2020年4月14日に行なわれた、福岡リート投資法人2020年2月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社福岡リアルティ 代表取締役社長 松雪恵津男 氏
第31期以降のトピックス
松雪恵津男氏:福岡リアルティの松雪です。まず、新型コロナウイルス感染症に罹患された方、及びご家族、関係者のみなさまに謹んでお見舞い申し上げます。今回、新型コロナウイルス感染拡大の状況や、政府自治体からの外出自粛等の要請を踏まえ、今回の決算説明会はWebでの開催に変更させていただきました。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
それではさっそく、福岡リート投資法人第31期の決算を説明します。資料の1ページをご覧ください。第31期以降のトピックスというかたちでまとめています。まず、左から既存物件ですが、商業施設についてはキャナルシティ博多及び、その他アクティブ商業3物件の1年間の前年比売上を載せています。それぞれ96.5パーセント、97.7パーセントとなっており、その要因については、後ほどご説明します。
続いて、ポートフォリオの3割弱を占めるオフィスビルです。25期以降行なってきた賃料の増額改定は7期連続ということで、31期は月額340万円の増額改定になっています。マーケットが好調な中、現時点での賃料ギャップは30.4パーセントの状況です。
財務の運営ですが、借入の長期固定化を推進してきました。31期末の数字は、固定化比率が92.4パーセント、平均負債残存年数が6年1ヶ月、LTVが39.8パーセントとなっています。平均負債残存年数とLTVはJ-REIT平均を載せていますが、そちらについても保守的な運営を行なっているところです。
さらにコミットメントラインについては借入極度額は130億円で、今回、西日本シティ銀行をエージェントとするコミットメントライン契約については、期間を2年から3年に長期化することができています。
スライドの右をご覧ください。新規物件の取得についてご説明します。私ども福岡リートは、昨年の3月にポートフォリの投資方針について、見直しを行なっているところです。
オフィスの上限を10パーセント、物流、ホテル、住居、その他についてのアセット上限を10パーセントに見直しました。今回新たに取得する物件は、スポンサーが開発した東比恵ビジネスセンターⅢ、さらに物流ということで、外部からの取得であるロジシティ若宮になります。それぞれ取得予定日は5月29日、6月30日となっています。金額、NOI利回りはスライドをご覧ください。
1口当たり分配金は、31期は3,642円と半年前の予想に対しマイナス8円です。要因については後ほど詳しくご説明します。32期の分配金が3,150円、33期は3,650円と予想しています。33期は新規物件の収益貢献を見込んでいます。
第31期ベース・フロート賃料実績及び第32期・第33期の賃料想定
2ページをご覧ください。第31期ベース・フロート賃料実績及び第32期・第33期の賃料想定を載せています。まずスライドの左上が第31期ベース・フロート賃料の前年同期比となっています。とくに緑色のグラフのフロート賃料が、第31期は前年に比べて1億3,500万円の減少となっています。これを物件タイプ別に見たものがその下のグラフです。一番大きいのがキャナルシティ博多で、1億2,300万円のマイナスになっています。
この要因は、右の2つのグラフをご覧ください。まず下の、福岡空港及び博多港への外国人入国者数推移を載せたグラフですが、少し長い期間で見ると、熊本の地震があって一旦落ち込んだものの、インバウンドは非常に順調に増えていきました。ところが、みなさまご案内のとおり昨年の8月以降、韓国からのインバウンド客が大きく減った状況です。ただ、全体的な数字としては他の国からの人も増えたということで、一旦は取り戻していましたが、今年の2月にコロナウイルスによる影響で大きく入国者数が減った状況です。
上のグラフがアクティブ商業物件の前年同月比売上推移です。青色のキャナルシティ博多については、8月から9月にかけて大きく売上を落としています。これが日韓問題、さらに2月に大きく落としている新型コロナウイルスによる影響です。一方、その他アクティブ商業3物件は、全国のSCの数字とほとんど同じ動きをしています。すなわち、10月の消費増税を睨んで9月の前倒しといった状況です。
スライドの左下、第32期・第33期の賃料想定については、現時点で想定しうる影響に基づいて算出しています。具体的には足元の新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえて、感染拡大にともなう影響が徐々に回復するものの、2020年12月頃まで続くと仮定した上で、賃料の想定を行なっています。
商業施設に関しては、3月の売上は速報ベースで、キャナルシティ博多が前年売上比おおよそ50パーセント程度、パークプレイス大分、木の葉モール橋本等の、その他の施設が70~80パーセント程度であったことから、これらを踏まえて第32期通期の売上想定を、キャナルシティ博多は前年売上比50パーセント程度、その他の施設は前年比70パーセント台で想定しています。その結果、第31期から第32期にかけて、商業施設の賃料は3億6,800万円の減収を見込んでいます。
なお、福岡県で4月7日に発令されました緊急事態宣言を受けて、新型コロナウイルスの感染拡大に最大限協力するため、4月9日よりキャナルシティ博多、木の葉モール橋本、マリノアシティ福岡の3つの商業施設について、一部店舗を除き、当面の間臨時休業することを徹底しています。
この事象が収支に与える影響について現時点で想定はできないものの、売上にストレスをかけて賃料の減収を想定していることから、その範囲を意識してまずは丁寧にテナント交渉を行なっていきたいと考えています。第32期から第33期にかけては、12月頃に新型コロナウイルスの影響が徐々に回復していると想定して、2億2,600万円の賃料の増収を想定しています。
オフィスに関しては、賃料改定、テナント入替を通じた賃料増額と、第32期から東比恵ビジネスセンターⅢが収益貢献することにより、第33期にかけて賃料の増収を見込んでいます。また、その他に関して第33期の期中から、ロジシティ若宮が収益貢献を開始し、第32期から第33期にかけて6,500万円の賃料の増加を見込んでいます。
第32期 新規取得予定物件①
3ページをご覧ください。第32期新規取得予定物件の東比恵ビジネスセンターⅢです。この物件は、3月に竣工したばかりで、左上の写真にあるとおり、7階建基準階が約150坪のオフィスです。開発は、東比恵ビジネスセンター及び東比恵ビジネスセンターⅡ同様、スポンサーの福岡地所です。位置関係は左下の地図をご覧ください。
取得予定金額は32億9,000万円、取得予定は5月29日、NOI利回りが4.4パーセントです。今は福岡のオフィス回りが非常に好調です。なかなか新しい物件の供給がない中、この3月竣工の新築ビルということで、非常に希少性の高いオフィスビルをスポンサーから取得することができたと思っています。
強固なスポンサー・コミットメントということで、右下のグラフに載せていますが、今回第32期中に資産規模が2,000億円を超え、この時点で約6割強がスポンサーからの取得になります。つまり、スポンサーを介した有力物件を継続的に取得してきたということです。
なお、合わせて昨日スポンサーを通じた福岡リート投資口の追加取得のプレスを出しています。現在、スポンサーの福岡地所は福岡リート投資口を9.09パーセント保有しています。今回スポンサーの福岡地所から、投資口の1.3パーセントに相当する1万口を上限に追加取得するという通知を受けたところです。このように、物件拠出にとどまらないスポンサーからの強いサポート姿勢が今回出されています。
第32期 新規取得予定物件②
4ページをご覧ください。ロジシティ若宮については、事業会社が自社の物流施設で使っていたものを、我々が地域特化型リートとしていち早く情報を掴み、今回の取得に至ったものです。
場所は地図にありますとおり、福岡と北九州のちょうど中間に位置します。6月に取得後、4ヶ月かけて次のテナントのためのリニューアル工事を行ない、11月からテナントのあいだで10年間の長期固定の賃貸借契約を結ぶ予定です。取得金額が17億円、その後の工事4億円を含めてNOI利回りが6.7パーセントと、非常に福岡リートらしい物件の取得ができたと思っています。
九州北部の物流マーケット
5ページ、九州北部の物流マーケットをご覧ください。左下のグラフのとおり、2019年では空室が0パーセントとなっています。こうしたマーケットを反映し、我々が保有しているロジシティみなと香椎についても、大型テナントとの再契約の際に約10パーセントに当たる賃料増額改定を行ないました。
投資タイプ毎の資産規模の推移(取得価格ベース)
続いて6ページ、投資タイプ毎の資産規模の推移です。第32期に資産規模2,000億円に到達予定です。今後は2,500億円を目指し、引き続き地域特化の優位性及びスポンサーパイプラインを活用して、オフィスビル、物流施設等を中心に厳選投資を行なっていきたいと考えています。なお、青の折れ線グラフでLTVの推移を載せています。直近ではLTVについては、35パーセントから45パーセントのあいだで、非常に保守的な水準でコントロールしてきています。
今回の東比恵を借入で取得しますが、その後も借入余力として約150億円あります。今後、こちらのデッド余力を使ったかたちでの物件外部成長による分配金の向上も考えていきたいと思っています。
損益計算書・分配金(予想比)
8ページに損益計算書・分配金の予想比を載せています。それぞれの物件がマイナスになっており、トータルの営業収益がマイナス1億800万円です。第31期は半年前に韓国のお客さまが非常に減り、8月に大きく落ち込んだ数字を踏まえて、第31期のこの状況が半年続くだろうと予想を出しています。
基本的には韓国のお客さまについては想定の範囲でしたが、一部の大型店以外にも飲食店などで少し影響が出たところがあります。キャナルシティ・ビジネスセンタービルについては、オフィスですがテナントから急遽キャンセルがあったため、ダウンタイムが生じてしまった状況です。
このような状況下で、我々としてはコストコントロールも含めて、1月末の段階ではきちんと予想分配金を守れると考えてきましたが、2月に入って想定外の新型コロナウイルスが発生し、国内のお客さまにも影響が出たことから予想を8円下回ったところです。
第32期 業績予想
9ページは第32期の業績予想です。新型コロナウイルス感染症の影響による収益の減少ということで、先ほど大きな括りでご説明しましたが、商業施設の3億6,800万円の減収分が、こちらにありますキャナルシティ博多、キャナルシティ博多・B、パークプレイス大分、木の葉モール橋本、サンリブシティ小倉の数字となっています。
一方で5月末に取得します東比恵ビジネスセンターの収益貢献、さらにはオフィスビルの増賃等による収益がプラスの状況です。
第33期 業績予想
第33期の業績予想です。こちらも繰り返しになりますが、第32期取得物件のロジシティ若宮の賃貸開始、東比恵ビジネスセンターⅢの通期寄与のプラス要因に加えて、コロナウイルスの収束を12月ぐらいまでに踏まえた賃料の増加を想定しています。なお、キャナルシティ博多がマイナスとなっているのは、大型テナントのダウンタイムを見込んだ結果です。
コスト面については、減価償却費の減が5,500万円となっています。実際には新規物件2物件の償却が増えていますので、それを除く既存物件では7,000万円強の減少です。
保有物件における環境認識と今後の方針
資料11ページをご覧ください。私どもの保有物件は商業施設以外にもオフィス、物流、住居、ホテルと多様なタイプがあるということで、我々としては今回初めて短期、中長期の環境認識と、今後の方針を整理しました。
商業物件の近況①
12ページをご覧ください。商業物件の状況です。キャナルシティ博多、キャナルシティ博多・Bについては先ほどお伝えしたとおりです。パークプレイス大分、木の葉モール橋本、サンリブシティ小倉は、いずれも全体からすると前年比売上が1パーセントから3パーセンのマイナスになっています。
サンリブシティ小倉ですが、前回からお伝えしているとおり、今後の施設活性化に向けて、来街者調査の実施、テナントの入替、リニューアル等の取り組みに関して、テナントとの間で着実に進めているところです。
スライドの右上は稼働率、右下には商業施設の新型コロナウイルス感染症の拡大防止策を記載しています。
商業物件の近況②
13ページをご覧ください。キャナルシティ博多、パークプレイス大分、木の葉モール橋本についての注目テナント等を載せています。キャナルシティ博多については、注目テナントということで、九州エリア初の「THE GUNDAM BASE FUKUOKA」「GUNDAM Café」はお客さまに非常に好評で、売上を出しています。
また前回の決算説明会でお伝えしましたが、福岡自体はインバウンドが韓国に偏っており、全体の5割を占めるということで、今後の多様化のためにいろいろなことを行なっていきます。その1つの施策として、旅行博への出展で昨年11月の台北と今年1月のタイを載せています。コロナが終息した後、またインバウンド需要は強くなると思います。我々としては、やはり韓国一辺倒ではなく、いろいろな国からのお客さまに福岡のキャナルシティ博多に来ていただきたいため、努力をしっかり続けていきたいと思います。
木の葉モール橋本についても、開業から9年目で累積来場者数が5,000万人を超えました。テナントとの賃料条件も65テナント中14テナントで改善ができています。
ホテルの状況
14ページはホテルの状況についてまとめています。我々が保有してるホテルについては、グランド ハイアット 福岡、福岡ワシントンホテル、ホテルフォルツァ大分、ティサージホテル那覇の4つです。これを第31期賃料構成比で見た場合には、ベース賃料が92.4パーセント、フロート賃料が7.6パーセントになっています。
最近のRevPARについては、キャナルシティ博多にある2つのホテルの1年間を見ると、前年比でマイナス4.7パーセントとなっています。昨年のプラス要因はワールドカップ、マイナス要因はご案内の韓国、あるいはコロナウイルスです。
ティサージホテル那覇は第29期の途中で取得しています。第31期と第29期を比較した数字としては、稼働率、ADRともにマイナスです。ティサージホテル那覇は韓国の宿泊ウエイトが非常に少なかったのですが、近隣の競合ホテル等の影響もあって、残念ながら稼働率、ADRも落としたかたちになっています。
福岡のオフィスマーケットの動向
15ページは福岡のオフィスマーケットについてです。空室率は2パーセント台で推移し、平均募集賃料は32ヶ月連続で上昇しました。スライド右上にありますとおり、この1年間でも6.6パーセント上昇しています。
オフィスビル稼働率実績・予想
16ページは我々が保有しているオフィスビルの稼働率です。第32期、第33期は100パーセント稼働を予想しています。なお、賃料増額改定あるいは入替による単価のアップにより、スライド右下にあるとおり賃料単価指数も、第29期から第30期で1ポイント、第30期から第31期で2ポイント上昇と、増額改定が着実に実を結んでいます。
オフィスビルの賃料改定及びテナント入替の状況
17ページはオフィスビルの賃料改定及びテナント入替の状況です。第31期は賃料改定による増額が月額で340万円、テナント入替による増額が180万円です。第32期も現在テナントとの合意が得られている分を載せていますが、約500万円で賃料増額改定が順調に進んでいます。
財務状況
18ページは財務状況です。引き続き安定的な財務基盤の確保に努めています。借入金融機関も我々福岡リートのスポンサーの福岡銀行、西日本シティ銀行、日本政策投資銀行で5割、さらには九州全域をカバーする地方銀行との取引ネットワークを今後ともしっかり生かしていきたいと考えています。
第31期調達実績
19ページをご覧ください。第31期は47億円のリファイナンスがありましたが、おかげさまで金利を下げ、期間を伸ばすことができました。コミットメントラインは冒頭に述べたとおりです。
我々がとくに意識しているのは返済期限の分散ということで、ある期に大きな返済期限のコブを作らないよう、これまでずっと進めてきました。一番大きいところでも70億円で、これに対してコミットメントラインを130億円にしています。なお、これから1年間の返済ですが、第32期、第33期の返済予定は10億円です。
鑑定評価額
21ページに鑑定評価額を載せています。Cap Rateですが、今回29物件のうち、オフィス物件すべてとそれ以外の13物件で0.1パーセント下がっています。前期が5物件、その前が17物件でしたが、一部の商業あるいはロジ、ホテルも今回下がっています。
前期末の鑑定評価額の差異で、いくつかの物件にマイナスが出ています。これについては今回固都税の見直しによる影響がほとんどです。
鑑定評価額の推移(含み益)
我々は地域特化型リートで厳選投資を行なってきました。したがって、第30期より継続して含み益を保持できているところに現れていると思っています。第30期末時点の含み益が369億円、含み益の割合は20パーセントとなっています。
福岡空港の機能強化
インフラについては、24ページです。混雑空港である福岡空港の機能強化という観点からは、今年の1月に平行誘導路ができています。これにより能力アップしています。
天神エリアの再開発(天神ビッグバン)
25ページをご覧ください。福岡では天神エリアの再開発(天神ビッグバン)が動き出しています。その第一号は福岡地所が開発しています天神ビジネスセンターです。こちらは来年9月の竣工を目指し、工事は順調に進んでいます。前回からの変更点は、天神一丁目11番街区開発プロジェクト(仮称)で、2つのビルだけ行なうということでしたが、3つのビル全部を壊して、新しい開発が行なわれています。正しい開業は、2024年夏開業予定となっています。
博多エリアの再開発(博多コネクティッド)
さらに26ページをご覧ください。福岡の中心博多においても、博多コネクティッドのような再開発が動き出しています。一番シンボリックな話題としては、JR博多駅前にあります西日本シティ銀行の本店本館の建て替えが今回発表されています。
6月から解体工事に着手し、2025年2月に新本店ビルを竣工。さらに、西日本シティ銀行の保有ビルの連鎖的な再開発がな行われます。これについては、スポンサーの福岡地所が共同事業者で再開発を進めると発表されています。福岡においては、こうしたかたちでインフラから都市開発が予定どおり順調に進んでいます。
なお、先ほど新型コロナウイルスの話をしていますが、今日福岡市からは新型コロナウイルス対策で約100億円の予算を策定するとの支援が打ち出されています。インフラ、ハードにとどまらず、ソフト面でも福岡はしっかり行えると受け止めています。
サステナビリティへの取り組み
最後に27ページ、サステナビリティへの取り組みです。今回、福岡リート投資法人の財務・非財務情報を統合し、持続的な成長への取り組みや中長期的な企業価値創造についてまとめた「統合報告書2019」を今年の1月に発行しました。これはJ-REIT初の取り組みです。ぜひみなさまご覧いただき、それを踏まえたかたちで対話を進めさせていただければと思います。
外部評価については、GRESB2019へ2年連続で参加し「4スター」の取得、さらにはグリーンビルについても、2月末現在で認証取得率は82パーセントとなっています。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。