パワー半導体などを手がける国内半導体中堅のサンケン電気が発表した2020年度上期(4~9月)実績のうち、主力の半導体デバイス事業は、売上高が前年同期比12%減の600億円、営業利益が同54%減の10億円となり、大幅な減収減益となったものの、8月時点の従来予想を上回った。自動車向けの回復が想定以上に進んだことが大きかった。

自動車は4~6月底に回復

 8月の第1四半期(4~6月)決算時点で、半導体デバイス事業の上期予想は売上高570億円、営業利益ゼロを予想していた。ただ、第2四半期において自動車向けの需要が急速に回復。新型コロナの影響による需要減から、同社も生産調整などを実施していたが、日系OEMを中心に中国と米国の生産が回復し、出荷が伸びた。

 自動車向け売上高は第1四半期を底に、第2四半期は前四半期比15%増を記録。下期以降も順調に回復していく見通しだ。また、産機・民生もプリンターやテレビ向けの出荷拡大で好調に推移しており、従来予想を上回った。白物家電向けは中国の回復や韓国向けの需要急増に伴い、上期は前年と同水準をキープした。

20年度通期予想を上方修正

 通期予想は自動車向け受注の回復などを踏まえて、8月時点の予想を上方修正。売上高を1255億円(従来予想1190億円)、営業利益を31億円(同27億円)にそれぞれ引き上げた。市場別では自動車が前年度比17%減の581億円、白物家電が同2%減の434億円、産機・民生が同3%増の242億円を見込む。

 また、米国子会社のアレグロマイクロシステムズ(AMI)がナスダックに上場。上場で得られた資金は、開発投資や親会社であるサンケン電気への配当支払いなどに充てられる。サンケンはAMIの上場後も株式の過半数以上を保有する考えで、今後も両社で事業戦略などを共有していく。

パワーモジュール、車載・産機にも展開

 無停電電源装置や通信基地局向け電源装置の生産子会社であるサンケンオプトプロダクツ㈱(SKO、石川県羽昨郡)を、白物家電や自動車、産業機器向けのパワーモジュールの新生産拠点に転換する。これに伴い、拠点運営を効率的に行うことを目的に、SKOと同一敷地内にある石川サンケン㈱を存続会社とするSKOの吸収合併を2021年4月1日に実施する。

 サンケン電気では、これまでパワーモジュール事業においては白物家電向けを中心に事業を展開してきたが、近年は自動車や産業機器向けにも注力。自動車のエアコン用コンプレッサーや電気自動車のメーンモーター向けで受注を獲得するなど、一部で成果を見せている。さらに、欧州半導体大手のSTマイクロエレクトロニクスともパワーモジュール分野で提携を行うことをすでに発表しており、製品ラインアップの拡充と市場拡大に力を入れている。

混流生産対応の次世代ライン構築へ

 生産子会社の石川サンケンは、SKOと同一敷地内に本社機能、自動車や白物家電向けパワーモジュールの生産を担当する堀松工場を有しており、半導体信頼性評価センターや物流センターが隣接している。これにSKOが事業転換することで堀松地区の第2工場として加わり、さらにはSKO工場内に「ものづくり開発センター」の機能を併設することで、国内でも有数のパワーモジュール生産拠点になるとしている。

 現在、SKOでは事業転換に向けた改修工事が21年4月の完了予定で進行中。閉鎖を予定している鹿島サンケン㈱(茨城県神栖市)から、自動車向けパワーモジュールの生産ラインを移管するとともに、複数パッケージを同一ラインで生産できる混流生産対応の次世代生産ラインを新設する予定。これらに必要な工場のクリーンルーム化や付帯・生産設備への初期投資として今後2年間で約35億円を計画している。これら一連の施策により、石川サンケンの生産規模を今後、約1.5倍に増やしていく計画だ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳