ナノワイヤーLEDを開発しているアレディア(Aledia、仏グルノーブル)は、フランスの研究機関CEA-Letiのパイロットラインを活用して、300mmシリコン(Si)ウエハーでナノワイヤーLEDチップを初めて開発したと発表した。マイクロLEDディスプレー向けとしての量産&事業化に向けて、大口径化によって製造コストの低減を目指す。

一般的な半導体製造プロセスと互換性

 一般的に、LEDはサファイアウエハー上にGaN(窒化ガリウム)を成膜して製造され、その大半が口径4インチのウエハーを用いている。だが、アレディアは8インチ(200mm)Siウエハーを用いた3D GaN on Silicon LEDを長年開発し、300mmへの大口径化を視野に入れている。アレディア独自の3Dナノワイヤー技術は、ウエハーの大口径化につれて大きくなるGaN成膜時の応力が小さいため、ウエハーが反らず、一般的なLED製造プロセスよりも大口径のウエハーを使えるのが利点という。

 ちなみに、アレディアの3D GaN on Silicon LEDは、Siウエハー上に直径1μm以下のGaNマイクロ&ナノワイヤー(マイクロ&ナノロッド)が垂直に立った構造をしており、このワイヤー1本ずつが発光素子として機能し、モノリシックで青~赤までの全波長を発光させることができる。一般的な半導体製造プロセスであるCMOS技術と互換性があり、ファンドリーで大規模量産できるプロセスだと説明している。

 今回、標準的な厚さ780μmのSiウエハー上に3DナノワイヤーLEDを形成した。CEO兼共同創設者のGiorgio Anania氏は「一般的なプロセスと機器を使用できる。大面積Siウエハーとファンドリーの活用が、エンドユーザー市場が要求する膨大な量を提供する唯一の方法だ。仮に、60インチ以上のテレビがSiナノワイヤー技術に移行すると、年間2400万枚の300mmウエハーが必要」と述べた。

量産・事業化へ新工場の建設計画を具体化

 アレディアはCEA-Letiからのスピンアウトで2012年に設立され、従業員130人を擁している。青色LEDの開発で14年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩教授が顧問として技術指導していたことでも知られる。13年3月に8インチのSiウエハーを用いたLEDの開発に初めて成功。あわせて、欧米の投資家から総額1000万ユーロのファーストラウンド資金調達を完了した。

 18年1月に総額3000万ユーロのシリーズC資金調達を完了し、新たな投資家として半導体世界首位のIntelの投資部門であるインテル・キャピタルが加わった。さらに、19年12月には半導体ファンドリーのタワージャズと開発パートナーシップ契約を締結し、タワージャズのTransfer Optimization and Development Process Services(TOPS)を利用して、量産プロセスの確立を図った。

 これと並行して、18年6月に米ビーコ・インスツルメンツからGaN系MOCVD装置「Propel」を購入し、製造プロセスの開発を加速。19年にはグルノーブル都市圏のエシロルに2000万ユーロを投資して4000㎡の研究開発施設を新設し、開発を加速した。

 20年9月には、グルノーブルの南に位置するイーゼル県シャンパニエにマイクロLEDの量産工場を建設する計画を発表した。初期投資額は1億4000万ユーロ。シャンパニエの敷地1万4000㎡の取得に4000万ユーロ、製造設備の取得に1億ユーロを投じて整備する。最終的に2億ユーロまで追加投資して能力を拡大することを視野に入れている。これを実現するため、総額1億2000万ユーロを計画しているDラウンド資金調達のうち、8000万ユーロの調達を完了したことも明らかにした。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏