銀行員が語る「失敗する経営者」 夢ばかり見て、足元が見えなかった人

「同業だから、大変なことはわかっている。だから助けてあげたかったのに、手を振り払われちゃったよ」

Bさんは寂しそうにこう呟いていました。

経営者なのに何も知らなかった

その後も、Aさんの行動は変わりませんでした。ペンション運営は部下に任せっきりの状態が続き、客足の減少も歯止めがかかりません。そして、ついに決定的なことが起きてしまいました。

任せていた部下とお金の話でいさかいになり彼を解雇した時、Aさんは自分だけではペンション経営ができないことに、初めて気づいたのです。

しかし、時すでに遅し。ここからは、Aさん本人に聞いた後日談です。

部下を解雇した瞬間から、事業は急停止してしまいました。予約状況や従業員のシフトなど運営面は言うに及ばず、その時期に宿泊客へ出す食事メニューすら知らなかったそうです。

経営者が自分の会社を知らなければ、その会社の未来はありません。やがて融資の返済は延滞し始め、仕入代金や給料さえも遅れるようになりました。Aさんは、両親の住んでいた実家を売却するなど資産もすべて使い切り、最終的に破綻してしまったのです。

こうして、最後まで守ろうとしたペンションは人手に渡りました。しかし手放した後も、Aさんはペンションから離れがたく、今では元・自分のペンションで運転手として働いているそうです。

足元が見えず失敗した人

銀行員の仕事として、Aさんにはときには苦言も呈しました。付き合いも長くなったAさんに対し、私はある日、怒られるのを覚悟でこう問いかけました。

「あなたの周りには誰もいないのですか?」

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執筆者

勤続30年の現役銀行員。金融ライター。
銀行員として数え切れないほどのお客様と会い、相談に乗り、一緒に悩んだ経験では誰にも負けない自信があります。
取り組んでいく記事も、そんな一介の銀行員目線で書いています。