日本は諸外国と比べて、労働生産性が低いことが課題とされています。

日本生産性本部(※1)の調査によると、日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は46.8ドル(4,744円/購買力平価(PPP)換算)で、OECD加盟36カ国中21位と先進国中最下位です。しかし、日本の人材スキルやテクノロジーが低いとは思えません。近年ではスーパーコンピューターの開発分野において、「富岳(ふがく)」は世界一に輝いたばかりです(※2)

それでは日本企業の労働生産性を低くしているのは、一体何か?その正体は文化的なものによると考えています。

「残業する人の仕事を手伝う」が労働生産性を下げる

日本の中小企業に見られる光景として、「残業している人の仕事を早く終わった人が手伝う」という光景です。

一見すると美しい思いやり、助け合い精神のように見えますが、その実労働生産性を下げてしまう危険な行為だと感じます。助けてもらっている側は業務効率が悪くても、ダラダラ仕事をしていても周囲が助けてくれるのが常態化することで改善する機会は永遠にやって来ません。

また、最初はスパスパ効率的に仕事をさばいていたスタッフも、「どうせ頑張っても仕事が遅い人を手伝うことになるから」と、仕事をしているフリをして退社までやり過ごすという光景があります。

そうなると、ドンドン全体の労働生産性は低くなる一方ですから、負のスパイラルを止めなければ、いつまで経っても生産性は低いままなのです。

「そうはいっても、特定の人に膨大な仕事が集中し、結果として残業になるケースも有る」
と反論があるかもしれません。しかし、これも助け合いをすることが労働生産性を下げる要因になる可能性があります。

特定の人だけが残業をしている状態が続けば、「残業削減の必要があるのでは?」とメスが入り、そこで業務分担の見直しが図られたり、効率アップにつながる施策が出るのではないでしょうか。