2020年10月19日に行われた、オリックス不動産投資法人2020年8月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:オリックス・アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 亀本由高 氏
2020年8月期決算説明会
亀本由高氏:みなさま、こんにちは。オリックス・アセットマネジメントの亀本です。オリックス不動産投資法人2020年8月期、第37期の決算説明動画をご視聴いただきありがとうございます。
世界各国では新型コロナウイルスの感染が引き続き拡大しています。感染された方々にお見舞いを申し上げるとともに、お亡くなりになられた方々に心よりお悔やみ申し上げます。
ポートフォリオの状況 ー決算発表日(2020年10月19日)時点ー
それでは資料に沿ってご説明します。5ページをご覧ください。改めまして、OJRのポートフォリオについてご説明します。スライド左下の円グラフは用途比率ですが、OJRの保有資産の過半数がオフィスで、特に中規模オフィスで構成されています。
また、新型コロナウイルスによるマイナス影響が大きいホテルは13.9パーセントを占めています。ただし右下の円グラフのとおり、主にホテルからの変動賃料は全体賃料の2パーセントで、OJRの賃料収入のほとんどが固定賃料で構成されていることがご確認いただけるかと思います。
また、商業施設については15.7パーセント保有しており、中でも大きな影響を受けている都市型商業施設の割合はそのうちの半分程度です。
今回のポイント
今回の決算のポイントについてご説明します。8ページをご覧ください。こちらで環境認識と実績、ならびに今後の運営戦術をご説明します。新型コロナウイルス感染拡大による影響は再流行の可能性を含め引き続き不透明であり、OJRの力を取りまく環境も運営戦術もその前提で考えています。
まず外部成長ですが、低金利政策が継続する中、引き続き不動産取引市場における競争は厳しく、優良物件を取得する機会は限定的です。市場動向を重視しながら貴重な取得機会を逃さぬようポートフォリオの向上につながる資産入替を推進していきます。
内部成長においては、新型コロナウイルスの直接的な影響を受けているホテルや商業のテナントと状況に配慮しながら迅速かつ丁寧に協議を進めてきました。一時的な賃料減額もありますが、多くは現状維持や賃料の支払い猶予といった対応となっています。
また、足元のオフィスでは賃料ギャップをうめる増額ができており、引き続き継続を目指していきます。財務戦略においては、現状は金融機関の融資姿勢に大きな変化は見られませんが、財務の安定性の重要度は引き続き高まっています。
OJRはLTVが42.9パーセント、コミットメントラインは405億円、手元の現預金は500億円超と十分な流動性を確保しています。また、分配金の安定性に資する外部留保は決算発表時点で35億円弱で、1口当たりに換算すると1,260円程度備えています。
引き続き天災等の一時的な業績下振れに対して柔軟的に活用を検討していきますが、現状はそちらに加えて、公表済みの予想分配金を下回る状況になった際の埋め合わせとしての活用も想定しています。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの影響について9ページをご覧ください。スライド上段では、新型コロナウイルスの影響を受けたテナントからの賃料に関する要望とその対応状況を示しています。
ご覧のとおり、全体の2割弱にあたる217件のテナントより一時的な賃料減額等の要望を受けています。個別に業況を確認するなど細やかな協議を行った結果、賃料について現状維持が116件、支払い猶予が60件、一時減額が46件となりました。
現在協議中のものも若干ありますが、いったん一時減額に含めています。なお、緊急事態宣言が解除された5月下旬以降は新規の要望が少なくなってきていますが、今後もテナントの業況を注視しながら対応を進めていきます。スライド下段の表では、分配金に対する影響を用途に分けて前期比で示しています。
なお、住宅と物流施設においては影響は軽微であり、特段の想定は置いていません。終わった2020年8月期においては、1口当たりマイナス160円の影響を織り込んでいたところ、マイナス96円にとどめることができました。
前回決算発表時は緊急事態宣言直後で業績の見極めが非常に困難でした。主に飲食店をはじめとする都市型商業施設のテナントより賃料に関する相談が相当数あり、分配金へのストレスとして都市型商業施設における2割の退去に相当する賃料収入の減少を想定していました。
その後、テナントの状況に鑑みた賃料の現状維持、または支払い猶予や一時減額対応で退去を抑制し、賃料収入減少幅を抑えたことがマイナス幅を低減できた主な理由です。2021年2月期は秋冬の感染拡大の可能性も踏まえ、一定程度賃料収入の下振れリスクを織り込んでいます。
オフィスはリーシングの遅れや追加退去を想定し、都市型商業施設は今後も一時減額や退去が発生するものと想定しています。
ホテルについては引き続き東西のテーマパークのオフィシャルホテルにおいて客足の戻りが遅くなる前提で、ホテルユニバーサルポートは変動賃料をほぼ受け取れない前提とし、舞浜のホテルは新たに固定賃料の一時減額を加えています。
これらのホテルの状況については、のちほど詳細をご説明します。またご参考として新型コロナウイルスの影響を受ける前の2020年2月期36期の実績と2021年2月期38期の想定を比較した影響額を示しています。
ご覧のとおり、オフィスは不透明感の継続からややマイナスを見込んでおり、商業施設は想定したよりも賃料収入の減少を抑制でき、ホテルは舞浜の一時的な賃料減額が加わっています。2021年8月期においては、これまでの外部環境が継続する前提で新型コロナウイルスによる影響をそれぞれの用途に盛り込んでいます。
運用ハイライト①
これらを勘案した分配金について、10ページでご説明します。2020年8月期の実績については、前回決算発表時の予想の3,650円から190円アップの3,840円となりました。新型コロナウイルスの影響として織り込んでいた賃料収入の減少幅を低減できたことが主な要因です。
それ以降の予想分配金の前提に関してですが、人々の活動制限は緩和されつつあるものの、新型コロナウイルスの終息のめどは立っておらず、引き続き楽観視できないものと考えています。その上で、2021年2月期においては秋冬にかけてさらに感染が拡大する可能性を考慮に入れ、業績予想を立てています。
なお、前回はホテルの変動賃料減少に対する内部留保の活用を想定していましたが、今回は公表している予想分配金3,490円の維持に向けて、同等の内部留保の活用を想定しています。
2021年8月期においても不透明な状況が継続することを見込み、予想分配金は3,350円としています。現時点では内部留保の活用は想定せず、こちらの水準を目指していきます。
運用ハイライト②
予想分配金の詳細については11ページにも記載していますので、のちほどご覧いただければと思います。
オフィス(稼働率・入替推移)
内部成長についてご説明します。13ページはオフィスの稼働率と入退去面積、およびテナント入替による賃料増減率の推移です。
スライド上段の折れ線グラフの稼働率について、現状は98.4パーセントと想定の範囲で推移しています。なお、足元ではオフィスの退去増加、退去区画の入居、うしろ倒しを想定して、今後1年は稼働率が低下することを見込んでいます。
スライド下段の折れ線グラフは、オフィスにおけるテナント入替に伴う賃料増減率ですが、増額は10期連続となり、増減率はプラス17パーセントです。なお、折れ線グラフの下に契約賃料の増減額6ヶ月分を記載しています。こちらはフリーレントや空室期間を考慮していませんので、あくまでも目安としてお考えいただければと思います。
オフィス(賃料更改推移)
14ページはオフィスにおけるテナントの賃料更改状況です。スライド上段の賃料更改面積、下段の賃料増減率ともに、新型コロナウイルスの影響による一時減額および一時減額終了による増額は特殊要因として除外しています。
そのような前提ではありますが、棒グラフのとおり2020年8月期においても賃料ギャップに基づく賃料増額が継続できており、更改を迎えた契約のうち約半分を増額改定することができました。
また折れ線グラフのとおり、更改を迎えた契約のうち賃料の見直しがあったものの増減率は14期連続でプラスを達成し、2020年8月期の実績はプラス7パーセントとなりました。
なお、右下に増額できた物件の一例を掲載しています。賃料ギャップに着目し、内部成長を目指して直近に取得した物件においても着実に賃料の増額を達成できています。
入替と同様、一番下に賃料増減額を目安として記載していますのでご参照ください。なお2021年2月期以降の入替、更改時の賃料増減率については、現時点における確定分に基づいて算出したもので、今後の市場変化の見通しを示したものではありません。
オフィス(テナント分析)
15ページをご覧ください。オフィスにおけるテナント分析となります。スライド左側上段の表のとおり、OJRのオフィステナントは分散しています。大口のテナントでもポートフォリオ全体に占める賃料割合は2パーセント未満のため、テナント1社の退去が業績に与えるインパクトは低減できています。
また、円グラフのとおり業種においても分散が図られています。スライド下段に、事務所区画と来店型区画に分けた、新型コロナウイルスの影響によるテナントの要望とその対応状況を示しています。感染拡大の影響を受けやすいオフィスの低層階などにある飲食店や学習塾といった来店型のテナントはおよそ2割です。
ご覧のとおり、新型コロナウイルスの影響による退去は一部あるものの、協議中を含めた一時的な賃料減額の件数はオフィステナントの3パーセント未満に収まっており、現時点では業績への影響は限定的です。
オフィス(トピックス)
16ページは今後に向けた取り組みです。コロナ禍ではあるものの、将来のポートフォリオ向上を目指しバリューアップ工事を引き続き推進していきます。
商業施設
商業施設について、17ページをご覧ください。新型コロナウイルスの影響が大きい都市型商業施設の賃料割合は、スライド左側の円グラフのとおり約半分です。その都市型商業施設のテナント属性と現在の対応状況を下段に示しています。
賃料に対するご要望は、時短営業や外出自粛の影響により飲食店からいただくことが多い状況です。細やかな対応を進めていますが、今後も日々変わる状況を踏まえながらダイレクトPMにより構築されたテナントとの信頼関係をベースに運営していきます。
住宅・物流施設
住宅と物流施設について、18ページをご覧ください。まず住宅ですが、新型コロナウイルスの影響により入居手続きが遅延するなど稼働率がやや低下しましたが、好立地という競争力を活かし、折れ線グラフで記載のとおり2020年8月期において入居者の入替時にプラス5.1パーセントの賃料増額を実現しました。
また、賃料更改においてもプラス1.1パーセントの増額を達成しています。スライド下段の物流施設においても安定的な推移が見込まれます。これら2つの用途に関しては、現状新型コロナウイルスの影響は比較的小さいものと考えています。
ホテル等①
ホテル等について、19ページをご覧ください。OJRのホテルポートフォリオはスライド左側にある大型テーマパークのオフィシャルホテルが7割弱を占めています。
スライド右側の表でホテルユニバーサルポートの売上と受け取り賃料の実績と想定を示しています。およそ半年前の売上実績による変動賃料の受け取りとなりますので、2021年2月期はUSJの臨時休業等の影響によりほとんど変動賃料を受け取れない想定です。
徐々に回復基調にはありますが、新型コロナウイルスの終息が見えない中、引き続き厳しい環境は続くものと考えており、2021年8月期も固定賃料と若干の変動賃料のみ受け取る想定です。
スライド右下はディズニーリゾートのオフィシャルホテルである東京ベイ舞浜ホテルファーストリゾートについてですが、こちらもディズニーの休園による影響を大きく受けていました。
ほとんどが固定賃料ですので、テナントと共に難局を乗り切るべく賃料の支払い猶予によりホテルの運営継続を支援してきましたが、まだ状況の改善には至っていません。敷金等を勘案して一時的な賃料減額に応じることにより、将来の業績回復につなげていきたいと考えています。
また賃料減額分については、業績回復後に回収を図ることを想定しています。それぞれ非常に厳しい状況が続いていますが、足元ではGo To トラベルの盛り上がりや延期されていたUSJの新エリア「SUPER NINTENDO WORLD」が来年の春に開業予定となるなど、明るいニュースもありました。
ディズニーリゾートにおいても新エリアが9月に開業し、今後もパークの拡張が予定されています。現状両ホテルについては新型コロナウイルスの影響を大きく受けていますが、いずれも稀少性は高く、中長期的には競争力のあるホテルであるという考えはまったく変わっていません。
ホテル等②
20ページはホテルポートフォリオの約3割であるシティーホテル、ビジネスホテルです。固定賃料が中心で、外部のオペレーターの状況を確認しながら運営しています。厳しい環境は継続していますので、賃料に関する要望があったテナントについては一部賃料の支払い猶予を行っています。
しかし、各オペレーターは総じて信用力のある先であり、足元ではホテルの客室稼働率に底打ち感が見え始めているように感じています。なお下段に記載のとおり、契約期日を迎えたホテル日航姫路については、オペレーターであるスポンサーグループと2年の再契約を締結しました。
固定賃料を減額する代わりに変動賃料が発生するGOPの基準額を引き下げています。姫路駅周辺では大型コンベンションセンターの開発なども計画されており、将来の競争力回復を図っていきたいと考えています。
スポンサーパイプラインの活用実績と現状
外部成長です。22ページをご覧ください。スライドの棒グラフのとおり、2013年8月期以降のOJR取得資産3,756億円のうち、およそ9割がスポンサーグループからの取得となっています。冒頭でもお伝えしましたが、限られた機会の中での物件入替に向けて、スポンサーだけではなく外部からの取得機会も模索しているところです。
財務戦略①
財務戦略について、24ページをご覧ください。OJRは財務の安定性に重きを置いており、コストに配慮しながら返済期限の分散化を図ってきました。折れ線グラフのとおり、借換えや投資法人債の発行により、平均残存年数を維持しながら調達金利を低減させています。また、棒グラフで返済期限の分散もご確認できるかと思います。ご参考までに棒グラフの下にアップフロントフィーを除いた平均調達金利を載せています。
財務戦略②
25ページの上段グラフにはLTVの推移と、LTV50パーセントまでの取得余力を記載しています。将来の機動的な物件取得のため、取得余力を維持していく方針です。
またスライド左下に示したとおり、2020年8月期の現預金は513億2,900万円で、今後の機動的な物件の取得や新型コロナウイルス感染再拡大を含めた唯一の備えとして確保しています。
財務戦略③
26ページですが、調達先金融機関とは良好な関係を築けており、おかげさまで借換え等を丁寧にご対応いただいています。今後も安定性に重視した財務運営を継続していきます。
ESGの取組①
最後にESGの取り組みについて、28ページをご覧ください。OJRは積極的にESGの取り組みを行っており、中長期的な投資主価値の向上を目指しています。外部機関からの評価や国際的なイニシアティブへの参加の一例を示していますので、次ページ以降で紹介している取り組み事例とともにご覧いただければと思います。
以上、2020年8月期第37期の決算ならびに今後の運営方針の説明とさせていただきます。引き続き不透明な環境が続くと思いますが、私どもはこちらをチャンスと捉え、社員一同前向きにがんばっていきたいと考えています。ご清聴どうもありがとうございました。