2020年11月6日に行われた、DMG森精機株式会社2020年12月期第3四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:DMG森精機株式会社 取締役社長 森雅彦 氏

2020年 決算ハイライト

森雅彦氏:みなさま、こんにちは。2020年度第3四半期、1月から9月の決算説明をさせていただきます。はじめに、第3四半期の決算の概要をお伝えします。全社受注は2,065億円、前年同期と比べて36パーセント減となりました。依然、厳しい状況が続いていますが、第2四半期、すなわち4月、5月、6月を底に、7月、8月、9月と、リーマンショック後に比べるとゆっくりですが、着実に回復してきています。

10月の数字は速報値ですが、9月よりもよくなっていますし、今の状況が続けば、年末・来年に向けて、回復してきたということが証明できるのではないかと考えています。

私どもが取り組んでいる5軸化、複合化、自動化、デジタル化が、お客さまに非常に受け入れられていまして、1台当たりの受注金額は前年度比で4パーセント増となっています。

一部の競合が、非常に高い割引率で受注に走っている例もありますが、そういう案件には積極的に参加せず、適切な在庫を保ち、お客さまと10年、20年の長い信頼関係を築き上げた価格体系の中で商売をしています。

また、2000年から2010年ごろ、アジア、特に中国で、たくさんの中国製、あるいは非常に安価な中古機、コピー機等がたくさん設備されましたが、そういった機械は、このリセッションの中で、スペアパーツが来ない、機械そのもののつくりがゆるかった、見た目には同じに見えるが焼入れがちゃんとされていなかった、ベアリングの性能が悪かった、といった感じで、たくさんの機械が止まっています。

これを数ヶ月後に稼働させようとしているのが今ですが、稼働できないということで、今まで3年、4年で機械を入れ替えてきたお客さまたちが、やっと減価償却をする意味、「5年で割る」「10年で割る」ということを考えた時に、私どもの、高耐久性で精度がずっと続き、また、故障してもスペアパーツがすぐに来るという機械の価値を認めていただきまして、他社のリプレース需要を取り込んでいっている状況です。

このデジタルの時代は、デジタルで任せられることはデジタルにし、従来型の対面、もしくは、リアルな加工や商談はきっちりと行うという、適切なデジタルとリアルのミックスが重要です。欧州においても、中国においても、日本においても同じ取り組みを行っています。ここが、私どもが全世界で直接販売・直接サービスを行っていることの強みです。

DXのいいところは、1つのデジタルツインの画像なりを作れば、それを、あとは欧州各国語・中国語・日本語・英語等に翻訳を付けるだけで、変わるわけですから、全世界展開が非常に低コストで、また、素早くできるようになっています。

ハイブリッド資本は、うまく調達することができました。また、投資していただいたみなさまに非常に感謝しています。(2020年)8月31日に370億円調達しまして、また、10月29日には330億円を、非常に好評のもと、達成することができました。10月末には36パーセントの株主資本比率になっています。後ほど詳しく説明させていただきますが、3年程度で高い株主資本比率に持っていけるという自信がついてきました。

CSR、SDGsなど、いろいろな言い方がありますが、2021年以降、DMG MORIグループの商品はすべてCO2ニュートラルになるように、ドイツ側と協力して取り組んでいるところです。

決算概要

決算の概要です。売上収益は2,344億円、営業利益は62億円となっています。マイナス40億円の金融収支で、税引前利益で23億円。当期利益が現時点でちょうどフラットとなっています。

通期の見通しについては、もう残りが11月、12月だけですから、かなり確実になってきまして、売上3,300億円は確実にいけるということで、プラス10億円、20億円くらいかなというところです。営業利益に関しましては、100億円から110億円くらい出るということで、従来100億円までとしていましたが、10億円程度上積みできるのではないかと考えています。

金融収支は通期でマイナス50億円となりまして、税引前利益が50億円、当期利益としては15億円から30億円の間と考えています。配当は、こういう時期で、キャッシュフローを通期でほぼフラットに持っていきたいと考えていますので、かなり減額しますが、通期で20円とさせていただきたいと考えています。

四半期業績推移

四半期の業績推移はこのようになっています。第4四半期の売上と利益は、だいたいこのような感じになるのではないかと考えています。

営業利益増減分析 2019年度第3四半期累計 vs 2020年度第3四半期累計

ウォーターフォールチャートはこのようになっています。まず、安値受注をやめたことによる粗利益の改善。そして、人件費カットをまだ続けています。人件費を戻すのは来年以降になると思いますが、もともと昨年が実質、過去最高売上・最高利益でしたので、800万円をちょっと超えていた人件費を、私をはじめ全員で耐え忍んで、今では660万円台ほどまで下げています。社員には大変申し訳ないことに、マイナス18パーセントほどになっているわけですが、これで減らしています。

デジタルイノベーションによる販管費改善については、「JIMTOF」や「IMTS」などの多くの大きな展示会がなくなりましたので、そういったところでコストがだいぶセーブできていまして、プラス25億円となっています。

ただ、いかんせん数量がこれだけ減っていますので、62億円の営業利益を確保するのがやっとであるという状況です。

キャッシュフロー

キャッシュフローに関しては、第3四半期まではキャッシュが流出していますが、第4四半期で緻密に売上、そして第3四半期等では検収がコロナの影響で最後の立会いに行けない等がありまして、これが今、急速に進んでいます。

例えば海外の案件でも、7月にイギリス、8月にフランス、9月、10月にドイツなど、私どものベテランの据付エンジニアがお客さまに訪問しまして、数十台の機械の検収をあげて、そういったお金が入ってきます。ドイツのエンジニアがアメリカに行く、あるいは中国に行くなど、同じようなことも起こっていまして、この分が第4四半期に入ってきます。

また、第4四半期で随分受注が回復してきましたので、その分の注文時の前受金が、全世界平均でいくと20パーセントほどいただいているわけですが、これが入り始めますので、そういった意味で第4四半期は回復してくるものと考えています。

貸借対照表サマリー

貸借対照表です。劣後ローン、劣後債で資本を増強しました。12月末でネットデットは700億円程度に抑えられると考えています。

そして、ハイブリッド資本による金利が1パーセントから2パーセントです。これは組み合わせによって変わり、年間約12億円かかりますが、AG株式のDPLTAの補償の分が減りますので、追加的な金利負担としては、グループ全体ではほぼ変わっていないということで、全体の利益に与える影響は発生していません。

次期3年の事業⾒通し

前回、中間決算の時に発表させていただきました次期3年の事業見通しは変えていません。これの前提は、IMFをはじめ、多くの機関が3年かかるという回復予想に基づいて、そのとおりに工作機械市場が回復し、我が社が同じようにシェアを維持しつつ、少し伸ばせばどうなるかということを書いています。利益率に関してはやや保守的に見ていますが、このような状況になっています。

また、不服申立ての裁判について、ドイツの裁判は時間かかりますからまだ分かりませんが、遅くとも1年から2年……多くの少数株主が株の買取を行った際に、ドイツは少数株主の権利の保護が非常に強い国でありますから、それを1件1件結審していくのにしばらく時間がかかります。

多くの場合は、今の我々の買取価格でほとんど問題ないと思いますし、現在の市場の価格も1株40ユーロ前後で安定して動いていますので、それが結審すれば、株主資本比率はさらに5パーセントほどポイントアップします。

地域別受注構成(連結受注)

事業環境です。地域別の受注構成については、第2四半期は底で、第3四半期で回復してきました。回復してきたと言っても過去2年間ほどと比べていただくと、まだ弱い段階ではありますが、確実に底は脱したというのがここで見ていただけると思います。

第4四半期の予想もこちらに書いていますが、世間で言われているほどヨーロッパは、よくはありませんが、とても悪くもありません。ロックダウンという言葉に引きずられて、「何にも売れていないんじゃないか」ということになっていますが、実際の営業活動はできています。

1-3月、4-6月の時はほとんどできませんでした。特に4-6月はまったくお客さんのところへ行けませんでしたが、今はそういったことはなく、据付業務など、非常に神経質なお客さまには訪問できませんけれども、普通のお客さまには普通に訪問できるようになってきています。

一番回復が著しいのが中国です。工場では、いったん止めてから再稼働した時に、古い機械の欠点が見えてくるわけです。精度や耐久性、稼働率ということで、猛烈な置き換え需要が始まっています。

1台あたりの機械受注単価推移

1台あたりの機械の受注単価はこのような感じです。日本円にして約5,000万円まで持っていこうと考えています。まだ5,000万円以上に持っていく可能性はありません。

我々にはさまざまな計算式がありまして、お客さまの稼働率や、お客さまで付けられる付加価値でいくと、1スピンドルあたり5,000万円以上にしてしまうと、お客さまの競争力が落ちてくるということで……非常に複雑な計算になります。

いろいろな業界のミックスになるわけで、大きなタービン系の機械や、非常に大きな金型の複雑な機械であれば2億円でも大丈夫なのですが、大量に作る自動車の部品や電気自動車の部品などになると、1スピンドルあたり2,000万円ほどでないと駄目といったように、業界とワークによってきちんと決まっています。

そのへんのプロダクトミックスでいきますと、私どもの今のプロダクトミックスで、会社の大きさでいくと、5,000万円くらいがちょうどいいところかなと考え、さらにもう少しいけると思いまして、付加価値営業に努めています。

連結受注構成 (1月-9月)

連結受注構成です。前回までは業界別のものを作っていましたが、それも感覚的なことなので、こちらですべてカバーさせていただきます。先ほどから申し上げているように、今は中国が非常に忙しくなっています。米州も公共投資、航空宇宙の関係等が非常に強い状況です。

また、日本でも、菅首相が「2050年までにカーボンフットプリントをゼロにする」と非常に強い指針をお出しになりました。非常によいことだと思います。同じようなことは、もうすでにヨーロッパでも起こっていますし、中国ですら起こり始めています。

「カーボンフットプリント」とは、「古い燃焼系のエンジン」ということで、みなさん自動車だけにフォーカスしていますが、海の船舶用のエンジンや、さまざまなところで使われる農機具、建設機械のエンジン、発電機等の内燃機関と、それに付随するギアなど、さまざまな伝達系のものも含まれます。

そして、水や空気をハンドリングするものについては、効率を上げるために、嵌合をきっちりとしてバランスを取るということで、高度な加工が求められます。

そういったところで非常にたくさんの需要が出てきています。これはもう全世界です。日本でも、北欧でも、中国でも、ブラジルでも出てきているということで、全世界で、二酸化炭素を削減してクリーンな環境を作っていくというのは、すなわち工作機械にとっては精度との戦いで、すごい技術革新とビジネスチャンスが出てくると確信しています。

機種別には、やはりCOVID-19の件もありまして、もっと自動化を進めなければなりません。人の出勤や会社に頼らない、自動化した仕組みで物を作っていきたいという需要が、世界中で出てきています。

自動化する前には、まず工程を集約しなければなりません。1チャックもしくは1パレットで、1つのワークをほぼ完了させるということで、1パレットで加工できる同時5軸加工機、1チャックで加工できる複合加工機、もしくはパレットでハンドリングできる横型マシニングセンタが、猛烈な需要になっています。

我々も、縦のマシニングセンタは20世紀の技術と考えまして、基本的にはすでに注文生産だけにしています。どうしても、弊社の非常に高精度な縦のマシニングセンタが必要というお客さまもいらっしゃいます。そういう価値をわかってくださるお客さまに、競合との無駄な競争をしないで、デジタル化と自動化をお付けして提供するというかたちに、このコロナ禍の中で決断し、変えています。

業種別には、我が社では初めてですが、自動車の順位がこれほど下がってしまいました。世界金融危機の時は、自動車比率が30パーセント近くあったのですが、この四半期だけでいくと10パーセントになってしまったというわけです。

反対に、さまざまな環境対応や、繊維機械・フィルム機械などのようにマスクや医療機とかを作る感じの一般的な機械が多くなっています。そして、そこをサポートしている半導体関係、電気等の中小企業。また、プラスチック化、軽量化が進みますから、金型。航空・宇宙でについては、今は宇宙のほうが大きいです。それから自動車・二輪という感じになってきています。

もう少しすると、エネルギーについて、どうやって電気を起こすのかという話に必ずなってきます。もしくは、水素をどうやって運ぶのかというふうになってくると、エネルギーの分野が、これからちょっと増えてくるのではないかと思います。メディカルは、人口との関係でこのような状況ですが、この5パーセントはほとんどインプラントになっています。

規模別にはあまり大きく変わっていません。私どもは、70パーセント以上がG20の先進国で売れていますので、そういう地域では、自分の固有の技術を持った100名前後の中小企業のみなさんが、しっかりがんばっていらっしゃるということです。

DMG MORI デジタルイベント 欧州工場⇒欧州・米州・中国向け

デジタルとリアルの融合が非常に重要になっています。たくさんの競合はございますが、全世界に14の工場がある、要するにリアルの拠点があるのが、私どもの強みです。

全世界で150ヶ所ほどのセールスサービスの拠点がありまして、その人たちとデジタルで結び付いています。従来は、ほぼ100パーセントをリアルで行っていましたが、そのうちの工程の、セールスのプロセスの半分以上はデジタル化して、残りをリアル化していこうと考えています。

さまざまなデジタルのイベントを行っています。例えば、欧州工場から欧州・米州・中国向けのものです。

ドイツも10年前はほとんど自動化していなかったのですが、私どもと一緒になって、かなり自動化できるようになりました。ドイツからは、同時5軸に関していろいろ教えてもらいましたし、自動化に関しては日本からさまざまお伝えして、我々グループ全体として、ほぼ同じような商品を全世界で展開できるようになっています。

天津工場オンラインオープンハウス:中国工場⇒中国向け

同じようなことを今度は中国でやっています。デジタルツイン、リニアパレットプール等まではすべて中国でできるようになっていまして、一部は中国で作って、日本にも送ってもらうようになっています。

基本的には輸出管理の関係がありますので、最新の機械をここで作ることはできません。また、精度も日本やドイツとまったく同じにすることはできませんので、ほぼ8割方、中国で作っているお客さまの部品加工には、対応できるものになっています。あとは、ドイツと日本と同じサービス体制を築くことで、非常に厚い信頼を得ています。来年の4月ごろまで、ほぼ工場の生産は埋まっていまして、足りない分は日本とドイツから持っていくという状況になっています。

DMG MORI オンラインテクノロジーデイズ(1): 日本工場⇒全世界およびJIMTOF向け

これは日本から全世界および「JIMTOF」向けになります。「JIMTOF」がデジタルで行われますが、そこでも圧倒的に差のついた展示を行いたいと思っています。

DMG MORI オンラインテクノロジーデイズ(2)

特に一番重要なのは、システムソリューション工場をデジタル化したことです。従来の展示会では、展示のセットアップの期間もなかったですし、大きなシステムものをお客さまに見せることができませんでした。これは、デジタルならではのものです。

しかも、最近の機械は安全のためにカバーがたくさんありまして、中に入って見ていただけないのですけれども、デジタル化することで機械の中に入って、ふだんは危険な領域であっても、お客さんにしっかりと見ていただけます。AGVロボットの開発に取り組んでいまして、こちらも機械の中に入った画像も見ていただくことができます。

これによって、お客さまと「切り屑の対策をどうしようか」「ここの事業をどうしようか」というような、細かな打ち合わせができるようになっています。すべて3次元設計ですので、普通の見本市の10分の1くらいの費用で、かなりの高精細のものができます。単にお客さまをつかむだけではなくて、実際に図面につながっています。

もう1つは、CNC、PLC、ボールねじの振動といったことも含めてデジタルツイン化できてきていますので、ここで加工検証ですとか、一番デジタル化の進んだ機械では、実際に切削シミュレーションをやって表面粗度がどうなるかというところまで、できるようになってきています。

テスト加工の立会いなども、お客さまにソリッドモデルを出していただけるのであれば、かなりの部分までデジタルでできるという状況になってきていまして、ここで大きく差を付けていきたいと考えています。

テクノロジーフライデー(リアル)

一方で、リアルの展示会も、感染対策を完璧にして、少人数でこつこつとやっています。伊賀事業所および東京グローバルヘッドクォータで毎週金曜日にずっと行っていまして、18回ずつ実施しました。

伊賀は場所がありますので20名から30名、東京は20名以内に区切っています。「バスで来たい」というお客さまもいらっしゃるのですが「必ず20名以内にしてください」ということで実施していますが、非常に好評です。

合わせると、ほぼ1,000名のお客さまがに来ていただいておりまして、年内には約1,500名くらいになります。これを今後も、未来永劫続けていこうと考えています。

日本で非常に成功してきましたので、全世界の全工場で同じことを始めました。14工場ありますので、見本市並みです。1ヶ所で、年間でうまくやれば1,000名近く集められますので、14ヶ所あれば1万名を超えるということで、今までの「EMO」「JIMTOF」といった大きなショー並みの商談ができます。

my DMG MORI

「my DMG MORIポータル」です。大変光栄なことに、年末までに4万ユーザーが登録してくださっています。

お客さまの持っている機械がすべて登録されていまして、サービスにもこのチャットで全部送れます。従来、いちいち電話でやっていた内容が、事前に情報を共有して、部品表とつながって必要な部品がすぐに特定できて、早くできるということです。従来、人に頼っていた待ち時間を徹底的になくすことができます。

お客さまがいつパーツ来るのかを確認したいときには、今どの地点にあるかということを示すこともできます。みなさんもAmazonもお買い物をされていると、いつ来るかというのが見られるようになっていますが、まったく同じ仕組みにしています。お客さまも含めて、全体の生産性を上げるという取り組みです。

今後、ここにテスト加工など、さまざまなお客さまとの情報交換などを全部入れていって、最終的にはDMQPの物販まで含めて、最大のサイトに持っていきたいと考えています。

フロンテン(ドイツ)工場へ最先端DX導入:自動化・デジタル化のモデル工場へ

工場自体もかなりデジタル化が進んでいます。フロンテン工場では、先進的な取り組みとして、巨大なAGVを使いまして、monoBLOCKの機械……これは20トンや30トンあるものです。従来700台くらいしかできなかったものを、年間1,000台できる仕組みにしました。ドイツは組合との厳密な契約があり、年間で1,650時間しか働けませんので、その中で最大限の効率を出すことに取り組んでいます。

組み立てマニュアル等も全部デジタル化が進んでいます。このような精度測定のデータもすべて従来は手書きでやっていました。そのすべてデジタルで記録ができて、トレーサビリティで、さまざまな偏差の関係の数値が取りやすくなっています。

新製品:LASERTEC 6600 DED hybrid

日本側で、毎年5台から6台作っていますので、さまざまな新製品がありますが、今回のハイライトとしては、米国の宇宙産業が大変進んでいまして、我々の「NT 6600」をベースにした「LASERTEC 6600」というDirect Energy Depositionの3Dプリンターが完成して、今、アメリカのお客さまに据え付けているところです。

左下の航空宇宙のロケットノズルは多くのお客さまがお作りになりますが、他の産業でも、さまざまなおもしろいローラがあります。真空技術産業は今忙しい業界です。EVにはバッテリーが必要ですが、バッテリーと言えばローラで、さまざまなフィルムを作る、コーティングしていくという部品です。半導体、もしくはバイオの世界で言えば、「いかに高真空にしていくか」ということでして、そういう真空機器の関係等で活躍する機械です。

森記念製造技術研究財団

最後に、ESG/CSRへの取り組みを説明させていただきます。まず、人に関しては、森記念製造技術研究財団で、弊社の株300万株をファンディングで持っています。そこから得られる配当収入をベースに、まず京都大学に寄附講座を設けています。松原教授の元助教授を1人、助教を1人、技官を2人、職員5名の講座を開きまして、学生を募集して今年から始めています。

また、京都大学の総合型、文系も理系も合わせたかたちでの「思修館」という組織がありますが、これは前の松本総長の時に始まり、こちらに年間2,000万円ほどの寄付をしています。

一番ユニークなのが、毎月20万円の学費を当方で負担するものです。日本のトップの精密工学系の大学院の学生さん5名から6名を選び、今は累積で15名になっています。彼らが博士課程にいくところで、3年間しっかりと応援させていただくということを行っています。

私が評議員をやっているベルリン日独センターは、中曽根首相の時に、ドイツのコール首相との間でつくった建物ですが、そこで「ヤングリーダーズフォーラム」が行われていまして、こういったところにもサポートをさせていただいています。

切削加工ドリームコンテスト

そして、非常にこつこつと続けているのが、2004年から始まり、もう17回目になりました「切削加工ドリームコンテスト」です。当社の機械に限らず、日本で微細加工やおもしろい加工をやっている中小企業のみなさん、大企業のみなさん、高専や工学部のみなさんの作品を審査して、毎年今の時期に表彰をして、すべてデジタルツインショールームでお見せするというものです。

これによって、日本の精密加工技術を世間に知らしめると同時に、選ばれたお客さまの商売の発展にもつなげるということを行っています。

地域貢献

地域との関係では、伊賀、奈良は非常に美しい地域なのですが、やはり高齢化によって耕作放棄地が増えてきていますので、ここにブドウの木を植えまして、ブドウ畑化して景観を保つと同時に、障がいのある人たちの働く場所としても提供していこうということで、伊賀に「まほろばファーム」という農業法人を作っています。

また、京都発のベンチャーに、株式会社坂ノ途中という会社があります。ここは、小規模農家から出てくる、不揃いだけれど、味は大変よく、ほぼ無農薬でやっている野菜を日本に物販している会社です。

そこと提携して、そこでできた野菜を我が社の食堂で毎日2,000食程度、サラダバーとして出して、社員の健康管理と同時に、小規模農家の応援を行っています。

伊賀事業所の花火大会ももう10年ほど続けていて、地域の風物詩になっています。また、工場の周辺の、関西本線の新堂駅の付近のまちづくりを伊賀市と協力して、美しい地域環境を進めようとしています。同じようなことで、大和郡山市および伊賀市への桜の木をどんどん植えていくプロジェクトも進めています。

それから音楽の活動支援ということで、イタリア人のパラビーノ氏と、日本の反田恭平さんと組みまして、音楽の支援をするということも行っています。

CO2ニュートラルへの取り組み

一番重要なCO2ニュートラルですが、まず、ドイツ側が非常に進んでいますので、ドイツの手法を全世界展開するということで、Scope3の上流までのCO2ニュートラルの達成を、2021年度中に行いたいと思っています。

また、サプライチェーン全体のCO2ニュートラル削減は、2022年度中に行うこととしています。これもしっかりとドイツの認証機関の検定を受けて、正確なものとしてみなさんに報告できるように、今、努力しているところです。

伊賀事業所:木質バイオマス熱電併給システム (CHP)導入

その取り組みの一環として、私どものオーストリアのお客さまがお作りになったバイオマス発電を、日本で初めて導入します。非常にパフォーマンスが高く、また、非常に経験があるので、奈良や三重の間伐材を使って、バイオマス発電を日本の工場の中で行っていこうとしています。まずは我々の塗装工場で導入して、「塗装工場のカーボンフットプリントをゼロにしよう」という取り組みにしています。

以上、長々とご説明しましたが、私どもの取り組みでございました。確実に工作機械の市況は回復してきていると思いますし、今回、しっかりとブレークイーブンポイントを下げることを社員一同でできましたので、あとは、これをベースに新商品・サービスの開発に努力して、世の中に貢献していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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