明治でも令和でも投資手法は変わらない

少々古い文体の文章の引用ですが、まずはご一読ください。

「『好景気、楽観時代は思い切った勤倹貯蓄』(すなわち金〈かね〉を重しとする)、『不景気、悲観時代には思い切った投資』(すなわち物を重しとする)といった鉄則を樹てて直進することを人にもすすめている。要するに利殖の根本をなすものは「物と金」の適時交替の繰り返しであって(以下略)……。」

これは林学者で日比谷公園や明治神宮の建立に尽力した本多静六翁が、戦後の昭和25年(1950年)に著した『私の財産告白』(実業之日本社)からの一節です。

要約すると、「景気が良い時は現金を貯め、景気が悪い時には投資をせよ。投資は結局、現金と資産(物)の交換をすること」ということなのです。

ウィズコロナの今、この一節がまさに的を射ていると思うのは筆者だけではないでしょう。好景気で株価は上がり、不景気には株価は下がる。3月のコロナショックの後、日経平均株価は約3割下落し、ニューヨーク・ダウも同様に約4割下落しました。

もっとも、直近ではかなり反発して、市場はアフターコロナの企業業績を先読みしているところです。

底値は誰もわからない

さて、本多翁の指摘通り、常に現金を多めに保有し、株価や資産価格が低下した局面で投資するのは、確かに理想です。しかしながら、そのタイミングに備え現金を貯めておくのは、そう簡単ではありません。

さらに、投資してリターンを最大にするためには投資対象資産の収益率もさることながら、投資金額の多寡が収益額の大きなファクターであることは忘れられがちです。当然ながら、同じ10%のリターンでも100万円投資する場合と10億円投資する場合では、前者は10万円の収益、後者は1億円の収益になります。