痛ましいニュースも多い、学校でのいじめ問題。文部科学省が発表したデータでは、2019年度のいじめ認知件数は61万2496件に上り、過去最多を記録したとのことで、大きな話題となりました。いじめを減らすためにさまざまな対策が取られていますが、効果としてはまだまだ不十分なのかもしれません。

そんな中、ネット上では、ある小学校の「いじめ対策」を取り上げた記事が多くの反応を集めて、話題となっています。その対策とは「あだ名で呼んではいけない」「さん付けで呼ぶ」という形で「呼び名を制限する」ものだそうです。

この記事では、小学校などで意外に広がっているという「呼び名制限」や、その賛否の声を紹介します。

実際に「呼び名制限」があった人たちの見方

実際に小学校で「あだ名禁止」や「さん付け義務」などの呼び名制限があったという声はSNS上で多くみられます。

「私の弟、低学年の頃学校で「苗字+さんづけで呼ばなきゃダメ」ルール課されてた。家で学校のこと話す時も、一番仲の良い子のこと「〇〇さんが〜」って言ってた…。正直不自然すぎてかなりキモかったけどこういう理由だったのかな」
「小学校であだ名禁止って今頃言ってるけどうちも随分前からやってるよ」
「うちの娘も幼稚園からずっと仲良しであだ名で呼び合ってたのに小学校入学してから急に苗字にさん付けで呼ぶようになって、ケンカしたのかと驚いて聞いてみたら小学校の先生にダメって言われたって…」
「うちは派生系なのか、先生が小1のうちの子を呼ぶとき「下の名前+さん付け」だけど、親としても違和感ありすぎるわ。でも過去におかしな文句言う親がいたのかも」

呼び名制限はすでに広い範囲で行われていて、一般的になっている小学校もあるようです。これは子ども同士だけでなく教員も同じで、名前を呼び捨てしたり愛称で呼んだりするのではなく、「苗字にさん付け」で生徒を呼ばなくてはいけないという教員の声も見られました。

「あだ名禁止」賛成派の声

この「呼び名制限」に賛成という人は以下のような意見を述べていました。

「あだ名禁止普通に賛成。変なあだ名で悩んだ経験があるから。嫌がってるのに先生にまでそのあだ名で呼ばれて辛かった」
「ひどいあだ名で悩んでいたときに、当時の担任の先生がさん付けで呼ぶようにしようと言ってくれて本当に救われた気持ちになった」
「現場の声で、さん付けで呼ばせたほうが冷静になってケンカが明らかに減ったというものがある限り意味はあるのかもしれない」

ひどいあだ名をつけられて、それがいじめにつながったという体験談がSNS上では多く見られました。そういった事案を防ぐためには、画一的に呼び名を制限する対策がとられるのもひとつの方法なのかもしれません。

「あだ名禁止」反対派の声

しかし、この話題に集まった反応で最も多いのは、「呼び名制限に違和感を覚える」という意見や「この施策に意味があるのか」という疑問の声でした。

「そんなことでいじめが減るのかな?表面的なことを禁止しているだけのように見える」
「将来的には出席番号で呼ばれるようになるのでは?」
「自分があだ名で呼び合うことに憧れてたからすごく寂しいように感じる」

タレントの「しょこたん」こと中川翔子さんも、TBS系のテレビ番組『グッとラック!』では、中学生時代にひどいあだ名で悩み、不登校になったという経験がある上で、この呼び名制限に対して「あだ名が悪いのではない。攻撃する人物がいる状況、そこに先生がもうちょっと個別に向き合えないのか。あだ名イコールいじめではない」と語ったとのことです。

さらに考えていく必要性

いじめ問題を解決するためには、こういった施策も必要だという意見がある一方で、あだ名で呼ばれることがなくなり、さん付けで呼び合うことになるのは寂しいという声が多いのも納得できます。「いじめの問題の本質は事案によってそれぞれ異なるのだから、個別に教員が対応するべきだ」という投稿も多く見られました。

いじめ問題を解決するためにも、常に何かしらの対策が講じられる必要はあります。ただ、上で紹介したように、「呼び名を制限すること」がその対策としてふさわしいのかについては、まだまだ議論の余地がありそうです。

あっさりと正解が出るような問題ではないだけに、「いじめをなくすためにはどうしたらいいのか」を、教育の現場にいる人たちに加えて、われわれ保護者をはじめ、学校を支える周りの人間も含めて考えていく必要があるのではないでしょうか。

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