2020年9月24日に行われた、株式会社アルデプロ2020年7月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社アルデプロ 代表取締役社長 椎塚裕一 氏
株式会社アルデプロ 取締役社長室長 荻坂昌次郎 氏

経営理念

椎塚裕一氏(以下、椎塚):株式会社アルデプロ代表取締役社長の椎塚でございます。本日は、私から2020年7月期の決算概要をご説明します。

まず初めに、当社の経営理念をご説明します。当社は「三つの豊かさの追求」を経営理念として掲げています。「経済的な豊かさ」「身体的な豊かさ」「心の豊かさ」の三つの豊かさを追求することにより、初めて真の幸福が訪れます。当社の社員、または役員全員が、業務のみならず日常の行動指針として掲げているものです。

「経済的な豊かさ」は、売上高ではなく利益の追求を目指していくものです。「経済的な豊かさ」を実現し、みなさまに「与えられる」ようになることを目標としています。「身体的な豊かさ」は、心身ともに健康であることに感謝し、健康を追求していくものです。「心の豊かさ」については、経済的、身体的に豊かであっても、心が豊かでないと人間として成長していかないと考えています。

「経済的な豊かさ」「身体的な豊かさ」「心の豊かさ」の三つがすべてバランスよく正三角形になることを我々の行動指針、経営理念として掲げています。この経営理念のもとに歩んできた、2020年7月期の1年間の業績の概要を報告します。

内容

本日は、2020年7月期の決算概要と2021年7月期の経営計画についてご説明します。また、当社が掲げているビジネスモデルについて、実例をもとにご説明してまいります。

2020年7月期 業績ハイライト

2020年7月期の決算概要をご説明します。まず、2020年7月期の業績です。売上高213億9,900万円、売上総利益39億7,300万円、販管費7億2,800万円、営業利益32億4,500万円、経常利益23億5,200万円、親会社株主に帰属する当期純利益23億7,900万円の数字を出すことができました。2019年7月期と比べると、大幅な増収増益の結果となりました。

2020年7月期 セグメント別業績

続いて、2020年7月期のセグメント別業績についてご説明します。当社のセグメントは、不動産再活事業とそれに伴う不動産賃貸収益等事業の2セグメントから売上が構成されています。

不動産再活事業は、売上高210億9,100万円、売上構成比98.6パーセントの比率です。不動産賃貸収益等事業については、売上高3億800万円、売上構成比1.4パーセントという数字になっています。

この不動産賃貸収益等事業ですが、不動産再活事業のもととなる不動産の案件について、 仕入れ決済を行ってから売却するまでの在庫期間、その賃貸収益を賃貸収益等事業として売上高に計上しています。

この賃貸収益等事業の比率が小さければ小さくなるほど、当社のビジネスの中では物件が回転しています。また、回転率がどんどん上がっていくと、当然ながら賃貸収益等事業が少なくなっていきます。このようなセグメントとなっています。

2020年7月期 要約BS(負債・純資産)

続いて、2020年7月期の当社のバランスシートの要約版についてご説明します。流動負債は84億1,700万円で、主に短期借入金が15億円、預り金が33億5,500万円、1年以内返済予定の長期借入金が28億5,000万円となっています。

固定負債は2億4,400万円で、主に長期借入金が2億2,600万円あります。その結果、負債合計は86億6,200万円となっています。2019年7月期の169億7,800万円の負債から比べると、約半分に軽減されています。

純資産の部については、資本金は2019年7月期と変わらず24億2,800万円、資本剰余金は2億9,400万円、利益剰余金は19億4,500万円、株主資本合計が46億6,500万円です。純資産合計としては、46億6,500万円が当社に積上がったことになります。

2020年7月期 要約BS(資産)

次に資産の部です。流動資産が117億3,600万円で、主に現金及び預金の残高が17億3,500万円、販売用不動産が90億9,100万円です。また、固定資産は15億9,100万円で、主に関係会社出資金10億1,800万円が含まれています。資産合計は133億2,700万円となっており、2019年7月期の207億8,100万円から70億円以上の大幅な減少となっています。

販売用不動産(在庫)の状況

2020年7月期末現在の販売用不動産の状況ですが、過去に100億円を超える大型の案件を在庫としていくつか保有していた期間がありました。このときには、290億円程度の有利子負債、販売用不動産で230億円ほどの在庫を抱えたこととなりました。これらをすべて売却し、期末現在では約90億円の販売用不動産があります。それに伴い、有利子負債は45億円ほどとなり、大幅に減少させることができました。

2020年7月期 要約キャッシュ・フロー

次に、キャッシュ・フローについてご説明します。営業活動によるキャッシュ・フローは75億6,100万円となっており、主に営業活動による棚卸資産の減少78億1,300万円、預り金の減少32億5,300万円という結果となっています。

投資活動によるキャッシュ・フローは5,500万円で、主に定期預金の払い戻しによる収入が7億円、貸付金の回収による収入が3億9,300万円となっています。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出が57億8,500万円ありました。また、短期借入金の純減額として63億3,000万円がありました。これらの結果、期末における現金及び現金同等物の残高は17億1,500万円となっています。

2021年7月期業績予想

続いて、2021年7月期の当社の経営計画についてご説明します。2021年7月期は、売上高180億500万円、営業利益29億5,000万円、経常利益25億7,100万円、親会社株主に帰属する当期純利益25億100万円という経営計画を立てました。

しかし、新型コロナウイルスの影響によって今後の経済情勢がどうなっていくかはわかりません。また今後、経済活動においてさまざまな制約が課せられる可能性があります。この計画は2021年7月期の期初に、ある程度仕入の案件で仕掛りが終わっているもの、また、実際に仕入契約を締結しているもの、売却先についてすでに売却や契約が終わっているもの、売却決済が終わっているもの、売却先がほとんど決まっているものなど、最低限の部分の積上げで計画しています。

当然この進行期において、期中に仕入また売却を行っていく新たな案件が今後出てきますが、それらの案件については、この2021年7月期の経営計画にはすべて読み込んでいません。これはあくまでも、2021年7月期期初に最低限想定できる案件の積上げによって出した数字です。

【背景①】コロナ禍とリーマンショックの違い

コロナ禍とリーマンショックの違いについて、不動産業界を中心にご説明したいと思います。リーマンショックは金融収縮に端を発した経済危機であり、資金調達が厳しくなりました。資金調達が難しくなると、当然不動産の取引が減っていき、それに伴う不動産価格の下落や企業の倒産等が増加し、景気が悪化します。これがリーマンショックでした。

一方、新型コロナウイルス感染症の拡大においては、外出自粛等による経済活動の自粛や制限はありましたが、制度融資等を含め、資金繰りに繋がる融資や金融機関の柔軟な対応により、金融市場は安定しているものと思われます。また、それによって不動産業界が低迷したり、不動産価格が下落するというのは、基本的には今現在も見られていません。そこがリーマンショック当時と今現在我々が置かれている状況との違いであると考えています。

【背景②】コロナ禍の業績への影響について

コロナ禍の業績への影響についてです。当然メリットもありますが、デメリットもあります。メリットについては、当社が現在中心としてビジネスを行っている権利調整案件が非常に優位に働いています。

このコロナ禍によって業績不振に陥る会社や飲食店等のテナントなどの中には、「これを機に撤退しよう」という方々も数多くいるかと思います。そのような方々に自ら退去していただくということは、当社にとってはテナントの退去に費やす時間と労力を短縮でき、金銭的な負担もなくなります。語弊はありますが、そこが今回のコロナ禍のメリットで一番大きいかと思います。

また、最近は所有している不動産を売却して現金化を急ぐオーナーも顕著に見られるようになってきました。そのような方々をターゲットにして、順調に仕入れ活動を行っています。

一方で、当然デメリットもあります。権利調整案件とは別に不動産再活案件として当社が取り組んでいる収益ものの1棟のビル、もしくは1棟の賃貸マンション、賃貸レジデンスにおいて、当然先ほどと同じように、入居しているテナントの方々が出て行かれることがあるとは思います。それによって利回りが低下し、収益が低下していくということがデメリットかと考えています。

しかしながら、ビルとは違い、レジデンス、賃貸マンションは入居者の方々が自ら出ていくということは今現在も見られていません。賃料に関しても、下落の傾向はまったくありません。この進行期において、不動産再活事業の収益物件については、基本的には賃貸レジデンスを中心に扱っていくと考えています。

2021年7月期の営業方針

2021年7月期の当社の営業方針についてです。経営理念にありましたように、当社は「売上高重視から利益重視へ」ということで、売上高を追求せずに利益の積上げを重視していきます。

また、「在庫回転率を上げる」ということで、当社が上場当時掲げていたビジネスモデルに原点回帰するという意味で、在庫回転率を上げていきます。在庫回転率は最低でも年間2回転から3回転を目指します。在庫回転率をあげていくためには、仕入れの時点である程度出口を決めておくということを掲げています。

また、「仲介業務にも注力」していきます。以前、当社は100億円を超える案件を保有して売却するということを行っていました。大型案件を当社のバランスシートに掲げていくのも、それはそれで非常に意義があったと思っているのですが、大型案件であるがゆえに、売却の時期がずれてしまうと、当社の経営成績に大きく影響を及ぼしてしまうという反省から、大型案件については仲介業務に徹し、フィービジネスとして成立させていこうと考えています。この進行期においても、いくつかの仲介案件を取りまとめていますので、今期に関しては、このような手数料収入を上げていくと考えています。

株主還元方針について

当社の株主還元方針についてご説明します。当社の基本方針は、配当政策として配当性向30パーセントを掲げています。これは従前より掲げていました。また、この2020年7月期に復配を行うことができました。こちらは1株当たり50銭(0.5円)を予定しています。

この2021年7月期については、配当予想として、配当性向20パーセント、1株当たり1円50銭の配当を予定しています。

またそれとは別に、当社の株主還元方針の中期、長期的目標として、現在の発行済株式総数を自己株式の取得という方法で減少させることを掲げています。

ビジネスモデルの変遷

当社が実際に行っているビジネスモデルについてご説明します。先ほどお伝えしたように、上場当初は、一棟の賃貸マンションもしくは中古マンションを購入し、1部屋ずつ一般の個人の方々に売却していくというビジネスを行っていました。その後、当社の規模が拡大していくにしたがって、一棟のオフィスビル、商業ビル、一棟の賃貸マンションの再活に変遷していきました。

その後、1案件につき100億円を超える案件も取り扱うことができるようになっていきましたが、その結果、前期、前々期の2期においては大幅な赤字を計上することになりました。その反省を踏まえて、この進行期においては、中型から小型の不動産に特化することを掲げています。その中でも、再開発アジャストメント事業または再活事業という、2つの利益率の高い案件に注力していくように進めていきます。

当社の得意とするビジネスモデル

当社の得意とするビジネスモデルのうち、当社が権利調整案件と呼んでいる再開発アジャストメント事業についてご説明します。

権利調整ビジネスモデル 基本スキーム

この権利調整案件のビジネスモデルの基本として、旧耐震の法律のもとに建てられた築40年から50年程度が経過している古ビルを、まず当社が仕入れます。その後、現在入居しているテナントの方々と退去交渉を行い、すべてのテナントの方々に退去していただきます。そして、そちらを開発用地として開発デベロッパーに売却していきます。最後に、開発デベロッパーが建物を解体し、新しいビルや新しいマンションに生まれ変わる、というのが基本スキームです。

ビジネスモデル−「不動産再活事業」

もう1つの、不動産再活事業のビジネスモデルについてです。こちらは、まず不動産を当社が仕入れます。その後、賃料アップもしくは建物のリノベーションを行い、その不動産が持つ資産価値をバリューアップさせます。そして、一般の投資家または一般の事業法人に売却し、売却した後も当社がその建物の管理を請け負うことで、手数料を今後の収益につなげていきます。

これら仕入から売却までを4ヶ月から6ヶ月程度で行うことで、最低でも年間2回転はすることを掲げています。

当社の仕入検討の基準

続いて、当社の仕入検討の基準についてご説明します。エリアにおいては、首都圏、大阪府、兵庫県、京都府の中心エリアです。首都圏といっても1都3県ありますが、現在は東京都の中央区、千代田区、新宿区、港区、渋谷区の都心5区に特化して仕入活動を行っています。また、大阪府、兵庫県、京都府の関西エリアについても、それぞれの中心部に限定して仕入を行っています。

その中での立地条件については、人気が高く、代替テナントの募集が容易な立地です。

また、権利調整案件においては、退去交渉の難易度を見極めることが非常に重要です。当然、立退き交渉を行っていくため、金銭的また時間的な目途が立ちやすいものに特化して仕入を行っていきます。

さらに、すべての不動産において、最終的にその不動産の潜在価値が高いかどうかを十分見極めるようにしています。物件自体の潜在価値が高い物件かどうか、また再活によって付加価値が高まるのかどうか、それによってその不動産が持っているポテンシャルが上がるのかどうか、これらを十分に吟味して見極めた上で、仕入の契約や仕入決済を行っています。

再開発アジャストメント案件(渋谷区渋谷物件)

これまで当社が実際に手掛けた案件のうちのいくつかを例に挙げてご説明します。まず1つ目は、再開発アジャストメント案件で、東京都渋谷区渋谷に所在する古い賃貸マンションと区分の分譲マンションの2棟です。こちらは、当社がすべて買い上げて入居者に退去していただき、開発素地として開発デベロッパーに売却した案件です。仕入の契約から売却までを、約1ヶ月という短期間でまとめ上げました。

再開発アジャストメント案件(港区六本木物件)

続いて、こちらも再開発アジャストメント案件で、東京都港区六本木に所在する建物です。もともと古ビル3棟が建っていましたが、すべてのテナントに退去交渉を行って退去していただいた後、香港の大手ホテル運営業者に売却することができました。

再開発アジャストメント案件(文京区物件)

続いて、こちらも再開発アジャストメント案件の東京都文京区に所在する不動産です。こちらは、それぞれの建物が再開発用地としては非常に狭小でしたので、2つの建物をまとめました。1つの建物単体で見るとどうしてもポテンシャルは低いものでしたが、2つまとめることによって、ある程度まとまった土地となり、さまざまなかたちでの再開発や、オフィスビルもしくは賃貸マンションへと開発できる用地としてまとめ上げることができました。こちらも、この2つの土地と建物を一体として開発デベロッパーに売却しました。

再活案件(新宿区歌舞伎町物件)

続いて、こちらは再活案件の東京都新宿区歌舞伎町に所在する1つの古ビルです。こちらは靖国通り沿いでめったに売却の案件が出ることがない、非常に資産性の高い土地の建物です。こちらの古ビルを当社が購入し、この建物のさまざまな老朽化による瑕疵を当社ですべて修繕し、バリューアップして一般の事業法人に投資用物件として売却しました。

会社概要

当社の会社概要はスライド資料のとおりです。

34期 新マネジメント体制

34期の新マネジメント体制はスライド資料のとおり、椎塚、荻坂、佐藤の取締役3名に加えて、新たに秋元1名を取締役として迎え入れる予定です。このマネジメント体制は、10月29日に開催される予定である定時株主総会の株主さまのご承認を経てから正式に決定します。新たなマネジメント体制で今期1年に望んでいきます。

潜在株式の状況

当社は、過去に事業再生ADRを行った時に優先株式を発行し、みなさまからのご支援をいただいて現在に至っています。この優先株式4,290万株と、昨年発行した新株予約権350万株をすべて消却することができました。これによって資本は健全化し、潜在株式はゼロという資本健全化を達成することができました。

沿革 Rebornアルデプロ 新たな成長ステージへ

こちらは当社の創業から現在までの沿革ですので、資料をご参照していただければと思います。2020年7月期の決算の概要を私からご説明させていただきました。

質疑応答:コロナによる営業活動の制約について

荻坂昌次郎(以下、荻坂):「新型コロナウイルスの影響は軽微とのことですが、営業活動で制約等はないのでしょうか?」というご質問です。

椎塚:今回の新型コロナウイルスの影響ですが、当社については、営業活動について基本的には軽微であるとお答えしています。当然、今年の4月から5月にかけての緊急事態宣言期間中は当社も営業時間を短縮し、それに伴って営業活動の自粛も行っていました。

しかしながら、「face to face」での面談が従前に比べて減っているのは間違いない事実です。ただ、これによって当社の営業に支障をきたしているかと言うと、それほど大きな影響はありません。本日もこのようなかたちで機関投資家のみなさまに説明しているように、ITが発達しているおかげで、我々も「face to face」による営業活動以外にもさまざまなツールを駆使し、各営業社員が工夫しながら営業活動を行っています。したがって、基本的には現在のところ営業活動についての制約はないと考えています。

質疑応答:今期の売上予想における進捗について

荻坂:「今期180億円の売上予想を立てられていますが、進捗状況はいかがでしょうか?」というご質問です。

椎塚:先ほどの決算概要の説明の中でも若干触れましたが、2021年7月期の進捗状況については、現在具体的な数字をお伝えすることはできません。しかし、先ほどのご説明の中で少し触れたように、すでに仕入れを行っているものや仕入れ決済を行っているもの、売却契約を行っているもの、売却の決済を待っているものも複数あります。

また、今期は仲介業務にも注力していくとお伝えしましたが、すでに仲介案件もいくつか成約しています。それ以上のことを具体的にお伝えすることはできないのですが、この進行期に関しても順調に進んでいると考えています。

質疑応答:持ち込み案件の増加について

荻坂:「コロナによる経済情勢悪化で、持ち込み案件等の検討案件は現状増加していますか?」というご質問です。

椎塚:当社には、権利調整案件にふさわしい案件はもともと数多く持ち込まれています。先ほどの説明の中でも多少触れましたが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、当然、現金化を急ぐ不動産オーナーや不動産所有者もいます。そのような方々からの「至急検討してほしい」という案件が多く持ち込まれているのは事実です。

質疑応答:権利調整案件や不動産再活事業の買い手側の変化について

荻坂:「権利調整案件や不動産再活事業の買い手側に変化は発生していますか? 海外投資家や個人富裕層の方々などに変化はあるでしょうか?」というご質問をいただいています。

椎塚:これはそれぞれの国の事情もあるとは思うのですが、一部海外の投資家は手控えているのが実情と考えています。しかしながら、当社は従前より、海外の投資家よりも日本国内の開発デベロッパーに権利調整案件の多くを売却してきました。また、不動産再活事業においては、個人富裕層の方や個人投資家の方、一般事業法人に売却していたのが実情です。

国内のデベロッパーに関して、今回の新型コロナウイルスによる影響で開発案件を手控えることは、現在は大きく影響していないと考えています。当然、100億円を超える大型の案件に関しては、開発デベロッパーも多少手控える様子を肌で感じますが、当社が現在扱っている中型、小型の案件については、従前と変わらず、国内のデベロッパーは強い購入意欲を示しているのが実情です。

また、不動産再活案件の買い手となっている一般の個人投資家、もしくは個人富裕層の方々の購買意欲は従前と変わりません。それに伴い、金融機関それぞれの買い手に対しての融資の姿勢についても、新型コロナウイルスによる影響はそこまで見られていないと思っています。ですので、買い手についての変化は基本的にはないと考えています。

質疑応答:金融機関の融資姿勢におけるコロナの影響について

荻坂:「不動産業は金融情勢の影響をダイレクトに受けると思いますが、金融機関の融資姿勢に新型コロナウイルスの影響はありますか?」というご質問です。

椎塚:先ほどのご回答の中でも触れていますが、不動産業は金融機関から借入れを起こし、それをもとに事業を行っています。当然、我々の業界は金融機関の融資姿勢の変化によって大きく左右されるのが実情であると考えています。

ただし、今回のコロナ禍の影響で金融機関の融資姿勢に変化があったかと言うと、今のところ変化は見られないと思っています。私どもに対する金融機関の融資姿勢は従前と変わらず、金融機関から手厚いご支援をいただいているのが実情です。

また、新規の金融機関にも当社の業績を見ていただき、金融機関のほうから「取引をしたい」と言っていただいているのが現在の実情です。そのため、金融機関の融資姿勢に大きな変化はないと考えています。

質疑応答:適時開示の基準について

荻坂:「適時開示の基準について教えてください」というご質問です。

椎塚:適時開示の基準については、従前からも株主の方々からご質問いただいています。当社の適時開示の基準は、東京証券取引所の上場規則に定められている開示基準にしたがっています。具体的に言うと、物件の売却については、前期の売上高の10パーセントを超えるものが適時開示基準となります。当社の場合、物件の売却価格で21億円を超えるものが初めて適時開示の基準となります。

期が始まって2ヶ月が経ちますが、いろいろな方から、「なぜ物件の売却の適時開示をしないのですか?」「物件が売れていないのですか?」というお問い合わせをいただきます。しかし、当社がこの進行期に扱っているものは、ほとんどが21億円以下の案件ですので、適時開示基準を満たしておらず、当社は適時開示を行っていません。

質疑応答:自己株取得について

荻坂:「自己株取得はいつ頃、どの程度実施する予定でしょうか?」というご質問です。

椎塚:当社の自己株買いについては、中期的、長期的に株式数を減少させていくことを考えています。当然、事業活動における資金需要を鑑みながら、その都度決定していきたいと考えています。ですので、具体的に「この時期にこれだけの規模で」ということは、この場で具体的にお答えできません。ある程度の規模感を持って自己株の買い付けを行いたいと考えています。

質疑応答:コロナ以外でネックになる要因について

荻坂:「新型コロナウイルス以外で、経営にとってネックになる要因があれば教えて下さい」というご質問です。

椎塚:先ほどお伝えしたとおり、不動産業は金融機関の融資とは切っても切れない仲であると考えています。この金融機関の融資姿勢が現在と180度変わり、まったく新規の貸出を行わないとなった場合には、同じ不動産業界における会社もさまざまなところに大きく影響してくると思います。この金融以外の部分に関しては、基本的に大きなネックは現在はないと考えています。

質疑応答:今期の売上予想の180億円について

荻坂:「ご説明の中で期末在庫が約90億円とありましたが、今期の売上予想の180億円はけっこうアグレッシブな予想ではありませんか?」というご質問です。

椎塚:2021年7月期の期首、すなわち2020年7月期期末の在庫として、当社は約90億円の在庫を計上しています。しかしながら、当社の販売用不動産は仕入れの契約を行っただけでは計上せず、仕入れの決済を行って名義がすべて当社に変わって初めて当社の在庫として計上します。

当然、現在すでに仕入れの契約だけ行って仕入れの決済の時期が来るのを待っているものや、仕入れ契約に向けて仕掛かってほぼ契約まで達成できているものなど、現在最低限できるものの数字の積上げとして180億円という売上高の予想を出しています。これは決してアグレッシブに出した数字ではないということは、この場をもってみなさまにご説明させていただければと思います。

また、仲介案件については、「仲介手数料=売上高」ですので、当然、利益と売上の率に関しては、決してアグレッシブに掲げたものとは考えていません。

質疑応答:権利調整案件における競合他社について

荻坂:「権利調整ビジネスを実行していますが、競合他社は上場会社ですか?」というご質問です。

椎塚:当社が行っている権利調整案件の競合他社についてですが、上場会社において、当社のようにきちんとしたかたちでビジネスとして権利調整案件を手掛けている会社は、基本的にはないと考えています。上場会社の中では、当社が唯一無二であると思っています。

また、強いて挙げるのであれば、メルディアグループの三栄建築設計やレーサムです。このような方々が年に1、2案件手掛けると聞いていますが、当社のようにこれをメインで行っている会社は、上場会社では当社のみであると考えています。

質疑応答:営業拠点について

荻坂:「今後、東京都や大阪府以外に営業拠点を増やす計画はありますか?」というご質問です。

椎塚:当社は現在、東京都の本社と大阪府の支店の2つの拠点をもとに事業活動を行っています。以前は、全国47都道府県に営業所や支店を設けて事業活動を行っていた時期もありましたが、現在のところ、東京都の本社と大阪府の支店の2つの拠点で事業活動は十分に行えると考えています。したがって、現在のところ東京都と大阪府以外に新たに支店を拠出することは考えていません。

質疑応答:権利調整案件の市場規模について

荻坂:「権利調整案件について、市場規模はどのくらいを想定されていますか?」というご質問です。

椎塚:権利調整案件の推定市場規模は、現在の日本国内にてストックされているマンションに限って言うと、全国で約590万戸あります。また、東京都に所在するものだけでも165万戸ものマンションがあります。このうち、旧耐震基準に基づいて建築されたものが全国で約106万戸です。

東京都内においては、36万戸程度の築古のマンションがあります。このマンションだけに限っても、市場の推定規模は30兆円程度になると考えています。当社は、このようなマンションだけでなく、築古のオフィスビルや商業ビルも手掛けていますので、その推定市場規模は50兆円を超えると考えています。

質疑応答:テナントの退去について

荻坂:「テナントの退去に関して、以前より時間がかかっている、あるいはコストがかかっているということはありますか?」というご質問です。

椎塚:テナントの退去に関して、以前より時間がかかっているということは、現在はまったく感じていません。逆に、新型コロナウイルスによって時間が短くなったところもありますし、コストも相当程度低くなっていることが現実です。現在は、以前より時間がかかっている、もしくはコストがかかっていることはありません。

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