2020年7月に発表された「2019年 国民生活基礎調査」ですが、今回は3年に一度の大規模調査年です。「保健」「医療」「福祉」「年金」「所得」などの国民生活の基礎的事項を調査していますが、「健康」「介護」「貯蓄」に関する事項は大規模調査年のみ実施となっています。

今回は、みんなの「所得」と「貯蓄」をみていきましょう。

みんなの家族構成

2019年6月6日現在における全国の世帯総数は5,178万5,000世帯となっています。この内訳ですが、

「単独世帯」・・・1,490万7,000世帯(全世帯の28.8%)
「夫婦と未婚の子のみの世帯」・・・1,471万8,000世帯(同28.4%)
「夫婦のみの世帯」・・・1,263万9,000世帯(同24.4%)

の順で多くなっています。ちなみに「高齢者世帯」は1,487万8,000世帯(全世帯の28.7%)となっています(「高齢者世帯」とは、65歳以上の者のみで構成するか、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう)。

みんなの所得はどれくらい?

この調査における所得についてみていきましょう(「2019年調査」の所得とは、2018年1月1日~12月31日までの1年間の所得です)。

2018年1世帯当たり平均所得金額

全世帯・・・552万3,000円(対前年増減比0.1%増)
高齢者世帯・・・312万6,000円(同6.7%減)
高齢者世帯以外の世帯・・・659万3,000円(同0.9%増)
児童のいる世帯・・・745万9,000円(同0.3%増)

全世帯の平均所得金額は500万円以上ということになりますが、これ以下の世帯は61.1%となっています。中央値(所得を小さい順に並べてちょうど真ん中にくる境界値)は437万円です。

(出典:厚生労働省「国民生活基礎調査2019年」)

また、年齢階級別にみてみましょう。

世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たりの平均所得金額

29歳以下:362万6,000円
30~39歳:614万8,000円
40~49歳:694万8,000円
50~59歳:756万円
60~69歳:566万円
70歳以上:364万6,000円

もっとも高いのは、50代のようです。60代に入ると200万円近くガクンと下がりますね。29歳以下と70歳以上は全世帯平均の552万3,000円に届いていません。

みんなの貯蓄って一体いくらなの?

続いて、貯蓄額についてみていきましょう(「2019年調査」の貯蓄・借入金とは、2019年6月末日の現在高および残高。生活意識については、2019年7月11日現在の意識となっています)。

全世帯では、「貯蓄がある」は81.9%で、「1世帯当たり平均貯蓄額」は1,077万4,000円となっています。高齢者世帯では、「貯蓄がある」が80.1%で、「1世帯当たり平均貯蓄額」は1,213万2,000円です。1,000万円を超えていますね。

では借入金はどうでしょうか。全世帯で「借入金がある」は28.5%で、「1世帯当たり平均借入金額」は425万1,000万円となっています。住宅ローンなどを組んでいる世帯が多い児童がいる世帯では、「借入金がある」が55.8%、「1世帯当たり平均借入金額」は1,119万7,000円と1,000万円を超えています。

世帯主の年齢階級別にみると、やはり年齢が上がるにつれ貯蓄額も上昇しています。70歳以上になると貯蓄を取り崩すことも多いと思いますので、60代よりは減少しています。

(出典:厚生労働省「国民生活基礎調査2019年」)

前年と比べて「貯蓄が減った」のは、全体で38.2%いるようです。60歳以上では40%以上になっています。その理由の6割以上は「日常の生活費への支出」です。

平均貯蓄は1,000万円以上、でも「生活は苦しい」?

「2019年調査」では、生活意識についても調査しています。これによると、「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)が54.4%と半数以上となっています。

(生活意識とは、調査日現在での暮らしの状況を総合的にみてどう感じているかの意識のこと)

世帯別に「苦しい」と回答している世帯をみてみると、高齢者世帯は51.7%、児童がいる世帯が60.4%、母子世帯が86.7%となっています。

高齢者世帯で「貯蓄がない」と回答した世帯は14.3%いますが、50%もの世帯が「苦しい」と回答しているのは多い気がしますね。高齢者世帯の平均貯蓄額は1,200万円以上ありますが、それでも足りないということでしょうか。確かに2019年に「老後2,000万円問題」が話題になりました。

また児童がいる世帯のうち「苦しい」と回答した世帯数は、非常に多い印象です。貧困率をみると、2018年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は127万円となっており、それに満たない「相対的貧困率」は15.4%います。

このうち「子どもがいる現役世帯」の貧困率は12.6%ですが、「大人が一人」の世帯は48.1%と非常に高くなっています。1985年の54.5%と比較すると減少しているものの、それでも半数近い「大人が一人」の「子どもがいる現役世帯」が貧困の中にいるということになります。

(なお、OECDの所得定義の新基準(可処分所得の算出に用いる拠出金の中に、新たに自動車税等および企業年金・個人年金等を追加)に基づき算出した「相対的貧困率」は 15.8%となっています)

まとめにかえて

みんなの最新のお金事情をみていきましたが、思った以上に貯蓄が多い印象でした。また所得についても国税庁の「民間給与実態統計調査」の441万円より高いな、と感じた人もいたかもしれません。「国民生活基礎調査」の所得には、家賃収入などの財産所得や年金などの社会保障給付金も含まれています。ちなみに「稼働所得」(雇用者所得、事業所得、農耕・畜産所得、家内労働所得)は、全世帯平均で410万3,000円となっています。

それと同時に、生活が「苦しい」と思っている人の多さにも驚く結果となりました。貯蓄は意識しなければ増えていきません。毎日の積み重ねの結果、ともいえる面が大きいですので、少しずつでも未来のため、何かあった時のために貯めていきたいですね。

ただ、「相対的貧困率」は前年比では減少していますが、1985年の12.0%と比較すると高くなっています。子どもの貧困率もあまり変わらず2018年は13.5%です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でどれくらい増加してしまうのか、懸念すべき事項です。

参考

「2019年 国民生活基礎調査の概況」厚生労働省
「平成30年分 民間給与実態統計調査」国税庁

尾藤 ちよ子