2020年5月29日に行なわれた、株式会社LIXILグループ2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社LIXILグループ 取締役代表執行役社長兼CEO 瀬戸欣哉 氏\n株式会社LIXILグループ 代表執行役副社長兼CFO 松本佐千夫 氏

2020年3⽉期 決算ハイライト

瀬戸:それでは3ページから、決算のハイライトになります。売上収益は前年度に比べてほぼ横ばいです。国内に関しては、消費増税前に上がった分が反動で下がり、新型コロナウイルスでまた少し下がりましたが、前年同期比0.6パーセントの増収です。

海外に関しては、アジアが少し不調だったのと、前半、アメリカがあまりよくなかったのですが、後半はアメリカがまた盛り返しました。前年同期比2.5パーセントの減収になっていますが、これは為替の影響が大きく、為替の影響がなければ、海外は同じくほぼ横ばい。1.2パーセントの成長です。

事業利益に関しては、今回キャリアオプションという早期退職制度を実施しまして、この分の金額がなければ641億円ですので、前年同期比17.7パーセントの増です。特に、国内の場合はハウジング事業での価格改定とか生産効率の改善で、利益率が上がった部分が貢献しています。海外に関しては、欧州が好調であったこと、それから、北米も後半になって盛り返したということで、増益ができました。最終利益に関しては、やはり今の事業利益の増加もありますが、ペリマスティリーザの縮小で、新型コロナウイルス対策で費用を計上しましたが、それを含めても125億円残り、前年同期比647億円増と黒字に転換しました。

2020年3⽉期 連結業績結果

参考値になりますが、一時費用のキャリアオプションを除けば、事業利益は17.7パーセントの成長になります。

新型コロナウイルス感染症拡⼤への対応について

新型コロナウイルスの一報を受けて、我々は3つのことを優先順位として、順番に考えました。まず一番重要なのは、従業員、家族、パートナーの皆さまの安全と健康で、なによりもこちらを優先しようと考えました。

それから2番目に、このLIXILという事業は、いろいろな意味で世の中の役に立っている事業だと私は確信しています。そのような意味で、この事業の持続性をなんとか確保しようということ、それから最後に、手元の流動性を確保するという順番で考えました。

まず1月の下旬、ちょうどラスベガスにKBISのショーから帰ってきたときに、この問題に気が付きまして、すぐにグローバル対策チームを作りました。在宅勤務への移行は、けっこう誇りを持って言っていいと思いますが、非常にスムースに、かつ大規模に、早期から行なうことができました。

そもそも我々が人事改革、働き方改革を昨年から行なっていたこと、デジタル改革をしていたことが非常に大きかったです。4月8日には、本社のうち98パーセントが在宅勤務になっています。在宅勤務の規模ですが、日本本社での在宅勤務の数が2万5,000人、同時に在宅勤務をしています。

おそらく、2万5,000人の在宅勤務というのは日本最大だと思います。また、単に在宅勤務をしたというだけではなくて、我々の場合は毎日頻繁にZoomを使用していました。お客さまやビルダーに対して、見積もりの図面を共有する自社ソフトを利用して商談をしたり、お客さまが360°のショールームを見たあと、オンラインでコンシェルジュが接客し、その場でプラグインという価格を見積もり、業者と画面を共有して相談するかなり重いソフトを利用しながら行なっていました。

実はデジタル化はかなり前から進めていたのですが、昨年の1月に、仮に新型コロナウイルス感染が起きていたとしたら、当時の我々のVPNの能力であれば、1,500人程度の在宅勤務で、先ほどのようなことをしただけで、おそらくパンクしていたと思います。

今回、我々はこれに関係なくEAAを導入しており、VPNに関しても、新型コロナウイルスの直前に増強していたため、2万5,000人が全くストレスなく行うことができました。このような部分と、それから在宅勤務はいろいろな意味で従業員にとってはストレスが掛かります。例えば、在宅のオンラインの準備がない方もいるし、スペースがない人もいるため、1人あたり一律5万円を、全世界の従業員に対して支給しました。このことから、従業員のマインド的にも「さぁ、在宅でやろう!」ということになり、うまくスムースに移れたのだと思います。また事業の継続性について、在宅でやらなくてはいけないといっても、もちろん工場や物流は在宅にはなかなかできないのですが、それ以外の部分に関しては、ほぼ全て在宅でできるという確信を持ちました。

今回、新型コロナウイルスということで実施しましたが、これが終わった後も、我々は基本的にそれぞれの従業員に対して、会社に来るのはMAX40パーセントにして、それ以外はもう在宅で行なって大丈夫だろうということを話しています。実は私もそうですし、それから働いている社員も、むしろオンラインのほうが効率がいいと感じています。現実に、私などの場合は、1日に20件や30件のミーティングをZoomで入れる日があります。そのようなミーティングも、大勢の人を相手にしたミーティングも非常にストレスなくできます。

例えば、昨日はヨーロッパ、アメリカ、それから日本、アジアの商品開発とシナジーに関するミーティングを行ないましたが、これも非常にストレスなくできています。営業も、今までお客さまのところへ行かないとだめだと言っていたのが、LIXILはこんな時期でも普通に、オンラインで全て商談できるということで、お客さまにも非常に喜んでいただけまして、他社に対する差別化にもなったかと思っています。また、手元の流動性に関しては、新型コロナウイルスの起こりはじめから素早く動くことができ、そもそも十分なものがあったと思いますが、さらに安心ができる内容になったと思います。

新型コロナウイルス感染症拡⼤の影響について

新型コロナウイルスの具体的な生産と調達と販売への影響を分けてみていくと、生産に関しては、まずアメリカでは今、メキシコの2拠点で生産が一時的に停止していますが、これは来週から再開する予定です。それからアフリカは、今、南アフリカがロックダウン中なので、ここは一時生産停止しています。

それからアジアに関しては、これは全工場と書いてしまいましたが、実はインドがロックダウンなので、インドは全く動いていません。それ以外に関しては、全て問題なく動いています。商品の調達に関しては、3月の下旬にキッチンとお風呂の一部商品、特に食洗器と浴室乾燥機について、具体的に問題も起こりましたが、業界のみんながほぼ同じところから買っているので、同じ問題が起こっていたのだと思います。それ以外については、ほとんど大きな問題はありませんでした。

トイレについては、一部競合ができなかった部分で一気に注文が殺到したため、納期が遅れたことがありましたが、通常分に関しては、ほぼ問題なく全てできたといえます。問題がゼロだったわけではないですが、日本、欧州、アメリカの全ての競合に比べても、我々は商品の調達、生産に関しては、一番問題なくできたのではないかなと思います。これは、グローバルなネットワークがうまくできていたためだとと思います。

販売に関しては、日本と海外で少し事情が変わります。まず日本に関しては、おそらくコロナに関する影響で一番悪かった時期が、5月と考えています。3月、4月は、すでにあった注文を処理することもあり、3月は特に問題が少なかったです。4月は、3月に少しずれた部分があったため、比較的ましでした。

5月に関しても、新築に関してはすでにある程度、影響は限定的だったのですが、リフォームがみなさま在宅という状態で、リフォームに行こうとすると「今はちょっと、新型コロナウイルスが流行しているので入ってほしくない」という方も非常に多く5月は完全に止まってしまったという状況です。

このリフォームに関しては、すでに5月の下旬くらいからだんだんと普通に戻ってきてはいます。問題は新築着工件数が下がっていることでして、これは新型コロナウイルスが流行する前から、消費増税およびオリンピック前ということで関係なく下がっていました。

この部分の影響について、新築着工の許可がそのくらいから下がっていたのが、現実に今、影響してきているのが、6月、7月、8月になると思います。7月、8月で、多分マイナス20パーセントまで販売が落ちるかと思っており、そこが日本では底になるかと考えています。それ以降に関しては、当然、コロナの第二波という可能性もありますし、それから、コロナによって経済状況が悪くなった分だけ建売の件数が減るといった可能性もあるので、今年は、全般的に低調になってくると思います。

一方、海外は4月が底でした。各地でいろいろ違いがありますが、だいたい4月全体で見て、マイナス31パーセントくらいです。5月もロックダウンが進んだため、マイナス28パーセントくらいでしたが、6月から急速によくなっています。6月はたぶん今の予想でマイナス17パーセントくらいかと見ています。

特に中国、アメリカに関しては、それぞれマイナス4パーセント、マイナス3パーセントといったかたちで、ペントアップしていたデマンドが結構戻ってきている感じです。ヨーロッパも、ロックダウンの解除がゆっくりになってきており、かなりよくなってきている印象です。

中国は、4月が7パーセントで5月がマイナス20パーセントだと、すごく心配だと思われるかもしれないですが、逆に6月はマイナス4パーセント程度で済みそうです。5月が低いのは、5月はKBS(Kitchen & Bath China)という大きなトレードショーがあり、その前に、特に我々の場合は、その月にものすごく需要が上がる傾向があったのが、去年と比べるとガクッと落ちたということで、今年はその影響があったかなというところがあります。

一方、その他のアジアは非常に厳しいです。やはりインド、フィリピンのように完全にロックダウンしているところはまだロックダウンが続いていますし、それから、マレーシア、シンガポール、タイといったところもロックダウンから開放されている状態ではありません。

一方で、ヨーロッパやアメリカに関して言うと、基本的に住宅に関する需要は大きく下がっていることはありません。ところが、アジアの場合は全体の需要の中で、ツーリズムや飛行機、ホテルに関する需要の担っている部分が大きいため、どうしても経済的な影響は最初に来ます。その分、アジアは非常に厳しくなってきている状況ではあります。

ただ海外全般で見ると、4月、5月、6月とだんだんよくなってきており、おそらくこの第1四半期に関して言えば25パーセント減ですが、第2四半期以降どんどんよくなっていくと予想しています。これも一応、コロナの次の波が来ない前提では考えています。

ニューノーマルへの対応

その中で、我々対応をどうやっていったか。今回、生産性の向上、グローバルの展開加速、ニューノーマルに対する商品群の強化と、3つの点を挙げています。

まず生産性の向上、これは先ほどお話ししたことにも関係がありますが、新型コロナウイルスの前から、我々は働き方改革ということで、フレックス、時短、在宅勤務、それからサテライトオフィスの使用をすでに進めてきており、今回、それが一気に進みました。

今まで、この業界は非常に難しいところがあり、業界のお客さまや流通の皆さまが、「お前、ちゃんと俺のところに来いよ」という話が非常に多かったわけです。ところが今回、「ZOOMでできるじゃないか、これ便利だね」と。特にLIXILの場合は、イーコネ、クラスフル、それからプラグインといったツールがあってWebですべてできますねということになりました。

例えば今回、ZOOMでのミーティングたくさん行なってわかったのですが、日本中の支社長や工場長の全員と話をしましたが、全員が共通して言っていたことは、「(Zoomを)なんでもっと使わなかったんだ」ということでした。例えば、四国の支社長は、お客さまのところへ一日で1件や2件行ければ十分なくらいお客さまが遠くにいらっしゃるとのことで、それをZOOMで行なうと、1日に20件でも会える、このようなことから大きく生産性が変わってきたということです。

デジタルに関しては、今まで言ったように、オンラインでのミーティングにおいて、いろいろなツールを使ったもので行なうと、ものすごく早いし効率がいいということです。海外も、実は我々、日本でこのようなデジタルコンテンツを先に充実していたからできたのですが、海外もそれを見て、デジタルコンテンツをもっと充実させないとならない、デジタルのソフトを使わなくてはならないという話になっています。

それからグローバルな話としては、先ほど言ったように、我々はグローバルにいろいろなところで、例えばトイレ1つとっても、いろいろな国に工場があって、その結果としてサプライチェーンの問題が起こりにくくなっている。それから、イノベーションのプラットフォームの共有ができている。

そんな中で1つ大きな日本での違いでいくと、新築は、2030年まで人口が減っていくことで減っていくため、その分リフォームで頑張らなくてはならないということで、今までなかなかリフォームの需要が盛り上がらなかったのが、今回、非常に高いレベルでのリフォームの需要が増えてきました。

これは皆さまも経験されたかもしれないですが、在宅勤務をしていると、「やっぱりうちももう1個トイレが欲しいね」「水栓触るの嫌だね」などといったものから、「やはり自分のワーキングスペースが欲しい」「もっと大きい窓が欲しい」などのいろいろな需要が出てきて、これはものすごく大きなきっかけになってきているのではないかと思っています。

その中で、我々はいろいろな場面にぴったり合う商品をたくさん持っています。まず触らないで済むというところでいくと、タッチレス水栓があり、これはLIXILが圧倒的に強い商品です。利益的にも十分な確保ができるし、海外の展開もできます。

シャワートイレも、やはりセンサーで動くという部分で注目しています。それからライフアシスト、例えばドア、シャッター、窓をいわゆる遠隔で、IoTで制御できます。携帯でも制御できますし、他のリモートコントローラーを使うこともできます。換気という意味では、ドアで換気できる商品、それからドアを触らずに開けられる商品もできてきています。

それから在宅勤務は、先ほどお話ししたように、スペースが欲しい方のために、インテリア商品として、間仕切りが作れるヴィータスのパネルや、すでにお客さまからのインターネットアクセスが、倍、3倍になってきている、ガーデンルームやウッドデッキはこのようなところで在宅勤務をしたいという希望の表れだと思います。それからリモートコントロールできる宅配のボックスのような商品を、このコロナ後に一気にプロモートしていくことで、リフォームのビジネスをつなげていく。我々として、より強く、実際にこれから需要という面で苦しい中で、せっかくの機会ですので、ここで思いっきり効率を上げ、コストを下げ、かつ、魅力のある商品で利益を取るといったかたちに変わってこれる兆しをとても感じています。

ニューノーマル:デジタル化による取り組みの加速

デジタルでの働き方で営業がものすごく喜んでいるのが、「他の会社ができなかったことだから、やっぱりLIXILがいいね」と言ってくれているお客さまがすごく増えていることです。一方で、先ほどお話ししたとおり、在宅勤務に対して、従業員に手厚いサポートを行なったこと、デジタルツールで差別化を行なったことで、非常に従業員のエンゲージメントが上がって、10パーセント以上改善しています。これが業務の効率化の、原動力にもなっているし、やはりやる気のある従業員が面白い商品を作ってくれるという、いいサイクルが生まれつつあります。

オンラインでの営業活動は、こちらに書いてあるとおり、流通業者、ビルダー、施主、営業が、同時に同じ画面を見ながら、同じ図面を見ながら会話をして見積もりができます。それから、ショールームへわざわざ行かなくても、360度の画面を見ながらコンシェルジュと実際に見積もりをしていくオンラインの接客ができるようになりました。このような部分も、アメリカやヨーロッパのいろいろな競合と比べても、一番進んでいるのではないかという自信を持ちました。

ニューノーマル:衛⽣に対する関⼼の⾼まりを背景に世界中で急速に需要が増加

先ほどの「タッチレス水栓」に、私はものすごく強い興味を持っています。実は我々、世界全体で見ると、2,000億円近い売上がありまして、水栓メーカーとしては非常に強いメーカーなのでんですが、タッチレスに関して大きな強みを持っています。タッチレスの中でもパブリックではなく特に住宅用のタッチレスにおいて日本の特許の3分の2は我々が保有しています。しかも、住宅用のタッチレスで一番興味を持たれるキッチンに関しては、キッチンそのものがナンバーワンのシェアです。タッチレス水栓の当社のシェアは82パーセントとなっています。

その技術と市場での強み、それから商品力を、150ヵ国以上の2,000億円の水栓事業に生かしていくことで、大きくビジネスを伸ばすチャンスがあります。さらに言えば、タッチレスの水栓だけではなく、浄水フィルターも付けることができます。この浄水フィルターを水を出す蛇口に近いところで付けられるのは我々だけの技術です。

この技術というのは、単純に今回コロナで触りたくないというだけでなく、新型コロナウイルスの流行する中で買い物に行かなくてはならない人たちにとって、水を買わずに済む、うちでの水が十分美味しいという状態をつくることができ、これも大きな市場だと思っています。

実は2020年3月期は、栓機のタッチレスの自動水栓の売上が日本で44億円、世界で98億円でした。これが今期は166億円になると見ています。ただ日本に関しては、もう生産キャパがいっぱいに近づいてきているため、今ものすごく急いで増強を行なっているため、増強されれば、生産、販売もできるし、来年、再来年と大きく売上を伸ばすことができます。

それから、先ほどお伝えしたとおり、我々はタッチレス水栓に強く、タッチレス・自動水栓が274億円の日本の売上のうち44億円を占めています。しかし、実際の台数で見ると、水栓全体の台数のまだ4パーセントです。そのため、逆にタッチレス水栓に切り替えていくと、水栓の売上をものすごく伸ばすことができると考えています。我々は、台数そのものを大きく増やさなくても、水栓の売上そのものをタッチレスに替えていくだけで利益も売上も増やすことができるという強みを持っています。そして、このタッチレスの強みを、我々の生活をさらによくするという部分で他の商品にもつなげていく仕掛けを行おうと思っています。

ニューノーマルへの対応:グローバルでの展開加速

海外でも同じように、右上のタッチレス水栓がヨーロッパやアメリカではもう倍増することがわかっています。こちらも生産能力を上げればもっと増やしていけると思います。

それからシャワートイレです。実は日本でのシャワートイレの興味は、センサーで便座を触らなくていいという衛生環境ですが、アメリカやオーストラリアでは、今回、トイレットペーパーが足りなかったということで需要が増えた部分があります。

それから先ほどの、水を買いに行かなくて済むという意味での浄水のフィルターです。こちらもタッチレス同様、浄水のフィルターに関しても我々は強みを持っています。小さくて性能がいいという意味では、たぶん世界で一番だと思いますが、その部分に関して、今回、アメリカンスタンダードに商品を入れました。これも世界に広げていくことができると思います。

それからeコマースへの成長投資ですが、eコマースと言うと、みんなイメージとしてはAmazonとか楽天のような、商品を単純に買うというイメージを持っていると思いますが、我々の商品は、据え付けであったり、工事があって、なおかつ商品そのものに関していろいろなバラエティの組み合わせがあるわけです。これを画面上でやり取りするということで、イーコネやCRASFL、プラグインといったソフトを使っているからこそ、オンラインですべての商談ができる。その部分は、海外ではまだ持っていない部分ですので、このようなコンテンツに関して投資していこうと考えています。正直言って、日本に関しては、ちょっと作り込みすぎて投資をかけすぎた部分もあるため、今回はもっと軽く、早く作ろうと思っています。

2020年3⽉期 配当、および、2021年3⽉期 連結業績予想

期末の配当に関しては、新型コロナウイルスのために通期に関しては、今のところまだ業績予想ができていないこともあり、今度、株主総会でこの35円の予定の部分は決まることになっています。

以上でだいたいご説明したのですが、残りの部分に関しては、ざっくりとした説明にして、質問の時間を残したいと思います。

中期計画における優先課題とその進捗(2018年4⽉〜)

我々の中期経営計画は、順調に進んでいることをまずお伝えしたいと思います。その中でも、例えば一番の事業ポートフォリオの見直しということで、ペルマスティリーザ、それから鈴木シャッター、シニアライフ、健デポを今回売りました。あとLIXILグループとLIXILを合併することで、組織がさらに簡素化しています。組織を簡素化するだけではなく、レイヤーも少なくしようと考えています。それから、先ほどお伝えした働き方改革、デジタル改革、そして差別化された製品、これらをすべて行なっていきます。そして、我々が力を入れてきた「SATO」やCO2の削減は、従業員のエンゲージメントにも大きく役立っています。

財務指標の推移

財務指標に関しては、見ていただくとおりですが、一番右下の親会社所有者帰属持分比率が下がっているように見えるのはIFRSでリースが負債と判断されるためで、アップルトゥアップルでは下がっていません。同じ会計基準で考えれば26パーセントのままです。

Housing Technology/ハウジングテクノロジー事業

セグメント別に関しては見ていただくとおりですが、1つだけ特記しておきたいのは、ハウジングが非常に良くなったということです。ハウジングについては価格の改定もありますが、プラットフォームセンサーが、インテリア、エクステリアでできただけではなく、サッシでもプラットフォームにするためのスペースを開けるための値上げが順調に進んでいるのが現状で、投資額も順調に下がっています。ハウジングの経営がだいぶ改善してきて、今回、事業利益率がキャリアオプションを除くと5.6パーセントまで来ましたが、より改善できると思っています。

以上で、だいたい大きなところはカバーしたかと思います。あとはみなさんのご質問に対して回答するかたちでカバーしたいと思います。よろしくお願いします。

松本佐千夫氏(以下、松本):松本です。質問に入る前に、今の配当のところで1点だけ補足をさせていただけますでしょうか。

★11

11ページの配当について、先ほどの説明で配当は株主総会決議という話がありましたが、当社の場合、取締役会決議のため、6月5日に決算取締役会を開催しまして、この35円の決議をいただく予定で考えています。そのため、支払いは株主総会の日の6月30日を予定をしているというところです。

こちらが、2020年3月期の配当ですが、今進行期の2021年3月期については、今、社長からお話しがあったとおり、連結業績が未定のため、配当についても未定と書いています。以上、補足でございました。

質疑応答:海外の4月、5月の売上が大きく落ち込んでいるが、のれんの減損リスクは?

質問者1:海外の4月、5月の売上が大きく落ち込んでいます。新型コロナウイルスの影響による、一時的な大きな落ち込みだと考えますが、のれんの減損リスクに関してはどのようにお考えですか。

瀬戸:今回、新型コロナウイルスの影響がより極端なケースも考え、かなり負荷をかけてテストしましたが、現在我々が持っているのれんの減損に関する不安はとくにありません。

逆に、3月決算で営業利益が少し下がっているのは、一部そのような厳しい減損テストをした結果、海外の一部の資産に関して減損を行なった関係です。ただ、かなりコンサバティブに見ているため、将来に関する不安はないと思っています。

質疑応答:工場の再編、工場内のラインの再編、製商品の統廃合など、20年3月期実績と今後の計画は?

質問者1:キャリアオプション制度を導入し、国内事業の競争力強化を推進中ですが、工場の再編、工場内のラインの再編、製商品の統廃合など、どの程度進んでいますか。2020年3月期の実績と今後のご計画を教えてください。

瀬戸:すみません、工場の再編の将来に関しては非常にセンシティブな問題ですので、開示がないものに関しては未定ということで答えとさせていただきたいと思います。また、2020年の3月期で特別に再編した部分はありません。ただ、ラインの減少に関しては、先ほどお話ししたとおり、今回、エクステリアやインテリアのプラットフォーム化によってかなりラインを整理することができました。

また、サッシに関しては、プラットフォーム化の前提条件としてスペースを空ける必要があります。そしてそのスペースを空けるために、量が非常に少ないものや、採算の悪いものを値上げしてその分ラインを空ける作業が着々と進んでいます。

工場の合理化という意味では計画どおりに進んでいますし、実際に、このプラットフォーム化や工場の整理、ラインの整理、SKUの整理によって、とくにLHTに関しては、明らかに設備投資が順調に減っているという状況です。

質疑応答:ハウジング事業の原価低減やミックス改善等の効果は来期以降も継続するか。

質問者2:ハウジングテクノロジー事業で、63億円のコスト削減による増益効果が発生していますが、原価低減やミックス改善等の効果は来期以降も継続するのでしょうか。

瀬戸:先ほどもお話ししましたが、ハウジングに関しては順調に進んでいると考えています。

ただ、もともとこの事業の一番の問題点は、採算分岐点が高すぎるがゆえに、需要の減少に関して非常にセンシティブに反応してしまうということでした。そして今回の場合、かなり需要の減少が予想されるために、それに対する対応がもちろん必要だと思っています。

一方で、今回は4月に関して10パーセントぐらい減少していますが、そのLHTに関してはほぼ予定どおりの採算を出すことができたため、そのような意味では以前に比べてかなり採算分岐点が高すぎるがゆえのボラティリティーは減ったと思っています。

これは、今言ったような生産改革を進め、価格に関して厳しい制限や制御をかけていくこと、それから全体としてのコストダウンなど、いろいろなかたちで固定費を削減することでさらにマットに良くなると思います。

今年に関しては先ほどお伝えしたとおり、需要が減った分の固定比率の負担という問題がありますが、ある程度の需要が戻った段階での成果はかなり目覚ましいものになるのではないかと思っています。

質疑応答:ショールーム等は休業中と思うがいつぐらいから営業/受注活動を開始するか。

質問者2:緊急事態宣言期間中、ショールーム等は休業になっていると思いますが、いつごろから営業、受注活動を開始されますでしょうか。

瀬戸:緊急事態宣言が出たあとも、営業活動は先ほどお伝えしたとおり、ずっと続けていました。ショールームはすべて閉鎖していましたが、オンラインでのショールーム対応等を行なっていました。もちろん、たくさんのお客さまを一気に入れることのできる普通のオンラインほどの能力はないですし、やはり「実際に見たい」という方もいらっしゃるので、十分ではなかったと思います。

そして現時点でのフィジカルなショールームに関しては、完全予約制で、時間を短くして順番に対応していっているところですが、もう既にペントアップ・デマンドがあるので、かなり詰まっている状況でして、その部分について、オンラインのショールームで対応しています。

冒頭でもお話ししましたが、我々は従業員の健康と安全が最も重要だと思っているため、ショールームが混雑して3密が起こるような事態は絶対に避けなくてはならないと思っています。そう考えると、以前と同じくらいのショールームの予約件数や、フリーのお客さまを受け取るのは当分できないと思っています。当然オンラインも行ないますが、数としてはそこまではこなせないだろうと思っています。

質疑応答:20年3月期海外事業の事業利益は特にアジアとアメリカで計画未達だったが、その要因と対策は。

質問者3:海外事業の2020年3月期事業利益の計画比変動要因を教えてください。期初ではペルマスティリーザを除いた96億円の増益計画に対し、実績は8億円の増益で、とくにアジアとアメリカの計画との乖離が大きいです。施策の浸透などで目指す方向と乖離が生じていれば、その要因と対策についてもご解説をお願いします。

瀬戸:アメリカに関しては、我々が最も得意としていたホームセンターが、他のホームセンターがプライベートブランドをつくったり、ディストリビューターがプライベートブランドをつくったりしたことで弱くなってしまったという要因がありました。そのため、チャネルとして直接リフォームを売っていく方法、それからeコマースに力を入れるという対策を立てたことにより、かなり改善していまして、結果的にアメリカに関しては第4四半期から元に戻り、最終的には減少した部分を取り戻すことができたため、アメリカはこの方針でいくのがよいのではないかと思っています。

アメリカはその方針に変えた結果、少なくともマージンはよくなったため、利益率の改善になっているため、ここを順調に伸ばしていきたいと思います。それから今、ホームセンターのプライベートブランドのお話しをしましたが、ホームセンターのプライベートブランドは今回のサプライチェーンの混乱でかなり苦しかったため、先ほど海外のビジネスの話のときに、4月、5月はあまりよくないという話をしましたが、6月においては急速にアメリカは良くなっており、現在、前年比マイナス3パーセントまで戻ってきています。もちろん、コロナの影響があるため、どうなるかはわかりませんが、そちらは大丈夫だと思っています。

今回、2020年で一番の失望があったのはアジアです。中国に関しては、順調でシェアを増やしていくことができましたが、最後に第4四半期の春節以降から、新型コロナウイルス禍によって完全に躓いてしまったことは事実です。

ただ、最も大きな問題はやはりアジアでして、地域によって問題が違いますが、例えば、韓国は完全に景気が後退してしまい、韓国の市場が一時的に非常に悪くなってしまったということがあります。それから、タイやインドネシアは残念ながら市場要因だけでなく競合にも負けていたところがあるかと思います。地域によっては、例えばベトナムのようによくなってきているところもあり、アジアはまだら模様でしたが、今回、残念ながら新型コロナウイルスが最も厳しくヒットしている地域はアジアになると思います。インド、フィリピンのロックダウンといった問題もあるため、アジアは厳しいですが、一方でヨーロッパとアメリカに関しては非常に明るいものが見えてきていますので、そこはなんとか挽回できるかと思っています。

質疑応答:ニューノーマルに対する商品群で資料P7以外の商品でもタッチレスが増える予定か。ニューノーマルに対応したリフォーム・ブームは期待できるか。

質問者4:ニューノーマルに対する商品群について、資料ではタッチレス水栓、トイレの自動開閉が掲載されていますが、今後、その他の商品アイテムでもタッチレスが増える予定ですか。ニューノーマルに対応したリフォーム・ブームは期待できますか。

瀬戸:タッチレスの商品はすでに他にもありますし、今後増やしていきます。先ほどライフアシストの話もしましたが、例えば、ドアなどでもタッチレスの商品を増やしていこうと思っています。そして、タッチレスだけではなく、我々にとっては、お客さまに衛生的な状況を作るための商品が重要になってくると思っています。

リフォームに関してはどうしても現調というプロセスがあるため、4月、5月が訪問できない状況で厳しかったのですが、逆に、我々はこの機会にみなさまが家にいたことでいろいろな家への不満や不安に気付いていただけたため、リフォームビジネスの長期的な展開に関してはかなり自信を持ちました。

そのような意味で、2021年の3月期は、やはり人が入っていくことに関する抵抗があるかと思いますが、長期的にはすごくよくなっていくだろうと考えています。現実に、特定の商品に対する引き合いがすごく増えています。例えば、先ほどお伝えしたタッチレスや、在宅勤務のスペースを作るような商品に関して、非常に大きな興味を持っていただけています。

質疑応答:資料P3「ハウジング部門の生産効率改善」の詳しい成果は。サッシ部門の効率化は新型コロナウイルスでも緩むことなく進むか。

質問者5:資料3ページ、ハウジング部門の生産効率改善について、詳しい成果を教えてください。また、懸案のサッシ部門では、新型コロナウイルスでも、例えばラインや無品点数削減などの効率化が緩むことなく進めそうですか。

瀬戸:LHTのやはり一番の柱はプラットフォーム生産が可能な体制にしていくことだと思っています。その意味では、すべて計画どおり順調に進んでいっています。一部、自動車向けのアルミ産業材が減っていることで、アルミのコストが多少上がっている部分がありますが、それ以外の部分に関してはコストも順調にSKUも下がっていっています。

来年の秋に、プラットフォームでは初めて「本格的な商品」を出せる状況にまで来ているため、今年、来年とさらによくなっていくと考えています。

質疑応答:決算短信25ページ上部PERMASTEELISAの売却にかかる「売却後の関係」に記載の、再生計画や資金の拠出について。

質問者6:決算短信の25ページの上のところで、Permasteelisaの売却後の関係について、第2段落の再生計画が実行された場合、最大約81億円をLIXILグループが保証されるとありますが、再生計画とはいつまで実施される可能性があるのでしょうか。第3段落の株式譲渡の直前において、一定の資金を拠出とありますが、これは具体的にどういうことでしょうか。また、120億円までは返還される場合もあるようですが、これはPermasteelisaのキャッシュ・フローがどのような状態であればよいのでしょうか。例えば、フリー・キャッシュ・フローがプラスに転じるなどの条件が必要なのでしょうか。これらの条件をすべて合わせて、最大でどれくらいの追加の費用計上が発生するのでしょうか。最後に、連結P/Lへの影響、キャッシュ・フローへの影響などご教示いただけますと幸いです。

松本:松本からお答えします。結論としますと、保証等については現在は発生する見込みがないと考えています。ですから、偶発債務ということでこちらに開示しているということです。もし、返ってこないとか、保証の必要が明確な場合は、先期の費用に含めなければなりませんので、こちらに載っているというのが偶発債務というかたちになっています。

それがまず大きな結論でして、24ページに実は売却価格あるいは契約等については売却先、すなわちAtlasの強い意向により非開示と書いています。ですから、契約面についてもつまびらかにするわけにはいきませんが、その中で当社は開示公開企業ですので、開示をしなければならない項目については、ここに書いているということです。

繰り返しになりますが、裁判の費用、係争事件、あるいはその再生計画、資金の拠出等が実際に発生する蓋然性が高いのであれば、費用としても認識しなければならないため、今のところは発生する可能性がないと見込んでいることから偶発債務というかたちで書いています。

リストラについても、Atlasはプライベートエクイティではございますが、事業再生に非常に大きな実績を持っています。ですから、いろいろな企業を買収し再生してきたという実績がある企業であり、我々がもともと持っていたときにはリストラクチャリングというか、再生計画を持っていたわけですが、それについても彼らが新しいオーナーとして精査をした中で、「いや、ここはまだやっぱり使えるのではないか」「ここは彼らが持っているグループ内の別の企業とシナジーが出せるのではないか」などを考え、これから再生計画を練っていくことになっています。そのため、我々が持っているよりもAtlasが持っていた方がオーナーとして好ましいということも含め、今回譲渡に至ったという状況です。

質疑応答:新型コロナウイルスによる経済活動の停滞・消費センチメントの悪化があるが、事業改革を進めるという目線に立つと、今年はどのような位置づけになるか。

質問者7:今期の事業改革の進め方について、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞、消費センチメントの悪化などにより国内の住宅需要は足元で低迷しています。今期の事業環境は貴社にとって厳しいものになると予想されますが、事業改革を進めるという目線に立つと、今年はどのような位置付けになるのでしょうか。

ある意味では今年の業績は多少悪くとも仕方ないとはいえ、むしろ積極的に事業改革を進め、必要な費用を使っていくチャンスとも捉えられます。あるいは、やはりこのような局面では現状のビジネスを維持するのが得策と考えることもできるかと存じますが、今年の戦略をお聞かせいただければと思います。

瀬戸:行なうべきことは淡々と行なっていくということになると思います。採算の悪い事業に関する値上げも、たとえ市場が小さくなっていたとしても淡々として行なっていく方が、最終的には市場が回復したときにむしろフルーツが大きくなると思っています。

また、コスト面や構造改革について、先ほどから何度か質問があった工場の生産改革、それから従業員の生産性を高めるための働き方改革やデジタル改革などをすべて緩める必要はなく、ご指摘のあったとおり、むしろスピードを上げるチャンスだと思っています。

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