2020年4月16日に行われた、日本アコモデーションファンド投資法人2020年2月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:日本アコモデーションファンド投資法人 代表取締役社長 伊倉健之 氏
第28期 決算サマリー
伊倉健之氏:三井不動産、アコモデーションファンドマネジメントの伊倉です。本投資法人の第28期の決算について、決算説明資料に基づきご説明します。
まず、2ページをご覧ください。28期の決算サマリーになります。28期の確定分配金は10,042円と予想を192円上回りました。予想を上回った要因は、主に内部成長にあります。
今期もタイトな需給関係を反映して賃貸収益は好調に推移しました。稼働率については97.7パーセントと想定どおりでした。入替え時の賃料変動率は前期の6.5パーセントから7.0パーセントへと上昇しました。また、更新時の賃料変動率は前期の0.3パーセントから0.6パーセントへと大きく上昇しました。
財務面では、期末時点の加重平均金利は0.59パーセントから0.57パーセントへと引き続き低下しました。有利子負債の平均残存年数は4.4年と前期と変わっていません。
外部成長については、28期中の物件取得はありませんでしたが、29期に入り、パークアクシス赤塚の共有持分55パーセントを24億2,000万円でスポンサーから取得しました。
第28期 決算ハイライト(1)
次に5ページをご覧ください。オレンジ色の網掛け部分が28期の実績、中央のクリーム色の部分が予想との比較、右の水色の部分が前期との比較となっています。予想との比較を中心にご説明します。
28期の営業収益は114億100万円と、予想を6,500万円上回りました。これは、既存物件の 高稼働等によるものです。一方で、営業費用はほぼ予想どおりでした。その結果、営業利益は53億700万円と、予想に比べ5,800万円の増益となりました。
営業外については、昨年の台風被害等に関する保険金収入など営業外収益が2,100万円増え、一方で支払利息が想定を1,200万円下回ったことから、今期の当期純利益は48億6,500万円と予想比9,200万円の増益となりました。結果として、1口あたり分配金は10,042円と、予想を192円上回ることができました。
第28期 決算ハイライト(2)
次の6ページでは、1口あたり分配金の予想との変動要因について説明しています。当初の予想は9,850円でしたが、既存物件の高稼働により109円上積みしています。稼働率自体は予想どおりでしたが、空室期間の短縮や、礼金などの一時金収受が想定を上回りました。
また、先ほどお伝えした保険金収入、および支払利息の低減により28期の1口あたり分配金は10,042円となりました。
外部成⻑の状況
次に外部成長についてご説明します。7ページをご覧ください。29期に入ってから、3月30日にパークアクセス赤塚の共有持分55パーセントを24億2,000万円でスポンサーから取得しています。
総戸数は住宅156戸、店舗3区画と比較的大型で、2018年9月竣工の築浅の物件です。取得価額に対する鑑定NOI利回りは4.4パーセントとなっています。本物件の共有社は、ユナイテッド・アーバン投資法人で、もともとそれぞれのスポンサーが共同で保有していたものをそれぞれが取得したものです。
本物件取得後のLTVは51.1パーセント程度で、LTV55パーセントまでの取得余力は約260億円となります。
外部成⻑戦略
次に8ページをご覧ください。スポンサーパイプラインについてのご説明です。スポンサーの開発したパークアクシスシリーズは、東京23区を中心として40物件、3,751戸が竣工済みもしくはリーシング中です。
総額で概算約1,100億円規模になります。今後も引き続き、パイプラインからの物件取得に努めていきたいと思います。
また、投資用不動産の売買マーケットについては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、現状では賃貸住宅だけでなくすべてのアセットクラスにおいてそれぞれのプレーヤーが様子見の状況のため、今後の動向を慎重に見定めていきたいと思います。
内部成⻑ 稼働率の推移
次に、内部成長についての説明です。9ページをご覧ください。9ページのグラフは、過去3年間の稼働率の推移です。28期も期中を通じて稼働が好調で、前年同期と同水準の高い稼働率で推移しました。
内部成⻑ 「賃貸住宅」の⼊替え時賃料動向(1)
次に10ページをご覧ください。入替え時の賃料変更の動向のご説明です。28期の入替え対象戸数は1,057戸のうち、賃料上昇戸数は対象戸数の87.2パーセントにあたる922戸で、据え置きは51戸、下落が84戸となっています。
月額賃料合計の増減は1,124万9,000円の増加、上昇率は7.0パーセントになります。10ページの下、入替え時の賃料変動率のトラックレコードです。タイトな需給関係を反映して、変動率は着実に上昇しています。
今後は、徐々に賃料相場が上昇したあとに入居したテナントの入替えが発生するため、変動率の伸びはゆるやかになると思いますが、入替え時の賃料上昇は継続すると考えています。
内部成⻑ 「賃貸住宅」の⼊替え時賃料動向(2)
次に11ページをご覧ください。上のグラフはエリア別の入替え時の賃料変動率の推移を示しています。今回は、その他23区の伸びが著しく、都心3区に追いつく勢いとなっています。要因としては、スライドのとおり台東区、墨田区、江東区の城東エリアと文京区が牽引したことによります。
都心3区は、もともと既存物件も新規供給も少ない中で、都心に近いエリアの人気が高まっていることがおわかりいただけると思います。
下のグラフは住戸タイプ別の入替え時の賃料変動率の推移を示しています。住戸タイプの中では、ラージタイプの変動率が下がっていますが、これは過去2期の賃料上昇を牽引した大川端のリノベーション住戸とパークキューブ目黒タワーの入替え戸数が減少したためです。
ただ、変動率は下がったとはいえ、依然として8.1パーセントと高い数字になります。また、当社のポートフォリオの主力を占めるシングル、コンパクトタイプの上昇率は着実に拡大しています。
内部成⻑ 「賃貸住宅」の更新時賃料動向
次に12ページをご覧ください。更新時の賃料の動向の説明です。28期の更新対象戸数は1,628戸になっています。そのうち、賃料上昇戸数は327戸で、据え置きが1,300戸、下落については1戸となっています。月額賃料増減の合計は、150万4,000円の増加、上昇率は0.6パーセントになります。
右上のグラフにあるとおり、今期は賃料上昇住戸の割合が20.1パーセントと前年同期の倍以上に増え、また、上昇住戸の平均上昇率も2.1パーセントから2.7パーセントへと伸びたため、更新時の賃料も大幅に上昇することになりました。
内部成⻑ 「賃貸住宅」の賃料単価動向
次の13ページでは、全体の賃料単価の変化についてまとめています。上のグラフが過去3年間継続保有している物件の賃料単価の推移です。この1年間で1.6パーセント、2年前に比べると2.8パーセントの上昇をしています。
下のグラフは、エリアごとの賃料単価の変化率をまとめたものです。先ほど説明した、入替え時の賃料変動率同様に、その他23区が高い伸びを示しています。エリアの中では、その他東京圏がマイナス0.05パーセントと若干のマイナスになっています。
これは、期末に賃料単価の高い住戸が一時的に空室だったという個別要因によるもので、マーケットとして弱含みとまでは考えていません。
資本的⽀出の状況(1)
次に、資本的支出についてご説明します。14ページをご覧ください。14ページの右側のグラフは、資本的支出の実績と見通しを示したものです。今期は大川端賃貸棟の高層棟のエレベーター更新工事があったため、一時的に金額が大きくなっています。
しかし、29期以降は減価償却費のおおむね20パーセント台前半で推移する見通しです。左上に当社のポートフォリオの築年数別比率を示しています。築20年以上の物件は、大川端賃貸棟1棟だけになります。
その他は、ほとんどが単体の賃貸住宅で、しかも築15年以内が80パーセント以上を占めています。したがって、今後も資本的支出を計画的にコントロールしながら、商品力の維持および強化を行なっていくことが可能と考えています。
下は、大川端賃貸棟のリノベーション実施の効果を示しています。先ほど、入替え時の賃料変動率のところでもご説明しましたが、27期、28期とエレベーター更新工事を行なった関係でリノベーションの実施件数が減ったため、全体としては賃料変動率が低下しています。
資本的⽀出の状況(2)
次にリノベーション工事の事例をご紹介します。15ページは大川端賃貸棟の事例です。築30年の物件ですので、もともとの間取りや仕様は今風でない部分があります。
この事例では、和室を洋室に、キッチンをオープンキッチンに、床をカーペットからフローリングにするとともに、住戸の広さを実感できるように天井を高くするなどの変更を行ないました。
これにより、従前の賃料から30パーセントの上昇を実現しました。
資本的⽀出の状況(3)
16ページはパークキューブ東品川の事例です。この住戸は47.5平米とワンルームとしては広めの住戸だったものを、寝室とリビングダイニングに分け、人気の高い1LDKに変更したものです。
同時にウォークインクローゼットを移設することで、リビングダイニングにも十分な広さを確保しました。これにより、従来の賃料から23パーセントの上昇を実現しています。
サスティナビリティに関する取り組み(1)
次に17ページをご覧ください。サスティナビリティに関する取り組みです。本投資法人は、環境・社会・ガバナンスといういわゆるESGへの配慮をはじめとしたサスティナビリティを重視した資産運用を行なっています。
本投資法人は三井不動産グループの環境方針および社会貢献活動方針のもと、環境負荷の低減、社内外のさまざまなステークホルダーへの配慮、コーポレートガバナンスの遵守などを軸に、ここに記載の項目をサスティナビリティに関する重要課題と認識しています。
サスティナビリティに関する取り組み(2)
次の18ページで具体的な取り組みを紹介しています。環境面では2015年のエネルギー使用量とCO2排出量をベースラインとし、5年間で年単位平均1パーセントの削減を目標にしています。
賃貸住宅は、オフィスビルなどと比べて共用設備が非常に少ないため一気に大幅な削減をすることは難しいのですが、共用部証明のLED化などによりエネルギー使用量、CO2排出量の削減に継続的に取り組んでいます。また、右側にありますように大型物件についてはDBJグリーンビル認証を継続的に取得しています。
ESGのSの部分に関しては、左下にあるような資産運用会社の役職員に対する取り組みを行い、Gについては透明性の高いコーポレートガバナンスを実現しています。
その結果、2019年度のGRESBリアルエステイト評価においてグリーンスター評価を獲得し、総合スコアでの相対評価によるGRESBレーティングについてはスリースターの評価を獲得しました。また、アジアにおける集合住宅のセクターリーダーにも選出されています。
財務の状況(1)
19ページをご覧ください。財務の状況についてご説明します。28期末の借入金は、合計1,535億円、総資産に対するLTVは50.8パーセントとなりました。長期負債比率は98パーセントと前期より1.9ポイント増加、長期固定負債比率も95.4パーセントと前期より1.9ポイント増加しています。
期末時点の加重平均金利は0.57パーセントと、前期に比べ若干の低下、長期有利子負債の平均残存年数は4.4年と前期と変わりません。
コミットメントラインは、ここに記載の3行から50億円ずつの合計150億円と変わらず、格付けもR&Iから「AA−」を、S&Pから「A+」の格付けをいただいており、これも前期と変更はありません。
財務の状況(2)
20ページをご覧ください。上のグラフは長期借入金に関して、折れ線グラフが期末時点加重平均金利を、棒グラフが長期有利子負債平均残存年数を示しています。残存年数を維持しながら借入金利の低減を進めてきたことがおわかりいただけると思います。
下のグラフは長期有利子負債の返済期限分散の状況(マチュリティラダー)です。赤く囲ったところが今期に調達したものです。その右上にあるとおり、今期は95億円、平均金利0.8パーセント、平均約定年数7.2年の借入を返済し、115億円の借入を平均金利0.33パーセント、平均約定年数7.1年で行ないました。
今後も引き続き、コミットメントラインの範囲内で返済期限の分散化、借入の長期化を図っていきたいと思っています。
ポートフォリオの含み損益等の推移
21ページは鑑定評価の概要です。今期もポートフォリオ全体の鑑定評価額は上昇しました。含み益は978億円、1口あたりのNAVは483,000円となっています。また、鑑定評価における直接還元利回りも引き続き低下を続け、今期は4.0パーセントになりました。
第29期・第30期 業績予想(1)
次に現在発している29期と翌30期の業績予想について説明します。22ページをご覧ください。まず、前提として現在までのところ、運用状況に新型コロナウイルス感染症拡大の影響は表れていません。
例えば、解約が急増した、あるいは逆に人の動きが少なくなったため解約が減った、成約が減ったというような影響は出ていません。したがって、今回の29期および30期の業績予想では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響は加味していません。
29期は、入替えの多い繁忙期のため、賃料収入等は増えるものの原状回復費などの費用もかさむため増収減益となります。稼働率は、過去最高水準であった前年同期の27期と2年前の25期の中間の水準である97.5パーセント、物件は3月に取得したパークアクシス赤塚以外の増減はないことを前提にしています。
その結果、29期の営業収益は115億6,700万円と、28期に比べ1億6,600万円の増収。営業利益は52億100万円と、1億600万円の減益、当期純利益は47億3,900万円と1億2,600万円の減益です。1口あたりの分配金は9,780円を予想しています。
翌30期はテナントの入替えが少ない期になるため、減収増益となります。稼働率は、前年同期の28期および2年前の26期と同じ97.7パーセントを予想しており、物件の増減は見込んでいません。
その結果、30期の営業収益は115億5,200万円と、29期に比べ1,500万円の減収。営業利益は53億8,200万円と、1億8,100万円の増益。当期純利益は49億1,800万円と1億7,900万円の増益。1口あたり分配金は1万150円を予想しています。
第29期・第30期 業績予想(2)
次に、23ページをご覧ください。23ページには1口あたり分配金の前期からの変動要因を説明しています。
29期は、28期の実績10,042円に対して、先ほど述べました変動要因でマイナス202円、パークアクシス赤塚の新規稼働分でプラス67円となり、さらに、その他として保険金収入の減少や支払い消費税の増加などの要因を勘案した結果、9,780円を予想しています。
これは、前年同期の27期の1口あたり分配金から物件売却益分を除いた金額とほぼ同じレベルになります。
30期は季節変動要因により、既存物件でプラス386円、パークアクシス赤塚の通期稼働によるプラス20円などにより10,150円を予想しています。
安定した分配実績
次に24ページをご覧ください。ここ数年、賃貸住宅市場はタイトな需給環境のもとで好調に推移し、投資用不動産の売買市場も好調が続いたため、当社も内部成長を捉える場合、物件の入替えを伴いながら安定的な分配金の成長を実現することができました。
今後の見通しとして、最後に新型コロナウイルス感染症拡大の今後の影響についてご説明します。
先ほどもお伝えしたとおり、賃貸住宅の運用面においては、現在のところ感染症拡大の影響は出ていません。しかし、緊急事態宣言に基づく外出自粛要請、店舗などの休業や営業時間短縮が長期化すると、賃貸住宅を探そうという人の動き自体が鈍くなるため、空室の営業には影響が出てくる可能性があります。
また、感染症拡大が終息せず、長期に渡って日本経済が悪化した場合、賃貸住宅市場もその影響を免れるわけではありませんので、引き続き事態の推移を注意深く見守っていきたいと考えています。
過去の経験からいうと、契機が悪化した場合に、最初にかつ比較的大きく影響を受けるのは高額住戸になります。ただ、当社のポートフォリオの中で月額賃料が30万円以上の住戸は3.8パーセントに留まっています。
ちなみに、リーマンショック時は当社ポートフォリオの21パーセントを大川端賃貸棟が占め、月額賃料が30万円以上の住戸の割合も7.7パーセントを占めていました。したがって、ポートフォリオ全体としてはリーマンショックのときよりも、現在のポートフォリオのほうが経済の悪化の影響を受ける度合いは少ない構成になっていると考えています。
また、店舗については当社のポートフォリオの中で占める割合は非常に小さく、賃料ベースでポートフォリオ全体の2.2パーセントに過ぎません。しかも、その大半がコンビニエンスストア、ドラッグストア、医院、歯科医院であり、緊急事態宣言等による都道府県から営業自粛要請や営業時間短縮要請を受けている飲食店などの業態は数件しかありません。したがって、店舗からの影響は限定的だと考えています。
賃貸住宅以外のホスピタリティ施設としては、当社はチサンホテル広島というホテルを1物件保有しています。この物件については100パーセント固定賃料で、2027年までの定期借家契約になっています。
また、本物件がポートフォリオ全体に占める賃料の割合は0.6パーセントに留まっています。しかしながら、ホテルは業界全般として大きな影響を受けているため、オペレーターの運営状況等については引き続き注視していきたいと考えています。
現状では、新型コロナウイルス感染症の終息の時期や経済に与える影響については予測が困難な状況ですが、市況の変化に柔軟かつ機敏に対応することで中長期的に安定的な分配金の成長に向けて努力していきたいと考えていますので、引き続きよろしくお願いします。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。