2020年10月15日に行われた、ヒューリックリート投資法人2020年8月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:ヒューリックリートマネジメント株式会社 代表取締役社長 時田榮治 氏
1. 第12期決算発表以降の運用ハイライト
時田榮治氏:ヒューリックリートの時田です。本日はヒューリックリート第13期の決算説明会にご参加いただきありがとうございます。今回もコロナ対応のため、電話会議の形式を取ることとしました。音声のみということで大変ご不便をおかけするかもしれませんが、何卒よろしくお願いします。
それでは資料に沿ってご説明したいと思います。4ページをご覧ください。第12期、前期、前々期の決算発表以降の運用ハイライトを3点まとめています。第13期はちょうど新型コロナウイルスが発生して緊急事態宣言もあった、まさに新型コロナウイルスの影響をダイレクトに受けた決算期になります。
詳細は後ほどご説明しますが、9月末時点で店舗区画を含むオフィスの9.3パーセント、商業施設では10.3パーセントのテナントに対し、一時減額や賃料の支払猶予等の対応を実施しました。ただし、オフィスも店舗区画のお客さまが多く、2.4パーセントがオフィス区画のお客さまです。一時減額による第13期の賃貸事業収入の減少額は2,600万で、東京コマーシャル・プロパティ全体における比率は0.3パーセントと非常に軽微な結果となりました。
2点目ですが、現在マーケットが大きく変貌していますので、従来よりリスクマネジメントの観点から第8期以降、継続的に資産の入替えを実施してきました。この第14期においては商業施設を譲渡する一方で、収益性の高い銀行店舗を取得することとしました。
テナントの退去等により、収益性が回復するまでに時間を要する商業施設2物件をスポンサーに譲渡するとともに、取得後に内部成長を実現したオフィス1物件をスポンサーの保有分と一体で第三者に譲渡することとしました。また、収益の安定性の高い銀行店舗2物件をスポンサーから取得しました。商業施設のうち1物件は、今期と来期に分けて2分割譲渡することで分配金への影響を平準化することとしました。
3点目は財務戦略です。LTVは当初目標の45パーセントを超えていますが、今回物件の入替えに伴い、売却代金の一部を借入金の返済に充当し、46.2パーセントまで引き下げます。また、3月に新投資口の発行登録を行いましたが、こちらを取り下げることとしました。
1. 分配金・NAVの推移
6ページをご覧ください。結果として第13期の分配金については当初予想を大幅に超える3,874円で、NAVの水準についてもほぼ横ばいの17万5,943円となりました。第14期、第15期については今後の個別企業の業績の悪化が顕在してきていることや、春先に制度融資で資金調達した資金が年末に向けて枯渇する先も出てくる可能性があることから、新型コロナウイルスの影響等の保守的な想定を通常の想定に加え、分配金でマイナス134円です。
しかし、売却益が出ることにより第14期は4,050円となります。第15期については保守的な想定をさらに広げ223円を想定し、分配金については3,450円を現状では想定しています。
2. 新型コロナウイルスの影響(総括)
7ページから新型コロナウイルスの影響について細かく見ていきたいと思います。先ほどご説明したとおり、現時点でのオフィスへの影響は極めて軽微でした。商業施設は飲食業を中心に非常に多くのテナントから賃料の減額、支払猶予等の要請がありました。
老人ホーム、ネットワークセンター、ホテルの固定賃料への影響はほとんどありませんでした。老人ホームについては入館制限等々により入居率は若干低下しましたが、個々の固定賃料にはまったく影響はありませんでした。ホテルも固定賃料の部分は約定どおりきちんと受領できましたが、変動賃料部分全体の3パーセントから4パーセントは残念ながら受領できていません。
14. マーケットデータ①
59ページをご覧ください。マーケットのデータについて簡単にご説明します。GDPの予想ですが、何を言いたいのかと言うと、GDPすなわち景気の回復にはある一定程度の時間がかかるということです。
スライド下段の棒グラフをご覧ください。倒産件数は5,457件で、ちょうど2001年頃の約2万件近い水準に比べるとまだまだ低い水準ではありますが、年換算すると今年は約8,000件強の倒産になる状況です。件数的には2019年と大きくは変わらない可能性がありますが、特定の業種にそのような影響が出てくる可能性があると考えています。あるいは今後の資金繰りの動向によりさらに増えていく可能性も否定できません。
14. マーケットデータ②
60ページです。主として私どものオフィスのテナントをイメージして、日本全体のマーケットについて調べた結果です。スライド左上は従業員の規模別事業所数の構成です。1人から9人の従業員の事業所が全体の76.9パーセント、30人未満が16.5パーセント、合わせて93.4パーセントが30人未満の非常に小さな事業所だということです。
こちらが意味しているのは、最近サテライトオフィスや在宅勤務のようなテーマが話題性のあるかたちで語られていますが、こうした企業がどのようなかたちでそれらを導入するのか、導入できるのかということです。
スライド左下の棒グラフは企業規模別の今後のオフィスの面積の意向です。100人未満は拡張したいニーズと縮小したいニーズがほぼ一緒です。1,000人以上の企業になると、拡張したいニーズの倍ぐらい縮小したいニーズがあることがわかります。すなわち、大きな会社では仕事の内容も非常に多岐にわたっていることから、在宅やサテライトオフィス等を試験的にチャレンジしていく風土や環境があると読めると思います。
スライド右上の職種別の在宅勤務実施率では、オペレーター、記者・編集者、法律専門家等の特殊な技術を持った方や一般的な作業を行う方については在宅勤務の実施率が出てきますが、それ以外の営業や一般事務を含めた職種は在宅勤務の比率が低いことがわかると思います。
14. マーケットデータ③
61ページです。新型コロナウイルスが落ち着いてきたらやりたいことで、国内旅行と外食が1番、2番を占めています。またアジアの方にアンケート調査した結果、新型コロナウイルスが収束したら行きたい場所は日本が圧倒的に多かったということです。
このようないくつかのマーケットデータを参考にして7ページに戻っていただき、短期的な新型コロナウイルスの影響、中長期的な新型コロナウイルスの影響についてご説明します。短期的には先ほどお伝えしたように、業績の悪化が非常に顕在化していること等から、賃料の一時減額の要望や退去が出てくる可能性があると認識しています。
また、商業施設は飲食業を中心に「Go To Eat」が始まりましたが、このような施策の影響がどのように出てくるかによって、今後の動向については引き続き注視が必要と考えています。ホテルについては「Go To Travel」等の影響で少しずつ回復してきていると認識していますが、変動賃料の受け入れについてはそこまで回復しないと考えています。
中長期的見通しです。先ほどお伝えしたようにオフィスの分野では在宅やサテライトオフィス等が大企業を中心に一部広がる可能性があると認識していますが、今後のSクラス、Aクラスのビルは状況を非常に注視する必要があると考えています。中小企業が中心の中規模オフィスや小規模オフィスへの影響はあまりないと考えられます。
あえて言えば、企業業績の悪化に伴う床の一部返却、あるいは不便でも賃料の低いところへ転居する等の状況が生まれるのではないかと考えています。商業施設については、いろいろな政府の施策もあり徐々に回復してくる可能性はあると思います。
引き続き「密」が1つのキーワードになっていますので、今後の動向に注視する必要があるものの、立地のよい物件はそれほど大きな影響は受けずに回復してくると考えています。老人ホーム、ネットワークセンター、ホテル、いわゆる次世代アセット・プラスについては通常状態に戻ってくると考えています。
2. 新型コロナウイルスの影響
8ページです。新型コロナウイルスの影響を私どものポートフォリオに落として分析した結果です。東京コマーシャル・プロパティ、すなわちオフィスと商業のテナントは327社です。そのうち76社から何かしらの一時減額や支払猶予等の要望を受けています。
一時減額による第13期の賃貸事業収入の減少額は2,600万円で、比率は0.3パーセントです。円グラフは賃料別に見たオフィス、商業施設、次世代アセット・プラスの構成を示しています。次世代アセット・プラスで対応を行った先はゼロです。オフィスで何かしらの要望があった先は44社ですが、そのうちオフィス区画からは16社です。
対応をスライドに記載していますが、一時減額を行った先が23社、支払猶予を行った先が1社、結果として退去された先が1社で、ほとんどがオフィスに付随する商業施設の区画のテナントへの対応になります。基本的には個々の要望を受けた先について、資金繰りや会社の状況、今後の事業の継続性等を1件1件丁寧にヒアリングしながら個別に判断しています。
商業施設のテナント数58社のうち飲食が16社ですが、飲食については16社中15社から何かしらの要請を受けたことになります。一時減額は退去した先を含めて5社、敷金相殺で対応し賃料は約定どおりきちんといただいた先が4社です。緊急事態宣言で真っ先に影響を受けた飲食業に対しては多くの先にこのような対応を行いました。
物販はほとんどが据置で、現在協議中が1社という状況です。サービスは主として塾やヨガ教室等ですが、支払猶予が1社、敷金の相殺が2社で、こちらも個別の事情を聞きながら対応しました。
2. 新型コロナウイルスの影響(内部成長)
9ページです。新型コロナウイルスの影響が内部成長に与えた影響をまとめました。スライド上段の棒グラフはオフィスの改定ですが、青色は緊急事態宣言前の賃料が増額した面積、オレンジ色が緊急事態宣言以降の賃料が増額で決着した部分です。
面積的にはほぼ変わりませんが、緊急事態宣言前は5.3パーセントの賃料の増が、緊急事態宣言後は3.7パーセントで、環境要因や個別要因等いくつかの要因が複合されていますが、賃料がやや上がっています。改定面積もそれほど影響を受けていません。
第14期をご覧いただくと、賃料は6.6パーセントかつほとんどが緊急事態宣言後ですので、賃料の上げ幅自体は交渉の難度がやや上がっているということもありますが、トレンド自体は変わっていないと判断しています。
スライド下段の棒グラフはテナント入替、すなわちテナントが退去もしくは一部床を返していただいた先の合計テナントの状況です。増額で4パーセントで、こちらも従来とそれほど大きく変わっていないと認識しています。今後オフィスの退去が確定している面積は2,900平米ありますが、マーケットレントとの乖離幅はマイナス7パーセントで、レントギャップはまだまだあるということです。
3. 入居テナントの特徴(オフィス)
10ページです。入居テナントの構成をまとめました。全体の56.7パーセントがオフィスのオフィス用途です。オフィス店舗用途は5.2パーセントですが、オフィスのオフィス用途のテナントを分析すると、スポンサー、上場会社及び上場会社の子会社、公益法人で全体の3分の2を占めています。その他の3分の1は111社あり、資本金区分別に見るとスライド右の円グラフのとおり、3億円以下あるいは5,000万円以下が半分弱で、中小規模のお客さまが多いということになります。
スライド左下の円グラフで業種別に見ると、今回直接的に影響を受けた旅行・観光業は0.5パーセント程度で、全体では非常に小さな割合ということです。各テナントの入居期間を示したのが右下の円グラフですが、多くのテナントに非常に長期間にわたって入居いただいています。5年超のテナントが72.5パーセントと、比較的安定しています。
3. 入居テナントの特徴(商業施設・ホテル)
11ページはテナントの特徴で商業とホテルについてまとめました。左上の円グラフは商業施設とオフィスの店舗区画の部分をまとめたものですが、直接影響を受けた飲食が6.6パーセントと、全体に与えるインパクトはそれほど大きくありません。
ホテルはすべて固定賃料で、相鉄グループが69.9パーセント、はとバスが30.1パーセントで、契約期間も長期にわたっています。商業施設のテナント種別では、スポンサーが25.3パーセント、上場会社及びその関係会社で51.8パーセント、その他が66社で22.9パーセントと分散しています。契約期間別でも2年以下の契約は35.5パーセントで、そのうち25.3パーセントをスポンサーが占めており、2年以内の短い契約のテナントは10.2パーセントとなります。
4. 第13期実績の概要
12ページです。先ほどご説明したように、結果として分配金は予想の3,770円の発行登録を取り下げましたので、131万2,000口を前提としています。しかし、3,770円を3,874円というかたちで、我々が想定したいくつかのシナリオを上回り、結果的には影響が小さく、その分が増えたと考えています。
5. 第14期・第15期予想の概要
第14期、第15期の予想ですが、今期については確定している空室損失の部分に加え、一時減額の想定としてマイナス47円を見込んでいます。ただし、売却益が大きいため分配金については4,050円という水準を想定しています。
第15期は一部物件の売却益が寄与するものの、第14期に比べて売却益が減少しますので、その分の422円を合わせて減少します。加えて、空室損失の追加や一時減額の想定を追加したこと等もあり、結果として3,450円を想定しています。
6. 第14期・第15期予想におけるリスク等の想定
14ページに第14期、第15期の予想におけるリスク等の想定を整理しています。空室の退去が確定している部分、一時減額を想定している部分、ホテルの歩合がなくなる部分、会議室収入の減少する部分、それから結果としてこのような新型コロナウイルスの影響がどのくらいあったかを期別に想定しました。
第13期の分配金は93円でしたが、第14期では134円、第15期では223円を見込んでいます。なお第15期は一時的に借地権の更新が発生しますので、その分を織り込むとマイナス299円となります。
1. ポートフォリオ・サマリー①
16ページはポートフォリオのサマリーです。物件の入替えもあったことから、資産規模の増加はほぼ横ばいとなっています。ただし、レバレッジについても今回は売却代金の一部を借入金の返済に充当したことから46.2パーセントで若干の低下を実現しました。
1. ポートフォリオ・サマリー②
17ページはポートフォリオの特徴を示しています。東京のオフィスで全体の63.6パーセント、商業で15.4パーセント、合わせて79パーセントがオフィスと商業です。それ以外は次世代アセット・プラスという老人ホーム等となります。
エリア別でも都心6区に集中し、東京コマーシャル・プロパティで見ると駅から1分以内の物件が68.9パーセント、都心6区で83.2パーセントと、他のJ-REITのオフィス用途と比べても圧倒的に都心、駅近の物件があるという特徴は変わっていません。
2. 外部成長の実績①(資産入替えの概要)
18ページです。外部成長といいますか、資産の入替えの概要についてご説明します。「オーキッドスクエア」は飲食のビルで、「ヒューリック大森ビル」は医療モール、飲食、サービス業の複合商業施設です。
ヒューリックの固定賃料のサブリースを付けていましたが、空室のリーシングで苦労した物件である等を考慮し、売却することとしました。外部への売却を模索していますが、残念ながら現在商業施設に手を挙げる方はおらず、結果としてスポンサーに売却することとしました。
合わせてスポンサーから銀行店舗の中野支店がある一部通常のオフィス複合ビルの「ヒューリック中野ビル」、みずほグループが一棟全体を借りている「ヒューリック八王子ビル」の2棟を取得することとしました。NOIについても5.1パーセントと4.3パーセントということで、ポートフォリオ全体の譲渡資産に比べるとポートフォリオ全体の収益性は若干向上すると考えています。
2. 外部成長の実績②(第14期取得資産)
19ページは今回取得する物件の「ヒューリック中野ビル」です。1階から4階がみずほ銀行中野支店で、5階から上は一般のオフィスになっています。中野支店はこの周辺の法人を集約した店舗で、前身が富士銀行、さらに前身が安田銀行の中野支店ということで、店歴75年を有する店舗です。
2. 外部成長の実績③(第14期取得資産)
20ページです。みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ不動産販売、みずほ証券あるいはみずほグループ各社が活用して、一棟をみずほグループで借りていただいているビルです。もともとは第三十六国立銀行の本店で、その後富士銀行となり、現在はみずほの八王子支店となっています。開設以来140年を有する多摩地区におけるみずほの重要拠点ということです。周辺の法人取引もすべてこちらの店舗に集約していますので、そのような意味では先行きについても安定的な賃料の収入が期待できる物件と考えています。
3. 内部成長の実績①
21ページは内部成長です。新型コロナウイルスの影響もあるため、退去あるいは退去予想したものについては当面入居がない、リーシングできないという前提で稼働率を想定しています。したがって、第14期は99.2パーセント、第15期は98.5パーセントというかたちで稼働率の若干の低下を想定しています。
3. 内部成長の実績②
22ページは賃料の改定等についてです。スライド上段の棒グラフは、左側は継続している賃料、右側はテナントの退去に伴う新規の成約です。減賃はありませんので、すべて増額で第13期の実績は全体で1万6,000平米ほど、賃料の増額幅は4.5パーセントでした。テナントの入替えに伴う実績では、第13期は当然すべて賃料増額で、かつ上がり幅も20パーセントを超す水準で着地しました。
左下の棒グラフはマーケット賃料との乖離を示しています。赤色がマーケット賃料よりも低い賃料をいただいている面積、青色が高い面積です。引き続きレントギャップはマイナスを維持しており、まだまだ賃料を上げられる余地はあると考えています。
ただし、このような環境の中では賃料交渉についても非常にデリケートになっていますので、テナントと慎重にコミュニケーションを強化しながら、引き続き賃料増額について狙っていきたいと考えています。右下の棒グラフは各決算期別に展開したものです。
3. 内部成長の実績③(テナントに向けた取組み、コスト削減)
23ページです。感染拡大防止のため、消毒・除菌、清掃、飛沫防止対策、ソーシャルディスタンスの確保等の施策を記載しています。
4. 財務の状況
24ページは財務の状況です。左の棒グラフと折れ線グラフについてですが、調達の期間で平均4.2年、直接的な平均金利は0.64パーセントと従来水準を維持しています。また先般取得した「ヒューリック浅草橋ビル」については、JCRからGreen1の認定を取れましたので、グリーンボンドの発行について現在検討中となります。
5. 鑑定評価の状況
25ページは鑑定評価の状況です。概ねほぼ横ばいですが、商業施設については賃料の減額、退去等を見込み、含み損益がやや減少しました。ただし全体では商業施設でも含み益はまだある水準で、全体としても570億円の含み益があると考えています。
1. 今後の成長戦略
今後の戦略です。外部成長、内部成長、財務戦略に分けてご説明します。現状認識のところは先ほどご説明しましたので、追加することがあればご説明したいと思います。まず外部成長について、都心の優良物件は高値圏が継続しています。物件価格が安くなるのではないかということで買え控えしている、あるいは現在このような状況のためあえて売る必要がないということで、物件情報自体も非常に細っていると思います。
ヒューリックリートの特徴ですが、今回の現行店舗の取得のように、立地競争力の高い物件に対しての強力なスポンサーサポートによって我々の大きな強みは引き続き維持できていると考えています。
当面は立地にこだわったポートフォリオ戦略を継続し、かつ安定性の観点で老人ホーム等を取得しながら、このようなコロナ環境下にあっても着実なポートフォリオ改善等を通じて投資主価値の向上に結びつけていきたいと考えています。
内部成長については、第13期までは引き続き大きな変化はなかったと認識されますが、今後については個別の企業業績の悪化や賃料の引き上げについても非常に難度が高くなってくると想定しています。
しかし、レントギャップはマイナスのビルがたくさんありますので、引き続ききちんとチャレンジしていきたいと思います。ヒューリックリートは、駅近、中規模オフィスが特徴ですので、そのような意味ではまだ賃料の乖離幅があるところを中心に交渉を継続していきたいということです。
それから、先ほどお伝えしましたが中堅中小企業がお客さまとして多いため、引き続きテナントとの緊密なコミュニケーションを取りながら、特に商業テナントは非常に苦しい局面にありますので、新型コロナウイルスが落ち着いた後の状況を見据えつつリレーションをきちんと維持していきたいです。
財務戦略ですが、投資口価格は残念ながら現在は非常に低位に推移しています。そのため3月に公募増資を検討しましたが、発行登録というかたちでとりあえず推移してきましたが、最終的にはマーケットがなかなか改善しないこともあり、発行登録の取下げを行いました。
また、LTVについては40パーセントから45パーセント程度を目指しながら、引き続き資産の入替え等で物件のポートフォリオのコントロールと合わせて少しずつ実現していきたいと思います。状況によっては、物件の売却代金による自己投資口の取得も選択肢の1つとして考えていきたいと思います。
2. 内部成長戦略(「都心・駅近オフィス」の優位性)
28ページです。いつもみなさまにお示ししている都心・駅近の空室率ですが、他のエリアに比べて競争力が高いことを示しています。
2. 内部成長戦略(「中規模オフィス」の優位性)
29ページをご覧ください。新しい資料になりますが、新規の成約賃料と実際の継続している支払賃料に乖離があります。いわゆる大規模ビルについてはオレンジ色の折れ線で示していますが、非常にボラタイルな動きをしています。中規模のオフィスビルはそこまで大きな変動はありません。
実際に支払っている賃料も非常に小さな波になっています。新規の成約賃料を追いかけていきながらという後追いのかたちになっているため、スライドの表にある新規成約賃料の最高値と最安値の差異では、大規模ビルは60パーセントも乖離しており、中規模ビルは46パーセントとやや小さく、実際の支払賃料は27パーセントとなっています。
実際の賃料は安定感があるということです。スライド右上の折れ線グラフと棒グラフは、大規模ビルと中規模ビルの供給を示したものです。空室率が現在史上最低と言われるほどの水準になっていますが、今後大規模ビルの供給によって二次空室等に注視する必要があると考えています。
企業規模別の在宅勤務の構成については、10人から100人未満の企業では在宅勤務の実施率は15.5パーセントと非常に少ない状況です。ただし1万人以上の会社では42.5パーセントで、非常に大きなビルのテナントは在宅勤務を行っている比率が高いと認識しています。
円グラフの返金賃料坪単価ですが、3万円未満が非常に多いということもあり、まだまだ上げられる、あるいは継続賃料を上げられる余地があると認識しています。
1. ESGへの取組み①
ESGの取り組みについて若干説明します。31ページをご覧ください。従来からMSCIのESGセレクト・リーダーズ指数へ継続採用されていますが、この6月の更新でも引き続き継続採用されています。GRESBにおける評価も「Green Star」で星は4つという状況になります。
また今回からESGレポートを発行することとしました。いわゆる重要課題を設定し、それから目標を設定することで、対外的にもESGにきちんと取り組んでいる姿勢を示すことができたと思います。
1. ESGへの取組み②
32ページに各目標が記載されていますが、エネルギーの消費量、温室効果ガス(GHG)の排出量、グリーンビルディング認証の取得比率を具体的な数値目標として掲げることとしました。
1. ESGへの取組み③
社会はESGの「S」の部分ですが、テナントの満足度向上やステークホルダーへの情報開示等を引き続き従来以上に着実に取り組んでいきたいと思います。ダイバーシティについても積極的にスポンサーとともに取り組んでいます。役員及び従業員全体に占める比率は女性が26.7パーセント、管理職に占める比率も15パーセントと比較的高い水準にあると考えています。
ガバナンスですが、スポンサーとの出向関係がある役員は1人もおらず、全員転籍済みです。従業員も67.9パーセントが出向者以外です。ESGも取り組みながら、新型コロナウイルスの環境をなんとか乗り切り、引き続き投資主価値の拡大に努めていきたいと考えています。どうもありがとうございました。