ソニーは、2021~23年度を対象とした第4次中期経営計画で、イメージング&センシング・ソリューション事業(I&SS=半導体事業)に約7000億円の設備投資を行う。20年度から延期した増強案件に加え、製造プロセスや大判化対応などを充実させて、CMOSイメージセンサー(CIS)の利益率向上を図っていく。

ファーウェイ問題で投資を一時延期

 同社は当初、18~20年度にI&SS事業に約7000億円の設備投資を予定していたが、米国の制裁に伴って、スマートフォン用の大手顧客の1社だったファーウェイへの出荷停止などでCISの増産計画を一部先送りし、結果的に6171億円にとどめた。ただし、長崎テックに建設していた増設棟「Fab5」は予定どおり21年4月に稼働させ、CISの月産能力も当初の計画どおり20年度末時点で300mmウエハー換算13.9万枚まで増強した。

21年度は数量シェア回復へ

 CISについては、ファーウェイへの出荷停止で失った数量シェアの回復を21年度中、収益性の改善を22年度中に実現する考えだが、数量シェアの回復については見通しがほぼ立っているという。下期に画素サイズ0.7μm品の量産を立ち上げる予定で、22年度には高付加価値品の投入を進めていく。

 23年度時点の月産能力については見通しを公表しなかったが、22年度に強い需要が想定されており、20年度に延期した増強案件に加え、22年以降に計画していた一部の増強案件も前倒しで進めるため、21年度は3050億円(うちCIS向けは2850億円)の設備投資を計画する。

20年度は減収減益も生産は復調

 先ごろ発表したI&SS事業の20年度業績は、売上高が前年度比5%減の1兆125億円、営業利益が同38%減の1459億円だった。このうちCISの売上高は同6%減の8722億円。設備投資額は1940億円(うちCIS向けは1800億円)だった。

 21年1~3月期の月産能力13.9万枚に対し、ウエハーの投入実績は12.8万枚。自社生産能力をフル稼働させ、スマートフォン新モデル向けの生産や在庫の積み増しなどを進めた。

21年度は増収減益を想定

 4~6月期には月産能力を14.1万枚まで高め、ウエハー投入量も13.8万枚まで増やす予定で、自社生産能力はフル稼働を維持する。足元では半導体不足が顕著になっているが、CISに用いるロジック半導体はパートナー各社の協力で21年度の生産計画をカバーするキャパシティーをすでに確保できていると説明した。

 21年度のI&SS事業の業績見通しは、売上高が同12%増の1兆1300億円(うちCISは同11%増の9700億円)、営業利益が同4%減の1400億円を見込む。デジカメ向けCISの需要回復などで増収を見込むが、研究開発費を250億円増やす計画であることなどが減益要因になる。今後の計画の詳細は5月末に開催予定のIR Dayで説明する予定だ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏