銀行員が語る「失敗する経営者」 夢ばかり見て、足元が見えなかった人

「忙しい」と「忙しくしている」とは違う

Aさんは、とにかく「忙しくしている」人でした。

いいアンティーク家具があると言えば買いに行き、流行っているペンションがあると言えば見学と、自分のペンション運営は部下に丸投げで、年中国内を飛び回っていました。Aさんに用事があり会いたくても、事務所にいたためしはなく、連絡はいつも携帯電話でした。

そんなある日、携帯電話の向こうから「今、ロビーの絨毯を選びにバリ島にいます」と聞いたときはさすがに驚き、正直呆れてしまいました。なぜならこの時、新しい融資の手続き書類が必要で、翌日に会う約束をしていたのです。もちろん手続きは遅れ、私と銀行は予定の変更をしなければならなくなりました。

こうした積み重ねで、銀行のAさんに対する信用はどんどん低下していったのです。

差し伸べられた手を振り払ってしまう

経営者がこのような状態では、会社が上手くいくはずありません。ペンションの経営が悪化するにつれ、当然ながら銀行からの融資は受けにくくなっていきました。

そんな時に、窮状を見かねた近所の同業者のオーナー(Bさん)が、資金援助を申し出たのです。Bさんは人物もしっかりした人で、地域や業界のまとめ役として、銀行も私も信頼の置ける人でした。

しかし、Aさんはこの申し出をきっぱりと断ったそうです。Bさんによると、

「援助のフリをして、ウチを乗っ取るつもりですか」
「何か狙いがあるんでしょ?」

Aさんからは、このような反応が返ってきたそうです。

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執筆者

勤続30年の現役銀行員。金融ライター。
銀行員として数え切れないほどのお客様と会い、相談に乗り、一緒に悩んだ経験では誰にも負けない自信があります。
取り組んでいく記事も、そんな一介の銀行員目線で書いています。