老後資金の悩みは尽きないですが、総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2019年(令和元年)平均結果―(二人以上の世帯)」によると、貯蓄現在高の平均値は1,755万円あります。貯蓄保有世帯の中央値でも1,033万円と1,000万円以上あり、問題なさそうな気がしてしまいます。

しかしその構成比をみると、通貨性預貯金が28.1%、定期性預貯金36.7%と6割以上が預貯金となっています。ここで日本銀行が目標とする「物価上昇率(インフレ率)2.0%」が達成する未来を考えると、預貯金の実質的な価値は減少していくことになります。

本当にインフレ率2.0%が達成されるのか否かは分かりません。しかし頭の片隅においた資産形成を考えても良いかもしれません。

アフターコロナはインフレかデフレか?

日銀が「物価安定の目標」を掲げたのは2013年1月です(※1)。2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入、2014年10月に「量的・質的金融緩和」の拡大を行い、2015年12月には「量的・質的金融緩和」を補完するための措置を導入しました。さらに2016年1月には、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し、2016年7月には「金融緩和の強化」を行っています。しかし2020年現在に至っても、その目標は達成されていません。

2016年9月の金融政策決定会合にて検証が行われ、「2%の実現を阻害した要因」として、「①原油価格の下落、②消費税率引き上げ後の需要の弱さ、③新興国経済の減速とそのもとでの国際金融市場の不安定な動きといった外的な要因」(※1)を指摘しています。このような状況下で予想物価上昇率が弱含みに転じたことを主な要因としています。

2020年1月、大和総研の金融調査部 長内氏は「インフレ目標を達成するためには、日本経済の成長ペースを一段と高めることを通じてGDPギャップの推移を押し上げることが大事となる。ただ現実的には、日本銀行の金融政策のみで、経済成長率を加速させることには限界もある」(※2)と、中長期的な政府と日銀の連携の必要性を述べています。

アフターコロナはインフレなのかデフレなのか、様々な説があります。米連邦準備理事会(FRB)をはじめとした世界各国の中央銀行の量的緩和や政策による支援などで、インフレ期待が高まるという説。また供給制約や安全面などの重要視によるインフレも起こるのでは、といった声もあります。一方で、直近で公表された日本の需給ギャップの大きなマイナス幅により、深刻な需要不足は継続するとの指摘や、「withコロナだからこそ貯蓄が増える」といった懐疑的な意見も目立ちます。今後は誰にも分かりません。ましてや何十年後の未来なんて想像もできない人が多いのではないでしょうか。2020年のコロナ禍を誰もが想像できなかったように。