでしょう。

しかしながら、資産形成を実践するうえでは、貯蓄も投資もそれぞれともに重要なことに変わりありません。

なぜならば、貯蓄が既にある状態、あるいは貯蓄を増やし続ける仕組みができている状態があってこそ、投資を実行に移すことができるからです。その意味で資産形成は「貯蓄+投資」の足し算と考えるのが適切といえます。

支出=収入-貯蓄

貯蓄が既にある状態は別にして、0(ゼロ)から貯蓄を増やし続ける仕組みをつくるにはどのようにしたら良いのでしょうか?

ここで、よく陥りがちなのが「貯蓄=収入-支出」と考えて、「収入を増やすのは容易ではないから、とにかく支出を減らしてなんとか貯蓄できる状態にしよう!」と試みることです。

これも決して間違いとは言い切れないところはあるものの、支出を減らす、つまり節約を継続するのは、そう容易なことではありません。

それよりはむしろ「支出=収入-貯蓄」の引き算の考え方で、月々の収入から無理のない貯蓄額をまず差し引いてしまって、その範囲を支出可能額とするほうが無理なく貯蓄を継続できるといえるでしょう。

とくに最近はつみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などといった節税効果のある制度に基づいて、貯蓄を通過点として自動的に積立投資できるツールが各金融機関で用意されていますので、こういった制度やそれに紐づいたツールを活用するのがおすすめです。

投資は「掛け算」と「割り算」~複利計算に便利な「72の法則」~

「投資」と一口にいっても、それこそ方法は様々です。しかし、ここではシンプルにリスク資産の代表格ともいえる株式や株式を投資対象とした投資信託で投資を実行することにしましょう。

ここで重要なのは、投資に伴うリスクを把握することはもちろんのこと、「年率○%で△年運用すれば、たとえば現在保有している100万円が200万円(つまり倍)になるか?」といったように、ざっくりとした目安を数字で捉えておくことです。

ここでいう「年率○%」というのは一般に複利を意味します。複利とは、元本に生じた利子を次期の元本に組入れて、今期の利子に対しても次期以降に利子がつくことを指します。

上記の問いに答えて、運用結果の目安を数字で捉えるのを、正確を期した計算式で行おうとすると少々複雑です。しかし、ここでの目的はざっくりとしたものですから、そうした時に便利なのが「72の法則」と呼ばれるものになります。

この「72の法則」とは、上記の問いの答えとして、「年率○%×運用期間△年=72」が当てはまるというものです。たとえば、この72の法則を用いて、年率1~10%で運用した場合、それぞれ運用期間がどのくらいの年数で現在の保有資産が倍になるかを計算すると、以下のとおりになります。

  • 年率1%×運用期間72年=72
  • 年率2%×運用期間36年=72
  • 年率3%×運用期間24年=72
  • 年率4%×運用期間18年=72
  • 年率5%×運用期間14.4年=72
  • 年率6%×運用期間12年=72
  • 年率7%×運用期間10.3年=72
  • 年率8%×運用期間9年=72
  • 年率9%×運用期間8年=72
  • 年率10%×運用期間7.2年=72

このように投資は年利回りと運用期間の掛け算で捉えていくことが基本です。

また、たとえば「年率6%の場合、資産を倍にするのに運用期間は何年必要か?」といった問いに対して、実際計算するにあたっては「72÷年率6%=運用期間12年」というように、割り算を用いることになります。

結びに

ここでは資産形成の実践にあたっての基本中の「き」にあたる部分を、四則演算を軸にご紹介しました。資産形成は長丁場で実践していくものです。

そうであればこそ、「継続は力なり」ですから、少しずつでも楽しみながら継続できるよう工夫していくことが大切です。本稿が少しでも多くの方のご参考となれば幸いです。

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