2020年5月18日に行なわれた、日本ユニシス株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:⽇本ユニシス株式会社 代表取締役社長CEO 平岡昭良 氏

2020年3月期決算説明会

平岡昭良氏:みなさま、こんにちは。日本ユニシスの平岡です。これから、2020年3月期の決算概要ならびに中期経営計画の取り組みについて、私からご説明させていただきます。

まずはじめに、このたびの新型コロナウイルス感染症に罹患されたみなさま及び感染拡大により困難な生活環境におられるみなさまに、心よりお見舞いします。また、治療や感染拡大防止のため、職務を果たしてくださっている医療従事者のほか、生活維持に関わる職務に携わるすべてのみなさまに心から感謝をします。

日本ユニシスグループは、当社グループ及び協力会社の社員とその家族、お客様、お取引先様をはじめとする、ステークホルダーの安全確保を最優先事項とし、世の中への感染拡大防止に努めながら、事業への影響を最小限に抑えるべく、最善の努力を継続しています。

このような状況下、政府、自治体の方針に基づき、新型コロナウイルス感染拡大を抑止するため、当社グループ全体でテレワーク等に取り組んでいますが、連結決算業務及び監査業務に遅れが生じたことから、決算発表を本日まで延期させていただきました。

株主、投資家のみなさまをはじめ、関係者のみなさまにはご迷惑とご心配をおかけしましたが、当社グループにおきましては、引き続き適時適切な情報会議に尽力していきますので、何卒ご理解いただきますようよろしくお願いします。それでは、2020年3月期の決算概要についてご説明します。

2020年3⽉期 連結経営成績

資料の2ページをご覧ください。売上高は第3四半期決算発表において、上方修正した見通しを若干下回りましたが、デジタルトランスフォーメーション関連の案件が堅調に推移したことや、アウトソーシングサービスにおいて、中小型案件が底堅く積み上がったことなどにより、前期比125億円の増収となりました。

利益については、増収効果に加え、サービス領域における生産性改善効果等により、粗利率が改善し、売上総利益が増加したことから、研究開発費等の販管費の増加分を吸収し、営業利益は前期比55億円増益の261億円となりました。

その結果、営業利益率は8.4パーセントとなり、2021年3月期を最終年度とする中期経営計画のターゲットである8パーセント以上を、1年前倒しで達成することができました。また、純利益は営業増益に伴い、前期比39億円増益の182億円となりました。

受注高については、第4四半期において、アウトソーシングサービスの長期大型案件の計上があったことから、前期比108億円の増加です。受注残高も同様の理由から前期比41億円の増加となっています。

2020年3⽉期 セグメント別の状況

セグメント別の状況についてご説明します。資料の3ページをご覧ください。システムサービスは、デジタルトランスフォーメーション関連案件の需要が強く、増収増益となりました。また、開発手法の高度化や、パートナー企業とも連携した生産性向上施策を継続的に推進しており、売上総利益率も着実に向上しています。

サポートサービスは、堅調な製品販売に伴い、付帯する保守サービスが積み上がり、増収増益。アウトソーシングも、ITアウトソーシングサービスにおいて、中小型案件が増加しているほか、第4四半期において、金融機関向けの新規稼働案件が複数あったことから、増収増益となりました。

製品はPCやタブレットなどの小型機器のほか、ネットワーク関連機器の旺盛な需要を取り込み、第3四半期まで堅調に推移していましたが、昨年度の第4四半期において、AI関連の大型機器販売があった影響もあり、通期では若干の増収に止まりました。

2020年3⽉期 注⼒領域の状況

中期経営計画における注力領域のビジネス状況をご説明します。資料の4ページをご覧ください。注力領域の売上高は、前期比125億円増加の480億円となりました。

デジタルトランスフォーメーション関連の案件が堅調に積み上がり、売上高は第3四半期決算発表時において、上方修正した見通しどおりの結果となりました。また、手数料型ビジネスに関しては、QR・バーコード決済事業において、インバウンドの減少から、中国系の取扱高が大幅に減少しましたが、キャッシュレス化の流れの中で、国内系が牽引し、着実に増加しています。

一方で、新型コロナウイルス禍により、人の移動が制限される中、カーシェアリングの利用が減少したほか、これまでに立ち上げてきた新たなサービスの利用掘り起こしも限定的となったことなどから、手数料売上は前年同期並みの水準に止まりました。なお、第3四半期まで減少傾向にあったバリューカードの取扱高は、第4四半期の3ヶ月間では、ほぼ前年同期並みで推移しています。

2021年3⽉期 通期予想(業績)

2021年3月期の通期業績予想についてご説明します。資料の5ページをご覧ください。新型コロナウイルス感染症拡大の収束時期を合理的に見通すことができないことから、現時点で確度の高い業績予想を算出することは困難な状況です。

そのため、2021年3月期の業績予想については、中期経営計画で提示したガイドラインを据え置きとさせていただきます。従いまして、現時点の通期業績予想は、変動する可能性があるため、修正の必要が生じた場合には速やかに公表します。

足元の事業環境としては、顧客のIT投資の基幹系の刷新を中心に、大型案件への投資が抑制される可能性があるほか、新規顧客を中心に提案活動が遅滞する影響や、サプライチェーンの影響による製品調達遅延リスクなどが考えられます。

一方、パラダイムシフトによるリモートワーク、AI、ロボット等を活用したリモート作業、ECビジネスなど、新たな需要も期待されます。当社グループは、中期経営計画の重点施策である、社会課題の解決に貢献するサービス提供型ビジネスモデルへの変革を加速させることで、収益構造の転換を進めていきます。

2021年3⽉期 通期予想(注⼒領域)

資料の6ページをご覧ください。2021年3月期における注力領域の売上高は、中期経営計画策定時のガイドラインである600億円を据え置きます。新型コロナウイルスで経済的、社会的に厳しい状況が続く中、ICTコア領域については、投資の抑制やコスト削減に向けた動きが生じることが見込まれます。

一方、このような状況下においても、当社グループの存在意義である、社会課題を解決する企業として、お客さまの課題の背後にある社会課題解決に向けた、デジタルトランスフォーメーション領域での取り組みを強化し、レジリエントな社会づくりに貢献できるよう、取り組みを継続していきたいと考えています。

2021年3⽉期 通期予想(配当)

株主還元についてご説明します。資料の7ページをご覧ください。2020年3月期の年間配当については、前期比15円増配の1株当たり70円とすることを、株主総会に諮らせていただく予定です。

また、2021年3月期の配当については、中期経営計画においては配当性向40パーセント目途を基本方針としていますが、現状の先行き不透明な環境の中、足元のキャッシュ・フロー状況や今後の事業継続、人材維持にかかるコストも勘案した上で、純利益見通し170億円を前提に、1株当たり年間配当70円、配当性向41パーセントを予定しています。

新型コロナウイルス感染症に対する取り組み①

次に、新型コロナウイルス感染症に対する当社グループの取り組みをご説明させていただきます。資料の9ページをご覧ください。日本ユニシスグループは、新型コロナウイルス感染症への対応として基本方針を定め、グループ社員やお客さま、お取引先をはじめとする関係者のみなさまの安全を最優先に考え、日々対応に取り組んでいます。

これまでの対応として、緊急事態宣言に先立ち、テレワークへ業務を移行しており、2ヶ月ほどが経っていますが、4月以降は常時8割以上の社員が在宅勤務に切り替えています。社員の標準的なテレワークの1日を示していますが、基本的な業務は支障なく対応しています。育児を行なっている社員は、テレワーク下でのシフト勤務や、一時的に仕事から離れる中抜けの活用など、それぞれの環境に合った柔軟な働き方を推奨しています。

また、当社自身がショーケースとなり、さまざまなコミュニケーションツールを活用して、社内外の打ち合わせから、経営陣が意思決定を行なう会議に至るまで、あらゆる会議をオンライン会議に切り替えています。その他に、感染リスクを可視化するため、安否確認用Webシステムを活用し、日々全社員の体調や勤務場所のモニタリングを行なっています。

また、テレワークの長期化によって生じた課題や悩みの聞き取りを行ない、心や身体のケアを行なう相談窓口を用意するなど、環境の整備を併せて行なっています。

新型コロナウイルス感染症に対する取り組み②

次に、お客様や社会に向けて、私たちが実施している取り組みをご紹介します。資料の10ページをご覧ください。当社グループの取り組みにもあったように、テレワークの促進に力を入れており、お客様にも迅速で安全なテレワークへの切り替えをお手伝いするため、感染拡大が懸念された3月初旬より、テレワークを支援する各種サービスの無償提供を開始しています。

とくに、ユニアデックスが提供しているクラウド型ネットワークサービス「Wrap」では、すでにご利用中のPCやネットワーク環境により、セキュアにテレワークを開始できる手軽さから、多数のお問い合わせをいただき、鋭意導入を進めています。

テレワーク以外にも、現場で急増している電話やメールの問い合わせなどの社内の情報共有に課題を抱える企業のみなさま向けに、災害ネットの無償提供を開始しました。また、エス・アンド・アイでは、代表電話や問い合わせ窓口の対応が在宅で可能となる、クラウドPBX「uniConnect Cloud」の導入に併せ、助成金の申請支援も行なうオプションを用意するなど、さまざまなかたちで支援を広げています。

これからも感染拡大を防ぐことに併せて、お客様や社会のみなさまの活動に貢献できるよう、取り組みを進めていきます。

中期経営計画( Foresight in sight 2020 )の⽅針

次に中期経営計画Foresight in Sight 2020の取り組み状況についてご説明させていただきます。資料の12ページをご覧ください。日本ユニシスグループは、2019年3月期からスタートした中期経営計画において、業種・業態の垣根を越えたビジネスエコシステムを作る中核となり、社会課題を解決していくことをテーマとし、事業活動を推進しています。

今中計期間の2年が経過し、注力領域ビジネスは、キャッシュレスやテレワーク等のデジタル化に向けた社会意識の高まりや、顧客のデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが進んでいることにより、順調に成長しています。

ICTコアビジネスにおいては、堅調に推移する顧客企業のシステム更新需要に対応しており、システムサービスやアウトソーシングサービスが伸長しています。加えて、案件のリスクを慎重に見極めつつ、選択的に対応し、不採算案件を最小限に抑え、また、働き方改革の推進等により、生産性向上に取り組んだ結果、システムエンジニアの稼働率が高いレベルで推移しており、収益性が向上しています。

中期経営計画の取り組み①

次に、資料の13ページをご覧ください。中期経営計画において定めた4つの注力領域は、対応する社会課題によって、それぞれの領域の垣根を越えて、クロスファンクショナルに活動しています。次のスライドからは、主な社会課題に対応する3つの取組事例と、戦略投資、風土改革の状況についてご紹介します。

まずはじめに、私たちはスマートな社会の実現に向け、さまざまな取り組みを進めています。その中で、デジタル空間の活用や、キャッシュレスの多様化に向けた取り組みをご紹介させていただきます。

中期経営計画の取り組み②

資料の14ページをご覧ください。オンラインショッピングの浸透により、あらゆる製品を店舗に行かず買うことが当たり前になってきており、それに伴いキャッシュレス化も進んでいます。

withコロナの時代では、人の移動が制限され、その変化はさらに加速しています。また、オンライン上で製品を確認する手段として、VRなどのデジタル技術の活用が広がっており、住宅販売もその1つで、デジタル空間の活用によって、住宅展示場のあり方が劇的に変化しています。

私たちが提供しているVRで内覧できるバーチャル住宅展示場「MY HOME MARKET」の取扱数は、順調に拡大を続けています。2019年10月に楽天市場に出展し、20代、30代の共働き世帯を中心に利用者が増えています。

また、キャッシュレスにおいては、インバウンド需要の停滞など、消費活動の落ち込みが予想されますが、一方で、利便性の高さは浸透してきており、今後もキャッシュレスの進行が後押しされていくものと考えています。

小会社であるキャナルペイメントサービス株式会社は、QR・バーコード決済導入の取り組みを継続しており、消費増税を背景に、各種キャンペーンの後押しもあり、国内決済取扱高が引き続き拡大しています。

また、デジタルマネーによる給与支払解禁を見据え、デジタルマネーによる受取や交換をスムーズに行なえる価値交換基盤「doreca™」の事業に向け検討を進めており、引き続きキャッシュレス多様化の促進に貢献していきます。

次に紹介するテーマは、自然災害だけではなく、疫病にも強いレジリエントな社会の実現に向けた取り組みです。

中期経営計画の取り組み③

資料の15ページをご覧ください。みなさまもご承知のとおり、従来の地震や台風、集中豪雨といった自然災害に加え、感染症などの疫病も含めた災害対策が、今喫緊の社会課題となっています。

災害に強いレジリエントな社会の実現に向けては、人々がリモート中心で働くための環境の整備や、現場に行かず遠隔で状況確認・判断ができる仕組みの構築など、人の移動に頼らない仕組みづくりが欠かせません。

また、特に今回の感染症のように、広域での予見できない災害時には、膨大な情報の中から正しい情報を把握・見える化し、活用することが重要となります。このような中、私たちは人の移動に頼らない仕組みや、正しい情報の把握・情報の見える化に貢献する仕組みづくりを進めています。

働き方改革支援サービス「Connected Work®」では、お客様の実情に合わせた解決策を提供しており、さらなるテレワークの普及を目指しています。また、「MUDENモニタリングサービス」などの遠隔監視では、人手不足の解消だけではなく、今回のように移動が制限されるケースにも応用することができ、今後需要が高まっていくことが予想されます。

災害ネットでは、情報の見える化をデジタル技術の活用により実現しています。ホワイトボードに記録するような簡単さで時系列に情報が可視化され、整理の手間と時間が大幅に削減できることから、さまざまな業種で利用いただいており、取扱数が着実に増えています。

中期経営計画の取り組み④

次に、資料の16ページをご覧ください。私たちは、これまでにエネルギー業界で培った知見をもとに、持続可能なエネルギー社会の実現に向け、取り組みを継続しています。その中で、最新の取組事例をご紹介させていただきます。

世界のエネルギー情勢は、気候変動への対応として、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーへのシフトが進んでおり、社会の要請も高まってきています。こうした中、私たちはこれまでのエネルギー関連システムの知見を活かし、新電力向けプラットフォーム「Enability®」シリーズをはじめ、さまざまなエネルギー関連ビジネスを展開してきました。

地球環境にやさしい社会の実現を目指し、再生可能エネルギーへの切り替えを促進する取り組みを進めています。主な取組例として、FIT電源の非化石証書トラッキング及び、2019年度より開始した非FIT非化石電源に係る認定業務を2020年度も継続し、非化石価値取引市場の普及拡大に努めています。

また、太陽光発電によって生じた環境価値の売買価格の決定や、RE100企業向けに環境価値取引ができるシステムの実証研究を行ない、環境価値ビジネス拡大に向けた足場固めを着実に進めています。

また、エネルギーを取り巻く環境への取り組みとして、電力設備の点検業務効率化のため、ロボットやAI技術を活用したデジタル化に取り組んでいきます。電力会社様と共同で、ドローンを用いた自動パトロールや、送電塔の傾き監視の実証を行なっており、エネルギーを取り巻く環境の維持発展にも貢献しています。

今後もさまざまなパートナーと連携しながら、クリーンで持続可能なエネルギーの普及拡大に向けた取り組みを推進していきます。

中期経営計画の取り組み⑤

次に、戦略投資の取り組みについてご紹介させていただきます。資料の17ページをご覧ください。戦略投資としては、VCファンドへの投資に加え、スタートアップへの投資を通じて、お客様とスタートアップ各社との伴走によるイノベーションの創出と社会実装、そして社会課題解決への貢献を目指しています。

国内外を問わず、さまざまな分野のVCファンドや、社会課題解決を目指すリアルテック系ベンチャーへの出資を行なっており、これまでに当社グループ合計で、14ファンド、40社を超える出資を行なっていきました。CVCであるキャナルベンチャーズでは、独自の戦略分野を加えて、ダイナミックな投資活動を行なっており、今後もデジタルトランスフォーメーションに貢献する技術や事業など、投資先を拡大していきます。

投資先のスタートアップは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている分野がある一方で、テレワークやそれに伴うオンライン化が急速に進むことで、新たな需要が喚起され、急成長している分野もあります。

私たちは今後、ドラスティックに変革していく市場を見極めながら、引き続きスタートアップへ支援を行ない、ビジネスエコシステムを形成していくことで、これから訪れる新たな世界の社会課題解決に寄与していけるよう、オープンイノベーションを加速させていきます。

中期経営計画の取り組み⑥

最後に、風土改革の取り組みについてご紹介させていただきます。資料の18ページをご覧ください。多様性のあるイノベーティブな風土を醸成するため、2019年度も創造性、革新性を持つ組織への風土改革や、多様な視点を取り入れるための組織改革、そして個人の創造性、革新性を生かすための育成プログラムなど、さまざまな観点の取り組みを継続していきました。

残業メリハリ活動を通じて時間の余裕が生まれ、また多様性を尊重する風土が浸透してきたことで、自立的に活動を進める社員が増えてきています。毎年実施している知財の蓄積・共有を目的としたテクニカルシンポジウムでは、デジタルトランスフォーメーションや新事業創出、過去の失敗をテーマに取り上げる論文執筆が増え、社内SNSではビジネスや働き方改革に対するアイデア、最新技術などの情報交換が活発化してきています。

その他にも、新事業創出に向けた活動や、職種や組織を越えた取り組みが増えてきており、風土改革の進捗を図る指標であるエンゲージメントスコアが安定的に向上しています。

テレワークでは、2018年度にテレワーク先駆者百選、総務大臣賞を受賞していますが、2019年度もさまざまな取り組みや成果を評価いただき、健康経営優良法人や、女性が輝く先進企業表彰など、賞や認定を受けています。

また、女性の活躍推進に積極的に取り組むための国際的なイニシアチブへの支持表明として、女性のエンパワーメント原則、Women’s Empowerment Principlesに賛同しました。今後、社内に留まらず、外部のステークホルダーと連携・協働して、女性のエンパワーメントを推進していきます。

以上をもちましてご説明を終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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