インテルのNAND事業からの撤退は、業界再編に向けた「スイッチ」の役割を果たすかもしれない。従来、NAND業界はDRAMに比べて参入企業数が多く、再編淘汰の可能性が度々指摘されてきた。今回、SKハイニックスがインテルの事業を取得したことで、顧客ミックスの改善を図れると見られており、生き残りに向けた道筋を作った。サムスン電子も21年以降、大型投資を展開すると見られており、NAND業界での生き残りを賭けた争いは一段と厳しくなりそうだ。

事業買収でSSD比率が上昇

 NAND事業から撤退を決めたインテルは、もともと米マイクロンテクノロジーと同分野で提携関係にあり、06年から合弁製造会社としてIMフラッシュテクノロジーズを共同で運営していた。しかし、その後インテルがチップセット生産拠点であった中国・大連工場をNAND工場に転換。独自路線を打ち出し、18年1月には、3D-NANDに関する共同開発の提携関係を解消すると発表。開発中であった第3世代(96層品)をもって関係を解消、個別に開発を行っていく方針を打ち出した。

 ただ、その後もインテルのNAND事業は収益的に厳しい状況が続いており、19年通年実績も売上高43.62億ドルに対し、営業損益は11.76億ドルの赤字を計上していた。従来NAND分野はインテルのなかでも課題事業と位置づけられており、売却報道が飛び交う時期もあった。今回正式に売却を決めたことで、インテルは主力のCPU事業に集中、メモリーに関しては独自の3DXPointに特化して、開発・製造・販売を行っていくことになる。

 対するSKハイニックスはDRAMに比べてNAND事業の利益貢献が少なく、同業他社のなかでも利益率が低いことが指摘されていた。要因の1つとして上がっているのがスマートフォン分野への依存度が高いことだ。具体的には、NAND売上高のうち、おおよそ半分がスマホ向けとされており、なかでも価格要求が厳しい米アップルが最大顧客として占めていた。

 今回、インテルの事業を取得することで、この顧客ミックスを大きく改善することが期待されている。インテルのNAND事業は収益が相対的に高いエンタープライズSSDの比率が高く、さらに今回買収対象にコントローラーICが含まれていることも見逃せない。SSD事業を展開するうえで、コントローラーは欠かせないキーデバイス。90億ドルという巨額買収もコントローラーが含まれていれば、妥当な価格ともいえそうだ。

新興のYMTCも台頭

 SKハイニックスが勢力を拡大させたことで、今後の動向に注目が集まるのが、キオクシア・ウエスタンデジタルのグループとマイクロンだ。新興の中国YMTC(長江ストレージ)が存在感を強めていることから、キオクシアやマイクロンが今後、新たな一手を打ってくることも想定される。

 NAND業界も21年以降は生き残りを賭けた投資競争に発展する可能性もある。足元のNAND市況は決して良好ではないものの、サムスン電子は年明けからNAND投資再開に向けた動きを強めている。また、中国YMTCも128層世代の量産投資を実施する。

 DRAMに比べて市況回復のタイミングが遅れるといわれているだけに、収益悪化を食い止めながら、シェア確保に向けて継続的な設備投資を行わなければならず、NAND各社はより一層難しい舵取りを強いられることになりそうだ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳