今年の冬は、新型コロナウイルスの影響もあり、例年に比べても、マスクをつけている人を多く見かけるのではないでしょうか? ドラッグストアやスーパーなどでは、マスクが売り切れており、外国人観光客によるマスクの買い占めや、フリマアプリによる高額転売なども問題になっています。

そんな形で何かと話題になっているマスクですが、最近は街なかや電車などで「黒いマスク」をつけている人を見かけるようになりました。いつの間にか、当たり前のように見慣れているという方もいると思いますが、最初は奇妙なビジュアルに違和感を覚えた方も多いようです。この記事では、「マスク大国」ともいえる日本で、国内や海外の人たちがマスクに抱いている「違和感」について紹介します。

通常の条件では「感染予防」に効果的とはいえない

今や、ドラッグストアやネットショッピングでも品薄の店舗が多く、手に入れるのが難しいマスク。中国を中心に流行し、日本国内でも死亡者が出ている新型コロナウイルスへの感染を懸念してか、日本全国、どこでもマスクをつけている人をたくさん見かけます。

しかしながら、新型コロナウイルスの予防にマスクが必ずしも効果があるとは限らないとする見方もあります。厚生労働省のウェブサイトでは、マスクと呼吸器感染の予防との関係については、以下のように記載されています。

「マスクは、咳やくしゃみによる飛沫及びそれらに含まれるウイルス等病原体の飛散を防ぐ効果が高いとされています。咳やくしゃみ等の症状のある人は積極的にマスクをつけましょう。予防用にマスクを着用することは、混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では一つの感染予防策と考えられますが、屋外などでは、相当混み合っていない限り、マスクを着用することによる効果はあまり認められていません」

新型コロナウイルスに限らず、風邪やインフルエンザにも言えますが、すでに感染している人のマスク使用について「飛沫によってウイルスなどが飛散することを抑える効果は高い」と言及する一方で、(かなり慎重な言い方を選んでいるものの)症状のない人が予防のためにマスクを着用することが効果的であるという言い方はしていません。首相官邸やWHO(世界保健機関)のウェブサイトでも同様に、呼吸器感染を予防できる科学的に確かな根拠はないとしています。

米国疾病予防管理センターによるインフルエンザ・パンデミックの予防に関連したガイドラインでも、重度のパンデミックでワクチンが利用できない状況下で、妊婦やインフルエンザ合併症のリスクのある人、インフルエンザに感染した家族の世話をする人など、特にリスクが高い状況を除いて、健康な人がマスクを使うことは、通常は推奨しないとしています。

なお、医療従事者がつけるマスクについては、呼吸器感染等を防ぐ一定の効果が立証されています。しかし、先ほど触れたような一般でのマスク需要の異常な高まりによって、こうした医療に関わるマスクの供給にまで悪影響が出てしまうのではないかという懸念も指摘されています。

「こっちまで恥ずかしくなる」か「かっこいい」か

ところで、マスクの話題に関連して、街中で黒いマスクをつけている方を見たことがある方も多いのではないでしょうか? 都市部を中心に、若者が多く着用している印象がある黒いマスクですが、風貌から「怖いな」と感じる方や、「ちょっとダサくない?」と違和感を覚える方もいるようです。Twitterでは、次のような投稿が見られます。

「黒いマスクつけてる人見ると、こっちまで恥ずかしくなるんですが、分かる人いますかね」
「個人的な意見だけど、黒いマスクしてる人が苦手。向こうから黒いマスクが歩いてくると、悪の組織の使者かといつも身構える。なぜ白ではなく黒を選んだ?」
「最近黒いマスクをしている人をよく見かけるけどアレってみんな幽遊白書の鴉を真似てるんでしょ?」
「黒いマスク付けて渋谷を出歩くような女になるなと彼女には日々言い聞かせてます」

このように、黒いマスクに対して、否定的な意見を持っている方も一定数いるようです。現状のところ、やはり白いマスクが主流なので、黒いマスクが見慣れないだけではなく、見慣れてきても違和感を感じている人が多いのかもしれません。

しかし、その一方で、

「黒いマスクってかっこいいよね〜私も付けてみたいw」
「韓流好きな人がいつもつけてる黒いマスクわたしも欲しいどこ行ってもかっこいいマスク売ってなくて悲しい」
「『魁!! 男塾』の卍丸みたいで自分が急に強くなったような気分になれてよい」
「黒いマスクって中二心をくすぐるだけかと思ってたんだけど。目のすぐ下の視界が黒いのって落ち着く。白いと眩しくて煩わしかったんだわ。黒いマスク、おススメです」

といった肯定的な意見や、黒いマスクを着用した男性アイドルの写真を投稿して、「かっこいい……」と惚れ惚れしているようなツイートもちらほらあり、賛否はかなり分かれています。

ルーツは、K-POPアイドルにある?

先ほど紹介したツイートにもありましたが、2010年代序盤から、EXOやBIGBANGといった人気を集めるK-POPグループのメンバーが、プライベートなどで黒いマスクを着用していたことが「黒マスクブーム」の火つけ役になったとされています。実際に、日本よりも韓国の方が、黒いマスクを着用している人が多いといわれます。

人気を集める理由は、それだけにとどまらず、

・ファッション性が高い
・汚れが目立ちにくい
・小顔に見える
・防臭効果が高い

などが挙げられます。黒以外にも、グレーや肌色、パステルカラーなど、最近ではさまざまな色のマスクが流通していますよね。

黒いマスクをオシャレと捉えるかどうかは、人によって大きく異なりますが、汚れが目立ちにくい点や小顔に見える点は、一理あるように思えます。また、市販されている黒いマスクには、竹炭入りのものもあり、防臭や消臭といった効果を期待して購入している人も多いのだそうです。

海外では「白いマスク」でも違和感!?

日本では、「黒いマスクをつけている人」に対して、意見が割れていますが、欧米では、そもそも「街なかでマスクをつける」ということ自体に違和感を覚える人も多いのだそうです。一般的に、アメリカやヨーロッパの国々では、日本のように公共の場でマスクをつける習慣がなく、彼らの目には、日本人のマスク姿は奇妙に映っているのだとか。

欧米では、マスクは、医療従事者や重病人しか着用することがないために、街でマスクをして出歩いている人を見る機会はあまりありません。また、マスクなどで顔を隠す行為は、犯罪者を連想させ、恐怖心を与えかねないため、なかばタブー視されているところもあるようです。また、欧米では、「マスクによる予防効果に科学的な確かな根拠がなく、手洗いのほうが効果がある」という考えが普及しているため、マスクをつける習慣のある東アジア圏の人たちを不思議に感じてしまうのです。

そのため、海外旅行に行く際は、上記のように「マスクを着用していると現地の人から不必要な懸念をされる」ということについては意識しておく必要があるかもしれません。重病人だと勘違いされることもありますから、特に症状があるわけではなく予防として着用している場合は、その国の文化や習慣に合わせた対応をするほうがいいかもしれません。

「マスク大国」ニッポン

先にも触れたように、マスクが特定の条件を除いて、感染症の予防に効果があるとは実証されていませんが、エチケットとしても習慣化しているマスクの着用は、「今や、日本の文化の一つ」だという見方もあります。ただ、黒いマスクには違和感を抱く人でも、「欧米から見たら白いマスクでも違和感を抱かれている」とは知らなかった人も多いはず。日本をはじめ東アジアの「マスク大国」ぶりや、買い占めに走るようなヒステリックな反応は、一歩引いて眺めると、確かに異様なようにも思われます。

しかし、インフルエンザもそうですが、ますます拡大を続ける新型コロナウイルスの感染の広がりに、私たちも傍観しているわけにはいきません。手洗いをはじめ、首相官邸や厚生労働省のウェブサイトなどで、ある程度信頼できる情報を手に入れ、個々人ができる理性的な対策に努めていくことが大切ではないでしょうか。

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