2020年9月2日に行なわれた、AOI TYO Holdings株式会社2020年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:AOI TYO Holdings株式会社 代表取締役社長 CEO 中江康人 氏\nAOI TYO Holdings株式会社 専務取締役 CFO 譲原理 氏

2020年12月期第2四半期決算説明会

譲原理氏:本日はお忙しい中、AOI TYO Holdings株式会社2020年12月期第2四半期オンライン決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。専務取締役CFOの譲原でございます。

本日は私より上期決算概要および連結業績予想をご説明し、その後、社長の中江より、先日発表した中期経営計画についてご説明します。

新型コロナウイルス感染症への対応

まず、2020年12月期第2四半期の決算概要についてご説明します。新型コロナウイルス感染症への対応につきましては、 撮影・編集等の業務は「3密」に該当する場合も多く、2月から段階的に感染拡大防止対策を講じていたものの、4月7日の緊急事態宣言発令下では撮影がほぼ全面的にストップし、 撮影・編集スタジオも臨時休業させました。

緊急事態宣言解除後は、 ガイドラインを作成し、感染拡大防止対策を講じた上で撮影・編集等の業務を再開しました。

連結決算ハイライト

しかし、1ヶ月では遅れをカバーするには至らず、上期の売上高は大きく減少し、前期比でマイナス63億円、20パーセント減の243億円となり、利益面でも売上高の減少が大きく響き、各段階利益は損失を計上しています。

営業利益は前期比マイナス17億円のマイナス8億8,100万円、経常利益は前期比マイナス17億円のマイナス10億4,700万円です。四半期純利益は前期比マイナス12億円のマイナス9億5,600万円となりました。

5月29日に発表した上期業績予想に対しては、売上高はほぼ予想どおりであり、営業利益はマイナス10億円の予想に対して若干改善しています。

四半期別売上高推移と受注残高

四半期別売上高を見ると、第1四半期は前期比マイナス16パーセントの24億円減、第2四半期は前期比マイナス25パーセントの38億円減となっており、新型コロナウイルスの影響による各種案件の延期・中止に伴う売上減は54億円程度で、そのうちの7割程度の36億円は第3四半期以降に延期となっています。

しかし、緊急事態宣言下の経済活動の停止や先行きの不透明感等により、第2四半期の受注高は前期比マイナス35パーセントの94億円と大きく落ち込み、当第2四半期末の受注残高は140億円、前年同四半期末比7.2パーセント減にとどまりました。

四半期別営業利益推移

四半期別営業利益についてです。前年度に減損損失を計上したソフトウェアの減価償却費、開発費等で3億円程度、また業績不振子会社の費用、その他交通費、交際費等の費用を削減したものの、売上高の減少により約10億円の損失を計上しました。

事業区分別売上高

事業区分別の売上高についてです。ソリューション事業は前年同期並みの売上高を確保したものの、動画広告事業が大きく落ち込み、広告関連事業も各種イベントの中止・延期により減少しています。

顧客別売上高

顧客別では、電通グループ、博報堂グループ、その他の広告会社からの売上が大きく落ち込み、相対的に直接取引の割合が高まっています。

媒体別売上高

媒体別の売上高ですが、テレビCMに比べるとオンライン動画を含むデジタルコンテンツの売上減少は少なくなっています。

連結貸借対照表サマリー

連結貸借対照表サマリーです。毎年、第2四半期に調達している年度資金の長期借入を今年は増額し、期末の現預金は133億円で、流動比率は277.2パーセントと高い水準を確保しています。

当社は支払先行型のため、現状のような売上減少局面ではキャッシュフローがプラスになります。今後、売上が回復していく局面ではキャッシュフローがマイナスとなりますが、120億円のコミットメントラインを締結しており、6月末の利用残高はゼロのため、問題ないものと認識しています。

今後の見通し

2020年12月期の通期業績予想についてご説明します。今後の見通しですが、前提としては、現在の新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う経済活動の状況が、少なくとも年内は継続されると想定しています。足元では感染拡大防止の取り組みが経済活動を抑制し、国内外の経済情勢、企業収益の悪化に伴い、企業の広告需要は減少するものと考えています。

そのため、受注高は第2四半期がボトムになるものの、現時点においては、第3四半期、第4四半期の大幅な回復を見込むのは難しいと考えています。例年では第4四半期に大きく売上が上がっているのですが、今回はそれを見込まずに予想を策定しています。

連結業績予想の修正

したがって、下期の売上高は上期に比べて13億円弱増加するものの、営業利益はマイナス5億円となり、黒字化する水準までに至らないと予想しています。

通期は売上高500億円、営業利益マイナス14億円、経常利益マイナス15億円、当期純利益マイナス15億円としています。

事業区分別 売上高計画の修正

事業区分別では、動画広告事業、広告関連事業の下期売上高は、緊急事態宣言解除後の経済活動の再開に伴い上期比で増加する予想ですが、逆にソリューション事業の売上高は、上期は前期並みだったものの下期は広告需要の減少により、前期比で減少する予想としています。

動画広告事業

動画広告事業ですが、主要な映像制作会社の売上高は第2四半期をボトムとして下期は増加するものの、現時点では大幅な増加は見込みにくい状況です。一方、実行利益率は、上期は中止・延期案件の実費請求の影響等もあり低下しましたが、下期は期初計画を若干下回る水準まで上昇するものと見込んでいます。

ソリューション事業① − TYOオファリングマネジメント部門

ソリューション事業のTYOオファリングマネジメント部門です。上期の売上高は、ネット系企業等からの受注増加もあり前年並みとなりましたが、下期は既存案件の中止・延期がある上、現時点では新規受注を見込むことも難しく、上期比でマイナスの予想としています。

ソリューション事業② − Quark tokyo + Mediator

オンライン動画の企画制作、配信等を行なうQuark tokyoと、電通グループのCCIとの合弁会社であるMediatorについても、オリンピック関連案件の中止や広告需要の低下による既存顧客の予算削減等に加え、第2四半期の対面営業自粛の影響もあり、現時点では下期の売上高増加は見込めない状況です。

これらのソリューション事業については、現在は積極的な営業活動を再開しており、新規受注も入りつつあるため、第4四半期に向けて少しでも案件を積み上げていきたいと考えています。

広告関連事業

広告関連事業です。制限の緩和やオンラインサービスでの案件獲得により、イベント関連売上高については、下期は上期に比べて増加する見込みです。

海外事業

海外事業については、ロックダウン等による影響を受けた上期に比べて、下期は経済活動の制限が解除された国・地域から業務を再開しており、徐々に回復する見込みです。

配当と役員報酬減額について

配当と役員報酬減額についてです。業績は今期がボトムで来期は回復していくものと見込んでおり、2020年12月期期末配当は、安定的な配当水準を可能な限り維持する観点から、前期実績と同額の12円の予想を出しています。また、経営環境、業績動向、そして今回の配当予想等を真摯に受け止め、固定費削減の観点も含め、役員報酬の減額を実施することにしています。私からの説明は以上です。

続いて、社長の中江から中期経営計画についてご説明します。

2019年3月 中期経営方針

中江康人氏:こんにちは、中江でございます。私から、中期経営計画について説明させていただきます。

2019年3月に中期経営方針を発表させていただきました。基本方針は「いかなる時代にも対応できる、力強い企業体であり続けること」です。事業方針は、我々の強みである映像・動画制作をもとに「掘り下げる」事業と、「拡げる」事業をもって推進するとお話ししていたと思います。

そして昨年から、「具体的にどのような計画にしていくのか」ということで進めてきました。その中で、新型コロナウイルス感染拡大が起こり、足元では計画していた数字を大きく修正しなければならない事態に陥りました。

昨年に不採算事業やプロジェクトなどを整理して、本年度からV字で成長させていく計画でしたが、残念なことに、足元の数字としてはかなり下がったかたちでのスタートとなってしまうということです。

ただし、新型コロナウイルス感染拡大によって、生活様式が大きく変化しており、我々の事業環境での変化のスピードもかなり上がっている状態です。その意味では、我々の計画はかなりポジティブに対応、推進できると考えていますので、計画自体を変更するつもりはありません。

事業環境

事業環境についてです。みなさまもご存知のことですが、テレビCMの市場は、最大で年2パーセント程度のペースで縮小していくと見込んでいます。一方で、オンライン動画広告市場は、年20パーセント程度のペースでの成長を見込んでいます。

その中で、当社が手掛けてきた一番得意なテレビCMに代表されるような高単価のブランド動画はオンラインの中でも成長するのですが、その成長は限定的であり、大きく伸びるところは低中単価動画になります。

広告主のニーズ

広告主のニーズについてです。当然ですが、大手総合広告会社の広告主、いわゆるナショナルクライアントと呼ばれる企業以外にも、広告主はたくさんいます。その中には、年間広告費が1億円から10億円程度の中小企業やベンチャー、スタートアップ企業がいます。

そうした広告主は、自社の製品やサービスの広告を展開するにあたり、いわゆるマーケティングをしっかり理解した上でコミュニケーションを設計して、企画、制作、運用までワンストップで行なっていく体制を持つ会社を望んでいます。

それは、実際にエグゼキューションの部分を担当できなければ実現しません。つまり、ものづくりができる会社でなければワンストップの体制が築けないということで、(当社のような)制作会社との直接取引のニーズが高まっています。

AOI TYOグループ スローガン

この中期経営計画を推進していくために、AOI TYOグループのスローガンを策定しました。「未来を、感動を、人を、プロデュース。」というものです。

「未来を」という部分に込めた思いは、成長領域へチャレンジしていくということです。「感動を」という部分には、主に映像ですが、その強みを一層深掘りしていく思いを込めています。そして「人を」という部分ですが、当社の資産は「人」ですので、資産である「人」が成長する場となる会社を目指して、これらを社員一丸となって「プロデュース」していきます。

この「プロデュース」は、モノやコトなどの価値を創出するということですが、社員一丸となってそれらをプロデュースすることを推進していきたいと考えています。

テーマと重点施策

この中計の大きなテーマと重点的な施策についてです。先ほどお話しした市場環境の中、広告主のニーズを受け止めて実現していくためには、グループ全体のプロデュース機能をもっとアップデートしなければ応えきれないのが現実です。そこで、アップデートするための重点的な施策として、事業セグメントを再構築することをメインとして取り組んでいきたいと考えています。

まず、事業・組織構造の変革、つまり組織再編ということです。次に、組織再編された各事業が取り組みを明確化し、きちんとコミットメントして事業を推進していくということです。そして、我々はグループ経営を進めていく方針ですので、ガバナンスの強化や全体的な生産性の向上、コスト削減を重点施策として置いています。

セグメントと注力すべき取り組み

セグメントは、2つに分けて推進していきます。1つは、コンテンツプロデュース事業です。こちらは、広告会社を主なお客さまとして、従来から取り組んでいる広告映像制作の事業です。そして、新しいかたちの撮影、編集の環境を提供できるような事業を考えています。

注力すべき取り組みとしては、受託事業のテコ入れ、低中単価デジタル案件の取り込み、つまり収益化、そしてポストプロダクション事業の多角化です。そして、次世代プラットフォームにもコンテンツを提供できる会社であり続けたいということで、VR /ARを含むxRコンテンツの企画、制作を行なっていきたいと考えています。

次に、コミュニケーションデザイン事業です。こちらは、広告主との直接取引を中心に、これまでも取り組んできたソリューションの提供、またケイパビリティを追加して、PRやイベントなど、幅広くお引き受けできる事業を目指していきます。

そして、リピート顧客層の拡大や、全エグゼキューションを請け負えるような体制、また統合型マーケティング・プランニングのお手伝いができるような体制の構築に注力して進めていきたいと考えています。

現体制図

こちらは現体制図ですが、経営統合した時から変わっていません。これまで、AOI Pro.とTYOの2大会社で事業を推進してきました。連結子会社は全部で33社、そのうち国内は19社です。

新体制図(2021年1月予定)

2021年1月からはスライドのような体制にしたいと思います。コンテンツプロデュース事業は、AOI Pro.、TYO、そしてAOI Pro.やTYOのグループ会社として新しいポストプロダクションのTREE:Digital Studioという会社を設立します。こちらのポストプロダクション会社は4社を統合して、新しいポストプロダクション事業を目指していこうと考えています。

次に、コミュニケーションデザイン事業についてです。こちらは、TYOのグループ内でソリューションを担当していた部門や会社、またAOI Pro.グループのQuark tokyoを統合して、コミュニケーションをデザインするxpd(イクスピーディー)という会社を設立する予定です。

この組織再編によって、国内に19社あった会社が10社となり、全体の経営の効率化が図れるのではないかと考えています。

コンテンツプロデュース事業

具体的に何を行なうのかをご説明します。コンテンツプロデュース事業についてですが、業界では我々がトップシェアを持っており、その中で培ったノウハウもありますので、そのシェア自体を拡大していくとともに、生産性を上げていきます。そして、伸びが期待されるデジタル動画の収益化にもチャレンジします。

受託事業のテコ入れについては、実行利益率33パーセント以上を目指していきたいと思います。現状でも31パーセントから32パーセントを行ったり来たりしている状況ですので、十分実現可能な数字だと考えています。

そして、新規受注を増やしていくということで、営業管理手法などを見直したり、お客さまの幅を広げていき、2020年度比でプラス50億円以上を目指します。2019年の数字を考えると十分に実現可能な数字だと思いますし、購買部門などを集約して2億5,000万円の外部コスト削減を考えています。

またデジタル案件については、売上高プラス6億円以上を考えていますが、大切なのは実行利益率、つまり収益率ですので、実行利益率を50パーセントへ引き上げていきます。

ただし、それを引き上げるためには作り方を変えなければ実現しません。現状の戦略としては、企画、演出、撮影、編集を1人でこなす「ビデオグラファー」と呼ばれる方がどんどん増えてきているため、そうした方々をネットワーク化して当社がプロデュースするかたちで実現していきたいと考えています。

そして、ポストプロダクションの多角化により、売上高プラス5億円以上を目指します。従来のポストプロダクション事業は引き続き展開するのですが、CGなども駆使してリアルタイムで合成できる次世代型のバーチャルスタジオといったスタジオ事業を立ち上げていきます。さらに、イベントや展示映像を軸とした体験型コンテンツについてもxRを中心に事業として展開していくことを目指しています。

コミュニケーションデザイン事業

コミュニケーションデザイン事業は、企業のコミュニケーションを、全体の設計から具体的なかたちに作り上げ、運用するところまでを手掛ける事業です。営業体制をきちんと作って顧客基盤の強化を図るのはもちろん、当社ならではの高付加価値サービスを提供していくことを目指しています。

当グループでなぜそれが実現できるのか、それは、強みの1つでもありますが、すでに映像からデジタルソリューション、PR、イベント、空間デザインに至るまで、全方位型のエグゼキューションを単独で提供可能な状態にあるからです。さらに、このケイパビリティを強化していくことを考えています。

もう1つは、予算も含めた全体の効率性をデザインして設計することが可能であり、ワンストップで提供できるため、現状でもスピード感を出せている状態であるからです。

こうした強みをもとに、この事業領域の売上はかなりのアップサイドを見込んでおり、プラス90億円という計画です。

人事戦略

これまで、ずっと「資産は人だ」と言い続けていますが、それを本格的にかたちにしていくために、このたび人材マネジメント方針を策定しました。基本方針としては「記憶に残り後世に語り継がれる感動を生み出す人材を輩出する」というものです。

その中でのコアワードですが、私たちはチームでものづくりをする会社ですので「一緒に」であったり、「倫理観」であったり、また「挑戦」ということで、チャレンジする人材といったことを念頭にマネジメントしていきたいと考えています。

人事戦略に関してですが、すでに決まっているものとしては、新卒採用における母集団形成・選考管理を統一化することによって、よりよい人材を効率よく獲得していくというものです。そして、人材の流動性を高めていくために、評価制度・報酬体系を見直していきます。また、多様な人材が集まる会社であるべきだと考えているため、育成環境やキャリア開発の環境構築などを進めています。

コスト削減

かなり大切な部分がコスト削減です。事業のアップサイドはチャレンジしてみなければわからないことも多分に含まれています。一方で、コスト削減はやりきる、という部分です。十分実現可能な計画ができたと考えています。

まず、リモートワーク等の働き方の変化により、オフィス系コストや交通費等が大幅に削減されます。そして、DX(デジタルトランスフォーメーション)により生産性を高めてコーポレート系コストを適正化していきます。

オフィス関連コストとしては、地代家賃を中心に5億5,000万円削減します。コーポレート系コストとしては、DXにより人件費や外注費、業務委託費などで10億円削減します。その他のコストである接待交際費や交通費、広告費などで4億5,000万円削減する計画です。

これらを実行すると、削減額は最大で20億円となります。昨年の当グループの対象コスト総額は204億円のため、コストのうち約10パーセントの削減を計画しています。

業績計画

残念ながら、2020年度は売上高500億円程度にとどまる見込みですが、ここまでの計画を実行して積み上げた数字で見ると、計画の実行によって売上高は680億円となります。大切なのは営業利益ですが、そちらは44億円で、営業利益率6パーセント以上を目指していきたいと考えています。

売上高構成比

売上高の構成比ですが、もっともわかりやすいのがテレビCMです。テレビCMは大きく減るのですが、デジタルの部分でカバーしていきます。そして、コミュニケーションデザイン事業の中のソリューション事業を伸ばしていく計画です。

EBITDA

EBITDAですが、コスト削減等々の出っぱりや引っこみがありますが、2025年で57億円を目指しています。当社は経営統合して2017年が最高業績でしたが、そちらが57億円程度ということで、過去最高に並ぶ計画を考えています。

KPI 2025年度

KPIについてです。財務のKPIとしてはEBITDAを置いており、ご説明したとおり57億円です。2020年度の見込みはマイナス2億3,000万円のため、EBITDAで60億円近く増やしていくということです。また、ROEも10パーセント以上を目指していきたいと考えています。

非財務のKPIですが、グループ経営ということで、従業員のグループに対するエンゲージメントが非常に大切になりますので、さまざまな施策によってエンゲージメント率を高めていきます。また、社会からの要請ということで、サスティナブルな社会を目指してSDGsへの貢献も非財務のKPIとして考えています。

株主還元

最後に、株主還元についてです。これまで変更はありませんが、基本方針として連結配当性向30パーセント以上と置いています。常に適正な利益配分を実施していく企業であり続けたいと考えています。

以上でご説明を終わります。みなさま、ご清聴ありがとうございました。

記事提供: