天然資源の宝庫と言われる北極海。現在世界で採取されていない石油の13%、天然ガスの30%が眠っているとされ、国家間の資源獲得競争の新たな場所になっている。

米国のポンペオ国務長官は2019年5月、訪問先のフィンランドで北極海を巡る情勢について演説し、「北極海は新たな戦略空間となっているが、関係各国は共通のルールに基づいて行動するべきだ」との認識を示し、また、「北極海を新たな南シナ海にしてはならない」と中国を強くけん制した。

中国が「氷上のシルクロード」構想で北極海に照準

北極海に領海や排他的経済水域(EEZ)を持つ国は、米国とロシア、カナダ、ノルウェー、デンマークの5カ国で、この5カ国が中心となる北極評議会が北極海の行方について話し合うが、中国はオブザーバー国として長年参加し、北極開発のルール作りで影響力を高めようとしている。

中国は2018年1月、北極開拓についての戦略を掲げた「北極白書」を初めて発表し、ロシア側の北極海沿岸を通ってアジアと欧州を結ぶ第3の一帯一路、「氷上のシルクロード」構想を打ち出した。

また、ロシアやノルウェー沿岸、アイスランドやデンマーク領グリーンランドへ投資を拡大したり、独自の砕氷船「雪竜」で北極海横断を成功させたりするなど、積極的な関与を見せている。