2020年8月21日に行われた、ジャパンエクセレント投資法人2020年6月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:ジャパンエクセレントアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 香山秀一郎 氏

1. 第28期における対応と影響

香山秀一郎氏:みなさま、こんにちは。ジャパンエクセレントアセットマネジメントの香山です。さて、本編では、8月21日に電話会議方式にて開催しました、ジャパンエクセレント投資法人の決算説明会での説明内容につき、ポイントを絞ってお話しします。どうぞよろしくお願いします。

はじめに、28期、本年1月から6月の決算概況についてご説明します。まず、コロナの影響ですが、商業については、主にビルに付帯する店舗のみですので、賃収全体に占める割合は、影響の大きい飲食関係で1パーセント程度と、大きくはありません。

また、オフィステナントについては、状況悪化について相談を受け始めたばかりの段階でしたので、28期決算への影響額は、商業、オフィスを合わせてマイナス3,000万円。1口当たり分配金で22円程度の下押しということで、影響は限定的なものにとどまっています。

1.第28期(2020年6月期)決算ハイライト

それを受けて、28期決算ハイライトをご紹介します。1口当たり分配金については、年初に実施しました増資による希薄化のマイナス要因を、物件取得による収益のかさ上げ等のプラス要因でカバーし、期初予想どおりの2,960円の着地となっています。前期比で42円プラス、伸び率は1.4パーセントです。

外部成長については、3期にまたがる物件の取得・売却による含み損の解消、ポートフォリオの質的改善に目処をつけ、含み益は611億円、含み益比率23.8パーセントと、双方とも過去最大となりました。今後は、資産規模拡大の方向へ舵を切っていくことにしたいと思っています。

内部成長については、良好なリーシング環境の中で、賃料増額交渉、早めの埋め戻しを進めたこと等が奏功し、好調な仕上がりとなりました。賃貸事業収入は、初の100億円の大台に乗せ、賃料改定では面積ベースで63パーセント強が増額となり、また、稼働率は期末99.6パーセント、期中平均でも99.5パーセントと、ほぼ満室稼働での推移となっています。

財務戦略では、本年1月に、3年半ぶりとなる公募増資により、約79億円を調達し、物件売買と合わせて、LTV(ローン・トゥー・バリュー)を42.8パーセントまで引き下げるとともに、圧縮積立金の積立てによる財務体力の強化を図りました。足元、格付機関を意識して、LTV45パーセントを目処とした場合、167億円の外部成長余力を確保したことになります。

資金調達に関しては、調達金利の低減が進み、有利子負債の平均金利は28期末で0.75パーセントとなり、また金利の固定化、残存期間の長期化、返済期限の分散化も併進させています。なお、足元の調達環境については、特段の変調はありません。

2. 第29期・第30期の業績予想の考え方

続きまして、29期、30期の業績予想ですが、まずその前提となる考え方をご説明します。28期までは、良好な環境のもと、内部成長が増額基調のシナリオで来ていましたが、29期以降について、コロナを踏まえてシナリオを修正しました。四角の枠の中ですが、全般的な業況悪化を受け、テナントの賃料負担力低下が予期されることから、今後は内部成長が厳しい環境で変化するものとし、収支計算上は保守的な想定にて組み立てを行っています。

具体的には、表の中ほどにある業績予想の想定の欄で、賃収の大半を占めるオフィステナントにつき、フリーレント期間の積み増し、ダウンタイムの長期化や、契約更新時の賃料設定の保守的な見積もりに加えて、ある程度の減額・退去を相応な水準、予備的に入れ込みまして、その結果、稼働率が足元の99.6パーセントから、30期末98.5パーセントと、1パーセント程度落ち込むものとし、収益への影響額として、商業、オフィス合計で、29期は収益額マイナス1億3,300万円、分配金でマイナス98円。30期は、収益額マイナス9,900万円、分配金でマイナス73円の下押しを織り込みました。

なお、支払猶予や減免の要請に対しましては、足元の資金繰りの状況や業績の見通し、退去に伴う影響、補助金の活用状況、取引関係等を総合的に勘案した上で、個別に、丁寧に対応をしていく方針です。基本的には、減免の要請については、まずは支払猶予の方向で調整をさせていただき、また、猶予の場合でも原状回復工事負担を含めて、敷金の範囲内にするということにしています。ただし、状況によりましては、減免に応じた方が、長い目で見た投資家様の利益に資すると判断される事例もあり、その場合には応じていくというように、柔軟な対応を取っていきたいと考えています。

1.業績予想(1)第29期(2020年12月期)

そのような考え方に基づきまして、29期、30期の業績予想における1口当たり分配金の水準について、お話しします。29期は、当初予想どおりの3000円とさせていただく予定です。これは年初の増資の際に、すでに投資家のみなさまにお示しした水準ですので、足元で環境が変わり、社長の交代もありましたが、お約束をしっかり果たすべきと考え、この水準とさせていただく次第です。

1.業績予想(2)第30期(2021年6月期)

一方、30期については、2,910円とさせていただく予定です。コロナの影響で、固めに置いたシナリオの下では、従前まで増配を牽引してきました。賃貸事業収入が減少することとなり、前期の売却益の剥落というマイナス要因をカバーすることが難しいことから、前期比マイナス90円とするものです。

2.1口当たり分配金の見通し

分配金については、中長期的に安定した成長を目指していくという従来の基本方針に、いささかも変わりはありません。今回は、先行きの不透明感が強い現段階において、厳しめなシナリオで組み立てた業績予想に基づき、ニュートラルな水準、具体的にはコロナの影響マイナス73円の下押し効果を素直に反映させた水準で、ご説明をさせていただくのが、ご理解いただきやすいのではないかと考えた次第です。ただし、今後極力早いタイミングで、外部成長の機会を作り出すことや、コロナの影響をできる限り抑制すること等により、業績予想の上方修正を図っていきたいと考えています。

2.外部成長(2)外部成長の軌跡と今後の戦略

外部成長については、28期のハイライトで触れたとおり、今後は資産入替から、中長期的な資産規模拡大に軸足を移し、厳しい環境ながら、競争力のある物件の取得を目指していきます。スポンサーパイプライン、第三者物件等、あらゆるソースを活用していく所存ですが、コアスポンサーであり、かつデベロッパーでもあります、日鉄興和不動産からの物件供給が、今後も主軸になろうかと思われます。

ラインナップとしては、中規模、ハイグレードなオフィスブランドとしてシリーズ展開を進めているBIZCOREや、足元で進めています、大型開発物件も視野に入れていければと考えています。例えば、足元では、LTV45パーセントまで、約170億円の物件取得余力あり、とお伝えしましたが、仮に100億円規模の新規物件を取得できると、通期で約90円の分配金上積効果が生じることとなりますので、30期の前期比マイナス90円という減配要因を、ある程度相殺していくことができるイメージになると思います。

また、内部成長においては、厳しめの想定としたダウンタイムに対し、実際には早めの埋め戻しを行ったり、賃料横ばいの公開を想定した先であっても、実際には賃料ギャップがある先に対しては増額要請を行うこと等により、業績予想の上方修正を図れればと思っています。なお、圧縮積立金については、29期(2020年12月)末に、3億7,000万円まで積み増す予定です。分配金の安定的成長という観点から、柔軟かつ機動的に活用していきたいと考えています。

6.ESG関連(1)足許の新しい動き

最後に、投資家のみなさまの関心も高いESGの分野につき、足元の新しい動きを4点簡潔にご報告します。まず1つ目は、責任投資原則、PRIです。内外に前向きな取り組みスタンスを示すべく、就任早々ではありましたが、6月に署名しました。2つ目は、環境関連の認証制度の中でも、とくに注力してきたDBJのグリーンビル認証について、この6月末で面積ベース約8割まで高めることができています。3つ目は、これらの取り組みをご評価いただけたのか、MSCIのESG格付けが、7月末にBBBからAに格上げとなりました。これは、インデックス採用に向けて、大きな前進と捉えています。最後に4つ目ですが、サステナビリティ・ファイナンスの枠組みを整え、サステナビリティ・ローンの導入を決めました。これは、環境に配慮したグリーンファイナンスの枠組みに、社会性の要素を兼ね備えるものでして、ESGの観点から一歩進んだファイナンス形態であり、J-REITとしては初の導入事例となります。このようなESGに関わるさまざまな取り組みを進化させていくことで、投資家のみなさまのみならず、幅広いステークホルダーのみなさまとの協働、協創を目指していきたいと思います。

決算説明会でのお話のポイントは、以上のとおりです。足元、アフターコロナを見据えた新しい働き方、それに見合うオフィスの在り方についての検討が始まっているように感じています。個人的には、リモートワークの活用と新しいことを生み出していくためのリアルなコミュニケーション、これがこれからのオフィスのキーワードになるのではないかと思っています。我々のポートフォリオは、利便性、規模、ESG等の観点から、オフィス機能の見直しに十分対応していけるものと考えています。アンテナを高く張り、その動きにいち早く対応するよう、前向きなアセットマネジメントを展開していく所存です。今後も引き続きご支援賜りますよう、どうぞよろしくお願いします。

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