住友化学は、半導体材料事業の売上高目標として2021年度(22年3月期)に18年度比で1.5倍に拡大させる。半導体用フォトレジストや洗浄液の生産・評価体制を拡充していくほか、GaN(窒化ガリウム)エピタキシャルウエハーなど化合物半導体事業も成長分野と位置づけ、積極的な事業展開を進めていく。

EUVレジストの量産を近く開始

 半導体材料が含まれる情報電子化学部門の2019年度業績は売上高が前年度比2%増の4049億円、営業利益が同4%減の251億円。偏光フィルムをはじめとするディスプレー材料が売り上げの過半以上を占めているが、近年は半導体材料への注力姿勢も鮮明にしており、能力増強を含む事業体制の強化を進めている。半導体材料は洗浄液などのプロセスケミカルのほか、フォトレジスト、化合物半導体材料などで構成される。

 フォトレジストについては、最先端プロセスで需要拡大が進むEUVレジストの量産を近く開始する。これに伴う開発・評価体制強化のため、大阪工場(大阪市此花区)に新棟を建設、新規の評価装置を導入する。22年度上期の完成を目指す。

 同社はフォトレジスト分野において、先端のArF液浸レジストをはじめ、KrF分野でも高い市場シェアを持つ。19年度には液浸向けレジストの生産能力増強のため、大阪工場で新プラントを建設するなど、事業拡大に努めてきた。

 独自の材料設計によって顧客から高い評価を受けているEUVレジストの量産開始に伴い、クリーンルームを完備する新棟を建設し、新たな露光装置を導入する。EUVレジストの開発効率を向上させ、顧客へのレスポンスを加速するとともに品質保証体制を強化する。なお、同社では高額なEUV露光装置を導入せずに、他の光源でこれを代替している。

 洗浄液については、17年11月に中国・江蘇省常州に新工場を建設すると発表。中国国内にはもともと、西安市にも洗浄液の生産拠点を有しており、常州に2カ所目となる工場を立ち上げることで、中国全土を東西からサポートできる体制が整ったという。常州新工場は19年から稼働を開始している。

GaNエピウエハーの能力を倍増

 成長分野の1つに掲げる化合物半導体材料は、子会社の㈱サイオクス(茨城県日立市)で手がける。住友化学はもともと、GaAsエピウエハーなどに強みを持っていたが、15年に日立金属の化合物半導体ウエハー事業を買収。現在はこれらを統合し、100%子会社として事業を展開している。

 現在、サイオクスではGaN on SiCウエハーなどをパワーアンプなどの高周波デバイス向けに供給している。過去3年間で増産体制を整え、出荷ベースで従来比3~4倍に拡大。足元では5G基地局向けにGaNデバイスの採用拡大が見込まれるため、向こう3年間で生産能力をさらに倍増させる計画で、同社によれば必要な設備投資はすでに完了しているという。

 また、GaNウエハーとGaNエピの双方を扱う数少ないサプライヤーでもあり、レーザー用途のGaNウエハーでは業界トップに位置する。現在は次世代構造として注目されるGaN on GaN向けの材料開発も高周波および電源デバイス用途で開発を進めているという。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳