2020年7月15日に行なわれた、アクティビア・プロパティーズ投資法人2020年5月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:東急不動産リート・マネジメント株式会社 常務執行役員 アクティビア運用本部長 佐藤一志 氏
主要指標ハイライト ~新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けるも、成長戦略を着実に実行~
佐藤一志氏:本日は、アクティビア・プロパティーズ投資法人の2020年5月期決算動画をご覧いただきまして、誠にありがとうございます。私は東急不動産リート・マネジメント株式会社アクティビア運用本部長の佐藤でございます。
まずは、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになった方々およびその関係者の方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、罹患された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
これより、2020年5月期(第17期)の決算についてご説明させていただきます。まず、2020年5月期の決算ハイライトです。
期首に策定した成長戦略に沿った運用実績として、オフィスの内部成長が、契約改定、テナント入替ともに過去最大となるとともに、広域渋谷圏オフィスである「恵比寿プライムスクエア」への資産入替の効果もあり、巡航分配金の底上げおよび1口当たりNAVの成長を実現いたしました。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の予防策として、一部の商業施設を休館したことによる賃料減額を主要因として減収減益となり、1口当たりの分配金は、前期実績から629円減少し、9,508円となりました。
それぞれの詳細について、これよりご説明させていただきます。
20.5期のDPUサマリー ~巡航DPU1万円が視野に入るなか、新型コロナ影響で減配に転じる~
4ページは、2020年5月期の1口当たりの分配金、DPUサマリーについてです。オフィスの賃料増額を中心とした内部成長、運用報酬体系への変更および修繕費等の費用削減により、運営は順調に推移し、巡航ベースでのDPU1万円が視野に入る状況でした。
しかし、2月以降、新型コロナウイルス感染症が日本国内でも拡大し、本投資法人では、感染拡大防止のため、運営型商業施設である「東急プラザ表参道原宿」「東急プラザ赤坂」「デックス東京ビーチ」および「コマーシャルモール博多」の4施設において、全館休業の対応を行ないました。
全館休業期間については、営業自粛に応じたテナントの固定賃料を減額することを決定し、(2020年)5月26日に業績修正を発表しました。想定より減額幅は縮小したものの、新型コロナウイルスによる影響としてマイナス651円を計上した結果、当期のDPUは9,508円となり、前期から629円、6.2パーセントの減少となりました。
「APIの成長サイクル」 ~不動産は「公器」、「非常時」には社会的責務を果たすことで、投資主価値向上を目指す~
続いて、アクティビアの新型コロナウイルス対応と成長サイクルについてご説明いたします。
本投資法人は、前回決算説明会において、4つのアクションに取り組み、巡航DPU1万円の実現とその後の成長についてご説明しました。決算ハイライトでもお伝えしたとおり、成長戦略は順調に進捗しており、2020年5月期においても投資主価値向上に一定の成果を上げることができました。
しかし、今年(2020年)2月以降、新型コロナウイルス感染症が全国に広がり、4月には緊急事態宣言も発令され、外出自粛をはじめ、感染症拡大防止を最優先する状況下、テナントの事業経営にも大きな影響が生じています。
今後、本投資法人が継続的な投資主価値向上を図るためには、社会経済活動の場を提供する不動産の所有者として社会的責務を果たすことが、いま果たすべき重要なステップと考え、固定賃料減額などのテナント補償を行います。
新型コロナウイルス収束後においては、テナント業績は外出自粛の影響が大きい都心をはじめとした消費の中心地から回復するものと考えており、好立地、ハイクオリティを強みとする本投資法人としては、足元ではしっかりとテナント事業継続をサポートし、テナントとの信頼関係強化とポートフォリオの稼働率の安定を図ることが早期の成長軌道回帰への最善策と判断するに至りました。
したがって、本投資法人は、2020年5月期から2021年5月期までの間を「非常時」と位置づけ、ESGの観点からもテナント対応を丁寧に実施し、本投資法人として社会的責務を果たしていきたいと考えています。
新型コロナ影響によるテナントの要望状況 ~中心はポートフォリオの約40パーセントを占める商業テナント~
6ページは、テナントの業種別の賃料構成と、商業テナントにおける賃料減額や支払猶予等に関する要望状況についてです。
(スライドの)左側では、本投資法人の全テナントを、事務所等、商業、底地に分類し、その賃料構成をパイチャートでお示ししています。新型コロナウイルスの影響を受けにくい事務所等および底地の合計が約60パーセントと過半を占め、約40パーセントが商業テナントという構成です。また、その40パーセントの商業テナントについて、さらに業種別に分類すると、アパレルが最も多く、続いてサービス、ホテル、その他物販、飲食の順になっています。
(スライドの)中央は、新型コロナウイルスの影響を受けた商業テナントからの要望件数推移をお示ししています。要望時期については、緊急事態宣言が発令された4月が84件とピークになっており、6月までに商業テナントの45パーセントにあたる147テナントから要望がありました。
続いて、(スライドの)右側では、要望のあったテナントを業種別に分けてお示ししています。外食控えの影響を受けた飲食が約4パーセントと最多になっていますが、賃料構成から見て、ポートフォリオ全体に与える影響はさほど大きくないと思われます。
テナントの要望内容及び交渉状況 ~交渉は約半数で完了、商業テナントは影響最小化を目指す~
続いて7ページは、その要望内容および交渉状況についてです。最も多いのは、臨時休業や売上減少に伴う一時減額に関する要望で、147件のうち約80パーセントを占めています。これらの要望に対し、本投資法人では個別に交渉を行なっていますが、一時減額に応じる場合には、テナントの事業継続を支えるだけでなく、今後の投資主価値向上につながる条件追加も含めた交渉を行なっています。
例えば、現契約に対して一定期間経過後の賃料増額や、歩合賃料の新規設定、あるいは歩合が発生しやすくなるような条件変更や、解約禁止期間の延長を可能とするような条件の追加です。また、再契約については、普通借から定借に切り替えるなど、将来の契約更改を見据えた交渉を行なっています。
交渉の進捗率は約50パーセントですが、減額に応じていないケースもあり、残るテナントに対しても影響を最小化しつつ、2020年11月期中の合意を目指していきります。
なお、(スライドの)右下では、オフィスについて新型コロナ関連の要望内容をお示ししています。オフィステナントに占める要望割合は10パーセント程度であり、現時点における影響は軽微と考えています。
直近で増床したテナントからの部分解約などが突発的に発生していますが、当該区画についても一定の賃料ギャップを有していることから、解約はむしろテナント入替による賃料アップが狙える好機だと考えています。
マーケット展望を踏まえたコロナ対応方針 ~アフターコロナを見据えて規律を持って対応~
8ページでは、今後のマーケット展望を踏まえた新型コロナへの対応方針についてご説明します。
新型コロナウイルス感染拡大に伴うステイ・ホームにより、eコマース化や働き方の多様化が進展しましたが、何かイノベーションが起きたというよりは、これまでのトレンドが一気に加速したものと認識しており、本投資法人が投資対象とする商業施設およびオフィスについては、これまで以上に立地やクオリティの重要性への注目が高まるものと考えています。
まず、商業施設については、アフターコロナにおいても消費の中心となるのは好立地物件であり、eコマースの進展により、単にモノを売る売り場という役割だけでなく、ブランディング効果が期待される好立地店舗への注目がさらに高まると考えています。
一方で、オフィスについては、従来の作業の場から交流の場に変化するということで、商業施設と同様に立地の重要性がさらに上昇することに加え、人材確保やBCPの観点から、好立地・高スペックオフィスのニーズがますます増加するものと考えております。
また、向こう2年のオフィス供給は限定的であるということから、リーマンショック時のような急激な市況の悪化にはならないと考えていますが、一定の空室率の上昇には注意を払う必要があると捉えています。
これらのマーケット展望を踏まえた本投資法人における新型コロナ対応方針としては、まず商業施設のうち、好立地物件については、引き続き堅調な出店ニーズが確認できていることから、入替による内部成長の実現を目指していきます。
一方で、減額要望に対しては、テナントごとに状況が異なることから、引き続き個別対応を基本方針とします。
ホテルは、インバウンド回帰まで少し時間を要すると思われますが、固定賃料の増額などにより、安定性と成長性のバランスを図ります。
また、オフィスについては、その役割の変化やテナントの移動が、広域渋谷圏のテナント層拡大や賃料ギャップを生かした賃料増額の好機と考えられますが、一方で、ダウンタイムの長期化等のリスクに留意が必要です。これに対しては、一定のバッファーを予想分配金に織り込むことで、積極的に内部成長を目指します。
新型コロナ影響の業績予想前提 ~不測の事態にも対応可能な保守的な見立て~
9ページは、その対応方針を踏まえた業績予想の前提です。今回、決算を発表した2020年5月期、そして業績予想を発表した2020年11月期および2021年5月期において、新型コロナ影響をDPU換算で、それぞれ651円、1,195円、847円見込んでいます。
一言で「新型コロナ影響」と表現していますが、まずはその内容がそれぞれの期で異なる点についてご説明します。2020年5月期では、先ほどご説明したように、大半が全館休業に伴う固定賃料の減額です。2020年11月期は、商業テナントの事業継続を支え、社会的責務を果たすための一時減額。2021年5月期は、テナント入替による内部成長に積極的に取り組むため、突発的な解約によるダウンタイムリスクをそれぞれ慎重に見込んだ金額です。また、歩合減少については、2020年11月期および2021年5月期において、ホテル歩合の減少等を反映しています。
(スライドの)下段では、それぞれの業績予想に織り込んだコロナ影響による金額の内訳とその進捗状況をお示ししています。濃いグレーの部分では、6月末時点における確定値をお示ししており、2020年11月期の一時減額については、業績予想を策定する時点で確定したものに加え、7ページでご説明した減額合意済の36件を反映しています。
今後については、2020年5月期同様に、新型コロナ影響によるDPUへのマイナスのインパクトを最小限に抑えられるよう努めていきます。
業績予想(DPUサマリー) ~新型コロナ影響を保守的に織り込むも、影響の最小化並びにDPUの底上げを目指す~
10ページは、業績予想のDPUサマリーについてです。2020年11月期の予想分配金は、オフィスの内部成長など増配要因はあるものの、新型コロナ影響による一時的な賃料減額対応があり、前期から468円減少の9,040円となりました。また、2021年5月期の予想分配金は、減額対応が減少するため、前期から240円増加の9,280円としています。
新型コロナウイルスの影響が最も大きい2020年11月期をボトムとして、2021年5月期以降、業績は回復に向かうと考えています。感染再拡大の可能性もありますが、2020年11月期および2021年5月期の予想DPUには、新型コロナ影響による減益を慎重に織り込んでおり、第二波への影響を最小限に抑えるとともに、内部成長戦略を継続し、分配金の底上げを目指します。
成長戦略の継続 ~テナントサポートという一歩を加え、投資主価値向上への態勢を整える~
続きまして、本投資法人の成長戦略についてです。巡航DPU1万円の早期達成へ向けたAction1は、資産入替実施により完了いたしました。2020年11月期以降も、Action2ほか2つの成長戦略を継続し、巡航DPUの底上げを図るとともに、新たに本投資法人が社会的責務を果たすための非常時のテナント対応に取り組み、早期に本投資法人が成長軌道に回帰することを目指します。
新型コロナ影響は、オフィスの内部成長に対して、短期的には賃料増額交渉に影響を及ぼす可能性もあります。しかし、安易な条件交渉はせず、入替も戦略として、賃料増額を積み上げ、引き続き成長戦略のメインドライバーとしての役割を果たすものと考えています。商業テナント入替についても、新型コロナ影響が及んでいますが、本投資法人の立地優位性に着目した出店ニーズが確認できており、テナント入替を進めていきます。
悪いニュースばかりが目立ちますが、このような状況下においても本投資法人の立地に対して出店意向を示すテナントの存在こそ、都市型商業施設の魅力の表れであり、オリンピック延期など外部環境の変化にも臨機応変に対応し、内部成長の実現につなげていきます。
また、外部成長については、引き続きDPU成長をサポートする位置づけとして、資産入替の継続を目指します。
東京オフィスの改定入替動向 ~過去最高の賃料増額を実現、増額改定交渉を継続~
続いてのセクションは、運用状況についてのご説明です。14ページでは、東京オフィスにおける改定入替動向についてご説明します。
まず、オフィス全体のマーケット感ですが、新型コロナ影響による移動の制限により、交渉や内覧ができず、活動が一時中断するような時期もありましたが、引き続き需給は逼迫しており、増額改定の基調は強く、マイナスの賃料ギャップを埋めにいくという局面であることに大きな変化はありません。
東京オフィスの賃料改定について、当期は対象面積の82パーセントにあたる5,261坪において、期あたり1億950万円、平均増額率17.1パーセントの賃料増額を実現し、前期を上回り、過去最高を記録いたしました。
(スライドの)右側の賃料ギャップ分布をご覧ください。2020年11月期、2021年5月期の向こう1年間において、それぞれマイナス19パーセント、マイナス15パーセントと、全体平均の9パーセントと比較しても大きなマイナスの賃料ギャップがあります。積極的な増額交渉を通じ、力強い内部成長の実現を目指します。
続いて(スライドの)下段は、テナントの入替状況です。当期は平均増額率19.9パーセントで、期あたり3,140万円の増額入替を行ない、賃料改定と並んで過去最高を記録しました。
なお、2020年11月期については、約1,100坪が入替の対象となっており、ダウンタイムやフリーレントに留意する必要はありますが、内部成長が期待できる状況です。
これまでも、入替後のテナント契約について、定期借家契約により将来の賃料アップサイドを確保するとともに、マーケット賃料を上回る好条件で成約する場合には、高収益を長期間にわたって享受するべく、契約期間の長期化に努めてきましたが、今後も同様の戦略を継続していきます。
AAオフィスの改定入替動向 ~過去最高の賃料増額を実現、賃料上昇トレンドは継続~
続いて、アクティビア・アカウントのオフィスです。期を追うごとに存在感が高まりつつあるアクティビア・アカウントのオフィスですが、新型コロナウイルス禍を経ても勢いは衰えていないことを実感しています。
まず賃料改定ですが、当期は、対象面積の80パーセントにあたる4,009坪において、平均増額率8.6パーセント、期あたり2,930万円と、東京オフィスと同様に過去最高の賃料増額を実現いたしました。当期は、全5物件で増額改定を実現しておりますが、特に力強いのは、「梅田ゲートタワー」「大阪中之島ビル」「EDGE心斎橋」の大阪エリアのオフィスです。
(スライドの)右側は賃料ギャップです。全体の賃料ギャップはマイナス17パーセントと、足元の内部成長の加速により、前期から4ポイント縮小しましたが、引き続き東京オフィスを上回るマイナスの賃料ギャップを有している状況です。特に大阪のオフィスマーケットは、大型供給が2022年までなく、引き続き東京以上に需給が逼迫することが予想されるため、さらなる成長が期待できます。
(スライドの)下段のテナント入替実績をご覧ください。こちらも過去最高となる平均増額率22.6パーセントで、期あたり1,180万円の増額を実現し、2020年11月期においては約1,100坪が入替対象として増額を目指しリーシング中です。
このうち794坪については、(2020年)4月のプレスリリースのとおり、「梅田ゲートタワー」における大口テナントの組織再編に伴う部分解約によるものです。当物件は、梅田エリアの築浅好立地物件という優位性を生かし、2016年9月の取得以降、高成長が続いており、足元でも引き合いは強く、早期のリースアップを目指します。
商業施設の運営状況 ~徐々に人が戻り消費が回復しつつある商業施設~
16~17ページは商業施設についてです。まず、「東急プラザ表参道原宿」と「デックス東京ビーチ」の運営状況です。両施設ともに、一時は全館休業を余儀なくされておりましたが、6月1日より全館営業を再開し、インバウンド不在の状況でも、足元では対前年で半数程度にまで客足が回復しております。
(スライドの)右側をご覧ください。「東急プラザ表参道原宿」に入居し、昨年(2019年)12月に閉店したアメリカンイーグルですが、(2020年)7月に別ブランドでリニューアルオープンいたしました。現契約は継続しているものの、期間満了前の入替も視野にリーシング活動を行なっているため、神宮前交差点という抜群のロケーションを生かし、アップサイドの実現を引き続き目指します。
商業施設(ホテル)の運営状況 ~経験豊富で堅実な成長を続けるオペレーター、早期回復を目指す~
続いて、ホテルの運営状況です。本投資法人では、「東急プラザ赤坂」「A-FLAG札幌」および「神戸旧居留地25番館」の3物件において、ホテル区画を有しています。
赤坂と札幌のオペレーターは国内外に52施設を運営する東急ホテルズ、神戸のオペレーターは、ホテルに加え、結婚式場等を国内外で14施設運営するPlan・Do・Seeです。両社とも経験豊富で、堅実な成長を続けているホテルオペレーターであり、良好な運営が行われています。
続いて、(スライドの)右側の運営状況についてご説明します。各ホテルとも、(2020年)1月までは引き続き堅調でしたが、2月頃より徐々に新型コロナ影響が出始め、4月、5月には緊急事態宣言が発令され日本全体が自粛一色となった結果、稼働率、RevPARともに、対前年同期では1桁代にまで落ち込んでいます。
なお、インバウンド比率は、3ホテル平均14パーセント程度と、国内客が中心であり、出張需要や国内旅行客は徐々に回復に向かうと予想していますが、インバウンドの回復がホテルの成長確保には不可欠と考えています。
続いて歩合賃料ですが、当期は神戸のみが対象で6,080万円、2020年11月期は赤坂と札幌の合計で1億8,560万円を見込んでいます。なお、ホテル歩合については、年間の売上を通算した上で、年に1回の精算・計上を行なっています。よって、2021年5月期については、新型コロナ影響を大きく受ける期間が歩合賃料の対象になることから、歩合は発生しないものと予想しています。
最後に、(スライドの)下段をご覧ください。札幌において、3月に、2021年11月より効力発生となる新規契約を東急ホテルズとの間で締結しました。新規契約のポイントは、固定賃料とアップサイドの源泉となる歩合賃料を組み合わせている賃料体系を維持し、固定賃料を増加したという点です。これにより、歩合賃料が発生しない場合でも収入が増加することになります。
重点投資 資産入替戦略の継続 ~個別判断による売却物件の選定と厳選投資~ 対象資産比率
18ページは、外部成長、資産入替戦略についてです。外部成長は、引き続き資産入替を基本方針とします。売却対象については、特定のカテゴリーを前提とせずに、収支性、築年、競争力の観点から物件を選択します。取得対象については、内部成長機会の拡大の観点から、広域渋谷圏および品川・五反田エリアのオフィスを軸として厳選投資を実施していきます。
なお、当期に実施した「恵比寿プライムスクエア」と「A-PLACE新橋駅前」の入替については、収支性に注目して行なったものであり、収支改善によるDPUの向上だけではなく、賃料ギャップを有する広域渋谷圏のオフィスの取得により、今後の内部成長にも期待ができます。
堅実な財務運営 ~LTVマネジメントと継続的なデットコストの低減~
19~20ページは財務の状況についてです。まずLTVは、資産入替により100億円ほど資産および借入金が増加した結果、当期末時点での実績は前期から1.0ポイント増加し46.5パーセント、鑑定LTVでは39.1パーセントとなりました。想定レンジの上限であるLTV50パーセントまでの取得余力は370億円、JCRの格付けはAA(安定的)であり、引き続き日銀の買入対象銘柄となっています。
続いて(スライドの)下段をご覧ください。2017年5月期以降、平均残存年数を4.5年程度で維持しながら平均の金利の引き下げに取り組んでおり、当期末では、平均残存年数は4.4年、平均金利は前期末から0.02ポイント減少し、0.55パーセントとなっています。
強固な財務基盤 ~調達先の分散とバランスの取れたマチュリティラダー~
続いて、当期における借換え実績と、今後1年以内に返済期限が到来する借入についてです。借換えにおいては、引き続き金利を低減させていくことができている状況です。
また、下(スライドの)下段の表では、今後1年の返済期限が到来する借入をお示ししていますが、ご覧のとおり、2021年5月期は比較的金利が高い状況ですので、借換えによる金利コストの低減を図っていきたいと考えています。
(スライドの)右側は借入先一覧です。現在、18社様から総額2,443億円の借入を行っているため、盤石なバンクフォーメーションのもと、引き続き円滑なコミュニケーションを通じ、安定的な財務運営を継続していきます。
最後に、マチュリティラダーです。返済時期によって返済金額に偏りが出ないようにしているのはもちろんのこと、機動的に対応するため、主力3行との間で210億円のコミットメントラインを設定しています。
ESGの取り組み ~Social~
21~23ページはESGについてです。まずはESGのS、Socialについてです。新型コロナウイルス感染症拡大防止の対応策として、一部の運営型商業施設については全館休業を行ないましたが、他の商業施設やオフィスにおいても、消毒・換気の徹底はもちろんのこと、検温依頼等、細心の注意を払った策を講じています。
また、資産運用会社においては、従業員の罹患リスク排除や移動自粛に係る自治体からの要請、事業継続の観点から、万全の体制を整えたうえで、全社員にノートパソコンを配布するなど、迅速にテレワーク環境を整えました。
今回の新型コロナウイルス感染症拡大により、ESG、特にSの部分への関心がますます高まっていると認識していますが、本投資法人および本資産運用会社に加え、スポンサーとともに一丸となって、これからも社会的要請に積極的に応え、社会的責務を果たしていく所存です。
ESGの取り組み ~Governance~
続いてESGのG、ガバナンスについてです。今回、本当投資法人のスポンサーである東急不動産において、本投資法人の投資口1パーセントの追加取得を(2020年)5月に公表し、先日、取得を完了しました。スポンサーからは、上場以来、物件拠出に加え、本資産運用会社への人材やノウハウの提供など、さまざまなサポートを受けています。
本追加取得により、スポンサーにおける本投資法人の投資口の保有割合は、1.0ポイント増の10.5パーセントとなり、スポンサーと本投資法人の投資主とのセイムボート性が一層高まることで、本投資法人の中長期的な成長につながるスポンサーサポートが今後も期待できると考えています。
ESGの取り組み ~Environment~
続いてESGのE、環境関連についてです。GRESBについては、他社に先駆けて2014年より参加していますが、2019年の調査では、総合スコア、セクター別評価、開示評価において、いずれも高い評価をいただくことができています。
また、環境認証についても積極的に評価取得を試みており、当期末時点においては、前期から1物件増の26物件、延床面積ベースでは過半を超える56パーセントにおいて認証を取得しています。
物件運用においても、環境改善工事を行うなど、積極的に環境負荷軽減に取り組んでおり、今後もESG経営の強化を図ってまいります。
投資主の状況 ~2020年5月期(第17期)末時点~
最後に24ページは、当期末時点の投資主さまの状況です。投資主数は、個人・その他が増加した結果、前期から844名増の7,758名となりました。上場から8年が経過しましたが、多くのみなさまによって支えられ、今回の決算も無事に終了することができました。これもみなさまの変わらぬご支援のおかげだと考えています。誠にありがとうございます。
上場REITを取り巻く環境は刻一刻と変化しており、加えて、新型コロナウイルス感染症の動向についても注視が必要で、先行きが不透明な状況が継続しています。本投資法人は、強固なポートフォリオと、透明かつ健全で信頼に足る運用をもって、成長軌道への回帰、持続的な成長に努めていきます。
以上、私からの説明とさせていただきます。ありがとうございました。