お留守番時の4つのルールと息子の不在

Mさんはお留守番するにあたり「鍵は開けない、来客がきても応答しない、外出しない、コンロは触らない」といった4つのルールを決め、お気に入りのDVDもセットして、何度も言い聞かせたといいます。しかし20分ほど経って帰宅すると、息子さんは家にいませんでした。

「まず、施錠したはずの玄関の鍵が開いていたことに驚き、嫌な予感がしました。家に入ると、すべてのドアが開いていて、電気もテレビもつけっぱなし。でも家には誰もいませんでした。一瞬焦りましたが、息子が出かけられる場所は限られています。コロナ禍なので、近所の児童館も図書館も開いていないですし、家を知っている友人もいません。公園だろうと目星をつけ、1つ1つ当たっていくことにしました。そしてすぐに見つかりました。

遊具にはテープがぐるぐる巻きに巻かれていて、遊べません。息子はそれをじーっと見つめていました。約束を守ってくれなかった息子に怒りたかったけれど、ぐっと我慢しました。『どうしたの?』と声をかけると、『コロナでいっぱいいっぱい、なくなっちゃったね』と言いました」

小学校に入学してすぐに休校、慣れない宿題を1人でこなす日々といつもと違う緊張感。耐え切れなくなって家から衝動的に飛び出してしまったのではないか、とMさんは考えているようです。

「とにかく息子が無事でよかったということ。そして、息子は何も言いませんが、小さなストレスをたくさん抱えていることを思い知りました。そんな状況で初めてのことをさせてしまったことを後悔しています」とMさんは話します。

発達障害児とコロナ禍

厚生労働省は、発達障害を抱える子どもの中には触覚・嗅覚などの感覚過敏といった特性から、マスクなどの着用が困難な人がいるとして、理解を求めています。発達障害の子どもの中には、環境変化が苦手、ソーシャル・ディスタンスを理解するのが難しいなどといったことがあるようです。また療育に通えないことで、子どもだけではなく親にとっても「相談する場所がない」など、悩みを抱え込みやすい環境となっている人もいます。

誰にとってもストレスがいつも以上にある環境ですが、どうしたら感染対策をしながら快適な生活を送れるのか。子どもの気持ちに寄り添いながら、また悩み事はオンラインや電話などを活用して解決の糸口を探っていきたいですね。(参考:一般社団法人 日本発達障害ネットワーク「相談窓口」

参考資料

尾藤 ちよ子