「実りある豊かな人生にしたい」とお考えの方は多いかと思います。

しかし、残念ながら様々な制約で、なかなかうまくいかないことも多々あるもの。この制約の大きなものの一つとしてお金に纏わる話は避けては通れないでしょう。

そこで今回は、人生をより豊かにするために、「生涯賃金」と「金融資産」の2つの軸で考えるライフプランの基本についてお伝えしていきます。

会社員の生涯賃金は3億円?

読者の皆様が職業上のキャリアを考える際に、年収を気にされる方は非常に多いかと思います。

しかし、生涯賃金まで気にして考えてみたという方は意外と少ないのではないでしょうか。ライフプランを考えるうえで、年収はもちろん重要ですが、生涯賃金もまたそれ以上といって良いほど重要です。

生涯賃金とは、学校卒業から定年まので間に得られる賃金(退職金を含む)の総額のことです。かつては「会社員の生涯賃金は3億円!」といわれていました。

しかしながら、どうやら最近は状況が異なるようです。詳しく見ていきましょう。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の『ユースフル労働統計2020』によると、男女の性別及び転職の有無、学歴、企業の規模により異なります。まず、男性について見ていきましょう。

男性がフルタイムの正社員として、同一企業で60歳まで働き続けた場合、生涯賃金は高校卒 2億6千万円、高専・短大卒2億5千万円、大学卒2億9千万円となっています。同じ企業規模で転職する場合は、高校卒2 億1千万円、高専・短大卒 2億2千万円、大学・大学院卒 2億7千万円とやや低下する傾向にあります。

一方、女性がフルタイムの正社員として、同一企業で60歳まで働き続けた場合、生涯賃金は高校卒1億9千万円、高専・短大卒2億1千万円、大学卒2億4千万円となっています。同じ企業規模で転職する場合は、女性は高校卒1億5千万円、高専・短大卒1億8千万円、大学・大学院卒2億2千万円と男性同様やや低下する傾向にあります。

ちなみに、同調査によれば、一般的にいわれる「会社員の生涯賃金3億円」を達成できるのは、大卒の従業員1,000人以上の規模の会社に勤めている人に限られます。

定年延長が決定しているが、介護や体力の問題もある

上記統計での定年は60歳とされていますが、最近は定年延長の法整備が進んでいます。

元々、日本の定年は55歳でした。それが1994年に60歳になり、2013年からは65歳まで可能となりました。2025年4月からは全ての定年制の企業において、定年が65歳になります。また、さらにその先について、2021年4月には定年が70歳へと段階的に引き上げられることが国会で決定されました。

定年退職後の再雇用制度では、給与が2割~4割減ることが一般的ですが、定年自体が引き上げられることで私たちの生涯賃金が増加することは十分可能性があります。

一方で、老化による体力的な衰えや両親の介護などの理由により、定年が引き上げられたとしてもこれまで通り働くことが難しくなるおそれもあります。

転ばぬ先の杖としての生涯賃金と金融資産

そこで現役世代の方にとって重要になるのが、転ばぬ先の杖です。30歳、40歳、50歳と年齢を重ねるごとに年収は高くなり、保有する金融資産が増加するイメージを持っている方もいらっしゃることでしょう。

しかし、生涯賃金の観点から考えると、暮らしが豊かになり貯蓄額が増加したからといって、単純に安心できる訳ではありません。あくまでも、生涯賃金の一部が金融資産に振り替わっているだけであり、年齢を重ねるごとに将来獲得できる賃金は減少していく可能性が高いからです。

老後の安定した生活のためには、生涯賃金の減少の傾きを小さくし、保有する金融資産額の傾きを大きくする必要があります。以下は、働き方に応じた金融資産と人的資本(これを累積すると「生涯賃金」になります)の関係のざっくりとしたイメージ図です。

この「働き方」の違いに着目して、保有する金融資産を検討する考え方は、ざっくりとわけると、会社員や公務員といった債券型の働き方の場合、株式などの相対的に変動が大きい金融資産を保有し、個人事業主や会社経営者といった株式型の働き方の場合、債券などの相対的に変動が小さい金融資産を保有するといった具合です。

こうすることによって、自分自身という人的資本と保有する金融資産のトータルで見たバランスの取れたポートフォリオ構築に役立ちます。ぜひご参考いただいて、ご自身とご家族のライフプランの具体的なイメージをもち、できることから実践してみていただければ幸いです。

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